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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
西部:逃走編
2/34

不調なアテナ

戦闘シーンが無い代わりにミココの帝都時代が少しあかされます

 ホワイトタイガーのコックピット。

「反応がかなり敏感だな」

 トッテが、ホワイトタイガーをゆっくりと起動し、歩かせていた。

『どうだ、基本歩行には、問題ないか?』

 ハンマからの通信にトッテが答える。

「全く問題ない。安定性もあり、こっちの操作に即座に反応して動いてくれる」

 少しの間が空きハンマが言う。

『過剰反応を起こさないか?』

 トッテもその危険性を気付いていて簡単な確認をすませていた。

「基本動作を越す動きには、リミットが掛かっている。だが、それも特定の条件で外れる様になっているのが、操作性だけに特化していない、カスタマイズ機を感じさせる」

 ハンマが苦笑する声が聞こえてきた。

『ミココは、ここに来るまで量産機なんて、触ったこと無いって言うエリートコースだからな』

 その言葉にトッテがハンマから聞いたミココの身の上話を思い出す。

「前タワーマスターの孫か。しかし、どうしてそんな奴がこんな田舎に流れてきたんだ?」

『新しいタワーマスターにとって前マスターを意識させる要素は、毛嫌いされたからだろう』

 ハンマの答えは、納得できる物だったので、トッテが予定通り、ホワイトタイガーの基本動作のテストを続けるのであった。



 そんな中、ガッツは、机の前に座らされていた。

「俺のホワイトタイガーになんでトッテさんが乗ってるんだ」

 不満そうなガッツにソオルライダーのマニュアルを持ったレッスが言う。

「ガッツの基礎が全く出来ていないからでしょうが。基礎動作のテストしようと踏み出した一歩目でこけた時の周囲の反応を忘れたの?」

「あれは、ちょっとドジッタだけだ!」

 ガッツが顔を真赤にして反論するが、レッスが相手にせずに告げる。

「とにかく、今は、基礎的な事を覚えるのが先。メーターの見方が解らないなんて洒落になんない事を二度もしたくないでしょう」

 流石に反論出来ないので大人しくマニュアルを読み始めるガッツであった。



 そんな現場の動きと同じして、会議室でミココが自分の試作したホワイトタイガーの性能の説明をしていた。

「前回の戦闘の後、ハンマメカニックチーフの下、徹底的に整備され、問題ないと保証を受けました。現在は、トッテ=エイチ小隊長にテスト運用をお願いしています」

 細かい数値を確認し、唸るようにバットが言う。

「この数値は、信用して良いのか?」

 ミココが頷く。

「全ての数値が確実なラインで計算されています」

 ティーがお茶を飲みながら言う。

「詰り、もっと性能は、高いという事ですね?」

 ミココは、敢えてその発言を流し続ける。

「トッテ=エイチ小隊長のブラックアックスの修理が終るまでは、ホワイトタイガーでの待機が可能な状態を維持する予定でメカニックは、動いています」

 バットが頷く。

「妥当な判断だ。ブラックアックスが使えるようになるまでは、未確認要素が強くても使わざるえないからな」

 ティーが湯飲みをテーブルに置いて言う。

「問題は、ブラックアックスの修理が終った後の話ですね」

「ホワイトタイガーの性能に問題がなければそのままトッテ=エイチ小隊長に預ける形がベストでは、ないか?」

 幹部の言葉に、バットが難しい顔をして続ける。

「そうなった場合、ブラックアックスが余る事になる。それは、ソオルアーマーの戦力を考えたら容認出来ない。それにトッテ=エイチ小隊長自身、ブラックアックスとそれに使用するソオルコアには、それ相当の思いがあるだろう。私としては、ソオルライダーの補充を求めて、その者にホワイトタイガーを任せるのがベストだと考えるが?」

 幹部達が納得しかけた時、ティーが首を振る。

「それは、無理です。ソオルライダーは、専門の訓練所を卒業していて、帝国の厳しい管理内にあります。補充を求めた場合、理由が問われ、ホワイトタイガーの存在を中央に知られる事になります。それが何を意味しているかは、解りますね?」

 明らかに不機嫌そうな顔をするバットを始めとする幹部連中。

「奴等の事だ、間違いなくホワイトタイガーを徴収してくるだろうな。しかし、そうだとしても、ソオルアーマーを一機余らせるのは、承服出来ません」

 バットの回答にティーが頷く。

「それは、私も同じです。ミココメカニック。一つ聞きたいのですが、ガッツ=アフレスバトルタンクドライバーのソオルライダーとしての適正は、どうですか?」

 それに対して、ミココは、別の資料を取り出して言う。

「ソオルコアには、相性があります。そこの資料にある様にガッツ=アフレスバトルタンクドライバーの適正値は、非常に高い物があります。敢えて、意見を言わせて貰えれば、ホワイトタイガーは、あくまで予備戦力と割り切り、ガッツ=アフレスバトルタンクドライバーに運用させるのも手だと思われます」

