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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
中央:帝都編
32/34

実力差を覆すブラックアックスカスタム

帝都の脱出を試みるオーチャ中隊。その前に立ち塞がるのは?

 ブルーイーグルⅡカスタムに乗ってホワイトホエールに到着するハラミ。

 そのまま戦闘デッキに移動する。

「ハラミ殿下」

 感激するホルモに目線で返し、ハラミがティーに手を差し出す。

「今回の事は、助かった。そして、これからも頼む」

 ティーが頷く。

「全ては、この帝国の為です」

 それを聞いてハラミが辛そうに言う。

「やはり、私は、兄弟で戦わなければいけないのだな?」

「相手が仕掛けてきた戦いです」

 ホルモの言葉にハラミが首を横に振る。

「違う。カルビにとって、私が後継者の資格を放棄しない限り、敵対しているのと同じ。私がもっと早く、覚悟を決めていたらこんなことには、ならなかった筈だ」

「ハラミ殿下……」

 ホルモが戸惑う中、ティーが言う。

「そうかもしれません。しかし、それでも私は、後継者に貴方が残っている事実が最後の希望と思っています」

 それを聞いてハラミが真剣な顔で質問する。

「カルビは、それ程に皇帝に向いていないのか?」

 ティーが首を横に振る。

「逆です。皇帝に向きすぎています。それが故に、帝国は、再び大きな戦いを呼び込むでしょう」

 ハラミが眉を顰める。

「どういうことだ、ブルースピア帝国は、世界征服を済ませているのだぞ?」

 バッドが遠い目をして言う。

「それでも、私達軍人の仕事は、無くなる事は、ありません」

 ティーが続ける。

「帝国の存在を磐石にするため、カルビ殿下は、徹底した敵対者の排除を行うでしょう。そうなれば世界は、再び火の海に沈みます」

 その様子を想像し、ハラミが拳を握り締める。

「確かに、カルビなら、帝国の為にならその選択肢を容易に選ぶだろう」

 そんなハラミを見てティーが告げる。

「ある意味、それこそ皇帝として求められる物なのかもしれません。しかし、我々は、その様な皇帝より、敵対者でも、同じ軍人と最後まで殲滅を躊躇したハラミ殿下を選びたいのです。今、ホワイトホエールに乗っている者、全てがその思いです!」

 それを聞いて、ハラミが強く頷く。

「解った。私は、お前達のその心に答え様」

 安堵したホルモが言う。

「現在の帝都は、カルビ殿下の手中にあります。一刻も早く、帝都を脱出する必要があります」

「すまないが、頼む」

 ハラミの言葉にティーが笑みを浮かべる。

「お任せ下さい。戦うのは、軍人の仕事です」

「帝都防衛隊が我がソオルシップの包囲を開始しています」

 部下からの報告にバッドが怒鳴る。

「気にするな、ホワイトホエールは、帝国でも指折りのソオルシップ。強引に突破する」

 その言葉通り、ホワイトホエールは、躊躇無く、ソオルアーマーの攻撃にさらされ損害を受けながらも、突き進む。



 カルビの私邸。

「ホワイトホエール、元々は、ケロベロス要塞攻略用の特殊なソオルシップ。ミココ先生が設計したその性能は、並じゃない。単純な数量で止められないな」

 カルビが状況を観察しながら新たな四つの駒を出す。

「ならば、とっておきのこの四つの駒を使わせてもらうまでだ。今まで多くの強敵を打ち破ってきた最強の駒をな」

 そして、ホワイトホエールの前にその四つの駒が置かれる。



 帝都防衛隊のソオルアーマーと連戦を強いられているホワイトタイガーカスタム。

「次から次に出てきやがって、何体いるんだよ!」

 ガッツの愚痴にスプラが答える。

『最低で、二百体。狡猾なカルビ殿下の事だ、万が一の事を考えて通常の二倍のソオルアーマーを用意してあっても不思議では、ないぞ』

 それを聞いて苦虫を噛んだ顔をするガッツ。

『下らない事を言っているな! 戦うと決めた以上、敵が何体居ようが関係ない。突破するだけだ』

 トッテの檄にガッツが答える。

「当たり前だ!」

 目の前のソオルアーマーを戦闘不能にする。

 その時、新たに四体のソオルアーマーが現れる。

「また援軍かよ。良いぜ、幾らでも相手してやる!」

『待って、あれは……』

 ガッツ達より相手を正確に確認したレッスが何かを言おうとしていたが、言葉が途中で止まる。

 そして、ガッツの目にも問題のソオルアーマーが確認出来た。

「嘘だろ……」

『本当だ。カルビ殿下に徴収された以上、この可能性は、十分に考えられただろう』

 平然そうに言うトッテだが、僅かな苛立ちがその声には、あった。

『……青龍』

 スプラの呟きの通り、そこに立っていたのは、少し前までガッツ達が乗っていたソオルアーマー、白虎、玄武、朱雀、青龍だった。

 歯軋りをするガッツ。

「俺の白虎を勝手に使いやがって!」

 怒り心頭のガッツをトッテが制止する。

『待て、まともにやっては、勝てない。レッスが朱雀をひきつけ、俺が白虎と青龍の相手をする。その間にスプラとガッツで、玄武を叩け。終わり次第、残りに集中攻撃を仕掛ける』

