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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
西部:逃走編
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猛攻をかけるコバルトブルードラゴン

バルゴ大隊のエース、スプラの乗るソオルアーマー、それもまたミココの作品であった

 帝都ジョジョエーンのカルビの執務室。

 そこに嘆願の通信が入っていた。

『どうか、ミココさんを救って下さい!』

 その通信相手は、バルゴ大隊のエースソオルライダー、スプラだった。

 それを聞いてカルビは、思案を巡らせていた。

 実際問題、彼にしてみればどんな状態になってもミココだったら自力でどうにでも出来る。

 逆に知り合いが助力しない方が、下手な弱点を作らないで済むと思っていた。

 視線を向けるとヒレが発言する。

「我々としてもオーチャ中隊に対する追撃を行わないわけには、行きません」

 その答えにスプラが必死に告げる。

『ミココさんは、帝国にとって必要な人材です。どうか、どうか、御再考をお願いします』

 そこに一つの通信文が入る。

 それを見て、カルビが命令する。

「ならば、お前がホワイトタイガーを倒せ。他のソオルアーマーでなく、ミココ先生が作ったソオルアーマー、コバルトブルードラゴンならば、ミココ先生の評価が下がらない。それどころか、無敗のホワイトタイガーを倒したのは、やはりミココ先生のソオルアーマーならば、評価はあがる。実行犯や中隊長は、ともかく、手助けしただけのミココの助命なら十分可能になるだろう」

 その一言にスプラが頭を下げる。

『ありがとうございます。きっと、コバルトブルードラゴンで、あの愚か者が乗るホワイトタイガーを潰してみせます!』

 そして通信が切れた後、ヒレが言う。

「よろしいのですか? まだ十分な証拠が集まっていないのですか?」

 カルビが先ほどの通信文を見せる。

「ゲナウから連絡で、ホワイトタイガーやコバルトブルードラゴンの実践データが不足していて、ミココ先生からのもらったソオルアーマーの開発に支障が出ているんだ。ここは、少しオーチャ中隊には、ピンチに陥って貰うことになってもらおう」

 ヒレが少し不服そうな顔で言う。

「それほどまでに新型のソオルアーマーが必要なのですか?」

 それに対してカルビが苦笑する。

「ミココ先生が色々細工をしていてな、新型のソオルアーマーには、特殊な装置が付いている。それは、私のソオルアーマー、麒麟キリンと関係しているんだが、これが中々愉快だ。最後の演出には、どうしても使いたくてな」

 その内容を聞いてヒレが驚く。

「そんな装置が何故、新型についているのですか?」

 カルビが世界地図を指差して言う。

「この広い世界を支配し続けるには、派手な演出も必要だって事らしい。各大隊のエースが乗るソオルアーマーに標準装備させる計画が元々あったらしいが、実益が少ないと予算が取れなかったらしい」

 ヒレが頷く。

「当然です。費用対効果を考えたら無駄としか思えません」

 カルビが満面の笑みを浮かべて言う。

「コストパフォーマンスが出るような使い方をすれば良いだけの話だ。私には、それが可能だ」



 サイレントエレファンは、連勝モードで、緩みが出始めていた。

「正直、ヤバイ兆候だよね」

 食事をしていたミココの言葉にトッテが頷く。

「まあな、こっちには、連勝するしかない上、援軍の可能性は、皆無だ。もしも大負けをしたら終わりだ」

 そこにガッツが胸を叩き言う。

「俺が頑張りますから、きっと大丈夫ですよ!」

 レッスが溜息を吐く。

「そういうあんたが一番、危ないんでしょうが」

「何だと!」

「何よ!」

 口喧嘩を始める二人を無視しながら食事をしているとミココが呼び出された。



「ミココ=エジソン、サードのトリプルスターのメカニック、お呼びにより参りました」

 その言葉に、執務室で待っていたティーが頷く。

「待っていたよ、君宛に暗号文が入ってきた。解読して貰えるかい?」

 ミココが頷くとバッドが読み上げる。

「『東の鱗で西の毛皮を研磨』、どういう意味だ?」

 ミココが顔を引き攣らせる。

「コバルトブルードラゴンが攻めてくるって事です。絶対に実戦データとりの為ですよ。こんな事なら新型の設計図を渡すんじゃ無かった」

 愚痴るミココにティーが問いかける。

「設計者の貴女から見て、コバルトブルードラゴンとホワイトドラゴンの性能差は、どのくらいのものですか?」

 ミココが即答する。

「実戦投入を想定した場合は、遠距離攻撃も可能で、色んな局面の戦闘にも対応できるコバルトブルードラゴンの方が高い性能を誇ります。ただし、今回の様なソオルアーマー同士の一対一の対決ならホワイトタイガーの方が数段有利ですが……」

