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空の宇珠 海の渦 外伝 命の絆 その六






「では、早速出かけるか!」



子犬の嵐は気が短い。

 



家の外で嵐が霊力を開放した。

 


風が巻き起こった。

 


嵐の霊力で大気が揺れる。

 


金と銀の巨大な山犬。

 


その背中は人の背丈ほども有る。

 



「すごい…」


華はその光に感動していた。

 




挿絵(By みてみん)




「本当に神様っていたんだ…」




「言っておくが神にもいろいろいる…気をつけぬとな」

 


後鬼が華に釘を刺している。

 


「あなたたちは一体…」




柊は全てを知りたがっている。

 


見ず知らずの者を助け、導いて行く。

 



「あの男はただの世話好きじゃ…」



後鬼が何となく真魚のことを説明した。

 



「行くぞ!」



真魚と蓮が嵐の背中に乗った。

 


その声が聞こえた時にはその姿はなかった。




「と、飛んだ…すごい…」

 


華の感動はまだ続いていた。









「ところで…」

 


家の中に戻ったところで、前鬼が話を切り出した。

 



「お主、儂らを見たことがあるのか?」



柊の様子から前鬼がそう感じたようだ。

 


「いえ、そう言うわけではございません」




「では、儂らに似たものを知っておるということじゃな…」

 


柊の答えを後鬼はそう解釈した。

 


「ええ…」



柊はそう言ってうつむいた。

 


「あれは私がまだ幼い頃の話でございます」 



「丁度、華ぐらいの年頃だったと思います」



「山に山菜採りに出かけた時、夢中になり道に迷ってしまいました」



「その山で鬼に出会ったのです」



「最初は人だと思っていました」



「苦しそうにうずくまっていたので、近寄って話しかけました」



「顔を上げるとそれは女の鬼でした」



「怖かったですが、もうどうにもなりません」



「すると鬼はこう言うのです」



「何か食べ物をくれと…」



「私は持っていたおにぎりを一つ差し上げました」



「すると、鬼はたちまち元気になり、お礼にこの薬をくれたのです」




そう言って柊は後鬼にその薬を見せた。

 


「なるほど…そう言うことか…」



後鬼はそれを見るなり全てを理解したようだった。

 



「困った事があれば、念じてそれを飲めと言ったのか…」



柊は後鬼の言葉に黙って頷いた。

 



「鬼は何処かの術士に縛られておったのだな…」



「その術をお主が解いたのだ…」



後鬼が柊の話を解きほぐす。

 


「人の好意に触れたとき、その縛りは解けたのだ」

 


「ま、何か良からぬことをしでかしたのであろうな…」

 



「だが、こうも言わなかったか…」



「命に代わる出来事が起こったときだけ…」




「そういえば…」 

 


柊はそのこと忘れていた。

 



「お主は大事なことを忘れておったようじゃな…」



後鬼はそう言って考え込んだ。



「ま、とりあえずこれを飲んでおけ…」

 


後鬼はそう言って小さな器を差し出した。

 


「これは…水…」



「なんて美しい…」



器の中に輝く水が入っていた。

 


「真魚殿はそのためにうちらを呼んだのじゃ」



「これを…私に…」



柊は恐る恐るそれを飲んだ。



「美味しい!なんて美味しいの!」



「身体が喜んでいる…」



柊の身体に生命が染みこんでいく。



それが手に取るようにわかる。



 

「それは理水じゃ、うちが創る究極の水じゃ」

 


後鬼は自慢げにそう語る。


 

だが、それは本当の話だ。

 


「これで、しばらくは大丈夫じゃ」



後鬼がそう言って柊の背中をたたいた。

 


「痛っ」



柊が顔をしかめた。

 



「あっ!」



「気づいたか…」



「しばらく前までは痛みも感じなかった筈じゃ」



「半分死んでおったからな…」



後鬼は既に柊の病を理解している。

 



「この痛みは生きているってこと…」

 


柊は想いもしなかった。




「当たり前じゃ」

 


「ついでに言っておくが、美味しいも同じじゃぞ」



後鬼は笑ってそう言った。





挿絵(By みてみん)




続く…



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