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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
南部:要塞編
19/34

主を冥府に誘うハーデス

要塞編のラスト。意外な事実が一杯出ます

 ゾンビソオルアーマーもほぼ壊滅して、休憩時間をもらったトッテ達は、食堂に居た。

「結局、あれは、何だったわけ?」

 レッスの質問にスプラが答える。

「開発最中のビーストシステムだと思いますが、どうして上手くいったのかが解りません」

 ガッツが胸を張って言う。

「俺の才能だな。やっぱり、お前より俺の方が才能あるんだよ」

 スプラが不機嫌そうにしていると、大盛りにした丼を持ってミココがやってくる。

「青龍と白虎じゃ、条件も違うよ。ビーストシステムについては、才能があったのかもしれないね。動物に近いって」

「褒められてる気がしないぞ」

 ガッツの文句にトッテが言う。

「思いっきり馬鹿にされているんだ。それよりも本質的な話に戻ろう。あのシステムは、なんなのだ?」

 ミココは、丼を食べながら言う。

「人型以外のソオルアーマーを作る実験段階の一つ。二つのソオルコアを使用するのも、一つだと安定しないのが解っていたから。出力が高いのは、その副産物でしかないんだよ」

 ガッツが不満げに言う。

「しかし、強いほうが良いに決まってるだろう」

 ミココが指を振る。

「あのね、数機のソオルアーマーの出力を上げたからって戦況が大きく変わる事って無いんだよ。同じ二つソオルコアを使うんだったら、多少落ちても二体のソオルアーマーを戦場に投入した方が効率的なの」

 トッテが頷く。

「確かにな。今回は、偶々活躍したが、次も同じとは、限らないだろうからな」

 ガッツが自信ありげに言う。

「次だって俺が活躍してみせる!」

 ミココが手を横に振る。

「ゾンビソオルアーマーを壊滅させた以上、ガッツの出番無いから」

 驚くガッツ。

「どうしてだよ!」

 ミココがため息混じりに言う。

「あのね、ガッツは、サブソオルライダーでまだサードなんだよ。SOEには、セカンドのトリプルスター以上って制限があるのを無理やり乗せるには、色々と工作等が必要になるわけ。必要ないのに、どうしてそんな面倒な事をしないといけないの」

 ガッツが食い下がる。

「しかし、俺が出れば、もっと有利になるだろう」

 ミココは、半目になって言う。

「あちきがさっきまで何してたか教えてあげる。ガッツが勢いだけで動かした所為でゾンビソオルアーマーを壊す余波で壊れたこっち側のソオルアーマーの保障や謝罪だよ」

 レッスが引きつった顔で言う。

「そういえば、確かに仲間のソオルアーマーにも小さいけど被害が出てたみたいですね」

 言葉を無くしたガッツを無視してトッテが言う。

「前にも少し言っていたが、どうしてソオルアーマーは、人型で無いといけないんだ」

 ミココが言う。

「ソオルアーマーの技術の根幹が魔法だから」

 レッスが驚く。

「嘘! 科学の結晶のソオルアーマーがどうして魔法と関わっている訳!」

 ミココが食べ終わった丼を置いて、お茶をすすりながら説明する。

「少しでも科学的知識があれば解る事だけど、ソオルアーマーの防御フィールドや機動が通常の物理法則では、ありえないの。莫大なエネルギーだって、あのサイズで実現は、不可能だよ」

 顔を見合わせるソオルライダー達にミココが言う。

「ソオルアーマーがソオルライダーを必要とする一番の理由は、簡単なの。機械だけでは、魔法を使えないからなんだよ」

 スプラが手を上げる。

「それでは、どうして人型でなければいけないのですか?」

 空中に人型のシルエットを描き言う。

「元々は、ソオルアーマーは、本当に鎧で、その細部にソオルを塗りこみ、装着者の魔法的力をソオルコアで増幅してその効果を発揮させていたらしいよ。通常兵器の破壊力増加に伴い、それを運用可能な形が求められ、今の形に移行していった。その際、色々研究されたけど、人型以外では、上手くソオル能力が起動しない事が判明した」

