〈エピローグ〉
僕の初恋の末路から語ろうか。
「あ。犯人だ」
「出所したのかな?」
「向こうでも踊ったんじゃね?」
登校中ですら、ぷっぷくすくすされる僕ですよ。
事件以来、全校生徒に顔を覚えられちゃって、僕のあだ名は『コテカ橋』『横綱』『犯人』がセットになって、とってもお得だよ!
公園に入って、滑り台の上に座るよ。
「……はあ」
もうヘンタイも潮時かもね。引退しようかあ……。
ひら、っとしたものが目の前を横切って顔を上げたら、雪だった。
手についたら、無かったように消えてくのが、すこし切ないね……。
「……――バーカ」
ふてくされたような声にふりむく。
公園の入り口に、あいつがいる。
北風にそよぐポニーテール。
ちょっとこまっしゃくれた美人顔。
あの日の、少女。
涙を貰ってくれた、あの少女が――――いまの春風の姿と重なる。
「先に行くから、寒い思いするのよ」
滑り台の階段を上がってきて、僕の隣に座る。
「詰めなさいよ」
「あ。ああ」
良い匂いするなあ。同じシャンプーつかってんのに、女の子ってすごい。
「チラ見」
「え?」
「しないの?」
「…………最近、ネタにされるから控えてる」
「そ」
缶コーヒーを渡してくる。
僕がいつも飲んでるビターテイストのヤツだ。
「あげる」
なんだろう。
なにごとだろう。
春風が………………優しい……?
どんなトラップだろう。
どこから、サプライズLHRに切り替わるのだろう。
このあと、どんな恐ろしい展開が待ってるのだろう。
クラスメイトはどこに隠れてるのだろう。
キョロキョロ探してたら、「早く開けなさいよ」って怒られた。
開けたら奪われて、一口飲んで、「にがッッ!」って睨まれて、つっかえされた。
「…………」
「ホントに、待ってた……?」
「ハイ?」
「この公園で……」
「あ。うん。信用できないなら、ビューティ推理マジックすりゃいいじゃん」
「そんなの見たらキュン死する!」
「なに、その斬新な死因ッ!?」
顔から手を離し、上目遣いでみつめてくる。
鞄から、何かを出す。
「その本……」
あのポエムの本だ。
「ここに書いてあるのは、貴方への想いだから……誰にも見せたくなかったの」
「春風……」
「…………涙を、いま、貴方に返すね」
ふりむくと、泣いたまま、春風が微笑んでる。
「ねえ……もし、」
「ん?」
「この気持ちが――恋だとしたら」
降ってくるひらひらの粉雪をみながら、幸せそうに、言ったんだ。
「犯人は、きっと……」
「誰?」
照れるように顔をそむけて、春風は滑り台を滑っていく。
「行くわよ!」
登校再開だ。
春風を恋に落とした犯人は、けっきょく判らずじまい。
でも、良いんだ。
推理なんて僕のガラじゃないし。
春風のことだから、もし本音を言ったとしても…………犯人はおまえじゃない、って真っ赤な顔で言い直すさ。