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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
西部:逃走編
5/34

突破されるワイドシールドⅡ

始まるオーチャ中隊の逃亡劇、そして明かされる盗作疑惑の真実

「すいません、俺の所為で!」

 独房に入れられたガッツが隣に居るティーに頭を下げる。

「今後は、気をつけてくださいね。今回は、特に危ないって皆が警戒していたんですから」

 優しいティーの言葉に落ち込むガッツ。

「ガッツがもう少し考えて行動していれば、こんな面倒な状態に成らなかったんだからね」

 壁越しのその声に、ガッツが驚く。

「ミココなのか?」

 次の瞬間、二人の独房の扉が開く。

 ガッツが急いで出てくる。

「どうなっているんだよ!」

 ゆっくり出てきたティーがそれほど驚いた様子も見せずに言う。

「意外と、早かったですね」

 ミココが苦笑する。

「ここのセキュリティーってあちきが学生時代にバイトで組んだの。良い稼ぎになったと喜んでいた時が懐かしいよ」

 ガッツが顔を引き攣らせる。

「お前、学生時代って本気で何でもやってるな」

 ミココが頷く。

「他にも、昨日の店でウエイトレスもやってたりするよ」

 呆れ顔のガッツを置いておいてティーが言う。

「それで、状況としては、どうなっていますか?」

 ミココが肩をすくめて言う。

「考えられた最低ランクの状況、完全にオーチャ中隊が皇帝陛下暗殺に関わっている事が既定事実として流れている。このまま居たらガッツとティーさんの処刑は、まのがれない。他のメンバーも厳罰を受けるね」

