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空の宇珠 海の渦 第六話 その三十七






熊野灘の風が抜けて行く。



その風が希望を運んでいる。


 


凪は船の上で離れていく陸を見ていた。

 



潮の香りがを凪の心を、子供の頃に戻していく。




あの頃感じなかったものが今は分かる。

 



その心の変化を凪は楽しんでいた。

 



挿絵(By みてみん)




鈴鹿御前が嵐と子供達を見て笑っている。


 



凪にはいつも厳しかった。

 



あんな笑顔は見たことがなかった。

 



それは自分たちの事と無縁ではない。

 




だが、今は良かったと感じている。

 



鈴鹿御前の本当の心を知ったからだ。

 



「御前様、楽しそう…」

 




凪は心の底からそう感じていた。

 




「凪、心配なのか…」



真魚が声をかけた。

 



「えっ、私は…」



突然真魚に声をかけられ凪は戸惑った。

 



「そんな顔をしているぞ…」

 


凪の波動が揺れている。

 


真魚が笑っている。




「もう盗みをする必要は無い…」

 




「私たちは…これからどこに行くの」




凪が心配で、気になっていたことだ。

 



「好きな所に行けばいい…」




「好きな所って言っても…」



凪は戸惑っている。

 



自分が育った村はもう無い。

 



「鈴鹿御前と一緒にな…」




真魚は凪にそう言った。

 



「御前様と…」




凪は気づいた…




行きたい場所はない。

 



だが、一緒にいたい人はいる。




 

凪は真魚の言葉で自分の心に気づいた。

 



「真魚って何でも分かるのね…」



「私が気づいていないことでも…」




凪は真魚の波動を感じている。




「何でもは分からぬ…」



「だが、心は波動を放っている…」

 


「その波動は嘘をつけぬ…」



真魚は凪の波動を感じている。

 




「心は嘘をつけないんだ…」


 


凪もそう思っている。

 


嘘をつくとき心が痛む。

 


心はその波動を生み出す。

 


だが、嘘をついても平気な者もいる。

 


それは、その本人がそう思っているからだ。

 


それは嘘にはならない。

 


嘘が真実に変わるのだ。

 



そう言う人間は恐ろしい。

 



だが、存在している。

 


それは事実だ。

 





すると、そこに…



「真魚、助けてくれ!俺はもう限界だ!」



そう言って子犬の嵐が真魚の前に転がってきた。

 



この時、嵐は重大な過ちを犯してしまった。

 



子供達は嵐が喋れることを知らない。

 



「い、犬がしゃべった~~~~」

 


子供達が驚いている。

 



その波動が膨れあがる。

 



真魚はそれを感じ取って笑っている。

 


次に何が起こるかは明らかだ。

 



「後始末は自分でするんだな…」

 



真魚が嵐を見捨てた。



その時には既に子供達の餌食になっていた。

 



「もう一回、喋って!」

 


「なんで!何でしゃべんの!」




「嵐って、面白い…」

 


それを見て凪も笑っている。




「本来の姿になれば済むことだ…」 

 


真魚がそう言って笑っている。



 


「助けてくれー!許してくれー!」



だが、目的地に着くまで、嵐が本来の姿になることはなかった。






「私、御前様と一緒に行きたい!」

 


凪は既にそう決めていた。

 



「一緒に行くのはいい…」



「だが、凪は凪の未来を創れ…」



真魚は凪にそう言った。


 


「私の…未来…」





「命は輝かねばならぬ…」



「鈴鹿御前もそれを望んでいるはずだ」





「輝く…命の輝き…」



凪にはその意味がまだ分からない。


 

命の輝き…

 


凪の心の中で、新しい未来が動き始めていた。




挿絵(By みてみん)




続く…









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