 複雑な顔をするバットだったが小さく溜息を吐いてから言う。

「確かに、正規の手段で手に入れていないソオルアーマーを戦力として計算するのは、危険なのは、確か。しかし、見込みは、あるのか?」

 ミココが苦笑して言う。

「熱意だけが高く、周りも諦めモードに入っています。撃墜数一がビキナーズラックじゃない事を祈っているのが本音です」

 バットが眉を顰める中、ティーが決断する。

「ブラックアックスの修理が完了するまでは、ホワイトタイガーには、トッテ=エイチ小隊長を配置。ブラックアックスの修理が完了後に配置を戻し、ホワイトタイガーには、ガッツ=アフレスサブソオルライダーを配置する事にします」

 その後も重要な案件があったが、ミココは、関係ないので会議室を退室して、勉強中のガッツの所に行く。

「朗報。ブラックアックスの修理が終ったらホワイトタイガーのソオルライダーは、ガッツがやる事に決まったよ」

 ガッツが立ち上がる。

「やったぜ! これで俺もソオルライダーだ!」

「本当なの?」

 疑るレッスにミココが言う。

「はっきり言えば、ホワイトタイガーみたいな未確定要素は、戦力に計算するのが危険って言うのが本音なんだけね」

「それでも、どうして、こいつが?」

 レッスがガッツを指差すとミココが肩を竦める。

「だって、ここで、他の人がホワイトタイガーに乗る事になったら、絶対にガッツが問題起こしそうなんだもん」

 レッスが無邪気にはしゃぐガッツを横目で見て言う。

「確かにね」

「それと言っておくけど、サブソオルライダーだからね」

 ミココの言葉にはしゃいでいたガッツの動きが止まる。

「何だそれ?」

 レッスが眉間に血管を浮かべながら言う。

「マニュアルにも載ってたでしょが! メインのソオルライダーが負傷した時の予備要員。ソオルコアを授かっていない人がなる事が多いのよ」

「俺には、ホワイトタイガーのソオルコアがあるぞ!」

 ガッツの言葉にミココが言う。

「あれは、あちきのソオルコアだよ」

 引き攣った笑みでガッツが言う。

「俺にくれたんじゃないのか?」

 ミココが冷たい笑顔で答える。

「ソオルアーマーの本体より高価だって言われるソオルコアをただで渡す理由を教えて?」

 怯むガッツにレッスが言う。

「当然よね。頑張ってマニュアルを覚えましょうね、ガッツ=アフレスサブソオルライダーさん」



 ホワイトタイガーのテストが続くオーティ中隊の駐屯基地の傍の上空を飛行するソオルシップがあった。

 そのソオルシップの名は、ビッグガルーダ、ブルースピア帝国第一皇女、モモ=ミヤザキ=ビーフ、ファーストのテトリススターのジェネラルの旗艦である。

 そのソオルアーマー整備施設で問題が発生して居た。

「どういうことなの?」

 高貴なオーラと同時に好戦的かつ知的な雰囲気を持ったこのソオルシップの主、モモがソオルマイスター達に尋ねた。

 ソオルマイスター達は、冷や汗を垂らしながら答える。

「殿下のソオルアーマー、アテナは、ゴッド派の中でも特別製で、我々でも十全の理解をしているわけでは、なく。こういった、機能不全になる可能性も……」

 モモの睨みでソオルマイスター達の言い訳が止まる。

「殿下、近くに我軍の駐屯基地があります。そこでなら、施設もあり、アテナを詳細に調べる事が可能だと思われます」

 モモの副官的存在、二十四のクールな女性、ドーバ=カイキョ、セカンドのテトリススターのコマンダーが提案すると、モモが小さく溜息を吐いて言う。

「仕方ないわね。その駐屯基地に拠るわ」

 安堵の息がソオルマイスター達から漏れるのを見てモモが睨む。

「私に回り道をさせたのよ、万が一にもアテナの修理が出来なかった時は、覚悟しておきなさい」

 青褪めるソオルマイスター達であった。



 レッスのテストで赤点を取った罰でブルーイーグルⅡを洗わされていたガッツが暗くなったのに気付き上を見て驚く。

「何だ、あれ!」

 それに対して同じ様に驚いているレッスが言う。

「空を飛べるソオルシップがあるって聞いた事があるけど、こんな大きなのは、初めてだよ」

 ホワイトタイガーの様子をチェックして居たミココが言う。

「第一皇女の旗艦、ビックガルーダだよ。ソオルシップのソオルエンジンには、ソオルアーマーに使えないレベルのソオルコアを複数使うのが通例なのに、ソオルアーマーにも十分使えるクラスのソオルコアだけを使用して起動している贅沢なソオルシップだよ」