「嘘だろ!」

 騒ぐガッツを無視してミココが言う。

「そういう状況なので、サイレントエレファンで逃亡する事になったよ」

「補給の方は?」

 ティーの問いかけにミココが答える。

「そっちは、話をつけてきた。家族の方にも手を出さないようにする条件もつけといた」

「僥倖です。それでは、一刻も早く帝都から逃亡しましょう」

 ティーの言葉にミココが頷くが一人話しについていけていないガッツが抗議をあげる。

「どうなってるんだよ、説明しろ!」

 それに対して、ミココが容赦ない肘をきめる。

「五月蝿い、とにかくサイレントエレファンに戻るよ」

 こうしてミココ達は、施設を脱出し、サイレントエレファンにあっさり到着する。

「随分と早いお帰りですね」

 バットの言葉にティーが頷く。

「残念なら、ゆっくりと裁判を待っている余裕もないそうで」

 バッドは、周囲が慌しくなるのを感じながら答える。

「その様で、それで、脱出するとしてどうやって」

 ミココが手を上げる。

「裏取引は、済ませてある。カルビ殿下は、帝都から抜け出したところで、追っ手を妨害する工作をしてくれるって」

「逆を言えば、帝都を出て、上手く誤魔化せるところまで逃げ出さなければ見捨てるって事ですね」

 ティーの言葉にミココが頬をかきながら言う。

「そうとも言うけど、それ以上の協力を求めるのは、無茶でしょ」

 ティーが頷く。

「そうですね。バッド、抜け出す作戦を指示しますから、皆をブリッジに集めて下さい」

「了解しました」

 慌しく動きだすサイレントエレファンだった。



 ミココによる脱獄の報告が入り、対策に集まった重鎮達の中にも動揺が走る。

「警備システムは、どうなっているのですか!」

 第二皇子、タンの詰問に、担当者達は、怯える。

「それが、警備システムが完全に裏をかかれたみたいで……」

「今まで鉄壁を誇った警備システムが出し抜かれるとはな」

 第一皇子、ロースの言葉に苦笑する第四皇子、カルビ。

「その鉄壁の警備システムを作ったのは、現在は、オーチャ中隊に所属するミココ先生ですよ」

 その言葉に第一皇女、モモが笑う。

「閉じ込める相手側のシステムを使って大丈夫だと安心していたなんて、随分と笑わせて貰えますわね」

 今にも火花が散りそうな雰囲気の中、第三皇子、ハラミが机を叩く。

「今は、そんなあてこすりをしている場合じゃないはずだ! 父上が殺されたのだぞ!」

 その言葉に、誰もが沈黙したと思われた。

 しかし、カルビが肩をすくめて言う。

「だからこそでしょ、誰が次の皇帝に着くか、即急に決める必要が出たのですからね」

 空気が更に重くなり、タンが言う。

「やはりここは、まずは、皇帝陛下を暗殺した者を捕まえるのが先決なのでは?」

 その言葉に裏には、それが皇帝位レースのファーストポイントだと意味が含まれている。

「だったら、とっととやってしまいましょう」

 モモが行動を開始しようとしたがロースが言う。

「帝都の警護は、私の管轄だ。お前達が余計な手出しをする事は、許さない」

「その警備の所為で、父上が死ぬことになったけどね」

 モモが嫌味を言うが、ロースは、無視する。

「ここは、協力するというのは、どうですか?」

 最終的には、出し抜く気がありありなタンの言葉にモモが乗る。

「そうね。父上が殺された非常事態だもの、兄弟力を合わせて、事に当りましょう。ハラミもそれで良いでしょ?」

 ハラミが頷く。

「まずは、父上の無念を晴らすのが優先だ!」

 ロースは、あっさり答える。

「解った」

 そして動き出そうとした時、カルビが言う。

「それで、真犯人というか、黒幕は、誰だと思いますか?」

 その一言に誰もが息を呑む。

「まさかと思いますが、今回の件がオーチャ中隊やその一サブソオルライダー如きの独断だなんて思ってないでしょう? 裏には、それなりの者が居る筈です」

 牽制しあう帝位を狙う兄弟。

 モモが口にする。

「この状況で、優位に運べるのは、ロース兄上かタン兄上だけですね」

 それが正しい状況判断だろうが、タンが反論する。

「オーチャ中隊を召喚したのは、お前の願いだった筈だ」

「だから、今は、そんな場合じゃないだろうが!」

 ハラミが睨む中、ロースが言う。

「そうだ、再度拘束し、尋問すればはっきりした事が解る筈だ」

 毅然とした言葉で、不満そうなタンとモモを黙らせロースがカルビを見る。

「カルビ、これ以上場を混乱させるな。後ろに誰が居るかは、解らないが、ここで実行犯を逃がすわけには、いかないのは、間違いないことだ」

 それに対してカルビが言う。

「そこからしておかしい話ですね。何故、オーチャ中隊がこんな暗殺騒動を起こす必要があったのですか?」

 それに対してモモが言う。

「どうせ、何処かの策士気取りが、上手いことを言ってそそのかしたのでしょう?」

 モモがタンに視線を送りながら言うとカルビが苦笑する。

「言い方を変えましょう、何でこんな効率の悪い方法をとったか。ミココ先生なら、こんな大味な暗殺なんて無駄な事は、しない。やるのだったらもっと狡猾な方法を使う」

 タンが睨みながら言う。

「そんなのは、貴様の勝手な思い込みですね!」

 それに対してカルビが言う。

「そうとは、思えないな。父上は、どう思いますか?」

「何を言っているのだ。父上は、もうこの世には、居ないのだぞ!」

 ロースの言葉にカルビが言う。

「父上、今でてきて貰えれば、種明かしをします」

 すると、高笑いと共に隠し扉が開き、死んだ筈の皇帝陛下、ジーオが現れた。

「聞かせて貰おうか、私の生存を知っていた種明かしを」

 その場に居た者の殆どが驚愕して言葉が出ない中、カルビが種明かしを始める。

「ミココ先生は、知っていましたよ。さっきも言ったとおりセキュリティーの開発を行ったのは、ミココ先生です。その際に父上の居場所が不自然に変化したのを確認して、影武者の存在を仮定し、調査で影武者が、ノーブルス大陸の宗教が盛んな町の特徴もない工夫だった事まで掴んでいました。そして、この様な状況があれば業と狙われやすい位置に影武者を置き、高みの見物をするだろうとも以前に言っていました」

 頷くジーオ。

「成程な、ミココ=エジソンが関わっているとしたら確かにこんな不確実な方法は、とっているとは、思えぬ。今回の黒幕は、あれを過小評価し過ぎたと言う事だ。それで、お前は、どうしたい?」

