自爆するクリムゾンドラゴン
盗作ソオルアーマー、クリムゾンドラゴン、その実力は?
帝都ジョジョエーンの謁見の間。
「以上が、今回の報告です」
悔しさを押し殺してハラミが前回の結果を報告する。
それを嬉しそうに見るタン。
「大見得切った割には、散々な結果でしたね?」
反論しないハラミに代わり、モモが反論する。
「配下の兵士達が無能だったのよ!」
それを聞いてロースが言う。
「いかなる駒でも有効に使えてこそジェネラルであろう」
モモが睨む中、カルビが告げる。
「それともう一つ、ホワイトタイガーの高い能力が原因でしょう。ソオルアーマー戦の経験が豊富なハラミジャネラルにホワイトタイガーの性能評価をお願いします」
ハラミが躊躇していると皇帝、ジーオが言う。
「弁明とは、受け取らぬ。思ったままに報告を行うが良い」
その言葉に頷きハラミが報告を開始する。
「こちらの想像を数段上行く性能でした。こと近距離戦闘のみならアポロンを越すかもしれません」
言外に総合性能だったら上だと強い信念をこめて居た。
それを聞いてジーオが言う。
「やはり、ミココ=エジソンのソオルマイスターとしての実力も尋常では、ないと言う事か」
その発言と共に、その場にいた者達の視線が現タワーマスターであるノーウに集まる。
憂さ晴らしとばかりにモモが言う。
「そういえば、タワーマスターが代替わりしてから、これといったソオルアーマーを発表していないわね? 今の帝都にミココ=エジソンを越すソオルマイスターが居るのかしらね?」
タワーマスター選考会の盗作絡みの事情を多少でも知っている物の中には、失笑するものまで居た。
それを見て、ノーウが慌てる。
「私が作りましたクリムゾンドラゴンでしたら、必ずやホワイトタイガーを倒せる筈です!」
それを聞いてモモが言う。
「だったら試して見る?」
ノーウに拒否する事は、出来なかった。
数日後のサイレントエレファンの食堂。
「ありがとうございます」
嬉しそうにナノから化粧品を受け取るレッス。
「そうそう、とうとうノーウの馬鹿が追い詰められてクリムゾンドラゴンを出してくるそうよ」
ナノの言葉にミココが詳細情報を見て言う。
「きっちり、大恥かいてもらいますか」
翌日のサイレントエレファンの作戦会議室。
一メカニックでしかない為、本来は、末席の筈のミココが前に立っていた。
「この次は、三日後、この地点でクリムゾンドラゴンとやりあう事になりました。これは、あちきの個人的な目的なので、協力は、自主意思となります。ただし、協力者には、報酬を前払いします」
ミココがキャッシュを見せるとどよめきが起こる。
そんな中、バッドが呆れきった顔で言う。
「詰り、完全な茶番劇って事だな?」
ミココが頷く。
「こちらがそこを通るとカルビ殿下の情報員を使って問題の部隊だけに洩らしますし、他から余計なちょっかいが掛からない様に相手側が勝手に細工してくれます。そこで出てくるクリムゾンドラゴンをホワイトタイガーでボコボコにするのが今回の目的です」
レッスが手を上げる。
「そのクリムゾンドラゴンって確かコバルトブルードラゴンを盗作したソオルアーマーだと思いましたけど、性能の方は、どうなの?」
ミココが苦笑する中、トッテが言う。
「盗作がオリジナルより勝ると思うか?」
それが答えだった。
「今回の作戦は、先に説明があった様に茶番ですが、実際に戦闘を行うので危険も伴う。逃走経路も確保済みなので協力は、自由です」
今回は、戦術が必要ないレベルなのであっさり済ませるティー。
「とにかく、そのクリムゾンドラゴンを倒せば良いんだろう? 俺に任せておけ!」
胸を叩くガッツを無視してミココがトッテの前に行き言う。
