時間稼ぎのワイドシールドⅠ
モモ誘拐編のラストです
「殿、どうして教えてくださらなかったのですか!」
タイベが実の父親でジャポンの王族の男、ライベに問いかける。
「言う必要が無かったからだ。お前は、私の命令に従い、行動すれば良い。それがジャポンの男の生き様だろう」
悔しそうに沈黙するタイベにライベが言う。
「それよりも、今は、これからの事を検討する事が先だ。奴らに囚われた者達から、ここの所在が発覚すれば、直に大軍が来るぞ」
「ならば、ここは、一度撤退して他のアジトに移るべきです」
タイベの言葉にライベが言う。
「ギリギリまであのソオルアーマーの解析をする。最悪は、解析できなかった部分だけ移送してこのアジトを放棄する」
それを聞いて、タイベが悔しそうに言う。
「なぜそこまでソオルアーマーに拘るのですか? ジャポンには、ジャポンの誇りが、ジャポンの戦士の力があります!」
ライベは、冷たく言い放つ。
「その誇りでは、帝国には、勝てない。それは、証明されている。戦争に勝つには、ソオルアーマーが必要なのだ! お前は、ここで、その小娘から少しでもソオルアーマーの情報を引き出しておけ!」
そのまま、サンクチュアリアテナの解析を行っている研究室に向かう。
「あの男は、何も解っていないわね」
モモの言葉にタイベが言う。
「何が解っていないって言うのだ!」
モモが肩をすくめる。
「ソオルアーマーをいくら研究した所で、肝心要のソオルコアを生み出せなければ意味が無い。その技術は、ソオルタワーに独占されている。それを覆さない限り、どうしようも無いって事実をよ」
タイベがモモに掴みかかり言う。
「ならば、その技術を教えろ!」
モモは、笑みを浮かべて言う。
「どうして教えないといけないの?」
タイベがナイフを抜き、モモの首筋にあてる。
「言わなければ殺す! お前の人質としての価値は、もはや無いのだからな」
それを聞いてモモが呆れた顔をして言う。
「結局そうなのね。所詮は、誇りなんて物は、最初から存在しないのね」
タイベは、ナイフを鞘に収めてモモを開放する。
「何でソオルアーマーなんてふざけた物があるんだ! あれさえなければジャポンも負けることが無かったのだ!」
モモがはっきりという。
「戦争があり、それに勝つためよ。それ以外に理由が必要?」
タイベが唾を飲みこみ言う。
「そうだ、全ては、戦争が引き金になっていたんだな」
モモが遠くを見る目で言う。
「そう、ブルースピア帝国だって最初から今の様な大国じゃなかった。他所の国との領土の奪い合いの中、苦肉の策で生み出されたのがソオルアーマーなのよ」
「皮肉な話だな。その当時は、ジャポンの方が大国で、ブルースピアなんて国は、センータ大陸に乱立する小国の一つでしかなかった。それが今では、ブルースピア帝国によって世界が統一されている」
タイベの言葉にモモが言う。
「多大な犠牲を払ってね。そして、まだ動乱は、続く。その為にも私は、皇帝になる」
強い意志が感じられる言葉にタイベが言う。
「お前は、自分の意思で戦っているのだな?」
モモが頷く。
「私が皇帝に成らなければ、駄目だからよ」
見詰め合う二人。
シルバーフェニックスの作戦室。
基本的な会議が終わり、ミココとドーバだけが残っていた。
「貴女は、どうしてカルビ殿下についたのですか?」
ドーバの言葉にミココが言う。
「その質問をそっくりそのまま先輩にお返しします」
ドーバが真剣な表情で答える。
「私は、女性の身で上に立つために必要な選択をしただけ。モモ殿下が皇帝になれば女性の立場が大幅に改善される。貴女だってタワーマスターになれるかもしれませんよ?」
ミココが肩をすくめて言う。
「あちきは、最初から地位には、そんな興味が無かったですよ。それよりも、落ちていこうとしていたカルビ殿下に上を目指す希望を与えたかった。それだけでした。でも少し後悔してますかね」
「肉親まで殺すとは、思わなかった?」
ドーバの言葉にミココがあっさり頷く。
「今回の仕事を引き受けたのも、これ以上カルビ殿下に肉親を殺させたくなかったからですよ」
ドーバは、断言する。