「着陸するみたい。こんな地方の駐屯基地になんの用があるのかしら?」

 首を傾げるレッスであった。



「まだ入れないのか?」

 ホワイトタイガーのテストを終えて、整備施設に入ろうとした所を待たされて居るトッテが確認すると、メカニックの一人が答える。

『それが、設備に関しては、第一皇女が最優先で使用していて、こちらも自由に使えないんです』

 困惑した声にトッテが頭を掻きながら言う。

「困ったお姫様だ。サイレントエレファンの方に移動する」

『すいませんが、そうしてください』

 恐縮したメカニックにホワイトタイガーで挨拶をして方向転換をするトッテだったが、通信機に割り込みが入ってきた。

『そこの白いソオルアーマー、止まれ!』

 トッテが嫌な予感を覚えながらカメラを巡らせると、高そうな軍服を纏った女性、モモが興味深げにホワイトタイガーを見ているのに気付いてしまう。

「おいおい、まさかと思うが……」

 モモは、ホワイトタイガーに近づいて来て通信機を使って話しかけてくる。

『そのソオルアーマー、私も初めて見るタイプだ。詳しく話せ』

 大きく溜息を吐いてトッテがコックピットを開き、ホワイトタイガーから降りて、敬礼をする。

「レオ大隊オーチャ中隊ソオルアーマー小隊隊長トッテ=エイチ、セカンドのトリプルスターのソオルライダーであります。殿下に御声をおかけ頂き、これ以上無い喜びを噛み締めております」

