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空の宇珠 海の渦 第六話 その十





懸盤(かけばん)上に食事が置かれていた。

 

その横で嵐がへたり込んでいる。

 

あれほど空腹だと言っていたはずだが、少し様子がおかしい。




挿絵(By みてみん)




「どうした食べぬのか?」

 

真魚が嵐に気を遣っている。

 


「空腹の上におもちゃ扱いだぞ!」

 

嵐は機嫌が悪かった。

 


「それだけか…」


 真魚は笑っている。

 


鈴鹿御前に案内され、ある場所にたどり着いた。



「こ、これは…」


嵐と真魚はその光景に驚いた。

 


そこには大勢の子供達がいた。



戦で親を亡くした子供達であった。

 


妖怪か魔物…

 

そう感じた鈴鹿御前の裏の顔がそこにあった。

 


「御前様が来た!」

 

鈴鹿御前の姿を見るなり子供達は駆け寄っていく。

 


あの鬼のような表情は、子供達に接するその姿からは想像できない。

 


そこには母性が溢れていた。



「わ、犬だ!」

 


「ほんとだ、犬だ!、犬だ!」



そして、ついに…嵐は見つかってしまった。

 


最初からわかっていればこんな所にはこない。

 


「お主!謀ったな!」


 

嵐が気づいたときには、二十人ほどの子供達にもみくちゃにされていた。

 


鈴鹿御前が笑っている。

 


恐らく最初からそのつもりであったのであろう。

 


ご馳走はただでは頂けないのが普通である。

 



そして、散々もて遊ばれた挙げ句、今に至るのである。

 



「あんなに子供がいては…食べにくい…」

 

嵐が本音を言った。



今までの嵐なら有り得ない。



それが嵐の言葉であることが信じられない。



ここにある全ての食材は子供達の糧なのだ。

 


「気にするな、その分は働いたではないか」

 

真魚が助け船を出す。

 


真魚は既に何か口にしている。

 


「少しだけ頂くか…」

 

そう言って嵐が立ち上がった。

 


「遠慮は要らぬぞ…」

 

鈴鹿御前が近寄ってきた。

 


「子供達が世話になった…礼を言う…」

 


鈴鹿御前が嵐の側に座った。



建物の東側、東対(ひがしのたい)と呼ばれる所が、


子供達の場所だ。



子供達が行儀良く?食事をしている。


凪や颯太も手伝っている。



「私も同じなのだ…」


子供達を見ながら鈴鹿御前がつぶやいた。



「何も変わらない…」


その口元の笑みは母の心だ。

 


「噂が立っているのは知っておるな…」

 

「あまり派手に動かぬ方がよいぞ…」

 

真魚が鈴鹿御前に忠告する。

 


「分かっている…」

 


「何か考えないと行かぬな…」

 


「何かとは?」

 


「子供達をこのままにはしておけぬ…」

 

真魚は事実を言った。

 


「そうだな…」

 


「ここもそのうちに見つかるかも知れぬ…」 


鈴鹿御前の力を以てしても、これだけの子供を連れて逃げる事は難しい。

 


真魚は少し考え込んだ。

 

「俺に考えがある…」

 


「考えって…」

 

鈴鹿御前が驚いている。

 



「この子達は生きねばならぬ…」


真魚はそう言って笑った。



挿絵(By みてみん)




続く…




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