 カルビは、即答する。

「捕獲命令まで取り消せとは、言いません。ただし、私にこの件に関する調査を行う権限を頂きたい」

 ジーオも即答する。

「自由にすれば良い。他の者も構わないから調査し、黒幕を確実な証拠を持って我が前に連れてくるのだ」

 ジーオは、暗殺に失敗した他の後継者を蹴落とすチャンスを明確に示したのだ。

 それは、裏を返せば、それをかわせば今回の事を水に流すことも意味していた。

「「「「「拝命いたしました」」」」」

 頭を下げて任を受ける後継者達。

 その中、頭を下げたままモモが舌打ちして小声で呟く。

「父上は、最初からこうなる事を予測し、私達を試していたのね」

「そうそう、捕縛は、ともかく犯行が明確になる前にオーチャ中隊の関係者へ不要な干渉をした場合は、黒幕が口封じの為の人質にしたと判断出来ますから気をつけてください」

 しっかり釘をさすカルビを睨みつけるタン。

「今は、オーチャ中隊の捕縛が最優先だ。そうすれば黒幕の探索も楽になるだろう」

 ロースが行動を起こし、その後に続くようにハラミが言う。

「俺達も急ぐぞ」

 モモと一緒にハラミも動き出し、タンは、この状況を読みきろうと思考を巡らす中、カルビもさっさと退室する。

 通路でヒレと合流したカルビが言う。

「予定通りに進んだ」

「後は、オーチャ中隊が無事にこの包囲網を抜け出すだけですね」

「そこは、あちらさんのお手並み拝見さ。それにしてもミココ先生は、変わってなかった」

 ヒレの言葉に頷きながらカルビがミココとの再会を回想する。



 昨夜のカルビの私邸。

「貴様、何者だ!」

 兵士達が騒ぐ中、カルビのベッドルームの扉が開く。

「ミココ先生、今は、リラックスタイムなので後にしてもらいますか?」

 カルビは、先ほどまで抱いていた女に酒を注がせながら言う。

 ミココは、不機嫌そうに言う。

「あちきは、あまり機嫌は、良くないけど、これ以上悪くしたいの?」

 肩をすくめてカルビは、女を下がらせる。

「いっその事、ベッドの中で楽しみながら話をしませんか?」

「何度も同じ事を言わせるのは、馬鹿な証明だよ」

 ミココの冷たい言葉に小さく溜息を吐くカルビ。

「それで、何のようですか? 可愛い教え子の様子を見に来ただけと言うのでも別に構いませんがね」

 ミココが頭をかきながら言う。

「余計な問答は、面倒だから、こっちの条件から言うよ。最低一週間に一度のサイレントエレファンへの補給とオーチャ中隊の関係者への処罰等をさせない事」

 それを聞いてカルビは、つまらなそうに言う。

「もう少し、会話を楽しみたかったのですがね。補給は、ともかく処罰の方は、難しいですよ」

 ミココは、あっさり言う。

「その位の事が出来る様に教えてあるから問題ない。そっちの条件は、黒幕の証拠を掴むまでの逃亡だけでいいね?」

 カルビが苦笑しながらも言う。

「まあ、処罰の方は、どうにかしますが、こちらとしては、もう少し条件を追加させてもらいたいですね。別段危険を冒してまでオーチャ中隊を助けなくても方法があるのですから」

