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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
北部:反乱編
29/34

煙をあげるポセイドンZ

ロース殿下編の最終回です

 ホワイトホエールの特別会議室。

「最新のソオルアーマー四機を使って、目的を達成できずに戻ってくるその面の皮は、大した物だな」

 完全な嫌味を言うのは、ティーの直上の上司でもある、レオ大隊大隊長、リーオ=シシン、ファーストのトリプルスターである。

「それだけが自慢ですから」

 笑顔で返すティーに隣のバットが顔を引き攣らせる。

「そうだろうな、わしだったら、とっくの昔に自決しているぞ!」

 睨むリーオにバットが言う。

「シシン大隊長、もう直、帝都との通信会議が始まります」

 その言葉に、苛立ちを隠さずリーオが怒鳴る。

「解っている。お前達の所為で、また評価が落ちる事になったぞ!」

 そして、通信装置が起動し、帝都会議室と繋がる。

『問題の娘は、何処に居る?』

 ジーオが単刀直入に話へ入る。

 ミココが中央に座るメッサにカメラを集中させて言う。

「この人が、現在のロース殿下と婚姻を結んでいる、メッサ=コッケ様です」

 周囲から様々な視線を送られながらもメッサは、皇帝陛下を見て頭を下げる。

「挨拶が遅れてすいませんでした、義父様。私は、ロース殿下と夫婦になりました、メッサでございます。ロース殿下とは、幸せな毎日をおくらせて頂いておりました」

『私は、認めていない』

 ジーオは、その一言で、メッサを黙らせる中、ミココが言う。

「事前に報告してありますように、ロース殿下には、お戻りいただけておらず。当初の予定とは、異なりますが、メッサ様から、お二人の婚姻が偽りだったと宣言して頂く事が理想と思われます」

