策謀に使われるゴッドシールド
帝都での誕生祭に動き出す狡猾な罠
「スゲエ!」
歓声を上げるガッツ。
「恥ずかしいな」
レッスが周りを気にして恥ずかしそうにする。
「別に気にすること無いよ、そんなのそこらで起こっているから」
ミココが指差した先でもガッツと同じように帝都の凄さに歓声を上げている人々が居た。
「お前等は感動しないのかよ!」
ガッツの言葉にレッスが、横を見ながら言う。
「あたしは、ソオルコアを授かった時に一度来てるから」
その当時の事を思い出したのか、少し顔を赤くするレッス。
「あちきは、物心ついたころには、帝都のソオルタワーで暮らしていたから、これが普通だね」
ミココは、平然と答える。
「お前ら、遊んでないで、用意を急げ!」
トッテに言われてガッツとレッスが戻っていく。
ミココは、独り帝都を見ながら呟く。
「戻ってくるつもりは、無かったんだけどな」
気分を切り替えるようにミココは、駆け出す。
ブルースピア帝国の第四皇子、カルビの執務室に秘書もこなす二十一才のヒレ=ヒトク、セカンドのトリプルスターのエージェントの女性が入ってくる。
「カルビ殿下、オーチャ中隊が帝都に入りました」
カルビが頷く。
「解った。さて、私にミココ先生と会う時間があるか?」
ヒレは、淡々と答える。
「殿下のスケジュールにその様な余裕は、ありません」
肩をすくめるカルビ。
「仕方ない。だけど、偶然あったら、話す時間を考慮してくれ」
「了解いたしました」
返事をするヒレの肩を叩きながらカルビが言う。
「全ては、予測通りに動いているか?」
「はい、こちらの予測したとおり、滞りなく動いています」
ヒレの答えにカルビが笑みを浮かべる。
「さて、兄上達には、踊ってもらおう」
「しかし、よろしいのですか?」
ヒレの質問にカルビが頷く。
「ああ、今は、動く必要は、無い。ミココ先生に言わせれば、本当のチャンスは、通り過ぎた後に来る。兄上達のダンスが終った後、それが私のショーの始まりだよ」
ここに来てヒレが笑みを浮かべる。
「相手に気付かれないように相手の望む靴を渡しておいて、何も知らなかったと言うのですか?」
カルビが笑みを浮かべて言う。
「それがミココマジックだ。権力者は、他人の力を信じない。だから自分の力と誤解させれば良い。そうすることでダンスステップを操る事が出来る」
ヒレが少しだけ嫉妬した表情を見せる。
「ミココという人は、それ程凄い人なのですか?」
カルビが苦笑する。
「いいや、ミココ先生は、支配欲も無いし、トップに立つ柄でもない。いわゆるカリスマには、成れないタイプだ。だから、私がミココマジックを使わせてもらうんだよ。ミココ先生に宣言したからな、私がそれだけの男だと」
その顔にヒレは、嫉妬する心を隠すように頭を下げる。
「次の準備がありますので、これで失礼します」
執務室を出て行こうとするヒレの腕を掴み、強引に引き寄せてキスをするカルビ。
「高ぶる気持ちを君の体で開放させてくれ」
そのまま強引にソファーに押し倒すカルビであった。
帝都ジョジョエーンのメインロードを長々と続くソオルアーマーの隊列。
「凄い数だな、よくこれだけのソオルアーマーがあるもんだ」
ホワイトタイガーのコックピットで呟くガッツ。
『これでも、帝国が保有するソオルアーマーの千分の一にも満たさないって話よ』
レッスの通信による答えにガッツが驚く。
「ソオルアーマーってそんなにあるのかよ!」
『当たり前だ、この広い世界を征服するブルースピア帝国の根幹だ。半端な量じゃない』
トッテの答えに少し不満そうな顔をするガッツ。
「だったら、俺にもソオルコアをくれたって良いだろうによ」
『あのね、帝国の軍人の数を知っているの?』
レッスの言葉にガッツが首を傾げる。
「どんだけ居るんだ?」
『パイロットだけでもソオルアーマーの千倍、メカニック等を含めたら、十万倍いくかもな』
トッテの言葉に目をむくガッツ。
「そんなにいるのかよ!」
レッスとトッテの呆れた雰囲気が通信機越しにも伝わってくる。