「相手は、本気で来るので危険だと思いますが、宜しくお願いします」
「危険手当は、余分に頼むぞ」
トッテも応じた。
「ちょっと待て! どうしてトッテさんに頼むんだよ!」
文句を言うガッツを見つめてミココが言う。
「あちきの個人的な理由でガッツを危険にあわせられないからに決まってるよ」
レッスがそんなミココの肩を叩き言う。
「それで本音は?」
ミココが視線を逸らして言う。
「だって、ガッツだと性能差が大きくっても負けかねないんだもん」
「勝ってやるよ!」
ガッツの言葉にミココが不満そうな顔をする。
「ただ勝つだけじゃ駄目なんだよ、圧勝してもらわないといけないの」
そこにバッドが口を挟む。
「どうせ茶番だ、ガッツの実戦経験値稼ぎをさせるのがベストだろう」
嫌そうな顔をするミココだったが、バッドの協力なしでは、出来ないので妥協する事になった。
そして当日、スプラのバルゴ大隊ルースド中隊のソオルシップ、スピードチーターに無意味に美形なスプライ=トライム、二十のセカンドのトリプルスターのソオルライダーが居た。
「今日こそは、血統が優れた私こそがバルゴ大隊の真のエースだとはっきりさせよう」
笑みを浮かべるスプライに嫌そうな顔をしながらスプラが自分の所の中隊長に言う。
「何故、僕の出撃が認められないのですか? 他の中隊の助けを借りるのは、不本意ですが、確実にホワイトタイガーを捕らえることが出来る筈です」
ルースド中隊長が溜息と共に言う。
「上からの指示だ。今回は、マルサ中隊のバックアップが任務だ」
悔しそうにするスプラにスプライが上から目線で言う。
「所詮、なりあがり者には、それがお似合いだということだ」
高笑いをあげて、自分のソオルシップに戻っていくのであった。
スプライが去った後、ルースド中隊長が言う。
「上からの指示は、クリムゾンドラゴンが交戦を終えるまでだ。その意味が解るな?」
スプラが無言で頷くのであった。
何時もと違い、だれた雰囲気が漂うソオルアーマーデッキ。
「今回の掛け率は、五分五分だ。当れば倍だぞ!」
今回の賭けを取り仕切るトッテにメカニック達が集まっていく。
「俺は、相手に今回の報酬全部」
「俺も!」
「いや、ホワイトタイガーの性能なら、コバルトブルードラゴンのパチモンには、負けないだろうから、ガッツだ!」
その様子を見てハンマが怒鳴る。
「茶番だからって手を抜いてると人が死ぬぞ! とっとと持ち場にもどれ!」
慌てて戻っていくメカニック達を尻目にハンマがトッテに近づき言う。
「お前さんは、どう思うんだ?」
トッテが苦笑しながら言う。
「実戦経験は、確実にあいつを成長させてますからね。それでも、相手がスプラクラスだとかなりきついのが本音ですかね」
ハンマは、ホワイトタイガーを見上げて言う。
「俺は、自分達が整備しているホワイトタイガーを信じる」
『絶対に勝って、相手に賭けた奴に大損させてやるんだからな!』
掛け率の低さに怒りを感じながらホワイトタイガーで出撃していくガッツであった。
やってくるホワイトタイガーを見てクリムゾンドラゴンのコックピットのスプライが笑みを浮かべる。
「あれを倒せば、名実共に私がバルゴ大隊のエース。平民でのスプラと名前を並べられる屈辱ともこれでお別れだ!」
そして、背中に背負った大型キャノンを展開する。
「接近戦を得意とするホワイトタイガーに近づく必要など無い。このクリムゾンドラゴンのソオル能力を使った、超レンジキャノンの前には、敵は、無い!」
発射される超レンジキャノンだったが、ホワイトタイガーは、あっさり避ける。
「こしゃくな!」
そのままスプライが連射を始めるのであった。
その様子をサイレントエレファンのソオルアーマーデッキで見ていたトッテが頬をかきながら言う。