 最後に来て言葉を濁すミココにバットが諦めた顔で言う。

「ソオルライダーの技量に差が有り過ぎると言いたいんだな?」

 ミココが頷くとティーが苦笑する。

「相手は、バルゴ大隊のエースソオルライダーですからね」

 バッドが真剣な顔をして言う。

「その時ばかりは、ホワイトタイガーにトッテを乗せますか?」

 ティーが首を横に振る。

「確かにトッテだったら互角かそれ以上の戦いが出来るかもしれない。しかし、今回は、早急に決着をつけないと相手の残りの戦力でサイレントエレファンが落ちる事になりますよ」

 バッドも難しいそうな顔をし、ミココが言う。

「勝つのは、諦めた方が良いと思いますよ」

 ティーが頷く。

「そうですね。まあ、なんとか引き分けに持っていく方法を考えておきます」



 翌日、サイレントエレファンの前方で強烈な爆発が起こり、緊急停止させられる。

「来たみたいですよ」

 ミココが嫌そうな顔をする中、ハンマが周りに激を飛ばす。

「今日は、派手に壊されるんだ、確り整備しとかないと、修理出来ないほど壊されるぞ!」

『どうして最初から、壊される事になってるんだよ!』

 ガッツが文句を言うと、レッスが言う。

『相手が、バルゴ大隊のエース、スプラ、セカンドのトリプルスターのソオルライダーなのよ、勝てる訳ないでしょうが。ちゃんと、こっちが終るまで囮役を頑張ってよね』

『そういうことだ。今回ばかりは、お前がどれだけ持つかで決まるんだ。骨の二、三本は、覚悟しておけよ!』

 トッテの言葉に諦めた声でガッツが答える。

『解りましたよ。死んでも、時間を稼ぎますよ』

 メカニック達のOKサインにガッツのホワイトタイガーが発進準備をする。

『ソオルアーマー小隊、ホワイトタイガー、ガッツ=アフレス、出撃するぜ!』

 敵の目標になる為に先行するホワイトタイガーであった。



 サイレントエレファンのブリッジ。

「上手くいきますかね?」

 バッドの言葉にティーがはっきり答える。

「上手くいかせるんだよ」

 バッドが難しそうな顔をしながら確認する。

「やっていることは、普段と同じです。相手にこちらの作戦を見抜かれている可能性が高いでしょう」

 ティーが頷く。

「それでも、相手は、ホワイトタイガーに戦力を集中せざる得ない。サイレントエレファンを落としても肝心のホワイトタイガーを討ちもらしたら意味が無い。そういう風に相手が判断するはずです」

 バッドが呆れた顔をする。

「馬鹿な話ですね、どんなに強力だろうとソオルアーマー単独では、何にも出来ないと言うのに」

 ティーが苦笑する。

「それが、政治という奴ですよ。追撃隊が欲しいのは、実では、無く、ホワイトタイガーを撃沈したという明確な成果。それこそが今回の一番の得点になりますからね」

 肩をすくめてバッドが言う。

「万が一逃がして、他の部隊に取られる訳には、行かないって訳ですか。これだから政治を戦場に持ち込む奴らは、ナンセンスなんだ」

 嫌悪感丸出しのバッドにブリッジのメンバーが苦笑する中、ティーが告げる。

「そんな甘さをこちらは、利用させてもらいます」



 初弾でサイレントエレファンの足止めをしたコバルトブルードラゴンは、そのまま、向ってくるホワイトタイガーに向って直進していた。

「ミココさん、貴女だけは、僕が救います」

 ホワイトタイガーを視認し、地上に降りるとそのまま、攻撃用ナックルを展開すると更に加速して一気に接近する。

 ホワイトタイガーは、重力操作能力をフル稼働して、進行方向をずらす。

「少しは、ましになったみたいだが、その程度の腕前では、ミココさんのソオルアーマーが泣く!」

 コバルトブルードラゴンの尻尾を振りその反動で急旋回すると攻撃用ナックルでホワイトタイガーの防御フィールドを打ち抜き吹き飛ばした。



 サイレントエレファンのソオルアーマーデッキでその様子を見ていたハンマが言う。

「あれなんだ?」

 ミココが溜息混じりに言う。

「ガッツには、ちゃんと教えておいたんですけど、コバルトブルードラゴンは、尻尾の質量を急旋回や砲撃の支えと出来るんです。因みにあのナックルは、スケルガードって言って、防御フィールドを収束してあり、接近戦で攻防に利用できます」