『それでも減ったほうなんだよ。侵略戦争真最中は、成人男子は、軍人として徴兵されてたって話しだしね。それより、気をつけてね。十中八九、トラブルを起こしてくるから』
ミココからの通信にトッテが答える。
『解ってる。わざわざ呼び出した以上、何か仕掛けてくる算段が大きいからな』
そんな中、皇帝陛下が乗るオープンカーがやってきて、歓声があがる。
そして、ビルの一つが内側から崩れ、一体のソオルアーマーが出てきた。
『邪悪な侵略帝国の暴君よ、その命で同胞に償え!』
一斉に動くソオルアーマーロードを構成していたソオルアーマー達。
しかし、現れたソオルアーマーは、攻撃の直撃を喰らいながらも直進を続ける。
『何でよ!』
レッスの叫び声が通信機越しに聞こえて来る中、ミココがメイン通信に割り込む。
『あれは、ゴッドシールドって防御力に特化したソオルアーマー。王宮の守護に使われているんだけど、半端な攻撃じゃ止まらない。ホワイトタイガーのあれを使って!』
「解った!」
ガッツは、専用スイッチを入れ、チャージを始める。
その最中も愚直なまでに前進してくるゴッドシールド。
周りのソオルアーマーは、必死に攻撃をするが行動を停止させられない。
「ホワイトタイガークロー!」
ガッツは、至近距離からホワイトタイガーの白く発光した拳を突き出す。
それは、今まで攻撃を弾いていたゴッドシールドの防御を打ち破り、動きを止める。
その後は、周囲のソオルアーマーが一斉に攻撃し、完全に破壊しきった。
そんな一連の騒動があったのにも関わらず、皇帝、ジーオは、笑顔でパレードを続けるのであった。
パレードも終わり、お役御免になったオーチャ中隊のガッツ達は、誕生祭で盛り上がる町の一角にある食堂で食事をとっていた。
「ここって美味しいな」
ガッツの言葉にミココが胸を張る。
「あちきの自慢の店だもん」
そんなミココの耳をひっぱりトッテが言う。
「おい、それであれは、やっぱりやらせか?」
ミココが引っ張られた耳を擦りながら言う。
「多分ね、どうがんばったって、ゴッドシールドが、反帝国組織に渡り、ソオルロードの付近に隠しておける訳無いもん。だれかが手引きをしていると思って問題ないね」
「しかし、後継者あらそいとしたら、誰が? 今の段階で皇帝陛下が死んだとしても誰の得にもならないぞ?」
トッテの判断にミココが頷く。
「多分、殺すつもりは、無かった筈。これから更に策略が張り巡らせられてるよ」
レッスが溜息を吐いて言う。
「本気でゴタゴタして来たわね。それで、これからどうするの?」
「明日の朝一番には、帝都を立つぞ」
中隊の副隊長のバッドが言う。
「祭りに参加しないのかよ!」
ガッツの言葉にバッドが頷く。
「当然だ、我々の任務は、ソオルアーマーロードに出ることだけ。それが終ったら帰るだけだ」
不満そうな顔をするガッツ達。
ミココは、バッドの傍に行き小声で言う。
「ティーさんの交渉は、成功したって事ですよね」
バッドも小声で答える。
「これ以上、後継者争いに巻き込まれたら堪らないからな。直ぐに退散だ」
そんな上の考えを知らず、騒ぐガッツ達にトッテが言う。
「今夜は、自由時間だ、好きにしろ!」
歓声が上がる中、ミココが頬をかく。
「本当は、今夜もおとなしくしていて欲しかったんだけどな」
「仕方あるまい。それに、さっきの襲撃があった以上、警備も増加されて、そうそうトラブルを起こす事は、出来ないだろう」
バッドの予測にミココは、躊躇しながらも頷いた。
そんな時、一人の女性が入ってくる。
「店長、手伝いに来たわよ!」
「頼む、そっちの軍人さん達の追加オーダーから頼む」
店長の言葉に、若そうに見える二十八歳の女性がガッツ達の所に来る。
「軍人さん、何頼む、この店は、元ソオルタワーのエリートが設計したスペシャルなオーブンがあるから、凄い肉料理があるわよ」
好き好きに注文するなか、ミココとその女性の視線が合う。
「ナノ姉さん!」
「ミココ!」
いきなりの再会に驚く二人であった。
何故か宴会に合流してたナノ=バタラが怒鳴る。
「だから、絶対にノーウのボケがミココの研究を盗作したのよ! 政治力しかない癖に偉そうにあたしの夫をこき使って! そのうち、メッキを引っぺがしてやるんだから!」
