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空の宇珠 海の渦 第六話 その六




「姉御、その男どうするつもりだ」

 

一人の大柄な男が話しに入ってきた。」

 


なれなれしい言葉遣いである。

 


凪と颯太が畏れている鈴鹿御前と、対等に話をしている。

 


顔は整っているが、刀傷がいくつもある。 



少し縮れている髪を伸ばしたままにしている。

 


この男の風貌を決定づけているものがある。

 


その髪の毛が赤いのだ。

 


そして、大刀を二振り背中に背負っている。

 



飛炎(ひえん)、お主は血の気が多い…」

 


鈴鹿御前は飛炎という男を窘めた。




挿絵(By みてみん)



柱に背を預け、もう一人の男が笑みを浮かべている。



「相手が分からぬと言うのに…」

 


その美しく整った顔は女性的でもある。

 

だが、その身体には強靱な筋肉が備わっている。


それが着物の上からでもわかる。

 


全てにおいて整っている。

 


それがこの男の特徴になるのだろうか。

 


「そういえば変な山犬が飛んできたぞ!」


颯太が思い出したように告げた。

 


「山犬…」


鈴鹿御前は眉を顰めた。

 


「金と銀の縞模様の山犬だったわ…」

 

凪は詳細を伝える。

 


「空を飛ぶ山犬か…」


鈴鹿御前は少し考えている。

 


「この瓢箪、空を飛ぶ山犬…面白いではないか…」


鈴鹿御前の瞳が輝いている。

 


「殺らないのか?」

 

飛炎が単刀直入に聞く。

 


「それは良いが、お主が勝てるとは限らぬぞ…」

 


「なんだと…俺が勝てぬだと…」

 

鈴鹿御前が初めて言った言葉に、飛炎は戸惑った。

 


「そうだろ…疾風(はやて)…」


もう一人の男に視線を向ける。

 


「お主なら勝てるのか?」

 


「ただの山犬とは思えぬ…」


「そして、ただの男ではない…」

 

見えないものをほぼ正確に感じ取っている。

 


その答えに鈴鹿御前が笑みを浮かべる。

 


「初めてだ…」


凪が口を開けたまま驚いている。 

 


そう、この時が初めてだったのだ。

 


皆で考え、出揃った答えが…

 

『待て』


と言うことが…

 


鈴鹿御前は既にその姿を見ていた。


「じきにここに来る…」



「なぁ、颯太…」

 


颯太は左目を押さえてうずくまっていた。

 


身体ががたがた震えている。

 


鈴鹿御前が口から何かを出した。

 


白くて丸い…

 

それを左の手の平に載せた。



「あっ!あ~~~!」


颯太がその恐怖に叫んでいる。

 


それは人の目玉であった。

 

手の平の上で転がして遊んでいる。

 


「あっ、目がまわる!」

 

颯太が悲鳴を上げる。

 


「お主が見た男が来ておったじゃろ…」


鈴鹿御前が颯太に聞いた。

 


「は、はい!すぐっそこまで…」


颯太はそれだけ言うのが精一杯であった。



颯太の左目を使って真魚の姿を覗きに行ったのだ。

 


ふっ!

 


手の平の目玉に息を吹きかけた。

 

消えた。

 

手の平の目玉が消えてなくなった。

 


「皆に話してやれ」

 


鈴鹿御前がそう言った時には、颯太の左目は元に戻っていた。









なだらかな斜面を登った所にそれはあった。


「ほう…」


真魚は笑っている。

 


「こんな所にこんなものが…」

 

「これが木が無くなった原因か…」


嵐が驚いている。



失われた森の変わり果てた姿だ。

 


「どうする?」

 

真魚が嵐に聞く。

 


「決まっている!と言いたい所だが…」



「だが、何だ?」

 


「それはお主も感じておるであろう!」

 

その建物から出ている波動のことを言っているのである。

 


「腹は空いておるが仕方ない…」

 

そう言うと嵐は渋々元の姿に戻った。

 


金と銀の気高い波動が大気を揺るがしている。

 


「これで奴らも気がついたはずだ」

 


そう言って真魚が足を踏み出そうとした。



「お主は命が惜しくないのか?」


嵐が突然聞いた。



「なぜそのようなことを聞く?」


真魚が聞き返す。



「口元が笑っているからだ」


嵐が気になっている事実…



「面白いではないか…なかなか出来る体験ではない…」



「命はそのためにある…」



真魚はそう言って歩き始めた。




挿絵(By みてみん)




続く…

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