遊具のプチタイガー
遊園地で遊ぶミココ達
帝都の中心と言うと、王宮と思われる人間が多いが、実は、違う。
ソオル研究の中心にて、ソオルコアを産み出すソオルタワーが帝都の中心に位置する。
その直傍に王宮が存在している。
そんなソオルタワーのミココの研究室。
研究員達が嫌そうな顔をしていた。
「室長、元気ないよな?」
「そうだよな、今週に入ってから、まだ三回しか騒動を起こしていないものな?」
そして視線は、新人のアルフに集まる。
「アルフ、お前、前回の作戦に随行していたよな?」
「はい。そうですが?」
学校時代のクセでビビッていると先輩達は、苦笑する。
「ビビルなよ。ここでは、実力は、全てだ。そして、お前には、その実力があるから虐めたりしない。それより、室長がどうして落ち込んでいるか知っているか?」
それに対してアルフが困った顔をする。
「思いっきり機密事項になるんですが?」
それを聞いて先輩研究員達が溜め息を吐く。
「室長って本気で、騒動の中心にいるよな」
強く頷くアルフを含む研究員であった。
そこに、ナノがやってくる。
「ミココ、元気!」
ミココは、作り笑顔で答える。
「もちろんじゃないですか!」
そんなミココを見てナノは、目じりを上げる。
「あたしにまで気を使わない! 弟子の事で落ち込んでいるのは、解っているけど、あれは、あんたの所為じゃない。元々なの!」
ミココが頬を掻く。
「それでも、弟子には、幸せになって欲しいんですよ」
ナノが大きく溜め息を吐いて、数枚のチケットを取り出す。
「珍しくうちのゲナウが気を利かせてとってくれたわ」
ミココがチケットを受け取って言う。
「遊園地?」
ウエスター大陸の貿易都市ナニーワの傍に位置する駐屯基地。
オーチャ中隊が駐屯しているが、前回の被害の復旧に忙しい毎日が過ぎていた。
そんな中、ミココが大きな荷物と共にやって来た。
その荷物を確認してトッテが感慨深げに言う。
「直ったんだな」
ミココが頷く。
「何時までも研究用の白虎達を配備している訳にも行かないだろうから、ソオルコアに関しては、前のを使う事になるよ」
トッテは、自分が持つ二つのソオルコアのうち、みすぼらしい方を触る。
「ところで、トッテさんにお願いがあるんですけど良いですか?」
ミココが媚びるような態度で尋ねるとトッテが嫌そうな顔をする。
「お前にそんな態度をとられる時は、ろくな事にならないきがするぞ」
色々な交渉の結果、ミココのお願い事が聞き届けられた。
「そういう事で、明日は、ナニーワランドに行く事に決まりました」
食堂でのミココのいきなりの発言にガッツが怒鳴る。
「どうして、いきなりそんな事になったんだよ!」
ミココは、チケットを見せて言う。
「ゲナウ兄さんから遊園地のチケットをもらったから。トッテさんには、話をとおしてあるから、四人で行くよ!」
「四人?」
レッスが尋ねると、ミココが指差しながら説明する。
「あちきとガッツ、レッスにスプラ」
最後に指差されたスプラが驚く。
「僕もですか!」
ミココが頷く。
「だって、ソオルアーマー小隊以外に余裕がある部隊ないんだもん」
レッスが未だ慌しい周りの雰囲気を見ながら言う。
「そうよね。でも、全員でるのは、問題よ」
「だから、俺が残っているだろう」
トッテがやって来た。
「それでしたら、僕が残りますので、トッテ隊長がいかれたらどうですか?」
真面目なスプラに対してトッテが苦笑する。
「おいおい、俺に遊園地にいけと言うのか? そんな恥ずかしいことが出来るか。お前らで楽しんで来い」
「ありがとうございます」
レッスが頭を下げる中、ガッツが眉を顰める。