『壊すのですか?』

 レッスが躊躇するとスプラが淡々と告げる。

『そうしなければやられるのは、こっちだ』

 そしてガッツが白虎を睨み告げる。

「あれは、白虎じゃない。俺が乗って、初めて白虎なんだ。青龍だってスプラが乗ってない。朱雀だってレッスが乗っていない。玄武にもトッテさんが乗っていない。そんな機体だけの紛い物に俺たちが負けるかよ!」

 爆笑が通信機からもれる。

『その通りだ。本物の強さを見せ付けてやるぞ!』

 トッテの言葉に、全員が行動を頷き、行動を開始する。



 朱雀の前に出るブルーイーグルⅡカスタムのコックピット。

「確かに、普通に戦ったらブルーイーグルⅡカスタムじゃ、朱雀に勝てない。でもね、朱雀にも致命的な弱点があるのよ」

 牽制を続けるブルーイーグルⅡカスタムに一気に接近してくる朱雀。

 するとブルーイーグルⅡカスタムは、自分から接近して、至近距離から攻撃を放つ。

 朱雀の防御装置、フェザーガーターが発動し、無効化する。

「そこが弱点。フェザーガーターを発動した時、攻撃が出来ない。まあ、こっちは、幾ら攻撃してもフェザーガーターで防がれるけど、時間稼ぎは、十分に出来る」

 こうして、朱雀は、ブルーイーグルⅡカスタムに時間を稼がれてしまう。



 一機で青龍と白虎の前に出るブラックアックスカスタムのコックピット。

「まともにやって勝てる相手では、無いな」

 そう言っている間にも白虎が間合いを詰めてくる。

 必殺のタイガーロードが放たれる。

「回避が極端に難しい上、直撃すれば一撃で破壊される。まさに必殺だな」

 苦笑するトッテは、ブラックアックスの象徴ともいえる斧を白虎に向かって投擲する。

 それは、タイガーロードの中心、白虎の拳と激突し、大爆発する。

「避けられなければ、先に当てれば良い。単純な話だ」

 トッテが自信満々に告げる中、青龍が必殺のアイスブレスが放たれる。

「通常なら一撃必殺だろうな。しかし、これは、カスタム機、それも同じアイスブレスを持つコバルトブルードラゴンカスタムと一緒に戦うことが想定されている為、直撃を食らわなければ、数発は、耐えられる!」

 接近して、拳の一撃を決めるブラックアックス。

 後退する青龍に右腕を失った白虎も警戒し、接近しない。

「ガッツの言うとおりだ。スプラの乗る青龍だったら、今のにカウンターを入れてくる。ガッツだったら警戒などしない。お前達は、紛い物だ」

 強い意志を籠めて断言するトッテであった。



 ソオルコーディングミサイルを乱射する玄武に突進をかけるホワイトタイガーカスタム。

「そんな温い攻撃が当るかよ!」

 ガッツが叫ぶ中、必死に距離をとろうとする玄武。

 そこにコバルトブルードラゴンカスタムのアイスブレスが放たれる。

 それをタートルシェルが完全に防御するが、その間にホワイトタイガーカスタムの接近をゆるしてしまう。

「食らえ、このパチモン! これが本物の力、ホワイトタイガークローだ!」

 ホワイトタイガーカスタムが放ったホワイトタイガークローは、玄武の防御を貫き、破壊する。



 その後、ブルーイーグルⅡカスタムの攻撃でフェザーガーターの発動を連続させられた朱雀が、コバルトブルードラゴンカスタムのアイスブレスで破壊され、片腕を失った白虎は、旧タイプといえ、万全なホワイトタイガーカスタムに破壊され、残った青龍も総攻撃を受けて破壊されるのであった。

 その様子をホワイトホエールの戦闘デッキで見ていたハラミが驚く。

「あの四機を倒すとは?」

 それに対してティーが誇らしげに告げる。

「私の部下は、ソオルアーマーの性能だけで勝って来た訳では、無いのです」

 ハラミが同意する。

「そうだ、大切なのは、ソオルアーマーの性能だけでは、ない。それを操るソオルライダーが居て、初めてその力が発揮される」

「お喜びの所すいませんが、完全に相手の策に嵌りました。あの四機にこちらのソオルアーマーを集中させている間に、ホワイトホエールは、完全に包囲され、脱出は、不可能です」

