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空の宇珠 海の渦 外伝 心の扉 その九





真魚の中では既に段取りは出来ているようだった。

 


「夜だな…必ず見に来る…」


真魚はその未来を見ている。

 


「お主の屍を見れば死んだと思うはずだ…」

 



「俺はこの通り生きているぞ…」

 


紗那はその両手を広げた。

 



挿絵(By みてみん)




「偽物でいいではないか…」



前鬼が笑っている。

 



「血のついた着物もまだ残っている…」



後鬼がその方法を紗那に伝えようとしている。




「夜に屍をじっくり見たいと思う者もいまい…」



真魚が笑って言う。

 



「なるほど…」



紗那が納得している。


 


「だが、俺はその後、死んだことになるのだろう…?」




「どうやって生きて行けば良いのだ…」



貴族という仕組みに飲まれていた。

 


その紗那に、他の道は思い浮かばない。

 



「俺が見せてやる!」



嵐が紗那に言った。

 



「子犬のお主が、何を見せてくれるというのだ…」



紗那の言葉が嵐の琴線に触れる。

 



「俺は犬ではない、神だ!」

 



嵐がそう言うと霊力を開放した。



 

その力で大気が舞い上がる。




巻き起こる風が森の木々を揺らす。




紗那が反射的に腕で目を守る。





嵐の身体が輝いている。

 



金と銀の美しい縞模様が輝いている。

 



気がついた時には紗那の顔を見下ろす嵐が立っていた。

 




「こ、これは、どういうことだ…」



紗那が驚いている。




口が開いたまま閉じない。

 



「だから言ったであろう、俺は神だ…」



嵐のその姿を見て、紗那は始めてその事実を受け入れた。

 



「まだ、夜までには時間がたっぷりある…」



「長い散歩になるな…」



真魚が笑って嵐を見た。

 



「世界の全てを見せてやる!」



嵐が真魚に向かってそう言った。

 




「最近、お主も少々お節介になったのぉ…」 



後鬼が嵐を窘める。


 


「俺は、誰ぞのように倒れはせん…」



嵐は後鬼の言葉を真魚に向けた。


 


「確かに…そうだ…」



嵐はそこまで無茶はしない。 



その事実に前鬼が笑っている。




「いくぞ!」



嵐が声をかけた。

 



「その前に…」



後鬼が紗那に視線を向けた。


 


「鈍い奴だ…」



後鬼がため息をついた。



 

「着物を脱いで行かぬか…」



紗那に向かってそう言った。

 



「全部か…」


紗那には少しためらいがあった。


 


「これを履くと良い」



真魚が袴を紗那に投げた。

 



「お主の身代わりを作るのだぞ…」



後鬼が紗那にその旨をを伝えた。

 



「仕方ない…」



紗那はそう言ってその場で着替えた。

 



「これで良いか…」



紗那は脱いだ着物を後鬼に渡した。

 


「ちょっと大きいなぁ」



真魚の着物は紗那にとっては大きい。 




「男は細かいことにこだわるな」


後鬼がそう言って、女である紗那の背中をたたいた。

 


「そ、そうだな…」


紗那は照れくさそうに笑っている。

 


「乗れ!」


嵐が背中を顎で示した。

 



「大丈夫なのか…」



紗那が畏れている。

 



「俺を誰だと思っているのだ…」



嵐が笑っている。

 



真魚が先に飛び乗り、手を差し出した。

 


「来い!」



その言葉は紗那の未来だ。

 


紗那はその手を掴んだ。

 


紗那はその時、自らの未来をつかみ取った。

 



「行くぞ!」



嵐の霊力が上がった。

 


押された大気が風を起こす。

 



「すごい!」




紗那がそう言う間に地面が遠く離れていた。




挿絵(By みてみん)



続く…







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