 モモが平然と聞き流して本題に入る。

「これは、なんと言う名前のソオルアーマーだ?」

「ホワイトタイガーであります」

 トッテが即答するとモモが頷きながら言う。

「確かに、アニマル派のソオルアーマーみたいだな。しかし、今まで見た物とは、かなり違う。どの研究所の物だ?」

「この駐屯基地のメカニックが試作したものであります」

 トッテの答えに眉を顰めるモモ。

「そんな訳が無かろう。ソオルアーマーは、我帝国の要、こんな田舎の駐屯基地で試作できる代物では、無いぞ」

 当然の疑問にトッテは、少し考えてから答える。

「駐屯基地には、中央から転属してきた者がおりまして、その者が中心になり製造したであります」

 モモがまだ納得いかない顔をしていたが、トッテに手を差し出して言う。

「ソオルコアを渡せ」

 流石に顔を引き攣らせるトッテ。

「ソオルコアを渡せと言っている。私がこのソオルアーマーに乗ってやると言っているのだ」

 モモが睨みつけると内心の苛立ちを堪え、作り笑顔でトッテが言う。

「とても第一皇女を乗せられるソオルアーマーでは、ありません」

「それを判断するのは、お前では、無い!」

 拳を握り締めながらもトッテは、ソオルコアを渡す。

「偶には、駄馬に乗るのも良いものだ」

 トッテの笑顔がかなり引き攣っているが、モモは、気にもせずにホワイトタイガーのコックピットに乗り込みソオルコアをセットする。

 コックピット内を見回して呟く。

「予想した以上に整っているな。しかし、問題は、動きだ。接近戦を得意とするアニマル派のソオルアーマーにとって動きが全て」

 そういって、ホワイトタイガーをなんと急速転回させる。

 周りのメカニックが風圧で飛ばされる。

 それを見て居たトッテが通信機を使ってくる。

『第一皇女、その機体は、まだテスト運転中です、手元の手順にある以外の動きは、保障出来ません』

 モモは、手元にあるテストパターンをパラパラ捲り呟く。

「こんな詰まらない動きで真価が解るものか。……これは?」

 モモの目に入ったのは、ソオルアーマーでは、考えられないバック転の動作パターンであった。

「面白い。やってみるか」

 そして、モモは、遊び心、それも実際やって失敗して、こんな下らない事をやろうとした手順書の作成者をからかってやろうと思って、実行した。

 しかし、結果は、見事な成功で終った。

 周囲からは、色んな意味での悲鳴が上がる中、モモの顔が一気に真剣になり、手順書を捲り、見たことも無い動きのパターンを見つけては、実践してみた。

 それは、今までのソオルアーマーでは、とうてい不可能な領域の動きであった。

 モモは、ホワイトタイガーを降りると鋭い目でトッテを睨む。

「このソオルアーマーを作った人間に呼んで来い!」

 尋常じゃ無い雰囲気を悟り、トッテが視線を合わせずに答える。

「その者は、高齢で前の戦いの最中ぽっくりと亡くなりました」

「ふざけるな!」

 モモの怒気が篭った声に、周囲に緊張が走る。

「それを設計したのは、あちきです」

 モモが振り返るとそこには、ミココが居た。

「お久しぶりです、第一皇女」

 頭を下げるミココを見てモモが言う。

「まさか、お前がここに居るとは、思わなかったぞ」

「ミココ、サードのトリプルスターのメカニックを知っておられるのですか?」

 トッテの問いに苦笑するモモ。

「ああ、この娘、前のタワーマスターの孫で、新たなタワーマスターの選考会で現タワーマスター、ノーウ=ムウのソオルアーマーを盗作したミココ=エジソン、ファーストのダブルスターのソオルマイスターの事は、知っているぞ」

 盗作の言葉に周囲がざわめく。

「第一皇女、盗作についての疑いは、全て誇張と誤解と選考会でも判断された事です」

 ミココの反論にモモが言う。

「だったらどうして、こんな田舎に居る?」

 それが、盗作をした事を暗に表しているように周りの人間も思えたがミココが笑顔で言う。

「人事については、上の判断に従っただけです」

 緊張の糸が張り巡らされる中、ドーバがモモの傍に来て告げる。

「これ以上の遅延は、内紛鎮圧作戦に影響があります」

「あのソオルマイスター達、重罰にしてやる」

 怒りをそちらに向けるモモ。

 そんな中、ミココがドーバに近づき言う。

「アテナの不調は、細かい飛行を可能にしている左右の飛行システムの同期が取れていないためだと思われます。一度、完全に停止後、飛行システムのみを起動して調整してから、再起動すれば問題無い筈です」

 ドーバは、何も返事をせずに撤収準備に移る。

 モモは、ビックガルーダに向かう途中立ち止まり言う。

「そういえば、お前には、もう一つ面白い噂があったな。私の弟、カルビの愛人だったという噂が」

 流石にこれには、周りが声をあげて驚いた。

 しかしミココは、笑顔で返す。

「皇族も大変ですね、異性なら例え赤ちゃんでも傍に居るだけで愛人と間違えられるのですから」

「確かにな」

 苦笑しながらビックガルーダに戻るモモ。

 レッスが駆け寄ってきて言う。

「さっきの話って本当なの!」

 ミココが肩を竦めて言う。

「ただ、学生の頃にバイトで授業をしていただけ。それも十才から十二才までの三年足らずだよ」

「家庭教師って、何のよ?」

 レッスが問いかけるとミココが指折り数える。

「歴史、高等数学、基礎工学、ソオル理論、人心把握術、帝都での権謀術なんてのも教えたかな」

 ガッツが混乱する中、トッテが言う。

「お前の通っていた学校は、何を教えてたんだ?」

 ミココが答える。

「八才くらいから通っていた帝国公認最高学府ビーフ学院では、何でも教えてた。一応あちきは、二年前に主席で卒業したよ。因みに専攻は、ソオル理論と擬似世界征服検討学」

 周囲が突拍子もなく変な学部に苦笑し、本題を忘れていく。

 それでも笑いながらもトッテは、二つの重要なキーワードを心に刻んだ。

 ミココがタワーマスターの候補に挙がっていた事と盗作容疑がかけられていた事を。



 ビックガルーダのモモの私室。

 モモは、紅茶を飲みながら言う。

「お前は、あのソオルアーマーをどう判断する?」

 傍に控えていたドーバが答える。

「今までのソオルアーマーとは、一線をひく物です。少なくとも噂通りの盗作しか出来ないソオルマイスターには、不可能な仕事ですね」

 モモが頷く。

「アテナの不調を一発で見抜き解決法を提示した事も考えて、盗作疑惑の中で囁かれたもう一つの噂の信憑性が高まるな」

「そうだとしたら、不自然です」

 ドーバの答えにモモがカップをテーブルの上に置いて言う。

「そう、ノーウ=ムウが何故に追い詰め切れなかったか。どう考えても、不意打ちならば逃れようも無かった筈。しかし、あの娘は、見事に切り抜けて見せた」

 ドーバが神妙な顔で言う。

「あれは、私も学んでいた擬似世界征服検討学で、歴代ナンバーワンの成績を残しております。前タワーマスターが健在の時は、その政治力は、孤高なタワーマスターを大いに助けていました」

 モモは、笑みを浮かべて言う。

「上手く使えば、兄達の懐に穴を空ける事が出来るかもしれないわね」

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