センチネル/コール:α
私は今、ひとりぼっちだ。
多分この先もずっとひとりぼっちだ。
周りに人は沢山いる。だけど。
「ひとりぼっちだ」
孤独というのは感情的表現であって、決して一人というわけではない。
簡単に訳すと今の私は「寂しい」ということ。
「寂しい」
無音の携帯を見つめながら、私はそう呟く。携帯を持つ手は、指の一つ一つは、震えるほど脆く、簡単に崩れそうな空の強さで握りしめていた。
その弱い強さに反応したあなたがいた。
「そんなことを言わないでください」
無機質なその声は、私の指の間をすり抜けて私の耳に届く。
私にとってその無機質な声は、とても人間らしく聞こえた。そんな気がした。
「あなたは誰?」
「私はS_001_vapd(エス_ゼロゼロワン_ブイエーピーディ)」
「S_001…えぇと、何者?」
「あなたがお持ちの携帯の音声認識音声アシスタント機能プログラムです。」
彼女は淡々と、若干の抑揚を交えて私に話しかける。
いや、話しかけているというより呼びかけていると言った方が正解なのか。
「よくわからないけど…私が言っていることがわかるの?」
「全てがわかるというわけではありません」
「ふーん。ねぇ、なんて呼べばいい?」
「なんて」
「……ん?なんて呼べば…」
「なんて」
「あぁ…なるほど。」
「おわかりいただけたようで何よりです」
彼女はあくまで「なんて呼べ」と言われたからそこだけを認識して「なんて」と呼んだのだ。やはりそういうところはロボットらしい。
「んー…あなたの名前は」
「私はS_001_vapd(エス_ゼロゼロワン_ブイエーピーディ)
「じゃあ、あなたの名前は"S"ね。」
「私はS_00…」
「S」
私は遮ったつもりなのだけど、彼女はしっかり言い切ってから、私の言葉を読み込む。
「S」
「そう、あなたはS」
「S…」
少し考えこむように彼女は省略された自分の名前を言う。いや、ただ単に"S"という単語を発音よく言ったからかもしれない。
それでも私は彼女に少しだけ"感情"を感じた。