 ここに来てミココが笑みを浮かべる。

「もしかしてあちきに値段交渉を持ちかけている訳?」

 カルビが探るようにたずねる。

「気分を害しましたか?」

 苦笑しながらミココが言う。

「別に、教え子が教師を越そうと努力する態度は、嫌いじゃないよ。でも本気であちき相手に値を吊り上げられるつもり?」

 挑発的な言葉にカルビが頷く。

「ええ、こちらも無駄に過ごしていたつもりは、ありません。さっきも言いましたが、オーチャ中隊が捕まっても大丈夫なシナリオは、作ってあります」

 ミココは、鼻で笑う。

「残念だけどそれは、難しいよ。それをあちきは、知っていて、貴方は、知らない。それでも交渉を続ける?」

「ハッタリですか?」

 初めて真剣な顔になるカルビにミココが問いかける。

「あちきがハッタリを言うと思う?」

 カルビは、沈黙してしまった。



 回想を終え、カルビは、肩をすくめる。

「暗殺未遂では、捕まってしまったら十分な時間を稼げなかった。父上の影武者という隠し玉をもっているなんてミココ先生は、本当に油断が出来ない」

 ヒレも頷くしかなかった。

 カルビは、四つの記録媒体を弄りながら言う。

「努力賞として、新型のソオルアーマーの設計図を貰ったから良しとしておこう。まあ、ゲナウの件をちゃんとやれって意味もあるんだろうがな」

 楽しそうなカルビにヒレが言う。

「カルビ殿下、あの娘は、危険では、無いでしょうか? 事が終り次第、始末した方が宜しいかと?」

 カルビは、即答する。

「却下だ」

「しかし、あの娘は、こちらの秘密を知りすぎて居ます」

 反論したヒレに凍えるような視線を向けるカルビ。

「私が却下と言ったのが聞こえなかったのか?」

「そうでは、ないのですが……」

 口篭るヒレから視線を外しカルビは、歩きながら言う。

「勘違いをするな、意見は、聞く。しかし判断するのは、私だ。自分の身の程を知れ」

 ヒレは、沈黙することしか出来なかった。



 サイレントエレファンを包囲するキャンサー大隊のウェポン派のソオルアーマー、ワイドシールドⅡのソオルライダーが愚痴る。

「いつまでこの包囲を続けていれば良いんだよ!」

 同僚が同意する。

『ああ、とっとと逮捕しちまえば良いだろうによ!』

 すると隊長が乗るブラックワイドシールドⅡから注意が入る。

『事は、皇帝陛下の暗殺だ、上層部も慌しく動いている。下手に動けば一ソオルライダー等、直ぐに首が飛ぶぞ』

「了解、待たせてもらいますよ」

 不満たらたらと答えるソオルライダー。

 その目の前で、サイレントエレファンからホワイトタイガーが出てきた。

「おい、奴らのソオルアーマーは、無力化してあったんじゃないのかよ!」

 包囲するワイドシールドⅡのソオルライダー達に動揺が起こる。

 そして、ホワイトタイガーが両手を前に突き出すと、その前方にあったワイドシールドⅡが吹き飛ぶ。ホワイトタイガーが旋回し、ワイドシールドⅡを吹き飛ばしていく。

「嘘だろう!」

 愚痴を言っていたソオルライダーは、吹き飛ばされながら叫ぶ。

 そして、サイレントエレファンは、包囲の空きを突き進む。

 慌てて残りのワイドシールドⅡが追いかけるが、ホワイトタイガーの突風攻撃による牽制がきき、包囲を突破されてしまう。

 なんとか体勢を取り戻した愚痴を言っていたソオルライダーのコックピットに隊長の激が飛ぶ。

『キャンサー大隊の名にかけて、絶対に逃がすな!』

「当たり前だ! 田舎部隊の奴らに逃げられて帝都を歩けるかよ!」

 一度は、突破されたワイドシールドⅡ達だが、彼らも帝国のソオルライダー、足の遅いサイレントエレファンを捉えるのに時間は、掛からないと思われた。

 しかし、予想外の事態が発生した。

 サイレントエレファンの逃亡というトラブルに帝都を護る防御フィールドが起動し、ワイドシールドⅡを含む追撃が遮断されてしまったのだ。

「クソ! 早く、フィールドを解除しやがれ!」

