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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
西部:逃走編
8/34

一騎討ちを受けるアポロン

大戦力で包囲されるオーチャ中隊は、その包囲網を突破できるのか?

 帝都ジョジョエーンの会議室。

「ですから、ここは、協力して一気にサイレントエレファンを確保するべきだと申しているのです」

 第三皇子、ハラミが強固に主張するが、その場の空気は、かなり冷めていた。

「確保してどうするのですか?」

 第四皇子、カルビの質問にハラミが答える。

「真犯人かどうかは、確かに明確では、無いだろうが、これ以上軍内部を混沌させる訳には、行かない!」

 すると第二皇子、タンが告げる。

「ハラミ、君は、解っていない。これは、陛下が私達に与えた課題なのだよ。それをどうこなすかが、我々、ひいては、帝国にとって重要な事なのだ」

 悔しそうな顔をするハラミだったが、立ち上がる。

「解りました、もうこれ以上の協力は、頼みません。私が動かせる全戦力をもって、サイレントエレファンを確保します」

 それに対して第一皇子、ロースが言う。

「それは、容認できない。そんな事をすれば、帝国の治安を維持する警備網に穴を開ける事になる」

 タンも頷く。

「たかが、一中隊にそれだけの軍を長期間使うなど、どれだけの浪費だと思うのですか?」

 ハラミは、机を叩き宣言する。

「二十日間以内で確保します!」

「長すぎる」

 ロースは、切って捨てた。

 ハラミは、覚悟を決めて告げる。

「確保したオーチャ中隊は、そのまま兄上達にお渡しします。ですから十五日間だけ時間を下さい」

「何を言っているの、これは、チャンスなのよ!」

 今まで黙って成り行きを見守っていたハラミの双子の妹、第一皇女、モモが声をあげるが、ハラミは、意見を変えない。

 タンも頷き、ロースが答える。

「いいだろう。しかし、延長は、無いぞ」

 ハラミが決意を篭めて言う。

「間違いなく、十五日以内にサイレントエレファンを確保してみせます」

 こうしてハラミが本格的に動き出すのであった。



 数日後のサイレントエレファンは、重苦しい雰囲気が漂っていた。

 バッドがティーの執務室にやってきて報告を行う。

「今度は、サジタリアス大隊を発見したと報告が入りました」

 ティーが小さく溜息を吐いて言う。

「身内の恥と戦力を割いてきていたレオ大隊の他にタウラス大隊にカプリコーン大隊、そしてサジタリアス大隊ですか。ここまで大掛かりな包囲網を敷かれるとは、正直予想外でした。ミココさん、意見を聞かせてもらえますか?」

 相談相手として呼ばれていたミココが答える。

「構成から考えて今回の指揮には、ハラミ殿下が動いてると思って間違いないです。でも、二十日間それが限界でしょう」

「その根拠は?」

 バッドの問いにミココが即答する。

「警備網に穴が空くもしくは、浪費だという反対意見が出る為、それ以上の期間の運用は、不可能」

「一度動かしたら一気に勝負を決めた方が浪費は、少ない筈です」

 バッドのもっともな意見にティーが解説を入れる。

「後継者争いの足の引っ張り合いです。その期間の読み間違いは、ありませんね?」

 ミココが頷く。

「短くなることは、あっても長くなることは、無いです」

 ティーが真剣な顔で呟く。

「正直、ギリギリの線ですね。補給との接触を断ち、身を隠すことを優先した場合、補給が保たない可能性が出てきます」

 バッドが進言する。

「リミット限界まで待つのは、危険です。補給を行うのでしたら余裕があるうちに行わなければ不可能です」

 ティーが頷く。

「リミットを設けましょう。十日、そこまで待って変化が無ければ補給を強行します。それまでは、物資の制限を宜しくお願いします」

「了解しました。早速通達してまいります」

 バッドが即座に動くのを見ながらティーが言う。

「実際の所、どうみますか?」

 ミココは悩みながら言う。

「無条件ならば十日未満、何かしらの条件をつけた場合、限界まで粘る可能性があります。正直、ハラミ殿下が動かれたのが一番厄介です。他の殿下ならば、得点を優先するので、どうにでもあしらい様があるのですが、ハラミ殿下は、軍の混乱を収める事を優先したいのでしょうから、サイレントエレファンへの直接攻撃も十分に考えられます」

