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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
東部:追撃編
22/34

囮に使われたレッドスピアⅠ

交渉ごとでは、無敵なミココです

 イースタン大陸の奥地、ブルースピア帝国もそうそう手を出せないそこに『日が昇る国の希望なり』のアジトがあった。

 そこの貴賓室にモモが居た。

「失敗したわね」

 モモは、落胆気味に呟いていると、そこに数人の男が入ってきて、リーダーみたいな若い男が言う。

「安心しろ、我々は、貴様らと違って、女子供を殺しは、しない。帝国が大人しく我々の要求を受け入れれば、無事に帰してやる」

 モモは、失笑する。

「そんな事は、解っているわよ。問題は、今回の一件は、十中八九、カルビが出てきて、私を貴方達諸共消そうとする事よ」

 それを聞いて、後方に居た男達が動揺する。

「そんな、お前は、帝国の姫なのだろうが! それがどうして!」

 肩をすくめるモモ。

「カルビにとって、私は、帝位を手に入れる上の邪魔者でしかないわ」

「帝国と名乗っていながら、欲で血が繋がった相手を殺す、畜生に劣るな」

 リーダーみたいな若い男の言葉にモモが笑みを浮かべる。

「それは、つまり自分達は、その畜生にも負けた虫けらって言いたい訳?」

「ふざけるな!」

 モモに掴みかかろうとした男が居たが、リーダーみたいな若い男が止める。

「止めろ。俺達は、畜生と違う。そういえば、まだ名乗っていなかったな。タイベ=リコブだ」

 モモがタイベを見て言う。

「少しは、話が出来るみたいね。はっきり言っておくは、貴方達の命は、無いわよ。私諸共殺される、それが結末よ」

 タイベは、モモの目を見ながら言う。

「死ぬのが怖くないのか?」

 モモが苦笑する。

「自分の失敗が原因だからね、仕方ないわ。それでも、可能性があるとしたら、ハラミが出てくる事だけど、難しいでしょうね」

 タイベが呆れた顔をする。

「本当みたいだな。お前らは、本気で血縁すら手をかけるのだな?」

 モモが強い意思を籠めて答える。

「それが皇帝の道を行く覚悟よ」

 それを聞いてタイベが苛立つ。

「その為に、どれだけの人間が踏みにじられているかわかっているのか?」

「それ以上の安定を私達は、与えている!」

 モモの反論にタイベが答える。

「強制された安定など必要としていない!」

 そんな両者の討論の中、メンバーの一人が言う。

「リーダー、例の装置を通して通信が入っています」

 それを聞いてタイベが答える。

「解った。向こうも交渉に応じるみたいだな。繋げ」

 その言葉に答え、大画面でミココが映る。

『あちきが今回の事を任されたミココ=エジソンファーストのトリプルスターのソオルマイスターです』

 それを聞いてタイベが舌打ちする。

「帝国は、ふざけているのか! お前みたいなガキが交渉役だと!」

 そんな中モモが笑みを浮かべる。

「ハラミも考えたわね。確かに、これだったら、私にも助かる道があるわ。タイベ、気をつけなさいよ、そのこは、ソオルタワーの魔女と呼ばれる、帝国でも屈指の策略家よ」

 周りのメンバーが驚く。

「あんな小娘がか?」

 モモが頷く。

「私達ですら知らなかったお父様の影武者の存在まで知っていたわ。はっきり言って、敵に回せば一番厄介な相手よ」

 タイベがモモの言葉から嘘じゃないことを悟り言う。

「それで、帝国は、こちらの要求を飲む覚悟があるのか?」

 ミココが即答する。

『少し頭使ったら、ジャポンの領土の王族への返還なんて無茶が通るとでも思ったわけ?』

 睨みつけるタイベ。

「ならば交渉決裂だな!」

 それに対してミココが言う。

『その前に、確認したいんだけど、もし領土返還された後、モモ殿下は、どうするつもりだったの?』

 タイベが苦笑する。

「そういう仮定の話は、好かないが、無事に帰してやろうと思っていた」

 それを聞いてミココが呆れた顔をする。

『大馬鹿、そんな事したら、即座に領土を直に奪われてお終いでしょうが。本気で頭使ったほうが良いよ』

 タイベが怒鳴る。

「だったら、どうしろと言うのだ! 我らには、この道しか、無い」

 ミココが苦笑する。

『領土に拘るから問題なのよ、自治権の拡大、税金額の減額、その他、そっちが自治領土と代わらない条件を設定すれば良い。あちきは、皇帝陛下から、そういった譲歩条件を引き出してきたよ』

