表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/494

空の宇珠 海の渦 外伝 心の扉 その十九






「動いたようだな…」



その変化を嵐は感じ取った。

 



「仲成は罪を認めたらしいな…」

 


そう言って東子を見た。

 


「これで紗那は死んだことになった…」



「その事実はお主は知らぬ…」

 


嵐が東子に念を押した。




「このままだと後宮に入ることになるな…」



嵐が東子にその事実を告げた。

 



「なぜ、その事を…」



東子はその事実に潰されそうになっていた。

 



「その様子だと返事はまだのようじゃな…」

 


嵐は東子の波動を読んでいる。

 



「どうしたら…紗那に会えるの?」



東子は真剣な眼差しで嵐に訴えた。




「確かめたいのか…紗那の心を…」



嵐とは思えない言葉が出た。

 



「もう一度、会いたいの!」

 

「一度でいい!」



それは紗那の想いでもある。

 



挿絵(By みてみん)




「夜だ、夜まで待て…」

 


嵐が東子にそう言った。


 

東子の心が震えている。

 


その波動が広がっていく。


 

「会えるのね、紗那に!」


 

雲間から射す光。

 


東子は涙を浮かべながらそれを見ていた。










真魚は若い付き人を連れて仲成の屋敷を出た。

 



「どこに参られるのですか?」



付き人が真魚に尋ねた。 

 



「名は何というのだ?」

 


真魚は答えより先に付き人の名を聞いた。

 



「井出湯守と申します」

 



「井出?仲成とは関係ないのか?」

 


真魚はその出自が気になった。

 



「私は妾の子です」 



湯守がそう答えた。

 



「そう言うことか…」



真魚はそれで納得した。

 



父の種継は暗殺された。

 


出世の道は閉ざされたようなものであった。

 



「言っておくが、行く所はないぞ…」



真魚は湯守にそう言った。

 



「え、では、何の為に私を…」



湯守は真魚の行動が理解出来なかった。

 



「見当はついていると思うが、奴は人を殺めた」



真魚は湯守に事実を伝えた。

 



「はい、何となく分かります」




「だが、殺したものは生きている」




「ど、どういう事でしょう?」



「俺が助けた」



湯守にとってその事実は受け入れ難い。

 



「だが、奴は知らぬ」

 


「それでいいのではないのか?」




真魚が笑みを浮かべている。

 


仲成が知らない事実。

 



それを湯守が知ったことになる。

 


「佐伯殿は…なぜ私に…」

 



湯守は気づいた。

 



切り札は取っておけ、そう言っているのだ。

 


だが、話は簡単ではない。

 



その裏を湯守は気にしている。

 



この男は何と引き替えに、その事実を自分に告げたのだろう。

 



湯守はそう思っていた。

 



「お主は敏感な奴だ…」



「しかも、頭がいい…」




真魚が湯守を見て笑みを浮かべた。




「あの夜、神に物怖じもしなかった」



「それは見抜いていたからであろう?」




真魚は歩きながら話をした。

 



「見ていらしたのですか…」



湯守は真魚の後ろを歩いている。

 



「神が自ら名を告げるとは思えません」

 


湯守はあの夜の事を話した。

 



「お主、神に逢ったことがあるのだな…」



真魚が笑っている。

 



前鬼もたまには間違いを犯す。

 


だが、その間違いで湯守の才を見抜いたようなものだ。

 



「仲成に呪をかけたことも、偶然ではなかったわけだな…」




真魚は湯守のしたたかさを感じていた。




「そういえば…」



湯守が何かを思い出した。



「あの神は…」


 

「あなたに会えと言った…」




「では…全てあなたが…」



湯守は真魚の策略に気がついた。

 



「そういうことになるか…」



真魚は立ち止まり振り返った。

 



「貴族の中で腐るぐらいなら、その才、俺に託せ」



真魚が湯守にそう言った。



その言葉に湯守は揺れた。

 



「あなたは何がしたいのですか?」



湯守はその心を知りたかった。

 


「唐に行く」




「唐…遣唐使…」

 



「お主には知りたいものがあるであろう」


 

真魚が湯守の瞳を覗く。

 



「知りたいもの…」


 

湯守は真魚の瞳に囚われた。

 


逃げられない。

 


そう感じた。

 


恐怖ではない。



果てしなく広がる宇宙。



途方も無い生命エネルギー

 

 

真魚のその魅力に引き込まれた。




「知りたい…」



湯守は真魚に言った。

 



「全部教えてやる…それが条件だ!」



真魚が湯守に言った。



自らの高鳴る鼓動。



止まらない感動が湯守を包み込んでいる。



その心が、高き波動を生み出していた。




挿絵(By みてみん)





続く…







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