 ジーオが頷く。

『ロースとその娘の婚姻が偽りだとする証明が出来れば構わぬ』

「私とロース殿下との婚姻は、真偽り無いものです! それは、天包布様の元で誓われた神聖な物、決して変わる事は、ありません!」

 メッサの主張に対してミココが告げる。

「帝国皇家の婚姻は、蒼貫槍様の下で誓ったもののみ有効とされています」

「帝国では、宗教の自由が保障されていると聞いていますが、偽りなのでしょうか!」

 メッサの強い口調にジーオが即答する。

『国民には、自由を認めているが、皇家は、例外だ』

 揺ぎ無い信念と共に放たれるジーオの言葉は、メッサを追い詰めていく。

 沈黙する中、カルビが告げる。

『貴女には、帝国内で大々的に婚姻が無効だって事を証明してもらいます。これは、帝国国民としての義務です』

 それでこの話題が終わったとばかりにジーオが告げる。

『オーチャ、ファーストのダブルスターのコマンダー、今回の働き、見事であった。帝都に戻り次第、勲章を授けよう』

「ありがたき幸せです」

 頭を下げるティーを睨むリーオ。

『そして、シシンレオ大隊大隊長、今しばらくの間、天包布教の動きを封じよ。そして、ハラミと共に、帝国に逆らった者達の殲滅を命ずる』

 リーオは、頭を下げて答える。

「必ずや皇帝陛下のご期待に沿える結果を出して見せます!」

 こうして会議も終わり、ミココが背伸びをする。

「とりあえず、これで一段落ついたね」

「そうみたいですね」

 ティーも呑気に答える。

 そんな中、リーオがメッサを指差す。

「この娘を尋問室に運べ!」

 ミココが慌てる。

「何を考えているのですか? その人は、これから色々としていただく必要があるのですよ!」

 そんなミココを失笑するリーオ。

「天包布教と戦う為の情報源になってもらう必要があるのだ。ある程度痛めつけておいた方が、そちらにも都合が良いだろう」

 ミココは、連れて行こうとする兵士の前に立つ。

「あちきは、ロース殿下に無事に戻すと伝言してあるの。尋問なんてさせられないよ!」

「そんな約束を守る必要が何処にあるのだ?」

 リーオがミココを見下す。

 二人の視線がぶつかり合う中、再び通信が開き、カルビが言ってくる。

『そうそう、メッサ氏の扱いについては、エジソンソオルマイスターに一任する。反論は、許さない』

 リーオが悔しそうにする中、カルビが指を一本立ててミココに見せる。

 ミココは、頷いて、兵士達を離れさせる。

「それでは、シャドーペンギンに戻りましょう」

 メッサは、無言で頷く。



 シャドーペンギンに戻った後、食堂でミココが愚痴る。

「あの大隊長、絶対にあちき達に喧嘩売ってるよ!」

 それを聞いてトッテが苦笑する。

「仕方ないだろう、俺達の所為で、大隊長の中では、肩身が狭い思いをしてるんだからな」

「やっぱりそうなんですか?」

 レッスが複雑そうな顔で尋ねるとスプラが頷く。

「そうでしょう。オーチャ中隊の評判は、前の部隊の同僚からも最悪と聞いてますからね」

「とにかく、今は、あの女性を帝都に連れて行くのが最優先だな」

 トッテの言葉にミココが立ち上がる。

「帝都に着くまでに説得しておくか」

「そんな事までしなくては、いけないのですか?」

 スプラの質問にミココが頬をかく。

「下手に他人に任せると、貞操に関わることされる可能性が高いからね」

「意外と良いスタイルしてるみたいだしな」

 トッテが何気ない風に言うが、レッスが蔑んだ目になる。

「男って最低」

 そして、ミココは、メッサを監禁しているゲストルームに行く。

「何か欲しい物は、ありませんか?」

「ありません」

 即答するメッサにミココが眉を顰める。

「少しは、考えてから答えてくださいよ。ここから帝都までは、長いんです、もしもメッサさんの身に何かあったら、ロース殿下が悲しみますよ」

 ロースの名前を聞いてメッサが目に涙を溜めて懇願する。

「そう思うのでしたら、私をロース殿下の下にお戻し下さい!」

 ミココは、首を横に振る。

「それは、出来ない相談だよ」

「ロース殿下の足手纏いになるくらいならいっそ」

 思いつめるメッサにミココが溜め息を吐き、近くの椅子に座ってから言う。

「このままだと、帝国と天包布教の間で大きな戦いになる。そうなったら多くの犠牲者が出るけど、覚悟しているの?」

 メッサが切羽詰った表情で言う。

「しかし、天包布教徒がまともな生活を維持するためには、これしか方法が無かったのです!」

 ミココは、淡々と告げる。

「勝ち目なんて無いよ。少なくとも現皇帝が居る間は、ノーブルス大陸の全戦力を集めても、殲滅されるのが落ちだね」

「どうしてそんな事が確信できるのですか?」

 メッサの質問にミココが答える。

「現在の戦場で重要なのは、現行兵力でも物資でもない、ソオルコアの個数。再利用することを考慮しても、戦えば減っていき、最後には、どうしようも無くなる」

 唾を飲み込むメッサにミココが断言する。

「さっきの話を聞いてたよね? 天包布教は、このままでは、完全に潰される」

「罪の無い信徒も多く居るのですよ?」

 メッサの訴えにミココが頷く。

「それでも、帝国の支配の妨げになるんだったら、皇帝陛下が許すわけが無い」

 通信機越しでも解る圧倒的なプレッシャーを思い出してメッサが震える。

「皇帝陛下は、人間なのですか?」

 ミココは、複雑な顔をする。

「本人は、人である前に皇帝陛下であると認識してる。あちきも同じだよ」

「皇帝陛下……」

 口にしてその力の強さに戸惑うメッサにミココが提案する。

「婚約が偽りだったと証言する代償として、天包布教徒の存命を願ってくれませんか? そうすれば、全てが終わった後、ロース殿下と二人静かに暮らせるようにあちきが動きます」