 バッドの報告にティーが悔しそうに言う。

「届きませんでしたか……」

 その時、ホワイトホエールを包囲していたソオルアーマー達が爆発し始める。

「何が起こったのですか?」

 その時、通信が入る。

『予定していた地点までこられそうもなかったわね。少し助力させて貰ったわ』

 それを聞いてティーが質問を返す。

「今、包囲しているソオルアーマーを破壊しているのは、貴女の配下ですか?」

 通信相手が頷く。

『そうよ、こちらが独自に作ったソオルアーマー。この戦いで使い捨てにするから最後には、自爆させるわ』

 その言葉と同時に、大きな爆発が起こり、大量の煙幕が戦場を覆いつくす。

 そしてティーが立ち上がる。

「ハラミ殿下、ホワイトホエールは、ここまでの様です。次のソオルシップに移って頂きます」

「解った」

 ハラミが頷くとホワイトホエールからの脱出が始まる。



 帝都防衛隊に参加していたリーオが作戦室で悔しげに卓を叩く。

「いま一歩の所で、何処の手のものだ!」

 副官が困った顔をする。

「それが、未知のソオルアーマーの上、自爆した為、皆目見当がつきません」

「そんな報告をカルビ殿下にしろと言うのか!」

 リーオが怒鳴ると、副官が萎縮する。

「とにかく、包囲を続けろ! 多少は、包囲網に穴が出来た所であんな巨大なソオルシップが抜け出す事は、出来ない。確実に捕獲しろ!」

 リーオの指示に副官が敬礼し、部下に指示を出す。

 そして、煙幕が晴れ、ホワイトホエールからの抵抗も無くなった。

「遂に諦めたか! 突入し、ハラミ殿下を確保! 残りの奴らは、見せしめに処刑しろ!」

 リーオが吠えた。

 しかし、突入部隊から帰ってきた答えは、意外な物だった。

「誰も居ないというのは、どういうことだ!」

 睨み殺さんばかりのリーオの視線に晒されながら副官が言う。

「それが、本当に蟻の子一匹居ないのです!」

 苛立ちながらリーオが怒鳴る。

「だったらソオルシップを捨てて逃げ出したんだろう! そう遠くに行っている訳が無い。探し出せ!」

 怒鳴り散らすリーオから逃げるように副官は、作戦室を出て、部下達に命令しにいくのであった。



『未だ発見出来ませんが、そう遠くに行っている訳は、ありません。直に発見し、ご報告させて頂きます』

 リーオのご都合主義の報告にヒレが苛立ちを隠さない。

「発見できなかった場合は、覚悟をしていて下さい」

 青褪めるリーオが何か言い訳をしようとするがヒレは、強制的に通信を切る。

「カルビ殿下、追加の捜索隊を派遣しますか?」

 カルビが肩をすくめる。

「無駄だ。未知のソオルアーマー、間違いなくモモ姉上の差し金だ。ドーバの奴が帝国から下賜されたシルバーフェニックスでオーチャ中隊を回収して、遠くに逃亡している」

 ヒレが目を見開く。

「しかし、ハラミ殿下とモモ様との連絡は、完全に遮断していた筈です!」

 カルビが少し悔しげに言う。

「オーチャ中隊の中隊長、ティーは、やり手だ。今回の脱出作戦を実行するにあたって、直接面識がある、ドーバを通じて協力を要請していたのだろう。その可能性を考えてシルバーフェニックスが回収出来るポイントに来る前に捕獲するつもりだったが、まさかこちらを出し抜くために開発していた試作のソオルアーマーを使い捨てにしてくるとは、読みきれなかった」

「使い捨てと言っても、今回の戦闘データは、間違いなく持ち帰っている筈。今後の開発に大いに役に立つ筈です」

 白虎を始めとする四機の緊急調整の為に呼び出されていたゲナウが発言するとカルビが舌打ちする。

「なるほどな、機体そのものが無くても、そのデータだけで意味があるって事だな。私の計算ミスだった。ゲナウタワーマスターには、態々ご足労頂いたのに結果が出せず、すまないことをした」

 それに対してゲナウが淡々と言う。

「気にされる事では、ございません。それより、破壊された四機ですが、ミココソオルマイスターが予定していた新型の装備の素材にしたいのですが頂いて宜しいでしょうか?」

 カルビがあっさり許す。

「どうぞ、ご自由にしてください。その代わり、麒麟、いや麒麟王の装備の方は、頼みましたよ」

 ゲナウが頷く。

「解っております。ミココソオルマイスターが居なくても、同系の装備の製造には、問題ございません。しかし、あれを使用する事があるのですか?」

 カルビが苦笑する。

「万が一の用心です。ミココ先生には、何度も言われましたよ、万が一と可能性を無視せず、常に全ての可能性に対応できる準備をしておけと」

 複雑な顔をするゲナウにカルビが微笑む。

「安心してください、ミココ先生の監禁は、そう長くなりません。私の戴冠式には、最前列で見てもらう予定ですからね」

 それを聞いてヒレが嫉妬の炎を燃やす。

「私は、まだ仕事がありますので、これで失礼します」

 そう挨拶をして退出するゲナウであった。

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