「それは、無理よ。カルビ殿下は、皇帝に成るまでの邪魔者を全て排除していく。兄弟は、全員殺すわ」
ミココが大きなため息を吐く。
「言いづらい事をはっきりといってくれますね。こっちからもお返しです。モモ殿下は、皇帝には、成れませんよ」
ドーバがミココを睨む。
「女性だから? 力が無いから? それとも今回の失敗?」
ミココが首を傾げながら言う。
「もしかしたら、女性だからなのかも。あちきと同じで非常になりきれない。モモ殿下が皇帝を目指す理由は、ハラミ殿下には、策謀が出来ないから。それだけですよ」
ドーバは、苦虫をかんだ顔をして言う。
「何時から気付いていたの?」
ミココが苦笑する。
「そんなの直に解りますよ。皇帝を狙っているというのに、一番近いライバルであるハラミ殿下に隙を見せすぎている。カルビ殿下が居なければ可能性があったかもしれない。でも、カルビ殿下が居る以上、その隙は、確実に命取りです」
ドーバが悔しそうに言う。
「あれは、性質が悪すぎる。そして、皇帝陛下の気質を受け継ぎすぎている」
ミココが頷く。
「皇帝に一番近い存在。一つだけ気になる事があります」
「何が気になるっていうのだ?」
ドーバの言葉にミココが答える。
「二代、同種の皇帝を世界が求めているか?」
ドーバが大きく息を吐き言う。
「それは、解らない。でも、もしも世界が求めていなかったら、その時は、大波乱があるわね」
ミココが少し悲しそうな顔で頷くのであった。
「敵部隊は、どうだ?」
アジトの司令室でライベが確認すると周囲の警戒を担当している武官が言う。
「ブルースピア帝国の大部隊が集結中です。移動時間等を考慮して、明後日には、到着すると思われます」
ライベは、頷く。
「解った。ならば明日中に撤収の準備を行い、このアジトを放棄する」
その言葉に、多くの者達が不満そうな顔をする。
「何だ、その顔は? それともお前達は、帝国の大部隊勝てると言うのか?」
誰も答えられない。
これまでの戦いで、ソオルアーマーの脅威をしっているジャポンの兵士達には、無理だと確信できたからだ。
そんな中、振動がアジトを襲う。
「地震か?」
ライベが戸惑う中、次々と監視カメラが潰されていく。
「敵襲です!」
そして、最後に残っていたカメラが映し出したのは、竜の姿、ビーストモードの青龍がコールドブレスを吐き出す瞬間であった。
「敵の監視網は、ほぼ破壊を終了しました」
スプラが青龍のコックピットから報告する。
『ご苦労様』
ミココの言葉にスプラが答える。
「全部、ミココさんが開発したステルスのおかげです」
『何言っているの、どんな装置でも使い手しだいよ。実際問題、ガッツだとこうは、見事に行かないよ』
ミココの答えにスプラが眉を顰める。
「あんなのと一緒にしないで下さい」
『そういう事にしておくよ。後も頑張ってね』
ミココの通信が終わり、目の前に防御に特化したソオルアーマー、ワイドシールドⅠが立ち並ぶ。
「時間稼ぎのつもりだろうが、そんな物が通じると思うな!」
連続して放たれるコールドブレスがワイドシールドⅠを粉砕していくのであった。
「どこまで攻められている!」
司令室で怒鳴るライベに困惑した部下が答える。
「こちらの監視網が壊されていて正確には、わかりません」
「そんな事は、解っている。くだらないいい訳は、止めて、さっさと答える!」
ライベの苛立ちに部下達は、戸惑っている間に、青龍があけた穴から玄武が護った突入部隊が侵入していくのであった。
モモが監禁されている部屋、タイベが苛立って居た。
「どうして、俺には、何も出来ないんだ!」
その言葉にモモが言う。
「何も出来ないんじゃない、しないのよ!」
「何だと!」
怒鳴るタイベにモモが言う。
「こんな状況で怒鳴るしか出来ない無能な奴を排除して、貴方が指示すれば良いそれだけじゃない!」
タイベが悔しそうに言う。
「そんな事が出来るか!」
モモが淡々と言う。
「ならば、これでおしまいよ」
タイベがモモにナイフを突きつける。
「それならば、お前も道連れにするまでだ」
モモが苦笑する。
「好きにすれば?」
タイベが突きつけたナイフを降ろして言う。
「出来ない。俺は、俺の誇りを失う気は、ないからな」