 ハンマが呆れた顔をして言う。

「なるほど、接近戦でも死角無しだな」

 ミココが遠い目をして言う。

「ホワイトタイガーは、接近戦用のソオルアーマーですよ。汎用戦を想定したコバルトブルードラゴンとは、比較にならない急旋回能力等があって、そのうえ、相手の防御を無視できるホワイトタイガークローがあるんです。ソオルライダーが同格だったら接近戦で負けるわけ無いんですよ」

 ハンマは、そんなミココの頭に手を置き言う。

「今は、ガッツを信じるしかない。応援してやれ」

 ミココは、頷き声をあげる。

「ガッツ、頑張れ!」

 メカニック達が次々と応援の声を上げていくのであった。



「クソー。あんな急旋回なんて反則だぜ!」

 ガッツの言葉に、近距離でのみ可能な通信でスプラが言ってくる。

『その言葉、そのまま返そう。どんなソオルアーマーでも逆ベクトルへの回避行動を行い、威力を逃がすなんてまねは、出来ない。流石は、ミココさんのソオルアーマーという所だな』

 ガッツは、ホワイトタイガーを立ち上がらせながら言う。

「咄嗟に反応した俺の反応は、無視かよ!」

『当たり前だ、僕だったら完全に避けられて居た』

 スプラの自信たっぷりの言葉にガッツが悔しそうに言う。

「俺だって、今にもっと凄いソオルライダーになってやるよ!」

 ホワイトタイガーが一気にコバルトブルードラゴンに接近する。

 俊敏性で劣るコバルトブルードラゴンは、ゆっくりと後退する。

「貰った! ホワイトタイガークロー!」

 至近距離まで接近したホワイトタイガーのソオル能力を篭めた拳がコバルトブルードラゴンに迫る。

 しかし、コバルトブルードラゴンは、避けない。

 それどころか尻尾を地面に下ろし、ソオルアーマーを固定した。

 次の瞬間、ホワイトタイガーとコバルトブルードラゴンの腕が交差した。



 その情景を見て、メカニック達が言葉を無くし、ハンマが半ば感心した様子で言う。

「まさか、ソオルアーマーでクロスカウンターを喰らう所をみるなんてな。ミココ、一応解説を頼む」

 ミココは、顔を抑えながら言う。

「重力操作で半ばホバー状態に近いソオルアーマー同士の戦いの場合、本来は、クロスカウンターなんて事は、不可能なんですけど、それを尻尾によるソオルアーマーの固定で可能にし、ホワイトタイガークローの有効範囲外の腕をスケルガードで弾く事で自分へのダメージを逃れたと理論的な説明は、出来ますけど、半端じゃない危険な行為ですよ」

 ハンマが舌打ちをする。

「伊達にエースを張ってるわけじゃないって訳だな。度胸も半端じゃない」



 地面に大の字で倒れるホワイトタイガーのコックピットでガッツが呻いている。

「本気で骨を折ったかもな」

 脂汗を垂らしながらガッツが気力を振り絞りホワイトタイガーを立たせる。

「クロスカウンターなんて、ふざけた技を出してくるなんて、何を考えているんだ!」

『こうでもしないとミココさんが作ったホワイトタイガーにまともにダメージを与えられないからだ。そちらの隙を突かない限り、鉄壁の防御フィールドと疾風の機動力も対抗できない』