『駄目だ、帝都を護るフィールドは、その頑丈さ故に一度発動したら最後、戻すのには、かなりの時間が要する』

 悔しそうな隊長の言葉に愚痴を言っていたソオルライダーもコックピットの壁を殴るのであった。



 サイレントエレファンのブリッジ。

「ホワイトタイガーってあんな武器もあるんだ」

 レッスの言葉にミココが首を横に振る。

「武器というには、まだまだ不十分。あれをやっている間は、動けなくなるし、ソオルの消耗も多すぎて後が続かないよ」

「何にしろ、無事に帝都を離れました。取り敢えずは、追跡を逃れる為に森に入ります」

 ティーの指示をバッドが細かく作業員に通達する。

 そんな中、ミココが何故かここに居るナノを見て言う。

「どうして、ここにナノ姉さんが居るの?」

 ナノは、当然という顔で言う。

「ミココの事が心配だからに決まってるじゃない」

 ミココが困った顔をしていた時、カルビとの連絡用の周波数で暗号通信が入る。

「迎えが来たみたいですよ」

 ティーがそういって、その通信相手をサイレントエレファンに迎え入れる。

「ゲナウ、貴方も来たの!」

 ナノが驚きの声をあげたように、きたのは、ゲナウであった。

「やっぱりね。カルビ殿下から頼まれて、今回の暗殺に使われたソオルアーマーを作ったのは、ゲナウ兄さんだったんでしょ」

 ミココの言葉にゲナウが頷くとオーチャ中隊のメンバーが驚く。

「それって今回の黒幕がカルビ殿下だって事かよ?」

 トッテの言葉をゲナウが否定する。

「指令元と配置先が誤魔化された製造依頼をそのまま製造してくれと頼まれただけだ。カルビ殿下には、色々とお世話になっているから言う通りにした」

 意味ありげな視線がゲナウとカルビの間でかわされた。

 それを見てトッテが言う。

「そろそろはっきりさせたらどうだ」

 ミココが平然と問い返す。

「何を?」

 トッテが舌打ちして言う。

「あのな、ガッツのドジで巻き込まれた皇帝暗殺なんてトラブルにも即座に対応したお前が、自分に掛かった盗作疑惑で都落ちする訳が無いだろうが、どんな裏があるんだ!」

「その話と今回の事は、全く関係ないから答える気は、無いよ」

 ミココがきっぱり否定する。

 ナノが不審そうな顔をして言う。

「どういうこと!」

「家に帰ってからゲナウ兄さんに聞いて」

 ミココは、全てをゲナウに投げ渡す。

 不満そうな顔をするナノをなだめようとするゲナウの様子を見てティーも決断する。

「関係ないとも言えないでしょう。少なくともその事件があったからゲナウ、ソオルマイスターがカルビ殿下の協力をした。違いますか?」

 否定しないゲナウの代わりにミココが反論する。

「ゲナウ兄さんが協力しなくても、別のルートから同じことがされた可能性が高いから関係性は、薄いよ」

 その強固の態度が周囲に盗作に何かあると確信させる。

「どうして話せないの! あたし達は、仲間じゃない!」

 レッスの言葉にミココが辛そうな顔をする。

「落ち着いたら話す、それじゃ駄目?」

 今にも泣き出しそうなミココに追求が出来そうも無かった。

 ナノがゲナウに掴みかかり言う。

「どういうことなの! どうしてミココが盗作疑惑であんな顔をしないといけないのよ! あれは、全部ノーウの奴が悪いんでしょ!」

 ゲナウが大きな溜息を吐いて言う。

「これ以上、ミココに余計な苦労をさせる訳には、いかないな」

「ゲナウ兄さん、あちきは、平気だよ!」

 ミココが慌てて言うがゲナウが首を横に振る。

「カルビ殿下から、株の買い戻しは、殆ど終ったと聞いている。あの事件の真実を話す時が来たんだ」

「でも……」

 ミココが不安そうな顔でナノを見る。

「新たなタワーマスターの選考会にノーウが出したソオルアーマーが、ミココの設計したコバルトブルードラゴンに酷似していて、一緒に研究していたソオルマイスター達が驚き、一回目の選考会直後に騒ぎになった所から話すべきだろう」