 ティーが苦笑する。

「帝国軍部を大切に思う人物が一番の強敵とは、随分と因果な状態ですね」

 意味ありげな視線を向けるティーにミココが頬をかきながら言う。

「この逃亡劇は、確かにカルビ殿下の益にもなりますが、帝国にとってもプラスになる筈です」

「その言葉を信じましょう。忘れないで居てもらいたい、我々が帝国軍人だって事を」

 ティーの釘刺しにミココが頷き言う。

「あちきも、ガッツの暴走がなければこんな権力争いに付き合う気は、無かったんですけどね」

 意外なところからの反撃にティーが頬をかく。

「まあ、彼の行動まで読みきれなかったのは、お互い様と言う事で」

 苦笑しあうティーとミココであった。



「ハクション!」

 食堂でクシャミをするガッツ。

「誰かが噂をしているのか?」

「悪い噂だろうけどね」

 レッスの言葉にトッテが頷く。

「そうだな。それ以外ないな」

 不機嫌そうな顔をするガッツが、憂さ晴らしに大声を出す。

「ご飯を大盛りにしてくれ!」

 それに対して、料理長があっさり却下する。

「節約宣言が出ているから無理だ」

「嘘だろ!」

 単純に驚くガッツを無視してトッテが苦笑する。

「まあ、逃亡中だ、仕方ないな」

「でも週一回の補給は、約束されていたはずですよね?」

 レッスの質問にトッテが少な目の食事を受け取りながら答える。

「補給の当てがあっても、それを受け取るタイミングが無いんだよ。完全に包囲されている今、下手に補給を慣行すれば、完璧に包囲される」

「そうですか……」

 困った顔をするレッス。

「ダイエットになって良かったんじゃないのか?」

 ガッツのちょっかいにレッスがきれる。

「食事の心配しか出来ないガキのあんたと一緒にしないでよ!」

 そこにミココが来て言う。

「レッス、生理用品だけど、非常用のストックがあるって。これで次の補給が伸びても大丈夫だよ」

 その言葉に顔を真赤にしてミココににじり寄るレッス。

「ミココ、そういうことをおおきな声で言わないでよ!」

 トッテがニヤニヤした顔で言う。

「そうだった、女には、そんな必需品があったな。まあ、一部の寂しい男子には、ティッシュが必需品だがな」

「そんなのと一緒にしないで下さい!」

 レッスが怒鳴るとミココが首を傾げる。

「どういう意味?」

 トッテが面白そうな顔をして言う。

「さすがの天才もお子様には、解らないか。おじさんが実践で教えてやろうか?」

「教えてください!」

 興味心で答えるミココだったが、次の瞬間、トッテが壁まで吹き飛ぶ。

「ミココちゃんに変な事を教えないで下さい!」

 そこには、ナノが居た。

「ナノさん、どうしてこの状況でここに居られるんですか?」

 レッスの素朴の疑問にミココが答える。

「そういえば言ってなかったっけ、ナノ姉さんは、元々は、お爺ちゃんの警護役で、肉弾戦を得意とする特殊部隊所属していた当時は、セカンドのダブルスターだった筈だよ」

 食事をしていたハンマが付け加える。

「ついでに言えば、帝国軍公式採用武術、蒼貫ソウカンの最高位、ソウの資格を持っているぞ」

「ゲナウからのお届け物よ。重要なのみたいだから手渡しが良いからって届けに来たのよ」

 ナノが渡すとミココが受け取り、確認して言う。

「今回の件であれもやるんだ」

 ナノが頷く。

「いつまでもあんな奴をのさばらしておくわけにも行かないでしょう。本当だったら、あたしの手でたこ殴りにしてやりたいんだけどね」

 ミココは、一つの情報媒体を渡して言う。

「それとこれ、前回の戦いの実戦データ。あんまり無茶をさせないでって言っといて」

 ナノは、受け取りながらガッツを指差す。

「無茶をするのは、こいつでしょ? 迷惑かけられているんだからデータ取りの手伝いぐらいさせても罰が当らないと思うけど」

 ようやく復活したトッテが言う。