 スプラが淡々と答えてきた。

 舌打ちをしながらもガッツがホワイトタイガーの状況を確認する。

「咄嗟にソオル能力で発生させた突風によるフォローがあったから、致命的なダメージは、無いな」

 それでも下手に手を出したら反撃でダメージを食らうのが解ったガッツには、打つ手が無かった。

『こないならこっちから行くぞ』

 接近してくるコバルトブルードラゴン。

 咄嗟に防御体勢をとるホワイトタイガーの脇を通り過ぎたコバルトブルードラゴンだったが、次の瞬間、ホワイトタイガーの足が尻尾で弾かれる。

「コナクソー!」

 咄嗟にバク転して体勢維持するガッツ。

 そこにコバルトブルードラゴンのスケルガードが迫る。

「何度も喰らうか!」

 ガッツは、更に加速させて避ける。

『とんでもない運動性だ。どうやったら、バク転をした直後に即時動作が可能になるんだ。ミココさんの才能は、底なしだ』

 スプラの言葉にガッツが言う。

「解ってる! 性能差がなければとっくの昔にやられている事くらい!」

『そうだ、お前は、ミココさんの貴重なソオルアーマーでなんて事をしたんだ!』

 スプラの言葉にガッツが言う。

「俺は、やってない! 第一、死んでないんだろうがよ!」

『そんな事を問題にしてない! お前がミココさんのソオルアーマーの重要性を気付かず、安易に使った所為でこんな事態になった! そのお前の愚かさが僕は、許せない!』

 にらみ合う形になるホワイトタイガーとコバルトブルードラゴン。

 そんな中、ガッツが覚悟を決めた。

「次の一撃に全てを賭ける!」

『ならば、その一撃で決める!』

 スプラの声と同時にコバルトブルードラゴンが接近してくる。

「ホワイトタイガークロー!」

 ガッツは、地面に向けてホワイトタイガークローを放って、土煙を放つ。

『無駄だ、見えなくとも、お前の攻撃にカウンターを合わせられる!』

 スプラの答えと共に動きを止めるコバルトブルードラゴン。

 そこにホワイトタイガーは、直進する。

『その速度では、攻撃が出来ないぞ!』

 初めて焦った声を上げるスプラ。

「時間稼ぎだよ!」

 ガッツの叫び、ソオル能力による突風で更に加速したホワイトタイガーがコバルトブルードラゴンに体当たりを食らわす。

 そのまま二体は、戦場を大きく外れていくのであった。



「この程度の事で!」

 コバルトブルードラゴンのコックピットに掛かる激しいGに晒されながらもスプラは、繊細な操縦で、流れを打ち消し、スピードが落ちたホワイトタイガーから逃れ、上空に退避する。

「危なかった。スピードで劣るコバルトブルードラゴンでは、逃れるのは、至難だった。あいつにもう少し場所を選ぶ知恵があったら、致命的なダメージをうけていたかも」

 コバルトブルードラゴンの後方には、障害物が無く、大幅に後退させられたが、致命的なダメージは、無かった。

「しかし、次は、無いぞ!」

 眼下のホワイトタイガーを睨むスプラ。

 その時、通信が入る。

『スプラ、セカンドのトリプルスターのソオルライダー、撤退しろ』

「もう少しだけ待ってください、次で必ず!」

 スプラの言葉に通信相手は、残念そうに言う。

『駄目だ、我らのソオルシップ、スピードチーターがブルーイーグルⅡの攻撃でダメージを負って、移動不能になった。万が一にも再度攻撃があれば、スピードチーターが落ちる。その前に、お前に戻ってきて貰わなければいけない』

 悔しそうにホワイトタイガーとサイレントエレファンを睨み、搾り出すように答える。

「了解しました。直ぐに帰艦します」

 コバルトブルードラゴンをスピードチーターに向けながらホワイトタイガーに告げる。

「今回は、引き分けだ! 次こそ決着をつけるぞ!」

 そして、後ろ髪引かれる思いを断ち切るようにコバルトブルードラゴンを加速させるスプラであった。



「生きてる?」

 救護室で倒れるガッツにミココが言うとレッスが泣きまねをしながら言う。

「ガッツ、貴方の尊い犠牲は、忘れないわ」

「勝手に殺すな!」

 怒鳴った途端に折れた骨に激痛が走り、涙を流すガッツ。

「骨折なんてソオルライダーの職業病だ。気にするな」

 気楽に答えるあの後動かないホワイトタイガーを回収したトッテであった。



 ブリッジでは、安全距離に離れた所を確認してからでバッドが言う。

「相手のソオルシップを直接狙うなんて、ソオルアーマー戦では、反則です」

 ティーが頷く。

「こっちは、逃亡兵だからね、多少は、汚いことは、させてもらうよ」

 バッドが深く頷く。

「所詮、戦場では、政治なんて物を気にしたほうが負けたって事ですね」

 苦笑するティー。

「さて、次は、どんな手で来ますかね?」

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