 いきなりの展開にタイベが慌てる。

「嘘を言うな! そんな条件を飲むわけが無い!」

 ミココが笑顔で言う。

『帝国にもプライドってあるのよ。万が一にも皇女をテロリストに奪われたまま、殺されたなんて恥は、さらせない。そして、正直、今のジャポンには、金銭的な要求を持っていないからね。理由は、わかる? 現在、ジョジョエーンで暮らしているジャポン人の大半が精密機械の製造に携わっている。彼らの技術は、有効だから彼らが仕事し易い環境を作るのならある程度の譲歩は、検討の価値があるんだよ』

 タイベが戸惑っていた。

「帝都で、ジャポンの職人がもてはやされているという話は、聞いた事がある。しかし、本気なのか?」

 ミココは、自信たっぷりと答える。

『あんたらが要求する領土返還より何倍も現実的よ。まあ、それなりの演出が必要に成るだろうけど、今までの何倍もましな政策が取れるはずだよ』

 タイベは、少し思案して言う。

「一日待て、こっちの意見を纏める」

『了解。それじゃ、明日同じ時間に連絡とるからね』

 ミココは、通信を切ると直にタイベがモモを見る。

「あの娘の言っていることは、何処まで信じられる?」

 しかしモモは、即答しない。

「答えろ!」

 タイベの言葉にモモが戸惑いながら言う。

「どんな細工を使ったのは、解らない。でもミココ=エジソンがそういう以上、引き出したのでしょうね」

「信じられないって顔だな?」

 タイベの言葉にモモがあっさり頷く。

「ええ、お父様は、そんなに優しい人間じゃない。本気で謎よ」

 周りのメンバーが慌てて近づいてくる。

「リーダー、どうするのですか?」

 タイベが冷静に告げる。

「この事を殿に伝えて、答えを頂く。その結果しだいだ」

 ざわめく人々の中、タイベが未だ悩むモモに言う。

「お前は、どうしてそこまで父親の優しさを信じられない?」

 モモがそっぽを向いて答える。

「お父様は、実の兄を罠にはめて今の地位に居る。そしてロース兄上やタン兄上の時も顔色一つ変えなかった。そんな人なのよ」

 タイベが苛立ちを籠めて叫ぶ。

「そんなのは、間違っている。父親が娘を思う心は、もっと強いはずだ!」

 モモが苦笑する。

「皇族は、人じゃないのよ」

 その言葉の中に秘められた悲しさにタイベは、戸惑いを覚えた。



 同時刻、シルバーフェニックスの通信室。

「てな感じですけど、先輩は、どう思います?」

 実は、ミココの部活の先輩であるドーバが答える。

「一日ということは、本気で検討するつもりね。そして、傍に最終決定権を持つ人間は、居ないと思って良いわね」

 そして、ミココが地図の上で、通信先を確認して言う。

「つまり、この通信先にモモ殿下が居る可能性が高いって事ですね?」

 ドーバが頷く。

「そうなるわね」

 そこにオーチャが口を挟む。

「まさかと思いますが、襲撃をするつもりですか?」

 ドーバが冷たく言い放つ。

「しない方がおかしいでしょう。一気に叩き潰します」

 バッドが言う。

「しかし、ここは、相手の回答を待つのが普通だろう」

 ミココが頬杖を突きながら言う。

「無理無理、絶対にまともな回答は、来ないよ。あっちの初期提案からして、相手の上層部は、はなから交渉するつもりなんて無い」

「どうしてそれが解るのだ?」

 バッドの質問にドーバが答える。

「ミココが指摘しただろう、領土の返還という空手形など、直に無効されるのが相手にもわかっていたはず。それなのにそれを条件にしてきた。それが証拠だ」