「なるほど、前回の戦闘は、ソオルタワーでの新型機開発の為の実戦データ取りの一環だったんだな?」

 ミココが溜息交じりで言う。

「多分、スプラには、知らされていないだろうけどね」

 そんな会話を聞いてレッスが言う。

「本当にあたし達って、後継者争いやソオルタワーの新型機開発とか、上層部の事情で踊らされているんですね」

 トッテが諦めきった顔で言う。

「所詮は、下端軍人は、そんなもんさ。ところでこれからどうするんだ?」

「また帝都まで戻るわよ」

 平然と言うナノに周りが沈黙する。

 ミココは、雰囲気を読んで説明する。

「ナノ姉さんがその気になれば皇帝陛下の寝室まで忍び込み脱出する事が可能。ソオルシップを目標とした包囲網を抜け出すなんて朝飯前だよ」

 帰ろうとした時、ナノは、レッスの顔を凝視してバックから乳液を取り出して言う。

「軍人だからってお肌の手入れを忘れたら駄目よ。何か足らないものがあったら次ぎ来る時に持ってくるわよ」

「良いんですか? でしたら……」

 レッスが嬉しそうに化粧品の名前を挙げるのであった。

 その様子を見てガッツが言う。

「俺達って帝国軍の四大隊に包囲されてるピンチでしたよね?」

 トッテが嬉しそうに言う。

「女は、美容の為だったら命も懸けられるんだよ。お前もそのうち解るさ」

 ガッツは、隣に居るミココに聞く。

「そうなのか?」

 ミココは、頬をかきながら言う。

「理屈だと解るんだけど、肌の手入れなんて面倒なだけだと思う」

 そんな言葉を聞いてレッスとナノが即答する。

「「そんなのは、若いうちだけよ」」



 ハラミの旗艦、キングレオの艦長室で、ハラミが荒れていた。

「まだ見つからないのか!」

 その言葉に各大隊の副隊長達が答える。

「ここは、奴らオーチャ中隊のテリトリーに近く、潜伏されると中々探し出すのが困難でして」

 レオ大隊の副隊長の言葉に、サジタリアス大隊の副隊長が言う。

「お前の所の管轄だろう、なんとかならないのか?」

 カプリコーン大隊の副隊長がそれに続く。

「だいたい、問題の中隊は、レオ大隊所属だろう。お前等も今回の一件に関わっているんじゃないのか?」

 それを聞いてハラミが机を叩き言う。

「下らぬ言い争いを聞きたいのでは、無い。質問に答えろ」

 及び腰になる他の副隊長達に代わり、タウラス大隊の副隊長が答える。

「未だ発見されていませんが、範囲を絞り込み確実に追い込んでおります。間違いなく期日の十二日までには、発見が可能だと思われます」

 ハラミは、そこで沈黙する。

 急ぎたい気持ちは、あるのは、確かだが、ここで焦り包囲網から抜け出されれば期日内に確保するのは、至難になるのだ。

「解った。各大隊、サイレントエレファンの捜索に全力を注いでくれ。ただし、この包囲網だけは、抜け出させるな」

「「「「了解しました」」」」

 そして副隊長達が退室した後、ハラミが呟く。

「余計な妨害が入らなければ確実に確保できる。余計な邪魔が入らなければ」



 数日後のサイレントエレファンの食堂。

「腹減った」

 ガッツの呟きに潜伏中でやることが無くたむろしていた人間達が頷く。

 その様子を見てミココが困った顔をして料理長を見る。

「駄目だぞ、必要最低限の食料しか出せない」

 ミココは、少し悩んだ挙句、一つの瓶を取り出す。

「これ食べてみる?」

 ガッツが言う。

「何だ?」

 ミココが答える。

「特殊部隊の人達が使っている非常食で、一粒で空腹が和らぐって話だよ」

「本当かよ?」

 半信半疑の状態でガッツが一粒飲み込む。

 次の瞬間、床を転がりまわる。

「何だよ、この、信じられねえ変な味わよ!」

 ガッツの涙目での突っ込みにミココが言う。

「栄養素等が味を無視して凝縮してあるんだって。ナノ姉さんが特殊部隊からタワーマスター守護なんてつまらない任務に移ったのも、これを食べないためだって言ってたよ。でも空腹は、無くなったでしょ?」