 それを聞いてメッサが驚く。

「それは、本気ですか!」

 ミココが頷く。

「ロース殿下は、戻ってきてから暗殺されます。こんな事が二度とないように」

 メッサが立ち上がる。

「そんな、実の家族なのですよ!」

 ミココが関しそうに首を横に振る。

「家族でも見捨てるのが皇帝の必要条件みたいです」

 メッサが震える。

「そんな、私は、どうすれば?」

「ですから、婚約は、偽りと証言し、天包布教徒の存命を願ってください。後は、戻ってきたロース殿下の暗殺を上手く誤魔化して、メッサさんの下に届けますよ」

 ミココの言葉を疑るメッサ。

「どうして、そんな事まで気を使ってくださるのですか?」

 ミココが遠い目をする。

「暗殺の実行を行うのは、多分、あちきの教え子、カルビ殿下だからです。嘗ての教え子にこれ以上、家族殺しをさせたくない、それだけです」

 メッサは、その顔に真実の悲しみを見た。

「後悔してるのですね?」

 ミココは、苦笑する。

「あちきは、もっと明るい未来を掴む為に教えたつもりだったんですけどね」

 メッサは、真剣な顔で頷く。

「解りました。ミココさんを信じます」

 ミココが笑顔になる。

「これで、全て、上手く行きます」

 その時、いきなりメッサが口を押さえる。

「大丈夫ですか!」

 嘔吐するメッサは、そのまま医務室に運ばれるのであった。



 ノーブルス大陸、最大のソオルアーマー施設。

 そこで、ポセイドンの改修が行われていた。

「もう、改修は、終わったな!」

 ロースの言葉に、周りのスタッフが慌てる。

「まだ稼動テストも終わっていません! せめて基礎テストだけでも行わせてください!」

「そんな時間は、無い。こうやってる間にもメッサさんが帝都に遠ざかっているのだ」

 ロースが強引に出撃準備を行おうとする。

「どうか、堪えてください!」

 スタッフは、必死に止めるがロースが告げる。

「メッサを失うくらいならこの命等、要らない。お前達は、良いのか? このままでは、帝国に蹂躙されたままだぞ!」

 天包布教徒の証を握り締めてスタッフ達にロースが告げる。

「天包布様は、仰った。全ての民は、平等であると。それをここに証明するときなのだ!」

 スタッフ達もロースの熱に巻き込まれる。

「解りました。その代わり、私達も同行します。終わるときは、一緒です!」

「その命、預かった!」

 ロースがそう断言し、行動を開始した。

 その目標は、ノーブルス大陸で交戦を続けるレオ大隊であった。



 ノーブルス大陸の海岸の陣の中心にある、ホワイトホエールのブリッジ。

「詰らぬ仕事だ」

 リーオが舌打ちする。

「早く、交渉を終えて、帝国に逆らう、虫けらどもを踏み潰してやりたいのだがな」

 そんな時、ホワイトホエールに衝撃が走る。

「なんだ!」

 リーオの言葉に観測官が答える。

「津波による攻撃、ロース殿下が操る、ポセイドンのソオル能力による物だと思われます!」

 それを聞いてリーオが舌打ちする。

「裏切り者の殿下か」

 思案するリーオの元に暗号通信文が届く。

「このタイミングでこんな通信を送ってくる相手……」

 内容を確認して笑みを浮かべたリーオが命令する。

「あれは、ロース殿下の乗るポセイドンでは、ない」

「しかし!」

 反論する観測官にリーオが怒鳴る。

「ポセイドンは、前回の戦いで重大な故障を負った。それをこの短時間で修復できない。あれは、別物であり、当然搭乗者もロース殿下では、ない! 全戦力をもって殲滅しろい!」

