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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
北部:反乱編
26/34

寒冷地仕様じゃないスカイブルードラゴン

ノーブルス大陸戦線の状況説明です

 今回、オーチャ中隊は、大隊長からの正式な通達で、持ち場であるナニーワを離れ、ノーブルス大陸に向かうため、ウエスター大陸を北上していた。

「今回は、このホワイトホエールは、現地で合流する大隊長に摂取されるのでしたね」

 バットの言葉にティーが頷く。

「そうです。私達は、その間別のソオルシップで行動する事になります」

 それを聞いてソオルアーマー小隊を指揮するトッテが確認を行う。

「その代えのソオルシップには、こちらの四体のソオルアーマーを運用できるだけの能力があるんですかね?」

 バットが資料を見て答える。

「基本的には、ソオルアーマー小隊を基本とした整備班がそちらに移り、残りの戦車隊は、このままホワイトホエールで、大隊の指揮下に組み込まれる予定だ」

 それを聞いて眉を顰めるトッテ。

「何かヤバイ匂いがしませんか?」

 それを聞いて、バットも頷く。

「確かにな。しかし、今回は、大隊長からの正式な通達だ、非常識な任務に従事する事は、ないだろう」

 トッテが頬をかきながら言う。

「それを願いますけどね」

 そうしている間に、ソオルアーマーの積み替えポイントに到着する。

 そして、ソオルアーマーを代用のソオルシップに移そうとソオルアーマーデッキを開くとそこには、ミココが立っていた。

「遅いよ、この後も予定が詰まってるんだから急いでよね」

 バットとトッテが視線を向けるとティーが目を逸らす。

 トッテがミココに無言で近づき、頬を引っ張る。

「また、お前か! 今度は、何をやらせるつもりだ!」

「痛いって! 暴力反対!」

 涙目で抗議するミココにバットが詰問する。

「今回は、確かに正式通達があった通常任務だった筈だぞ」

 ようやく開放されたミココが頬をさすりながら言う。

「この頃、オーチャ中隊が動くと、暗躍してるんじゃないかって疑られるからね」

 トッテが半眼になって言う。

「実際、色々と暗躍させられている気がするがな」

 トッテの言葉を無視してミココが続ける。

「だから、表向きは、ホワイトホエールと一緒に大隊長指揮下で動いている事にして、ソオルアーマー小隊を含む、一部のメンバーがこの、海中移動も可能な隠密行動用ソオルシップ、シャドーペンギンで、動く事になったんだよ」

 沈痛な表情を浮かべるバットとトッテに同情しながら、ティーが言う。

「それだけ、今回の事が重大な問題になっているという事です」

 それを聞いてバットが真剣な顔をする。

「通達には、ノーブルス大陸への進軍としかありませんでしたが、何があったのでしょうか?」

「そこは、時間のかかる作業もあるから、こっちの船の中で詳しく話すよ」

 ミココの一言でソオルアーマーの積み替えが優先される事になった。



 シャドーペンギンの食堂にメインメンバーが集まる。

「室長、それでは、私達は、メカニックの人とソオルアーマーの寒冷地対応を行います」

 アルフが頭を下げて食堂を出て行こうとした時、ハンマも立ち上がる。

「事情説明は、後で聞く事にする。俺が居ないところでソオルアーマーを弄られるのは、いやだからな」

 そのままハンマもソオルアーマーデッキに向かっていった。

 そんな中、集まったメンバーは、一様にミココを見て疲れた表情をしていた。

 代表としてレッスが手をあげる。

「それで今回は、どういう極秘任務をやらされるんですか」

 面倒そうな口調にミココが頬をかきながら言う。

「まずは、状況の説明からだけど、ノーブルス大陸について詳しい人いますか?」

 それに対して、スプラが手をあげる。

「ソオルアーマーの寒冷地試験で何度か来た事があります。他の大陸に較べて、気温が低く、通常のソオルアーマーでは、行軍も難しい筈です」

 ミココが頷く。

「環境的には、そんな所。政治的には、厳しい自然環境な為、宗教色が強い土地柄なんだけど、鉱物資源が豊富な事でも有名なの。一応は、帝国の支配下にあるんだけど、いまだ帝国に反意を持つ領主が多い。そして今回、ノーブルス大陸最大宗派である天包布教の教皇の娘とロース殿下が結婚したんだよ」

 それを聞いてバットが驚く。

「まさか、ロース殿下は、皇帝陛下暗殺の一件のとがで、ノーブルス大陸の施設で謹慎されていたはずです」

 ティーが頷く。

「その通りです。それを反意勢力者達が利用することを思いついて、今回の一件に繋がります。天包布教と言う共通の繋がりを使って、領主達が連携を作り、ロース殿下という旗頭を使って帝国からの離反を目論んでいるようです」

 それを聞いてガッツが首を傾げる。

「それってタン殿下の時とどう違うんだ?」

 ミココが溜め息を吐く。

「大違いだよ。あの時は、ソオルコアを使って実権をもとうとタン殿下が勝手に動いていただけだけど、今回は、周囲の方からロース殿下を祭り上げようとしている。それにロース殿下を次期皇帝陛下にしようとしていた連中も結託し、かなりの数のソオルアーマーが確保されている。力技で押し返すのは、難しい状況なんだよ」