「死ぬ思いをしたがな」

 文句を言うガッツ。

 そんな中、警報が鳴る。

『敵に捕捉されました。各員、至急交戦体勢に移行してください!』

 その言葉に、全員が即座に動き出す。



 ハラミのソオルアーマー、アポロンのコックピット。

「無事に、期日以内に発見できた。逃しは、しないぞ! アポロン、ハラミ=ミヤギ=ビーフ、出陣する!」

 そして、胸に獅子のレリーフを持つアポロンがキングレオから発進するのであった。



 アポロンが出撃してくるのを確認し、サイレントエレファンのブリッジでバッドが報告する。

「オーチャ中隊長の予測通り、ハラミ、ジャネラルが直々に前線に出るようです」

 ティーが頷く。

「ハラミ、ジャネラルの性格を考えれば、当然の行為ですね。こちらも予定通りだと伝えて下さい」

 バッドが敬礼をして、伝達を行う。

「ソオルアーマーデッキ、こちらの出撃は、ホワイトタイガーのみ。全てをガッツ、サブソオルライダーに全てを任せる。全力を尽くせと伝令してくれ」

 通信を切った後、不安そうにバッドが言う。

「本当に大丈夫でしょうか?」

 それに対してティーが真面目な顔で答える。

「これ以外にこの戦力数の差を補う方法が無いのですからしかたありません」

 バッドが不満そうに言う。

「正直、不満です。サブソオルライダーに全責任を負わせるのは、間違っていると思います」

 ティーが頷く。

「万が一の時の逃亡罪の全責任は、私が負います。カルビ殿下にもその方向でお願いしています」

 バッドが睨むように言う。

「私も同罪な事を忘れないで下さい」

 苦笑するティーであった。



 ソオルアーマーデッキでは、一応だけにブルーイーグルⅡに乗って待機しているレッスが言う。

「本当にガッツ一人で良いんですか? 少しでも多いほうが良いのでは?」

『一体が三体になった所で大差ない。今回の作戦は、あくまでホワイトタイガーが単騎で動くことに意味がある。理解しろ』

 そう答えたトッテの声も通信機越しで解るほどイラついていた。

 ここに居る全員が、今回の作戦の全てを任されたガッツに不安を覚えていた。

『任せておけ、きっとアポロンを倒してみせる!』

 その言葉にレッスが力の限り叫ぶ。

「作戦をきちんと聞いてた!」

『安心していいよ、まともに遣り合って勝てる相手じゃないから』

 ミココの台詞にレッスが不思議そうに言う。

「ハラミ殿下って、ソオルライダーとしての実力も高いの?」

 その答えは、トッテから返ってきた。

『現場のソオルライダーの中では、有名な話だ。前線に出られることが少ない他の殿下達と違い、常に前線で戦っている。その実力は、バルゴのエース、スプラに勝るとも劣らないと言われている』

 それを聞いて不安が増加しレッスが言う。

「それで、本当に作戦が行えるまで戦えるの?」

 それには、誰も返答を返さない。

『安心しろ、死んでも作戦は、遂行する』

 ガッツの言葉に、今までとは、違った不安を持つレッス。

 その不安を口にする前に、ホワイトタイガーの準備が終る。

『ソオルアーマー小隊、ホワイトタイガー、ガッツ=アフレス、出撃するぜ!』

 そして出撃していくホワイトタイガーを見ながらレッスは、呟く。

「作戦に失敗しても良いから、ちゃんと戻ってきてね」



 サイレントエレファンの前に出るアポロン。

 そのコックピットで包囲状況を確認するハラミ。

「問題ない。ここまで包囲が完了していれば、ホワイトタイガー単独でも脱出は、不可能だ」

 その時、レーダーにサイレントエレファンから発進するホワイトタイガーが映る。

「今回の事で唯一の楽しみは、天才と名高いミココ=エジソンの近距離戦特化のソオルアーマーと本気でやりあえるということだけだな。出来ればさしでやりたいが、相手も複数、我侭も言えないな」