「あいつ、何がやりたいんだ?」
ミココも悩みだす。
「何か罠でもあるのかな?」
そんな二人にレッスが溜息混じりに告げる。
「避けられると思っていないんですよ。普通の回避能力だったら、避けられるスピードと精度では、ありませんから」
ミココが信じられないって顔で言う。
「まさか、普通に考えれば近距離戦闘に優れたホワイトタイガーだったら、通常より回避能力が高いくらいわかる筈だよ」
そこまで来てトッテが納得する。
「あいつ、格下しか相手にした事が無いんだ。それで、自分の想像と違うソオルアーマーに対する対処の仕方を知らないんだよ」
「幾らなんでもそんな馬鹿だと、この作戦の意味が無くなりますよ!」
ミココが顔を引き攣らせるのであった。
ホワイトタイガーに近距離まで接近されたクリムゾンドラゴンのコックピットでスプライが強がる。
「まだだ、所詮相手は、ソオルライダー学校も出てない素人。祖父の代よりソオルライダーを務めるサラブレッドの私が負けるわけが無い!」
コバルトブルードラゴンと同じスケルガードを展開し、迎え撃とうとしたが、ホワイトタイガーは、直前で前転する。
「何だと!」
スプライが困惑している間に、ホワイトタイガーの踵落しがクリムゾンドラゴンの頭部に直撃する。
ホワイトタイガーは、そのまま回し蹴りに繋げ、クリムゾンドラゴンの体勢を崩させる。
「馬鹿な、ソオルアーマーが足技を使うなんて! こんな事は、学校でも教わらなかったぞ!」
必死に体勢を整えるクリムゾンドラゴン。
『ホワイトタイガークロー!』
ホワイトタイガーの必殺の一撃がクリムゾンドラゴンの向う。
「この程度の攻撃!」
スプライは、クリムゾンドラゴンの両手のスケルガードを交差して受け止め様としたが、ホワイトタイガーの手は、スケルガードを打ち砕く。
咄嗟にクリムゾンドラゴンの体を半身にするスプライ。
直撃こそ避けたが、クリムゾンドラゴンのダメージが大きく、もはや戦闘続行は、不可能だと思われた。
『圧勝だぜ!』
ホワイトタイガーから送られてくるガッツの言葉にスプライの中で何かが切れた。
「お前だけは、許さん!」
スプライは、超レンジキャノンを展開して、至近距離で射ち込む。
ホワイトタイガーは、咄嗟に回避し、後ろに回りこむ。
『そんなもんが当るかよ!』
ガッツが挑発するとスプライは、振り返り、射線上に何があるかを無視して連射を開始するのであった。
クリムゾンドラゴンからの砲撃が地面を穿つ衝撃で揺れるスピードチーターのソオルアーマーデッキ。
「あの馬鹿は、何をしているんだ!」
スプラがぼやいているとルースド中隊長から通信が入る。
『スプライ、ソオルライダーが錯乱した様だ。ソオルアーマー特別規程に則り、クリムゾンドラゴンの鎮圧後、スプライ、ソオルライダーの任務の引継ぎを行え!』
それを聞いてスプラが敬礼する。
「了解しました。バルゴ大隊ルースト中隊第一ソオルアーマー小隊、スプラ、ソオルライダー、命令を実行します」
そのままコバルトブルードラゴンで出撃するスプラであった。
手当たり次第に射撃を繰り返すクリムゾンドラゴンにホワイトタイガーに回避行動を取らせ続けるガッツが顔を引き攣らせる。
「少し、挑発しすぎたのか?」
そこにコバルトブルードラゴンがやってくる。
『厄介な事をしてくれたな。取り敢えず休戦だ。まずは、あの馬鹿を鎮圧するから協力してくれ』
スプラの言葉にガッツが頷く。
「解ったよ。それでどうすれば良い?」
『そのまま回避を続けて、地上に奴の意識を引き止めておいてくれ』
スプラは、そう伝えるとコバルトブルードラゴンを上昇させる。
「成程な。それじゃあ、もう少し挑発するか」