 当時のミココが引き継いだ前タワーマスター、シンカ=エジソンの研究室。

「絶対に盗作しやがった!」

 一人のソオルマイスターの言葉に誰もが同意をした。

「訴えるべきです!」

 そう進言される中ミココが言う。

「今回の事に対する対策をゲナウ兄さんとするから、皆は、先に帰っていて。選考会に間に合わすために、徹夜続きだったから、ゆっくり休んでね」

「しかし……」

 不満げなソオルマイスター達にゲナウが言う。

「ミココがこういった策略が得意なのは、知っているだろう。後のフォローは、私がやるから安心しろ」

 そこまで言われてようやく帰っていくソオルマイスター達。

 そして、二人になった所でゲナウが言う。

「今回の件は、内通者が居る筈。まずは、その特定から始めるべきだろう」

 ミココがゲナウの手をとって言う。

「お願いがあるんだけど聞いてくれる?」

 ゲナウが頷く。

「何でも言ってくれ」

 ミココが真剣な顔で言う。

「盗作をした事をけっしてナノ姉さんにばれないようにして」

 固まるゲナウにミココが言う。

「盗作なんてあちきにばれないと思っていなかった。どうせ、その証拠を使ってあちきがノーウを社会的に抹殺すればナノ姉さんのお父さんの会社が助かる算段だったんでしょ?」

 図星を突かれたゲナウが辛そうに言う。

「すまなかった。私も気付かなかったんだ、ノーウがナノの親の会社の実質上の筆頭株主になっていたのに。お前や、シンカ先生を裏切るような真似が許されるとは、思っていない。私は、罰を受ける。しかし、ナノは、何も知らなかったんだ。今まで通りに接してやってくれ」

 ミココが首を横に振る。

「さっき言ったよ、盗作をしたのをナノ姉さんにばれないようにしてって。あちきは、盗作の事を指摘しない。そうなればタワーマスターになるのは、ノーウで、あちきの居場所は、無くなる。後の事は、ゲナウ兄さんが頑張ってね」

 慌てるゲナウ。

「何を言っているんだ! お前は、タワーマスターとして輝かしい未来を約束されているんだぞ!」

 ミココが悲しそうな顔で答える。

「元々ソオルタワーに居たのは、お爺ちゃんがいたから。いまここに居るのもゲナウ兄さん達が居るからだよ。それなのにゲナウ兄さんやナノ姉さんを犠牲にしてまでタワーマスターになる意味なんて無いの。だから、この盗作騒動は、未解決のまま終らせるのが正しいんだよ」

 ゲナウが反対する。

「それで良い訳が無い! お前が犠牲になる必要なんてどこにもないだろうが!」

 ミココが迷いの無い顔で言う。

「犠牲になるつもりは、無い。だってあちきにとっては、タワーマスターの地位なんかよりゲナウ兄さんやナノ姉さんが大切なんだもん」



 意外な真実にサイレントエレファンのブリッジが沈黙する中、ゲナウが説明を締めくくる。

「結局私は、そんなミココの優しさに甘える事にした」

「馬鹿! 何を考えているの! なんであたし達のトラブルでミココに迷惑なんてかけてるのよ! ノーウなんかを会社の筆頭株主にしてしまう馬鹿親父の会社なんて無視すればよかったのよ!」

 泣きながらナノがゲナウにしがみ付く。

「すまない、私が馬鹿な事をした所為でミココにあんな事をさせてしまう事になった。全部私がいけなかったんだ」

 トッテがばつが悪そうな顔をする。

「余計な事を突っ込んだ」

「本当だよ」

 恨めしそうな顔をするミココ。

 しかしティーが言う。

「嘘は、歪みを生みます。現に盗作に因るトラブルが呼び水になって利用される破目になった。せめて身内だけでも真実を話した方が良かったんですよ」

 バッドが頷く。

「そうだ、そこの女性を黙って庇い続けるのは、確かに優しそうに見えるが、その女性の気持ちを無視している」

「そうよ、ゲナウもミココもあたしの事を騙していたのよ!」

 ナノに睨まれていたたまれない顔をするミココ。

「ミココもお前の事を考えて全てを秘密にしてたんだ、許してやって欲しい」

 ゲナウの言葉にナノがミココに抱きつきながら言う。

「許さない! だから、絶対に謝りに帰ってきなさいよ!」

 ミココも涙を浮かべながら頷く。

「絶対に戻るよ」



 オーチャ中隊は、ゲナウとナノと別れ、逃亡を開始するのであった。

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