 自分の甘い考えに苦笑するハラミ。

 そうしている間もホワイトタイガーがアポロンで視認出来る範囲まで来た。

 そして、通信が入ってきた。

『俺は、レオ大隊オーチャ中隊ソオルアーマー小隊所属、ガッツ=アフレス、サブソオルライダーだ! ハラミ=ミヤギ=ビーフ、ジャネラル。一騎討ちを申し込みたい!』

 意外な言葉に誰もが驚く。

『馬鹿な事を言うな、なぜそんな事をしないといけない!』

 レオ大隊の副隊長の返信にガッツが答える。

『勝ち負けなどもう決まっている。ならば、どちらのソオルアーマーが近距離戦最強かを決める時間くらいあるだろう!』

『そんな事をする必要は、無い!』

 レオ大隊の副隊長の意見は、正当であった。

 しかし、ハラミが答える。

「良いだろう、相手をしてやる。お前達は、手を出すな。ただし、サイレントエレファンと他のソオルアーマーに動きがあれば即座に行動を起こすのだ」

 その命令に多くのソオルライダー達が期待の視線を向けてくるのがハラミには、解った。

「所詮、俺も将軍として指揮を執るよりも、一ソオルライダーとして戦う方が合っているって事だな」

 そして、向かい合うアポロンとホワイトタイガー。

「殺すつもりで行かせてもらうぞ!」

 その言葉と同時に一気に接近するアポロン。

 ホワイトタイガーは、直前まで動かず、攻撃の有効範囲直前で横に動き、拳を放ってくる。

 それを殆ど反射神経だけで避けるハラミ。

「良い動きをする。久しぶりに楽しませてもらえそうだ!」

 嬉しそうに急旋回を行い、ホワイトタイガーの後ろを取るが、ホワイトタイガーは、空中半ひねりジャンプを行い、正面で向き合う。

『ホワイトタイガークロー』

 防御が殆ど不可能の必殺の拳を放ってくるホワイトタイガー。

「運動性は、凄いが甘い! レオフレイム!」

 胸の獅子のレリーフから強烈な炎が放たれ、ホワイトタイガーが吹き飛ばされる。

 体勢が崩れたホワイトタイガーに接近するアポロン。

「フレイムアーム」

 アポロンのストレートパンチ放つ腕からソオル能力による炎が発生する。

『このくらい、避けられる!』

 紙一重の所でホワイトタイガーは、パンチを避けたが、再び吹き飛ぶ。

「アポロンが近距離戦で最強といわれているのは、フレイムアームという回避が困難な技があるからだ」

 その言葉通り、ホワイトタイガーは、パンチそのものでなく、その腕から放たれたソオル能力による炎で吹き飛ばされたのだ。

 大きく間合いを取るホワイトタイガーをみてハラミが驚いている。

「凄い防御能力だ。アポロンのフレイム攻撃を二撃もくらって問題なく動いている。並みのソオルアーマーなら行動不能になっているぞ」

『これからが本番だ!』

 ガッツの叫びと共にコバルトブルードラゴン戦と同じ様に体当たりを放ってくるホワイトタイガーにハラミが言う。

「コバルトブルードラゴンと同じと思うな!」

 両腕でフレイムアームを発動させたアポロンは、体当たりをしてきたホワイトタイガーを上から叩き潰すようにして、地面にめり込ませる。

「近距離戦での体当たり攻撃の対処方など習得済みだ!」

 ハラミは、勝利を確信して告げた。

 その時、ホワイトタイガーが逆立ちした状態で蹴りを放ってきた。

 あまりにも意外な攻撃にアポロンは、一撃を喰らい、後退してしまう。

「まさか、ソオルアーマーが逆立ちをし、蹴りを放つなんて……」

『俺は、まだやれる!』

 ガッツがそう答えるとハラミは、先ほどまでの戦いを楽しむ顔から実戦での戦士の顔に変わる。

「そのソオルアーマーの力は、測りきれない。だからこちらも最高の一撃で終らせる」

 そして、フレイムアームを発動させた両腕を前に出す。