 大隊長の命令に、軍人は、従うしかなかった。

 そして、大隊の全戦力をもってすれば、いくら強力なソオル能力を持っていても、勝つのは、容易だと思われていた。

 だが、その予測は、外れることとなった。



 大軍に囲まれる改修されたポセイドン。

「集まってきたな。しかし、このポセイドンZには、数は、無意味! 食らえ、ポセイドンサンダー!」

 三叉の矛から放たれた雷撃は、事前に広げられていた海水を通して、レオ大隊のソオルアーマー達を粉砕していくのであった。



 帝都に向かって移動中だったシャドーペンギンに緊急連絡が入った。

『敵、ポセイドンと酷似するソオルアーマーの襲撃に、レオ大隊が壊滅状態。至急応援を頼む!』

 それを聞いたバットが信じられない表情をして呟く。

「馬鹿な、いくら強力なソオルアーマーでも、たった一体で、レオ大隊を相手に出来る訳が無い!」

 送られてきた情報を確認してティーが冷や汗を拭いながら言う。

「信じられないですが、本当の事の様です。至急、戻ります!」



 修理の為、ホワイトホエールに待機していた白虎が、出撃していた。

「幾らなんでも反則だぜ!」

 必死に海水を風で跳ね除けるガッツ。

 その周りでは、雷撃で破壊されたソオルアーマーや戦車等の山が築かれていた。

『残すは、お前だけだな』

 目の前のソオルアーマー、改修されたポセイドン、ポセイドンZに乗るロースからの強制通信にガッツが答える。

「俺が残ってれば十分だよ!」

 一気に接近し、必殺のタイガーロードパンチを放つ。

『甘い!』

 大量の海水がその前に噴出し、タイガーロードパンチを相殺してしまう。

「くそう!」

 迫ってくる海水に間合いをあけるガッツ。

『メッサを返してもらう! それが私の要求だ!』

 広域範囲で宣言されるロースの声に、動揺は、隠せないレオ大隊。

 そんな中、氷がポセイドンZに迫る。

「遅いぞ!」

 ガッツが怒鳴る。

『五月蝿い! 態々戻ってきたんだ、感謝しろ!』

 アニマルモードになった青龍が、連続アイスブレスで、周囲の海水を凍りつかせる。

『この程度の事で、どうにかなると思うな!』

 ロースの宣言と共に、海水が氷を突き破る。

『これ以上は、やらせません!』

 アニマルモードの朱雀で特攻するレッス。

 しかし、ポセイドンZは、三叉の矛で受け止め、直接、雷撃を放ち、弾く。

 弾かれた朱雀だったが、フェザーガーターの能力で、損害は、無い。

 そして、青龍のアイスブレスが白虎達に迫る海水を凍らせる。

『あの時と、同じ状況ですね』

 ようやく到着した玄武からトッテが告げるがロースが否定する。

『あの時は、違う! 私には、護る者が、絶対に取り返さなければいけない人がいる!』

 ロースの強烈な気迫が戦場を支配する。

「厄介だ。なんであんなに出鱈目なソオル能力が使えるんだよ!」

 苛立つガッツの所にミココからの通信が入る。

『聞いて驚け、あの改修ポセイドン、防御フィールドを張っていない。その分、多くのソオル能力を使えるんだよ。ついでに言えば、ゼウスに使われていた、雷撃能力をあの三叉の矛に仕込ませているよ』

「おいおい、それじゃ、通常兵器でも倒せるという事かよ!」

 驚くガッツに対してミココが答える。

『あの、海水の防御を突破出来たらね』

 こうしている間も、玄武が遠距離攻撃を試すが、全て、海水に阻まれる。

 逆にポセイドンZからの攻撃も青龍がアイスブレスで防いでいる。

 お互いに決め手が無い状態になっていた。

「ここは、俺が強引に突っ込むぞ!」

 ガッツがアニマルモードを発動して、海水を無視して、突撃する。



 玄武のコックピットで苛立つトッテ。

「馬鹿野郎! レッス、合わせろ!」

 トッテの指示にレッスが頷く。

『解りました!』

 朱雀も突撃を行う。

 帝国でも最強クラスのソオルアーマー二機の同時攻撃にポセイドンZは、最初に攻めてきた白虎の前足を三叉の矛で海岸に縫いつけ、後から来た朱雀をカウンターになる拳を打ち込み撃退する。