目立つ回避行動をとりながらガッツが言う。
「ヘボ野郎、お前の腕前じゃ、カスリもしないぜ!」
それを聞いてクリムゾンドラゴンの連射速度があがる。
『絶対に許さんぞ!』
スプライの意識が完全にホワイトタイガーに集中した時、上空からコバルトブルードラゴンが急降下して超レンジキャノンの砲身を踏み潰す。
『そこまでだ! お前の攻撃は、味方にも被害を出している。ソオルシップに戻って、頭を冷やせ!』
スプラの言葉にスプライが狂気じみた声で言う。
『お前もだ! 私の栄光の道を邪魔するものは、皆死ね!』
潰れた砲身が高熱で赤くなっていく。
「おいおい、大丈夫なのかよ?」
ガッツが冷や汗を流しているとミココから高出力の通信が来た。
『スプラ、ガッツ、ノーウの大馬鹿は、ちゃんとした安全装置をつけてない。そのままじゃ、大爆発を起こして大惨事になるよ。緊急離脱して!』
「嘘だろ、そこまで馬鹿なのかよ!」
驚くガッツであった。
コバルトブルードラゴンのコックピットでガッツと同じ様にミココの通信を聞いていたスプラが未だ状況を把握せず、暴走しているクリムゾンドラゴンを見て緊急通信を使う。
「ミココさん、どうにか止めて、ソオルライダーを救出する方法は、ありませんか?」
『無いって言った方が正しいよ』
ミココの返答にスプラが悔しそうにしていると、通信にトッテの声が割り込む。
『要約すれば、危険だが方法があると言う訳だな。方法だけ教えてやれ。判断は、現場の人間がする事だ』
少しの沈黙の後ミココが答える。
『パスワード、アイスブレスで、コバルトブルードラゴンの未完成の特殊ソオル能力である、冷凍攻撃が出来る。だけど、未完成のソオル能力だから、制御に幾つかの欠陥がある。正直、使用は、止めて欲しい』
スプラは、迷わずパスワードを入力すると、アイスブレスに対する説明が表示される。
「準備が整いました。指示をお願いします」
通信機越しにミココの溜息が聞こえ、説明が始まる。
『ドラゴンブレス発射口よりアイスブレスが発射、相手の動きが止まった所にホワイトタイガークローで相手のコックピットをくり貫いて、そのままクリムゾンドラゴンをホワイトタイガーのソオル能力、突風で上空に打ち出した所で、通常のドラゴンブレスで破壊。それが一番安全だよ』
スプラは、行動を頭の中でシュミレーションして言う。
「ホワイトタイガーのサブソオルライダー、いけるな?」
『当然だ! それと俺の名前は、ガッツだ。覚えておけ!』
ガッツの返事にスプラが言う。
「これが上手くいったら覚えてやる」
そして、スプラは、アイスブレスをクリムゾンドラゴンに放った。
凍りつくクリムゾンドラゴンに一気にホワイトタイガーが迫る。
『ホワイトタイガークロー!』
コックピットがくり貫かれたクリムゾンドラゴンは、そのまま上空に吹き飛ばされた。
「これで終わりだ!」
その声と共に放たれたドラゴンブレスがクリムゾンドラゴンを破壊した。
次の瞬間、レッドランプが鳴り響く。
「どうした?」
困惑するスプラにミココの通信が入る。
『その音からして、ドラゴンブレスの発射機能に故障が発生してるんだよ。やっぱりアイスブレスは、コバルトブルードラゴンでは、使えきれるソオル能力じゃなかった。ごめんね』
スプラが苦笑する。
「ミココさんの所為では、ありません」
『おい、こいつは、返しておくぞ』
ガッツがホワイトタイガーでコバルトブルードラゴンにクリムゾンドラゴンのコックピットを投げ渡した。
「受け取っておくよ、ガッツ。お前との決着は、次こそつける」
『こっちこそ、次は、勝つぞ!』
ガッツは、そう答えながらサイレントエレファンに戻っていくのを見てから、スプラもスピードチーターに帰艦するのであった。