 ティーが真剣な顔をして続ける。

「そんな状況の為、今回我々は、正面からの侵攻を囮に、側面から秘密裏に侵攻し、ロース殿下の確保を行う予定です」

 トッテが大きなため息を吐く。

「また、物凄く危険な任務を引き当てましたね」

「まあ、原因は、誰かなのかは、言うまでもないだろうがな」

 バットの一言に視線が集まり、ミココが小さくなるがティーが間に入る。

「誰かがやらねばならない任務です。帝国軍人として必ずやり遂げましょう」

 こうしてオーチャ中隊、ソオルアーマー小隊をメインとしたメンバーは、又もや極秘任務につく事になったのだ。



 その頃、ノーブルス大陸の南部では、帝国のソオルアーマー部隊の戦闘が始まっていた。

「相手は、所詮は、田舎者だ! 中央の力を見せてやれ!」

 そう指示を飛ばすのは、タウラス大隊のセンデ中隊長である。

 彼らは、実戦経験も豊富で、使うソオルアーマーも最新型である。

 その中でも目玉は、導入されたばかりのコバルトブルードラゴンの量産型で、飛行能力とブレスを持つ、スカイブルードラゴンであった。

 戦闘当初は、スカイブルードラゴンの圧倒的な戦闘力にノーブルス大陸側、天包布教連合が押されていた。

 しかし、中盤に入ると、同時にその戦いの流れが変化した。

「くそう、もう限界なのか!」

 センデ中隊長が歯軋りをする中、虎の子のスカイブルードラゴンが次々とダメージを受けて撤退していく。

「これ以上の戦線維持は、不可能です」

 部下の報告にセンデ中隊長が決断する。

「こちらの勢力範囲まで撤退だ!」

 その命令に従い、センデ中隊は、撤退を開始するのであった。



 天包布教の聖地、パルテン神殿のロースに最前線の状況が報告される。

「敵は、最新型のソオルアーマーを投入して来ましたが、我がほうの地力が勝り、撤退していきました」

 それに対してロースが苦笑する。

「地力で勝った訳では、無い。寒冷地であるノーブルス大陸でソオルアーマーを始めとする兵器を運用するには、それ相応の準備が必要なのだ。今回の相手は、それが間に合わなかった故に序盤は、ともかく中盤からは、まともな戦闘を継続できなかっただけだ。今回の勝利に浮かれず、より一層の警戒を続けるように指示してくれ」

 それを聞いて、頷く将校。

「解りました。それでは、失礼します」

 去っていくその姿には、ロースに対する敬意は、感じられなかった。

 ロースは、自傷気味な笑みを浮かべる。

「所詮は、ソオルアーマーを手に入れるための道具にしか過ぎないというわけだな」

 そんなロースの元に美人では、ないが落ち着いた雰囲気の女性がやってくる。

「ロース殿下、その様な事は、ありません。ロース殿下が居るからこそ、私達が立ち上がる事が出来たのです」

「これは、メッサさん、この様な場所に態々お越しにならなくても、お呼びになれば、私の方からお伺いします」

 ロースが真摯な態度で、自分の妻という事になっている、教皇の娘、メッサ=コッケを迎える。

「そんな、ロース殿下は、お忙しいお方です。時間に余裕がある私が足を運ぶのが道理です」

 二人の関係は、今の会話からも解るようにお互い客人を扱うような他人行儀な物であった。

「それで、今回は、どの様なご用件で?」

 それに対してメッサは、天包布教の聖書を取り出して言う。

「以前からお約束していた、聖書についてのお話をさせて頂きたく」

 それを聞いてロースが頷く。

「そうでした、私も天包布の信者になった以上、聖書についてもっと詳しくなる必要がありますので、よろしくお願いします」

 そしてメッサは、ロースに聖書の中の話を語り始めるのであった。



 白虎達の寒冷地仕様変更に伴う確認をするミココにガッツが尋ねる。

「しかし、どうして教皇なんてもんが出てくるんだ? どちらかと言うと、戦争なんてしなそうに思えるがな」

 ミココが頬をかきながら言う。

「宗教戦争って結構あるんだけど、帝国の国教は、蒼貫槍教なの。そんな訳で、天包布教の帝国内での立場は、かなり弱いの。それは、とりもなおさず、ノーブルス大陸の立場に直結してる訳。そんな状況だから、色々と不満がたまっていたのは、確かだね」

「しかし、帝国は、基本的には、宗教の自由を認めていた筈ですよね?」

 レッスの教科書通りの答えにスプラが首を横に振る。

「あくまで表向きです。ノーブルス大陸へソオルアーマーの試験に来た時に何度も宗教弾圧に借り出された時があります」

 トッテが真面目な顔をして言う。

「帝国が世界を征服したと言っても、公式な物でしかない。世界中で今も反帝国運動が盛んだ。俺達の仕事は、まだまだ無くなりそうもない」

 重い空気が流れる中、ガッツが言う。

「とにかく、俺は、戦って勝つだけだ!」

 そんなガッツの態度に苦笑するレッス。

「本当に単純なんだから」

「何も考えてないだけだろう」

 呆れるスプラにガッツが詰め寄る。

「何だと!」

 そんな様子を見て微笑むミココの頭をトッテが撫でる。

「周りの奴らは、色々言っているが、今までの事は、全部帝国が抱え込んだ膿だ。お前の所為じゃないから安心しろ」

「ありがとう」

 笑顔でお礼を言うミココであった。

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