 トッテが真剣な顔をして言う。

「あくまで肉体の延長線でなければ魔法が発動しないという感じだな」

 ミココが頷く。

「これについては、色々と研究されている。ケロベロス要塞に設置された砲台や今回のビーストシステムは、その成果の一部って所だね」

 トッテがガッツの肩を叩き言う。

「そういう意味では、お前が獣に近いからあの状態でも十分に力が発揮できたと言う事だな」

 ガッツは、眉を顰めて言う。

「そういえば、ソオルやソオルコアって何なんだよ?」

 ミココが嫌そうな顔をして言う。

「ソオルコアは、ともかくソオルだったら各地で生産されているから説明出来るけど、聞きたい? あちきは、食事終ってるから良いけど」

 食事が遅いレッスが嫌そうな顔をするがトッテが言う。

「すまないが頼む」

 ミココが頭を指差して言う。

「動物の脳みそを特殊加工して液状化したものだよ」

 ガッツが飲んでいたお茶を吹き出し、レッスが食事の手を止めるのを見ながらミココが続ける。

「魔法についての科学的アプローチは、続けられていて、大切なのは、脳波だって事になって居るよ。ソオルは、ソオルシップにある間に人の脳波を吸収し、ソオルコアで増幅されたソオルライダーの脳波をトリガーにその力を解放するって事になっている。ここらへんは、魔法が絡んでるから、正確な検証結果が無いけどね」