 ティーが言う。

「しかし、罠の可能性もありますが?」

「承知の上、このソオルシップには、四体ものSOEがあるのだ、十分に力押しが可能だ」

 ドーバの答えにミココが言う。

「それで突入部隊の洗浄は、終わってるんですか?」

 ドーバが頷く。

「当然だ。万が一にもカルビ殿下の命令に従う人間は、居ない」

 バッドが溜め息混じりに言う。

「どうしてそれを断言できるのだ?」

 ドーバが笑みを浮かべる。

「裏切れば家族が皆殺しになるのが解っていて裏切る奴が居ると思うか?」

 ミココが眉を顰める。

「また、過激な方法を」

 そんなミココにドーバが質問する。

「それよりも、皇帝からよく譲歩条件を引き出せたな?」

 ミココは、頬を掻きながら言う。

「サンクチュアリアテナを奪還しないと、その技術が流出するって事で、奪還の為の期日とジャポン職人の技巧レベルを盾になんとか引き出しました」

 ドーバが悔しそうに言う。

「確かに、モモ殿下より、サンクチュアリアテナの方が今の帝国にとって価値があるということだ」

「あちきは、ソオルライダーの様子の確認に行きます」

 ミココは、その場を離れるのであった。



「思いっきり重たいよ。部活の先輩だから邪険にも出来ないし、疲れたよ」

 ミココの愚痴を聞いてレッスが苦笑する。

「ミココって意外とそういう所が義理堅いものね」

 ガッツが言う。

「別に部活の先輩だろうが、気にしなければ良いだろう」

「そういう事を言えるお前がレアなんだよ」

 トッテが苦笑する中、スプラが言う。

「それで作戦は、どうなるのですか?」

 ミココが答える。

「ベースの作戦は、ティーさんが考えて、突入の作戦は、ドーバ先輩が担当。多分、かなりエグイ作戦になるよ」

 そういっている間にスクランブルがかかり、トッテが宣言する。

「俺達は、俺達の仕事を全うする良いな」

「「「はい」」」

 こうしてトッテ達も行動を開始する。



 そしてシルバーフェニックスの司令室。

「玄武を最初に投下後、白虎、青龍、朱雀と発射して、四方から敵アジトにプレッシャーをかけます」

 ティーの作戦に続けるようにドーバが告げる。

「その後、十分に戦力が拡散した所で突入部隊を投入し、一気にモモ殿下の奪回を行う。失敗は、ゆるされないぞ」

 頷く一同の中、玄武が投下されていく。



「それで、どうなっているの?」

 日が昇る国の希望なりのアジトのモモが質問するとタイベがいう。

「殿は、完全な独立以外をお考えでは、無い」

 そう答えるタイベの顔にモモは、違和感を覚えた。

「不満がありそうね?」

 タイベが悔しそうに言う。

「殿のお考えも解る。しかし、あの娘の言っている事も一理あるのだ。いくら独立したところで、帝国がなくなる訳では、無い。帝国の圧倒的な軍事力に圧倒されるのが目に見えている」

 モモが苦笑する。

「そんなに自分の父親の命令が大事?」

 その言葉にタイベが驚く。

「何をいう!」

 モモが笑みを浮かべて言う。

「帝国の情報網を舐めないでね、ジャポンの殿と呼ばれる存在には、数人の子供が居て、その一人の名前がタイベ=リコブだって事は、私の耳にも入っているわ」

 戸惑うメンバー達を尻目にタイベが言う。

「何が言いたいのだ?」

 モモは、はっきりと答える。

「無能な父親なんて排除して、貴方がジャポンを支配すれば良い。私という切り札を持っているのも貴方よ。今だったら、帝国から好条件を引き出し、それを御旗にして、いっきに国民の賛同を得られるわよ」