 その中間にレオフレイムが放たれ、巨大な火炎球が生み出されていく。

「アポロン、最強の攻撃兵器、サンボール。この前では、そのソオルアーマーでも保つまい!」

『それを待っていたんだ!』

 ガッツの声と共にホワイトタイガーから帝都脱出の時に使われた突風が放たれる。

 ハラミが余裕を持って答える。

「無駄だ、その攻撃では、サンボールの威力を増加させる事は、出来ても、消すことは、出来ない」

『それが狙いだよ!』

 ガッツの答えに、ハラミが舌打ちする。

「最初からそのつもりだったのか!」

 次の瞬間、ホワイトタイガーの能力で増幅されサンボールの炎が暴走して、包囲網の一部を吹き飛ばす。

 炎は、そのまま周囲に飛び散り包囲網に混乱を呼ぶのであった。



「今です、サイレントエレファン最大加速、包囲網を抜けてください!」

 サイレントエレファンのブリッジに珍しいティーの大声が響き、各員が一斉に動き、混乱する包囲網に特攻するのであった。



 アポロンのコックピットの中で歯軋りをしながらもハラミが指示をだす。

「落ち着け! 被害がある部隊を下がらせ、被害が少ない部隊は、サイレントエレファンを追撃しろ! 冷静に対処すれば足が遅いサイレントエレファンを再包囲は、十分可能だ!」

 目をやるとホワイトタイガーは、サンボールの暴走と同時にサイレントエレファンと合流するために動いていた。

 苛立ちながら状況を見守るしかないハラミであったが、そこにもたらされたのは、サイレントエレファンに逃走されたという報告であった。

 悔しそうにしながらも自分の失敗なので文句も言えないハラミ。

「再捜索を開始しろ。運がよければ見つかる可能性がある」

 自分でも奇跡だと思える幸運が必要な指示を出すハラミが部下達との通信を切った後、呟く。

「ここまで読みきったと言う事か。オーチャ中隊、奴等は、階級通りの連中では、無かった。そこを読み違えた俺の負けだ」



 包囲を抜け出し、追撃を逃れ、次の補給の予定も出来た為、食堂には、ご馳走が用意されていた。

「全て、俺の実力だぜ!」

 自慢たっぷりな態度で食事をするガッツ。

「自分から言わなければ褒めてあげようと思ってたのに」

 どこか嬉しそうなレッス。

 そんな中、トッテが食堂の外れでつまらなそうにしていたミココに小声で問う。

「予想以上に包囲の被害は、少なかったのに、どうして俺達が逃げられたんだ? どう考えてもありえないぞ」

 ミココが頭をかきながら言う。

「ナノ姉さんの資料にもあったんだけど、あちき達を捕まえたら上の殿下に引き渡す約束があったんだって。だから、トラブルが無かったらハラミ殿下の指示に従っていた筈だよ」

 トッテが眉を顰めて言う。

「尚更だ、何故、わざと逃がすようなまねをしたんだ?」

「トラブルがあった場合、逃がすように事前に指示があったからでしょう。引き渡されるより、自ら確保したいでしょうから。大隊としても自分達に責任が回ってこない、今回のようなトラブルだったらその指示に従うのは、吝かでなかったと言う事です」

 近くで聞いていたティーが解説する。

 不満たっぷりな顔でバッドが言う。

「腐っている。そんな権力争いの為に捉えられる敵を逃がすなんて有っては、成らないことだ」

 トッテも複雑な顔をする中、ミココが言う。

「今回の逃亡劇の目的の一つがこんな腐った状態の洗い出し。この逃亡劇で大隊内の歪みが明らかになる筈だよ」

 ティーが苦笑しながら言う。

「確かに必要だった訳ですね、こんな茶番劇が」

 そんなシリアスな会話が片隅で行われているなど知らず、オーチャ中隊の祝勝会が続くのであった。

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