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空の宇珠 海の渦 第六話 その十七





次の朝、田村麻呂は兵に山狩りを行わせた。

 

百人ほどの人数に分けて山の中に入っていく。

 


「あの男は何を考えておるのだ…」

 

嵐は空の上からそれを見ていた。

 



挿絵(By みてみん)




「帝のことか…」

 

背中に真魚が乗っている。

 



「見せしめだ…」

 


「貴族達に力を見せつけるための…」



真魚もその愚行に呆れている。

 


「逆らうとこうなると…」



嵐も呆れている。

 



「そんな男にこの国を任せておけるのか…」



嵐の口から国の話が出るなど珍しい。

 


「長くは続くまい…」



誤った行いの積み重ねは、やがて国を滅ぼすことになる。

 


その行いの向きが未来を変えていくことになる。

 


たかが女盗賊を捕まえる為に、千人の兵を出す政など先が知れている。

 



真魚は行いの中の未来をそう見ている。




「奴らはあの結界を破れるのか?」

 


嵐に一つの疑問が浮かぶ。

 



「恐らく山の中をぐるぐる回ることになる…」



「それは見つけられぬと言うことなのか?」



嵐は出来ればそうあって欲しいと考えている。

 



「それでは、田村麻呂が手ぶらで帰ることになる…」



真魚がその事実を否定している。

 



「田村麻呂の顔が立たぬ…」



「あの男は捕まえるまで諦めぬな…」



真魚の言っていることは嵐にも理解出来る。

 


「では、どうするのだ…」



「一度、鈴鹿御前の所に行く…」



「既に前鬼と後鬼がいるはずだ」


真魚は嵐にそう言った。

 



「気は乗らんが、そうするか…」



嵐はそう言うと鈴鹿御前の館に飛んだ。




 



ただならぬ気配が辺りを包み始めた。



前鬼と後鬼は館の庭先でその波動を感じていた。

 



「どうやら動き始めたようじゃな…」



「この感じ…百や二百ではないですな…」



倭の兵が動き始めた。

 



「ここの結界はそうは破れぬ…」



「だが、この数で来られたら勝ち目はない」



前鬼がその先の事を考えている。



「それは、鈴鹿御前も分かっておろう…」



後鬼はその波動を感じている。





「あの強者共は別として…問題は、子供達をどうするかじゃ…」



あの数の兵の中を子供と一緒に逃げる事は不可能だ。

 



「秘密の抜け道でもあれば…」




前鬼はそれ以上の事は考えつかなかった。

 



その時…

 


二人の目の前に光が舞い降りた。

 


土煙が舞っている。

 




「お主ら仕事はちゃんとしておるのか!」



嵐であった。

 


その背中から真魚が飛び降りた。

 



「山狩りが始まった…」




真魚は前鬼と後鬼にその事実を告げた。

 



「兵の数は?」

 


前鬼が真魚に聞く。

 



「ざっと千と言うところか…」



「千ですと…」



前鬼と後鬼が驚いている。

 


数的に言えば絶望に近い。

 


だが、問題は数では無い。

 


真魚はそう考えていた。

 



「どうするつもりで…」



前鬼が真魚に助けを求めている。

 



「鈴鹿御前に確認したいことがある」



「話はそれからだ…」



真魚はそう言って館に向かった。

 



「待っておったぞ…」

 


すでに入り口で鈴鹿御前が待っていた。




挿絵(By みてみん)




続く…





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