荒れるナノにミココが溜息を吐く。
「ナノ姉さん、お店のお手伝いに来たんじゃなかったの?」
ナノは、ミココの肩を掴んで言う。
「ミココは、あたしと食事するのが嫌なの!」
「そう言う訳じゃないけど……」
視線を逸らすミココにナノは、悲しそうに言う。
「ミココ、昔は、こんな子じゃなかったのに! 独りで居ると寂しいって泣きながらくっついて離さなかった、可愛いミココは、どこに行ったの!」
顔を真赤にしてミココが怒鳴る。
「そんなものは、どっか遠い空に消えた!」
爆笑する一同。
そんな中、ハンマが来て言う。
「それより、ゲナウは、元気にやっているか? あいつは、あれで生真面目すぎる所があるからな」
「夫は、まあ相変わらず生真面目ですが、元気でやっています。ミココの引き受け先になっていただいて本当に感謝しています」
頭を下げるナノ。
「知り合いなの?」
レッスの言葉にミココが頷く。
「元々ハンマさんってお爺ちゃんの知り合いで、お爺ちゃんの一番弟子のゲナウ兄さんやナノ姉さんとも何度か会った事があるの」
「盗作騒ぎでソオルタワーに居場所が無かったミココは、ハンマが引き受けると言う事でオーチャ中隊へ編入されたと最近、聞いた」
バッドの補足に納得するレッス。
「ねえ、ミココ、今日は、家に泊まりに来なさいよ」
ナノがミココを背中から抱きしめながら言うとミココが困った顔をして断る。
「明日の朝には、帝都を離れる予定だから、無理。御免ね」
「えー、ミココ一人居なくても良いでしょ? なんだったら、あたしが、付き添うから後から追いかけていけば」
そんな無理な案をナノが口にしていた時、独りのメカニックが駆け込んできた。
「大変です、ガッツの馬鹿が、ホワイトタイガーを持ち出しました!」
その言葉に、トッテが歯軋りする。
「あの馬鹿が、何を考えているんだ!」
すると、ガッツと一緒に飲んでいた若い兵士が言う。
「さっきソオルライダーと名乗る奴らに昼間の事がソオルアーマーの性能頼りで、猿でも出来るって挑発されて、そのままソオルアーマーで決着をつけるって……」
レッスが大きな溜息を吐く中、ミココがバッドに駆け寄る。
「本気でヤバイです! 一秒でも早く居場所をはっきりさせてください。あちきは、保険をかけに行きます」
バッドが頷く。
「解ってる。トッテ、レッス、ソオルアーマーの使用許可を出す。ガッツに縄をかけて来い!」
「「了解!」」
駆け出すトッテとレッス。
「他のメンバーもあいつがどこに行ったか、探索を開始しろ!」
一斉に動き出すオーチャ中隊。
ミココが店の外に出た時、ナノがスクーターに乗って待っていた。
「カルビ殿下の所で良いの?」
ミココが頷き、昔は、よく使っていた予備のヘルメットを被りナノの腰に腕を回す。
「間に合ってよ!」
翌日の朝、サイレントエレファンが重装備ソオルアーマーに囲まれていた。
そして、ブリッジでは、ティーに対して、第一皇子、ロース直属の兵士が令状を突きつけて言う。
「王宮襲撃及び、皇帝陛下殺害の容疑者としてガッツ=アフレス、サードのトリプルスターのサブソオルライダーを逮捕。同時に、共謀の可能性を考慮し、オーチャ中隊を拘束する」
それを聞いて当事者で、顔にトッテに殴られた青あざを作ったガッツが言う。
「俺は、やってない!」
そんなガッツを抑えながらティーが冷静に問う。
「何を根拠にその様な事を?」
すると兵士が答える。
「簡単だ、襲撃を行ったソオルアーマーは、王宮を警護していたゴッドシールドを一撃で破壊した。それを可能にするソオルアーマーで昨夜所在がはっきりしていないのは、このソオルシップに搭載されているホワイトタイガーだけなのだ」
バッドが小さく呟く。
「完全に嵌められたな」
ティーが苦笑しながら言う。
「解りました。大人しく私と当事者のガッツくんは、逮捕されます。その代わり、部下は、ここでの監視で勘弁してもらえませんでしょうか?」
「逃げられると思うなよ」
兵士の言葉にバッドが頷く。
こうして、オーチャ中隊は、完全に後継者争いのトラブルに巻き込まれたのであった。