『強すぎる。ロース殿下ってあんなに凄かったんですか?』

 驚くミココにトッテが首を横に振る。

「本人が仰るように、護る者が出来て、強くなられたのだ」

 トッテは、その鬼神の様な姿を見つめ呟く。

「俺達は、勝てないかもしれない」

 その時、ポセイドンZの機体から煙があがり、爆発を始めた。

「どういうことだ!」

『多分、改修に失敗したんだよ。まともにテストもせずに実戦投入したんだね』

 ミココの説明にトッテは、安堵の息を吐く。

「幸運に感謝するしかないな」



 玄武と青龍がいつでも攻撃できる態勢をとる中、ミココがポセイドンZの装甲を強制パージして行き、コックピットに到達する。

 開くと同時に殴りかかるロースの拳を受け止め、ミココが言う。

「ロース殿下、諦めてください」

「メッサを返せ!」

 ロースの言葉に、ミココは、下を指差す。

「ロース殿下!」

 メッサが心配そうに見上げていた。

「メッサ!」

 ロースが駆け寄り、二人は、抱き合う。

「何もされなかったか?」

 心配そうにするロースにメッサがうれし涙を拭いながら頷く。

「はい。ご心配かけてすいませんでした」

「いいんだ! 私もお前を護りきれなくてすまなかった」

 ロースの言葉にメッサが首を横に振る。

「いいえ、こうして迎えに来てくれた事で十分です」

 そんな他人が入り込めない空気を押しのけミココが言う。

「愛を確かめ合うのは、良いですけど、ここが敵陣のど真ん中って自覚ありますか?」

 ロースは、メッサを庇うように立つ。

「メッサには、指一本触れさせない!」

 頭を掻きながらミココが言う。

「はいはい。好きに言っていてください。ロース殿下とメッサ殿の身柄は、このまま帝都に護送します。色々と面倒な状況になりましたけど、何とかする方法を考えますので、二人一緒にこっちのソオルシップに乗ってください」