帝都ジョジョエーンの謁見の間。
「まるで相手になってなかったみたいね」
モモの言葉にノーウが苦しげな顔で言う。
「あれは、ソオルライダーの腕が悪かった所為です!」
ハラミが苦笑しながら言う。
「確かに、褒められた戦い方じゃなかったな」
ホッとした顔をするノーウにハラミが告げる。
「だが、性能の面で負けていたのは、間違いない。その上、自爆しかけたのは、ソオルアーマーとして問題があると言えるな」
必死に言い訳を考えるノーウ。
そこに今までノーウをフォローしてきたゲナウが前に出て来た。
ノーウは、今回も弁護が入ると安堵した時、ゲナウが予想外の言葉を話し始めた。
「ミココ=エジソンから私経由でクリムゾンドラゴンに関する技術を提供する際、ソオル能力による砲撃装置の安全装置だけは、注意してくださいと伝えてあったと思いますが、いかがなされたのですか?」
一気に場がざわめき、ノーウがゲナウに掴みかかる。
「貴様、自分が何を言っているのか解っているのか!」
ゲナウは、冷静に告げる。
「はい。タワーマスターが何を誤解されたのか、ミココ=エジソンから提供された技術を盗作と騒がれていましたが、あれは、正式に私経由で貴方に提供された技術だった筈です。ミココ=エジソンの技術提供に関する承諾書もここにあります」
掲げられた書類には、確かにその旨が書かれていた。
ノーウが騒ぎ出す。
「そんな物、偽者だ!」
カルビがその書類を受け取り言う。
「ノーウ、タワーマスター、貴方のサインもありますから正式に調査しましょう」
ノーウは、必死に叫ぶ。
「あれは、私の開発した技術だ! あの小娘が盗作したのだ!」
ジーオは、威圧的に言う。
「お前は、先の選考会もそう申請し、幾つかの証拠を提出した。しかし、そのどれもが証拠能力を認められなかった。その上でまだそんな戯言をいうのか?」
言葉を無くすノーウに代わりゲナウが告げる。
「ミココ=エジソンが問題の技術を先に開発した証拠でしたらここにあります。コバルトブルードラゴンとクリムゾンドラゴンの新技術に必要な部品の発注記録です。明らかにコバルトブルードラゴンを作成したミココ=エジソンの研究室の方が先に行っております」
その証拠は、決定的だった。
誰もがノーウの空虚な実力に気付く。
憎悪を籠めてゲナウを睨むノーウ。
「ただで済むと思うなよ」
そんな捨て台詞を残し、謁見の間から逃げる様に去るノーウであった。
「タワーマスターの再選考が必要のようだな」
ジーオの言葉にカルビが言う。
「それまでは、ゲナウ、ソオルマイスターを代理にしておくのがベストだと思われます」
それを聞いてタンが慌てる。
「しかし、ゲナウ、ソオルマイスターは、現在逃亡中のミココ=エジソンと深い関係があると思われます。それを重要なポストにおくのは、問題があると思われます!」
ゲナウがあっさり頷く。
「その判断は、正しいでしょう。この問題が解決するまで、タワーマスターは、不在。その間は、他の幹部による決議で決めていかれるのが良いかと思われます」
「その案を採用しよう」
ジーオのその一言で、この問題は、終わり別の話題に移っていくのであった。
地位を失ったノーウは、自室に戻ると同時に電話を取る。
「今すぐ、ナノ=バタラの父親の会社を潰してやる!」
しかし、全ての連絡が無駄に終るのであった。
「どうしてだ、私が確保していた株が全て別の人間の所有物になっているだと……」
その時、ドアが吹き飛び、ナノとゲナウが入ってきた。
「裏で色々やってくれたみたいね。ミココちゃんの足を引っ張った罪は、重いわよ!」
拳を突きつけるナノを制してゲナウが言う。
「株は、全てミココが裏から手を回して買い戻し、私の知人名義になっております」