「おかしい、遊園地に行かないにしても、休暇を取れるチャンスを見逃すトッテさんじゃないぞ?」
トッテが真面目な顔をして言う。
「部下を楽しませる為、自分の休暇すら、返上する。それが隊長と言うものだ」
「因みに、トッテさんが渋ったので、ナニーワの高給クラブのVIP会員券とこの先一ヶ月の支払いをあちき払いにする約束をさせられました」
ミココの発言で部下の冷たい視線にさらされるトッテであった。
「行って来ます!」
そういい残して遊園地に向かうミココ達を見送るティーにバットが言う。
「宜しいのですか?」
「良いでしょう。若い彼らに随分と無理をさせています。このくらいの我侭くらいは、許してあげましょう」
ティーの言葉にバットが渋々頷く。
「中隊長は、これからの事をどう思われますか?」
真剣な質問にティーが複雑な表情をする。
「前回の一件でカルビ殿下は、大きくポイントを稼ぎました。このまま順当に行けばカルビ殿下がハラミ殿下を追い越し、帝位を継ぐ事になるでしょう。しかし、まだ波乱は、残っているはずです」
「そして、それに我々も関わる事になると?」
バットの質問にティーが頷く。
「その時は、決断しないといけないでしょう」
バットが唾を飲み込み搾り出すように告げる。
「カルビ殿下につくか、ハラミ殿下につくかですね?」
ティーは、真摯な目で答える。
「正確に言えば、このままの帝国運営を是とするか、どうかです」
バットは、何もいえないで居た。
ナニーワランドに入園したミココ達。
「何から乗ろうか?」
ミココが楽しそうにする中、スプラが言う。
「本当に良かったのでしょうか? いざって時の事を考えて、もう一人待機して居た方が……」
ミココが小さく溜め息を吐く。
「あのね、玄武に乗ったトッテさんが対応できない様な事態だったら、あちきが事前に察知できないわけないでしょうが」
レッスが頷く。
「確かにね。トッテさんだったら、ソオルアーマーの十機の襲撃でも、平気だよね」
ミココが肩をすくめる。
「元々、オーチャ中隊には、過剰な戦力がありすぎるんだよ」
「グチグチうるせいな! 遊ぶときは、おもいっきり遊ぶ。それで良いんだ!」
ガッツがそう宣言し、一番の目玉のジェットコースターを指差す。
「まずは、あれから行くぞ!」
「良いね! 乗ろう、乗ろう!」
ミココものりのりであった。
そして、ジェットコースターを降りた後、レッスがベンチに座って涙目でいう。
「ソオルアーマーの操縦の何倍も怖かった」
ガッツは、顔を青くさせながらも強がる。
「た、たいした事は、なかったな!」
スプラは、あっさりと頷く。
「そうだな、安全と解っているんだから怖がる必要は、無いのによく、叫べるものだ」
信じられないって顔でスプラを見るレッスとガッツを見てミココが苦笑する。
「スプラは、実験機ライダー出だからね。安全の保証のない、自分の操作が効かないソオルアーマーの暴走を何度も体験してるから、あれくらいだったら平気だろうね」
「お、俺だって平気だ! もう一度いくか!」
対抗心を燃やすガッツだったが、レッスが必死に止めた為、近くのお化け屋敷に入る事になった。
ベンチに座って無反応のスプラ。
「何が怖かったのかしら?」
平然としているレッスに、ミココが頬を掻きながら言う。
「こういった自分の常識にない事には、対応できないんだよ」
「情けない奴だな」
ガッツの言葉にスプラが睨み返す。
「ソオルライダーのクセにジェットコースターくらいで怖がっている奴に言われたくないな」
「怖がってねえ! 喧嘩を売るつもりだったら買ってやるぞ!」
ガッツも睨み返す。
「こう見えても売られた喧嘩は、高値で買う事にしている」
スプラが立ち上がり臨戦状態になる。
