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空の宇珠 海の渦 外伝 祈りの傷痕 その十二






夕焼けが雲を染めている。



山の中に、木を打つ音が響いていた。

 


仕事を終えた我夢が、木刀で木を打っている。

 


真魚はそれを横で見ていた。

 



挿絵(By みてみん)




「どうした、もう疲れたのか?」

 


真魚が我夢に声をかけた。




真剣より重い。



その木刀には重りが入っていた。



「いや、まだだ」



我夢の目は、まだ生きている。

 



我流で有りながらも鍛えてきた体力が、



それを支えている。

 



木に向かって木刀を打ち込んでいく。



森にその音が響く。



「最初の段階は合格だ…」

 


その音を聞いた真魚が言った。

 



「明日からは次の段階に移る…」



真魚の言葉で、我夢が膝をつく。

 



はぁはぁはぁ…

 


息が切れる。

 


だが、心地良い疲労感が身体を包んでいる。



それは充実感と言ってもいい。

 



闇雲に目的に向かうのでない。

 


山の頂上を目指している。

 


そこに向かって歩いて行く。

 


そんな感覚に似ていた。




今までは、道に迷っていたような気がする。



それが、今は無い。

 


迷いがない。

 


そこから生まれる力もある。

 


我夢はそれを感じていた。



我夢はゆっくりと立ち上がった。



夕日が見えている。

 


「美しい…」

 


迷いのない心で見た、初めての夕日だった。

 


「こんなに…」

 


我夢は感動していた。

 



その波動は真魚に伝わっている。

 


真魚も同じ夕日を見ている。

 


「夕日は変わらない、お主の心が変わっただけだ」

 


真魚は我夢にそう言った。



「ああ…」

 


我夢はその言葉に心が震えた。

 



光は常に射している。

 


神はいるのではない。

 


神はあるのだ。



我夢は感動していた。 



この違いを感じることのできる者は少ない。

 


この世界の隅々にまで、その心は宿っている。

 


我夢は今それを感じていた。

 


その時であった。

 


「あ…」



聞こえる…

 


「彩音の祈りか…」

 


真魚がそう言った。

 


我夢の心に届いていた。

 


「彩音…」

 


我夢は目を閉じた。

 


その祈りを聞いた。

 


その美しい心。

 


切ない想い。

 


彩音の祈りと、我夢の波動が重なる。



我夢の波動が上がる。

 


混ざり合う様に波長が上がっていく。

 


それは決意であった。

 


我夢の想いであった。



「ほう…」

 


真魚に笑みが浮かぶ。

 


我夢は夕日を見ている。

 


その瞳が熱く燃えていた。





挿絵(By みてみん)




続く…





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