「馬鹿な、小娘は、地方に逃げていたはずだ!」
ノーウの言葉にゲナウが答える。
「ミココは、貴方の力をゆっくりと確実に削ぐ細工をしてから帝都を去ったのです。それと面白いことを一つ、いま開発している四体の新型のソオルアーマーの開発費用ですが、全部貴方の個人資産です」
顔を引き攣らせるノーウ。
「馬鹿な、あれには、とんでもない費用が掛かっているのだぞ!」
ゲナウが頷く。
「だから正規に予算が下りていません。それをタワーマスターが個人資産から捻出し、正式採用されてからその費用を回収するのは、先代から良く行われていた事なので誰も不審に思いません」
愕然とするノーウ。
「いくらタワーマスターが金になると言ってもソオルアーマーの開発費を個人で捻出しつづけるなんて不可能だぞ」
ナノが頭をかいて言う。
「だから、ミココちゃんが学生の頃から色んなバイトをして、お金を稼いでたのよ。先代は、本気で研究馬鹿だったからミココちゃんも苦労してたわよ」
「小娘のバイト代でどうにかなる金額でもないだろうが!」
ノーウの当然の質問にゲナウが答える。
「単なる資本です。ミココは、ソオルタワーの関連企業に上手く投資して、莫大な利益をだしていました。だから、貴方の株の管理をしている人間に圧力をかけ、貴方に嘘の報告をさせるのは、簡単だったそうです」
言葉も無いノーウにゲナウが最終通告を行う。
「タワーマスターになってから、タワー内で行い続けていた不正は、全て情報部で立件済み。殴る価値も必要も無い」
そのまま部屋を出て行くゲナウとナノ。
それを見ていたように内部警察が押しかけてくるのであった。
数日後、ノーウの失職による事務処理で遅くなったゲナウ、その帰り道にカルビが車で待っていた。
「家まで送ろう」
「ありがとうございます」
素直に車に乗り込むゲナウ。
短い沈黙の後、カルビが言う。
「理由を聞かないのだな?」
ゲナウが頷く。
「解っていますから」
大きく溜息を吐いてカルビが言う。
「あの書類は、どうやって偽造したんだ? 俺の配下の人間が幾ら調べても偽造の痕跡すら見つからなかったぞ」
ゲナウが苦笑する。
「本人がちゃんとあの書類にサインをしたのですから当然です。ただ、サインをした時には、解らないように私との密約の誓約書の文面の紙が貼り付けられていただけです」
舌打ちをするカルビ。
「ミココ先生は、以前から約束は、口約束にしておけと言っていたが、本気でそんな詐欺紛いな事までやれる人なんだな」
それに対してゲナウが言う。
「ミココが抜け目の無い性格なのには、理由があります。ミココが物心ついた頃、師匠は、タワーマスターの権力に寄生しようとする輩に苦しめられていました。そんな状況を打破する為に、ミココは、そっちの勉強を行い、逆に喰らい、利用し、コネや財力を奪い取っていった結果なのです」
カルビが苦笑する。
「権力に群がる魑魅魍魎と小さい頃からやりあっていたら強くなるわけだ。ミココ先生にしてみれば、八つ当たりしかしてなかった俺なんて只のガキだったって事だよな」
ゲナウが言う。
「正直、タワーマスターの地位に就かせなくて正解だったと思っている所です」
それを聞いてカルビが驚く。
「どういうことだ?」
ゲナウが代行作業で知った、タワーマスターだけの秘密を伝えるとカルビが肩をすくめる。
「確かにミココ先生は、気にしそうだ」
車が止まりゲナウが降り様とした時、カルビが言う。
「隠してもミココ先生だったら突き止めると思うがな」
ゲナウが頷く。
「その時は、ミココがどんな道を選んでも支えてあげられるようにするつもりです。それが、私の道です」
「精々頑張ってくれ」
そう言葉を残して去っていくカルビであった。