「馬鹿を言うな! ジャポンに生きる者、主君の言葉に従うが定め。例え肉親といえ、その定めは、変わらん」

 タイベの言葉にモモが呆れる。

「そんなくだらないことを言っているから、ジャポンが帝国の領土になったのよ」

「くだらなくない!」

 タイベが大声で叫んだ時、警報がなる。

『アジトが帝国のソオルアーマーに襲撃されています!』

 その言葉にタイベが哀れむ様に言う。

「見捨てられたみたいだな?」

 モモは、平然と答える。

「そっちがまともな交渉する気がないくらい、察知していたのよ。予測通りだったしね」

 悔しげな顔をしてタイベが指示を出す。

「予定通りに動け。レッドスピアⅠの出撃を急がせろ!」

 それを聞いてモモが軽く驚く。

「まだ現役のレッドスピアⅠがあったなんて信じられないわね」

 タイベが履き捨てるように言う。

「お前らが戦場で投棄したのを回収、修繕したのだ」

 モモが感心する。

「確かにその技術は、交渉に値するわね」

「好きに言っているが良い。お前が人質だって事実は、変わらないのだからな」

 タイベがそう言って、前線指揮に移る。



 玄武に乗る、トッテが目の前に現れる旧式のソオルアーマー、レッドスピアⅠを見て苦笑する。

「まさか、自分が新人の時に乗っていたソオルアーマーを敵にするとは、思わなかったぞ」

 そういいながら、ソオルミサイルを撃ち放ち、次々と潰していく。

『こっちも楽勝だ!』

 ガッツの言葉に、トッテの感が嫌な物を察知した。

「どうも気になる、レッス、戦場全体の監視に徹してくれ。少しでも異変があったら、俺と上に連絡するんだ」

『了解しました』

 トッテの指示に従い、レッスの乗る朱雀が上昇するのであった。



 シルバーフェニックスの司令室。

「アジトの規模から考えて、これ以上のソオルアーマーは、無い。残っているのは、通常戦力だけの筈だ」

 バットの予測にドーバが指示を出す。

「突入部隊、降下!」

 それに答え、次々と帝国の精鋭が『日が昇る国の希望なり』のアジトに降下していく。

 それを見て、ミココが呟く。

「ドーバ先輩もモモ殿下の事だと冷静さが足りないな。ここで全戦力投入は、危険だよ」

 そうしている間に突入部隊の降下が続く。

 重苦しい空気のなか、突入部隊から連絡が入る。

『ドーバ様、通信の転送装置が発見されました』

 その一言にミココが言う。

「完全にはめられたね。ここには、モモ殿下は、居ないよ」

 ドーバが机を叩く。

「直に撤退しなさい!」

 しかし、その応答前にレッスからの通信が入る。

『大変です、敵アジトが倒壊を開始しました!』

 その言葉に動揺が走る。



『大変です、敵アジトが倒壊を開始しました!』

 レッスの通信を聞いて、玄武に乗っているトッテが呟く。

「アジト一つ潰して、突入戦力を壊滅させるつもりだな。そうは、させない!」

 玄武を倒れこませると亀の姿に変化させるビーストモードを発動させた。

「つっこめ!」

 そのまま、玄武をアジトに突っ込ませると、背中の甲羅、タートルシェルをフル出力で展開し、アジトの倒壊を防ぐ。

「今の内に、脱出しろ!」

 トッテの言葉に答え、突入部隊は、脱出に成功するのであった。



 数時間後のシルバーフェニックスの作戦室。

「敵アジトの倒壊を遅らせるためにビーストモードを使って無茶した玄武は、いくつかの部分に重大な故障を発生させています。シルバーフェニックス内の施設での修理は、不可能だと思ってください」

 ミココの報告にドーバが辛そうに言う。

「その犠牲もあり、突入部隊への実質損害は、軽微です。感謝しています」

 頭を下げるドーバにトッテは、平然と言う。

「気にしてもらわなくても結構。それよりも問題は、玄武の穴をどう埋めるかだと思うが?」

 ティーが答える。

「それについては、問題ないでしょう。今回のことでもはっきりしましたが、相手には、有効に使えるソオルアーマーがありません。残りの三機で十分に対応が可能です」

 バッドが言う。

「いざとなったら、ガッツを降ろしてトッテに白虎に乗ってもらえば良い」

「まあ、危なくなったらって事で」

 ミココが苦笑しながら言う。

「それで、相手との交渉を先程おこないました」

 それを聞いて驚くバット。

「襲撃を受けた後なのに、よく交渉に乗ったな?」

 ミココが頷く。

「多分、相手の本当の狙いは、そこら辺でしょうしね。そして、何故かモモ殿下の居場所がこっちに告げられました」

 ドーバが苛立ちを籠めて言う。

「間違いなく今度も罠だな」

 ミココが頷く。

「しかし、こっちは、それに乗る必要があります。シルバーフェニックスには、これから通常ルートで敵が指定してきた場所に向かってください」

 ティーが頷く。

「そういう事か、解った。具体的な作戦は、私がなんとかする」

 バットも頷き、ドーバが言う。

「次こそは、必ずモモ殿下を取り返します」

 その熱い思いと共にシルバーフェニックスは、敵の指定したポイントに向かうのであった。

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