 真剣な顔でトッテがいう。

「そうか、動物の脳みそか」

 そんな所にバッドがやってくる。

「ミココ、方針が大きく変わったぞ。突入作戦が決行される事になった」

 ミココが頷く。

「そう、ところでナノ姉さんもやっぱり参加するの?」

 バッドと一緒に来たナノが答える。

「当然でしょ」

 するとミココが手を上げる。

「だったらあちきも突入部隊に参加する」

 それには、誰もが驚いた。

「そんな事が許される訳無いでしょうが!」

 ナノの反論にミココが笑顔で言う。

「それを判断するのは、あちきの仕事なの」

 ナノが難しそうな顔をし、バッドが言う。

「何でも思い通りになると思うなよ。今度の事は、完全な軍事行動だ、中隊長の意見が優先される筈だ」

「例の件の最終確認を突入部隊だけで判断するのは、危険だから参加すると言えば、誰も反対できないんだよ」

 ミココが告げるとバッドが悔しそうにする中、ナノが言う。

「解った。でも一つだけ約束して、あたしから離れないって」

「うん。約束する」

 こうしてミココが突入部隊に参加する事が決まった。



 突入部隊が乗ったコンテナを牽引する形になる朱雀のコックピットでレッスが呟く。

「本当に大丈夫なの?」

 コンテナから通信が繋がっているミココが答える。

『大丈夫。このコンテナは、ステルスが万全だから。多少スピードが落ちるかも知れないけど、ケロベロス要塞の上を通り過ぎるまでの間くらいは、フェザーガーターも保つよ』

『今回の作戦の一番大切な所なんだから、頑張ってね』

 ナノも励ますが、レッスが言う。

「そうでなくて、頭脳能動のミココがそんな肉体労働に加わって大丈夫なのって事よ」

 ミココが笑顔で答える。

『大丈夫、鍛えてるから』

 激しく不安に思う、レッスであった。

『ミンテ、ソオルライダー。そろそろ、作戦開始時間ですが、大丈夫ですか?』

 ティーからの質問に頷くレッス。

「大丈夫です」

『良いか、お前は、コンテナを無事にケロベロス要塞まで運ぶことだけを考えろ。あとの事は、全てこっちでする』

 バッドの命令に続き、トッテが言う。

『陽動は、ばっちりやってやるから安心しろ』

 そんな言葉にレッスの緊張も和らぐ。

「解りました」

 先行して玄武と青龍が出て行く。

『俺の出番……』

 一応だけに白虎のコックピットで待機しているガッツは、今回は、出撃予定が無かった。

 作戦開始時間が来る。

「レオ大隊、オーチャ中隊、ソオルアーマー小隊、朱雀、レッス=ミンテ、出撃します!」

 朱雀が発進するとすぐさまソオル砲台が迎撃してくるが、先行していた玄武と青龍の攻撃が始まり、砲撃が散漫になる。

「今がチャンス!」

 一気にケロベロス要塞に接近し、コンテナを投棄する。

 激しい音と共に、ケロベロス要塞内部にめり込むコンテナを見て言う。

「平気って言われたから、投棄したけど、本当に大丈夫なのかしら?」

 そうしている間にも砲撃が集中してきたので、慌てて上空に逃げるレッスであった。



 朱雀によって投棄されたコンテナ。

 激しい衝撃と共に扉が吹き飛ぶ。

「フレームが歪んで開かなくなるなんて不良品ね」

 ナノが平然と言っているが、周りの突入部隊のメンバーが顔を引きつらせている。

「ナノ姉さん、このコンテナってそういう事も考慮されてるから、爆発式開口扉もあるんだよ」

 頭をかくナノ。

「近頃は、便利になったのね」

 そんな暢気な会話がしている間にも、ケロベロス要塞の警備兵達が集まってくる。

「さて、殺さない程度にやりますか」

 その一言と共に、ナノが姿を消えた。

 困惑する警備兵の中に現れたナノは、そのまま素手で警備兵達を蹴散らしていく。

「これが、蒼貫の槍の位の持つ人間の実力ですか」

 突入部隊の一人の言葉にミココが言う。

「冗談。まだまだ本気じゃないよ。ナノ姉さんは、試作型小型ソオルアーマーを素手で倒すなんて事を出来るんだからね」

「それこそ冗談でしょ」

 一人の言葉に周りの兵も頷くが、ミココが笑顔で答える。

「特殊部隊の記録に戦闘データに残ってるから、見てみなよ」

 脂汗を大量に流す突入部隊を置いて、平然とナノに近づいていくミココであった。



「敵がケロベロス要塞内部に侵入してきました!」

 部下の報告に飲んでいたワインをグラスごと床に叩きつけるタン。

「もう少しだと言うのに。ソオルコアの製造室を死守せよ。私は、ハーデスで退路を確保する。ソオルコアの製造完了後直ぐにこのケロベロス要塞を破棄する」

「了解しました」

 部下が敬礼をして去っていく中、タンは、監視カメラに映し出されたミココを睨みつける。

「どこまで私の邪魔をすると言うのだ!」



 玄武がソオルコーティングミサイルで牽制する前線を青龍で駆るスプラが居た。

「ミココさんの潜入が成功した以上、後は、こちらにどれだけ戦力を集中させられるかですね」

『そうだ。ゾンビソオルアーマーが何体か残っているみたいだが、数で圧倒している以上、問題は無い』

 トッテの返信を聞きながらも、問題のゾンビソオルアーマーの一体をドラゴンスケルソードで切り裂くスプラ。

 そんな中、大きな鎌を持ったソオルアーマーが現れる。

「あれは、タン殿下のハーデス」

 ハーデスが大きな鎌を振り上げて宣言する。

『高貴にて、もっとも皇帝に相応しい私に楯突く愚か者共。ここに大いなる力を見せてやろう!』

 鎌が振り下ろされた時、暗い闇が生まれたと思うと、周囲に居たソオルアーマーが吸い込まれ爆散する。

『おい、あれは、何だ?』

 トッテの質問にスプラがつばを飲み込みながら答える。

「ミココさんに聞いた事があります。タン殿下が乗るソオルアーマー、ハーデスは、稀有なソオルコアが使われていて、その為、超重力を発生するソオル能力、ハーデスの鎌が装備されていると」