 ロースは、メッサを護るように移動を開始した。



 戦場のけが人の処理や、壊れたソオルアーマーの改修等の雑務で、シャドーペンギンの出航が遅れる中、ソオルアーマーの被害報告をしに来たミココにティーが尋ねる。

「これからどうするのですか? ロース殿下達は、離れそうもありませんが?」

「予定外の事態が重なりましたからね。とにかく、帝都に身柄を移してからです。本気で面倒な事になりそうです」

 ミココが疲れた顔をする中、レッスが駆け込んできた。

「大変です! ロース殿下が!」



「ロース殿下!」

 ロース殿下の死体の上で泣き崩れるメッサ。

「護衛の兵士が、いきなりロース殿下に襲い掛かったみたいです」

 事情を説明するレッスが拘束された兵士を見る。

「そいつの所為で、俺の仲間が皆死んだんだ! だから、復讐したんだ!」

 バットがその兵士を殴る。

「馬鹿者が!」

「何でですか! 副隊長だって知ってるでしょ! ホワイトホエールに残った部隊がそいつの所為でいっぱい死んだんですよ!」

 兵士の言葉にバットが睨む。

「それでも、私達軍人は、命令に従わなければいけないのだ! 自分の感情だけで武器を振るっては、それは、ただの人殺しになってしまう!」

 拳を震わせるバット。

「早く、連れて行きなさい」

 ティーの言葉に兵士は、別の兵士達の手で連行される。

「あちきのミスだよ、兵士達の感情を考慮するべきだった」

 ミココの言葉にティーが首を横に振る。

「いえ、兵士の事に関しては、全て、私の責任です」

 重い空気の中、ティーが小さく呟いた。

「これも、自国民を人質にするなんて非道な真似をした私への天罰でしょう」

 様々な問題を乗せたままシャドーペンギンは、帝都に戻された。



 オーチャ中隊が配置されているナニーワ付近の駐屯基地の食堂。

 多くの仲間を失い、人員補充が急がれるオーチャ中隊の中では、被害が少ないソオルアーマー小隊は、比較的暇であった。

「これでよかったの?」

 レッスの言葉にガッツが激しく頭をかく。

「俺には、何が何だかわからねえよ!」

 スプラは、手元のグラスを掴み呟く。

「全ては、ロース殿下の独自の反乱行動。天包布教は、それに利用されただけ。罪の全ては、ロース殿下が背負う形になりましたね」

 トッテが大きく溜め息を吐いて言う。

「天包布教との全面対決を避ける為に作られた筋書きだ。そのお陰で、ロース殿下を殺害した兵士やオーチャ中隊へのお咎めがなしになったのだ。無理にでも納得しろ」

「ミココが努力した結果だもんね」

 レッスが遠く、帝都で未だ後始末を続けているだろうミココの事を思うのであった。



 帝都ジョジョエーンの王宮の一室。

 そこにメッサが居た。

「メッサさん、具合は、どうですか?」

 やって来たミココに対して、メッサは、膨らんだお腹をさすりながら言う。

「私もこの子も順調です」

 ミココは、そばによって恐る恐る尋ねる。

「触って良いですか?」

「どうぞ」

 メッサの許可を貰い、ミココがお腹に手を触れると、そこからは、新しい命の鼓動が伝わってくる。

「ロース殿下との愛情の結晶ですね?」

 メッサが静かに頷く。

「ロース殿下が居ない分、二人分の愛情をもって育てるつもりです」

 ミココが申し訳なさそうな顔をして言う。

「帝都に幽閉みたいな事になってすいません」

 メッサが首を横に振る。

「良いのです。私が人質と成る事で、帝国の天包布教への攻撃を中止させる事が出来たのですから。それに正式にロース殿下の花嫁となれて私は、幸せです」

「色々と大変だろうけど、頑張って下さい。困った事があったら何でも言ってください。たいていの事は、どうにかしますから」

 ミココの言葉にメッサが頷く。

 メッサの部屋を退室し、ソオルタワーに戻ろうとしたミココにカルビが後ろから声をかける。

「お見事な手際でした。天包布教と無駄な争いを回避し、オーチャ中隊への咎ももみ消した。流石は、ミココ先生です」

 ミココは、不機嫌そうな顔をする。

「リーオ大隊長に余計な入れ知恵をしたのは、カルビ殿下ですね?」

 カルビが肩をすくめる。

「正直、ロース兄上があそこまで頑張るとは、予想外でしたよ」

 ミココが拳を握り締め、前を見たまま問いただす。

「何をそんなに急いでいるのですか! 貴方には、時間があります! もっと穏便な方法を選べたはずです!」

 カルビは、肩をすくめる。

「少しでも早く約束を守りたいからですよ。ミココ先生には、俺が皇帝陛下になる姿を確りみてもらいますよ」

 そのまま秘書のヒレを連れて、ミココの横を通り過ぎていくカルビ。

 ミココは、そんなカルビを辛そうに見送る。

 そして、ミココが見えなくなった所でヒレが真剣な顔で尋ねる。

「カルビ殿下、もしかしてカルビ殿下は、本気でミココ=エジソンの事を愛しているのですか?」

 カルビが射殺すような目付きで告げる。

「次、俺とミココ先生の関係を馬鹿にする様な事を言った時には、生まれてきた事を後悔させてやるぞ」

「……しかしならば、どうして、ここまで拘るのですか!」

 声を荒立たせるヒレにカルビが失望した顔を見せ、舌打ちをうって、歩みを再開させる。

 ヒレは、そんなカルビの後ろを慌てて追いかけるのであった。

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