「はいはい、決着は、あれでつけたらどう」
ミココが指差した先には、沢山の十代半ばの学生が集まる新アトラクションがあった。
「プチタイガー? なんなの?」
「簡単に言うと、うちの研究成果の一つで、ソオルコアを使わないソオルアーマーの試作品。色んな人間の試験データをとるために、ここに貸し出しているの」
ミココの解説にガッツが指を鳴らして言う。
「丁度良い、どっちがソオルライダーとして優秀か、はっきりさせてやろうじゃないか!」
「身の程をおしえてやる」
スプラも答える。
そんな二人を見てレッスが溜め息を吐く。
「最新鋭のソオルアーマーのソオルライダーが何か楽しくって子供のおもちゃに乗らないといけないんだろうね?」
ミココは、少し考えた後に言う。
「ナノ姉さんが、男は、何時までたっても子供だって言っていたよ」
レッスが学生の列に並ぶガッツとスプラを視て苦笑する。
「確かにね」
長々と待った後、ようやく二人の番が来た。
『お前の成績が、ミココさんのソオルアーマーだけだって事を証明してやろう!』
スプラの乗る二番と書かれたプチタイガーからそう声が出ると、相対するガッツの乗る一番と書かれたプチタイガーが怒鳴る。
『俺の真の実力を見せてやるぜ!』
そして、開始のランプが点灯し、二体がぶつかりあった様に見えた。
しかし、ぶつかる直前、二番のプチタイガーが、わざとこけて、横に動き、残った足で一番のプチタイガーの足を引っ掛ける。
見事に転がる一番のプチタイガーを見ていたレッスが驚く。
「子供のおもちゃであんな事が出来るんだ」
ミココが売店で買ったポップコーンを食べながら言う。
「スプラは、元々、制限が多いテスト機に慣れてるからね。ソオルアーマーの制限を有効に活用する術に長けているんだよ」
そんな解説をしている間に一番のプチタイガーが復活。
『汚いぞ! 正面から戦え!』
『馬鹿が。ソオルアーマーの性能を十全に理解せずに戦って勝てるのは、ソオルアーマーの性能が圧倒していた証拠だ。お前の腕前では、このおもちゃが相応しい』
二番のプチタイガーからの言葉にガッツが激怒し、一番のプチタイガーが再び、突撃を開始する。
『その減らず口をきけなくしてやる!』
今度は、二番のプチタイガーは、半歩動くだけでカウンターパンチを決める。
完全に決まり、一番のプチタイガーのコックピットの中は、大変な事になっているだろう。
『終わったな』
勝利を確信したスプラの二番のプチタイガーがピットに戻ろうとした時、一番のプチタイガーが立ち上がる。
『まだだ!』
『根性だけは、あるみたいだな。しかし、根性だけでは、勝てないぞ』
スプラは、そう告げて、時間いっぱいまでガッツを叩きのめすのであった。
夕方のホワイトホエールの食堂。
全身から湿布の匂いをさせたガッツにレッスが近づく。
「痛みは、取れた?」
ガッツは、忌々しげに言う。
「こんくらい平気に決まってるだろう! それより、ミココは、帰ったのか?」
レッスが頷く。
「今さっきね。ミココも色々と忙しい人間だからね」
ガッツは、拳を握り締めて言う。
「一発も入らなかった」
レッスは、呆れた顔をする。
「相手は、セカンドのトリプルスターの熟練者よ、当たり前じゃない」
ガッツは、悔しそうに言う。
「相手が誰だって負けたくない。俺は、最強のソオルライダーになりたいんだ」
真剣な表情のガッツを見てレッスが顔を赤くし、そっぽを向いて小さく呟く。
「ガッツだったらいつか、なれるかも」
「何か言ったか?」
ガッツが聞き返すとレッスがそっぽを向いたまま答えなかった。
平和な一日。
そんな平和は、そう長く続くことは、無かった。




