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空の宇珠 海の渦 第六話 その三十一






真魚が棒を肩に担いでいる。

 


漆黒の棒。

 


目の前にある闇そのものの色だ。

 



「ぼちぼちか…」



真魚はそう言うとその棒を右手に持って構えた。

 



左手で手刀印を組む。

 



真魚の身体が輝き始めた。




「嵐、飯だ!」



真魚が叫んだ。

 



既に嵐がその(あぎと)を闇に潜り込ませていた。





挿絵(By みてみん)




「丁度、腹が空いてきたところだ!」



嵐の動きは倭の兵には見えていない。

 


闇の上で光が瞬いているとしか認知出来ない。




真魚の棒に赤い光の粒が集まっている。

 



棒が真っ赤に燃え上がる。

 



「朱雀!」

 



真魚が叫ぶと赤い光が空に昇る。

 



その光は一度真魚の頭上で動きを止めた。

 



赤い光は巨大な鳥に姿を変えた。 

 



「征け!」

 


赤い鳥、朱雀は急降下し、闇に向かう。

 


そして、その嘴から燃えさかる炎をはき出した。

 



その炎はこの世の炎ではない。

 






「何が起こっているのだ…」


 

あの炎の先で何かが起こっている。

 



だが、この距離からではよく見えない。

 



飛炎は揺らめく闇に心を奪われている。

 



とぼとぼと闇に向かって歩き出した。

 


身体が引き寄せられる。

 



身体が甘美な恐怖を求めている。

 


その恐怖に埋もれたい…


 

闇に捕らわれた心は全てを闇に捧げる。

 



「飛炎!待て!」



疾風がその腕を掴む。

 


疾風の波動が飛炎の心を揺らす。

 



「お、俺は…」




「動くなと言われただろ!」



飛炎は自分の行いが信じられなかった。

 



闇の誘いに導かれた。

 



「こんなに脆いのか…」

 



己の心の弱さを恥じた。

 



「あの男が戦っている…」



疾風はそれを感じている。

 



「佐伯真魚か…」



燃えさかる炎の先にその男はいる。

 


飛炎はその姿を思い浮かべた。



 




朱雀の炎が闇を焼いている。

 


嵐の爪ががそれを切り裂き、顎でかみ砕いている。

 


少しずつ闇の力が衰え始めた。

 



「蝦夷の時ほどではないのか…」



嵐はそう感じていた。

 



あの時は数万の兵の恐怖がきっかけであった。

 



戦という命のやりとりもそれに拍車をかけた。

 



「結局、呼んでいるのは人の心…」




人の思考が生み出す恐怖。

 



その恐怖に怯える心。

 



心から放たれる波動。

 



その感情の波動が呼び水となる。




「これも神の力の一部か…」





「だが、闇が呼べるなら…光も呼べるはずだ…」





しかし、この事実に気づく者は少ない。





しかも、方法は同じだ。





「ま、俺には関係ない…」

 



嵐は自分らしくない、その考えに呆れていた。




挿絵(By みてみん)




続く…







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