そういって、部屋を出て行こうとしたタイベにモモが駆け寄り言う。
「私も連れて行きなさい。そうしなければ話にもならないわ」
タイベが驚く。
「お前は、このままここで待っていたら救われるのだぞ?」
モモが笑みを浮かべる。
「こんな失敗したまま終わる私じゃないわよ」
タイベが戸惑う。
「何を考えている?」
モモがタイベの手を掴み言う。
「一発大逆転の手よ」
シルバーフェニックスの司令室。
『敵アジトの八割は、制圧を終了しました』
突入部隊からの報告にドーバが答える。
「最優先は、モモ殿下の身柄の確保だ。気を抜くな」
『了解』
突入部隊の返事を聞きながらティーが言う。
「それにしても、大部隊を囮として、シルバーフェニックスの隠密行動を隠すなんて真似をよく考えましたね?」
ミココが苦笑する。
「兵力は、シルバーフェニックスで十分だったからね」
バットが大きなため息を吐いて言う。
「その囮の為に動かされる大部隊の兵士達に同情する」
頬を掻くミココ。
そんな中、シルバーフェニックスの司令室に大画面が開く。
『ミココソオルマイスターは、そこに居るわね』
画面には、モモが映っていた。
「居ますけど、もう開放されたんですか?」
ミココの答えにモモが胸を張っていう。
『極秘の縁談は、無事に成功したわ』
その言葉に司令室が戸惑う、特にドーバの目が点になっている。
ミココが苦笑しながら言う。
「そうですか、それは、良かったです。それでご相手の顔を見せてもらえますか?」
モモが頷き、画面にタイベが現れる。
『どういうことだ?』
困惑しているタイベにミココが言う。
「貴方はモモ殿下と嫁入り先のジャポンの王子ですね? おめでとうございます。これでブルースピア帝国とジャポンの関係がより親密になる事でしょう」
『なんだって! どういうことだ!』
叫ぶタイベの口を塞ぎモモが言う。
『そういう事。それで良いわね?』
「本気なのですか?」
ドーバの言葉にモモがじっとドーバを見てから頷く。
尚も何か言おうとしたドーバを制止してミココが言う。
「解りました。直に祝いの準備をしますので、お待ち下さい」
『待っているわ』
通信が切れる。
困惑する司令室の中、ミココが言う。
「これが、一番妥当な落し所なんですよ」
ドーバが悔しげに言う。
「私のミスだな」
ミココが淡々と言う。
「皇帝陛下は、今回の結果をお喜びになる事でしょう」
ティーが言う。
「モモ殿下は、元々、こういった、政治的道具にするつもりだったという事ですか?」
ドーバが頷く。
「近い話は、いくらもあったわ。それでもモモ殿下は、皇帝への道を諦めていなかった」
ミココが手を叩き言う。
「突入部隊は、お任せします。あちき達は、形式だった後始末の体制をとります」
ドーバが気持ちを切り替えて指示する。
「突入部隊、相手の主要施設を確保、特にソオルアーマーの解析に関する部門の隔離は、完全にするのよ」
こうして、モモ殿下の誘拐騒動は、終わった。
モモとタイベの結婚式は、盛大に行われ、元ジャポン領では、そのお祝いとして様々な恩恵を受ける事になった。
ジャポンの城の個室にモモがドーバと共に居た。
「モモ殿下、私の力が足らなかった為にこんな事に……」
悔しそうなドーバにモモが告げる。
「私は、諦めていない。私自身は、皇帝に成れなかった。しかし、私の子供を必ず皇帝にしてみせる」
それを聞いてドーバが驚く。
「本気ですか? 一度、他の家に嫁いだ者の子が皇帝になった、前例がありません」
モモが自信たっぷりに言う。
「このジャポン領の価値を高め、それを後ろ盾にする。ハラミは、どうせホルモと結婚するつもりよ、それだったら、両親とも高貴な血の私の子供の方が皇帝に相応しい筈よ!」
ドーバがその言葉に笑みを浮かべて言う。
「解りました。その野望、私の全てをかけて達成させてみせます」
そこにタイベが来る。
「お前は、本当に怖い女だな」
モモが笑みを浮かべて言う。
「だから何? 貴方も自分の子供が皇帝になれば、ジャポンがもっと栄えるわよ」
タイベが苦笑しながら言う。
「そうだな。俺もきっとやり遂げてみせる」
モモの皇帝への野望は、終わらない。