『見たか! この力の前には、例えSOEであろうとも、無力なり!』

 タンが高らかに宣言する中、玄武のソオルコーティングミサイルが放たれたが、鎌の一振りで発生した超重力で、収束、爆散させられてしまう。

『面倒な能力だな。攻略法は、無いのか?』

 トッテの質問にスプラがハーデスの前に出て言う。

「僕がなんとかします。タン殿下、残念ですが、殿下の腕前では、そのハーデスを使いこなす事は、出来ません。大人しく投降してください」

『ハーデスの鎌の効果に恐れ、怒りで攻撃した所を狙うつもりだったろうが、皇帝になるべき私には、無駄だったな』

 タンの言葉にスプラがため息を吐く。

「ならば、実際に体験していただくのみです」

 アイスブレスを放つ青龍。

『だから無駄だと言っているだろうが!』

 ハーデスの鎌を振るい、アイスブレスを収束して無効化するタン。

 しかし、スプラがアイスブレスを連射する。

『愚かな、自分の行為がどれだけ無駄かも解らぬとは!』

 そんな中、トッテが忠告を入れてきた。

『そろそろだから、威力を抑えておけ』

「わかっています」

 そして、放たれた威力が弱まったアイスブレス。

『何度やっても同じだ!』

 振り上げられたハーデスの腕が止まった。

『馬鹿などうして!』

 困惑するタンの叫び声が響く中、ハーデスが凍りつく。

 青龍が接近して、ハーデスからタンを救い出す。

『どうしてだ!』

 その時、青龍のLWRIが動き、ハラミが映し出される。

『簡単です。タン兄上がソオルライダーでなく、そこのスプラ=ナダッセがソオルライダーだからです』

 タンが声を荒げる。

『ソオルアーマーの性能こそ、絶対の筈だ!』

 ハラミが悲しそうな顔をして言う。

『タン兄上は、動きながらハーデスの鎌を操るだけの技能が無かった。その為、アイスブレスで発生した冷気を常に受け続ける事になった。周囲の気温が下がり、ハーデスの動きに支障を来たすまで気づけなかった事が致命的です』

 タンが崩れる。

『馬鹿な、そんな単純な事で!』

 ハラミが告げる。

『戦場では、そんな単純な事が生死を分けるのです。タン兄上、大人しく投降して下さい』

 こうして、第二皇子タン=コウベ=ビーフの反乱は、終った。



「外は、終っちゃったみたいだよ」

 ミココが気楽に言うのを聞いてナノが舌打ちする。

「殴る口実が一つ減った」

 八つ当たり気味に放った拳で最後の扉を吹き飛ばし、ソオルコアの製造室に入ったミココ達。

 一瞬の膠着の後、ミココが叫ぶ。

「通路を封鎖! 誰もこの中に入れるな。それと関係者の身柄は、確保して、隔離。あちきの許可無く接触を禁じます」

 事前にある程度の予測が出来ていたのか、バッドが選出した突入部隊のサポートメンバー達は、速やかにミココの言葉を実行した。

 ゆっくりと近づいてくるミココにノーウが言う。

「全てお前がいけないんだ! お前が現れなかったら私は、今もタワーマスターで……」

「五月蝿い、黙りなさい!」

 ナノがパンチ一発で黙らせる。

「なるほどね、お祖父ちゃんやゲナウ兄さんがあちきに教えたがらない訳だ」

 ミココが睨む先には、解体された人間がソオルコアに加工されていく工程が進んでいた。



 ホワイトホエールの重要会議室。

 意識を取り戻したホルモに、ティー、バット、ミココ、ナノが居た。

 ドアが叩かれる。

「最終確認の為にいらっしゃった、ハラミ殿下です」

 ホルモの言葉に、ドアが開けられるとそこには、ハラミと何故かトッテが居た。

「ハラミ殿下を案内してきました」

「ご苦労だった。早く退室しろ」

 バッドの言葉にトッテが顔を上げて言う。

「どうか、同席を許可して下さい」

 ミココが冷たく言う。

「ここから先の話は、帝国の最高機密。一介のソオルライダーが知る必要が無い情報だよ」

 それに対してトッテが反論する。

「俺には、ソオルライダーを指揮する役目があります。その為にも真実を知りたいのです」

 ミココが困った顔をするとティーが言う。

「すまないが、我々の一存で決められる事では、ないのだ。我慢してくれ」

 その時、ハラミが言う。

「この者だけ特別に許可しよう」

 ホルモが慌てる。

「これは、帝国の根本に関わる事です!」

 ハラミが頷く。

「解っている。しかし、この者達、ソオルライダーが居るからこそソオルアーマーが運用出来るのだ。この者は、その代表として聞く権利がある」

 皇子の言葉でトッテにも席が作られる。

 そして、ミココが報告を開始する。

「今回の反乱で一番の問題になったソオルコアの製造については、ノーウを始めとする関係者全員を確保、隔離した状態で特別施設に輸送の予定です。研究資料を完全に破棄し、一切の痕跡を残しておりません」

 それを聞いてハラミが言う。

「詰り、帝国がソオルコアを作るのに人を材料にした事が外部に漏れることが無いと言う事だな」

 ミココが感情を押し殺して頷く。

 長い沈黙の後、ハラミが問う。

「この事実を知るものは、どれだけ居るのだ?」

 ミココに代わりナノが説明する。

「この事実に関しては、ミココ、ソオルマイスターも知りえぬ事で、知っていたのは、皇帝陛下と歴代のタワーマスターそして、実作業についていた一部の者だけです」

 ミココが付け足すように言う。

「ただし、ロース殿下、タン殿下、カルビ殿下の御三方は、前タワーマスターであるノーウから聞いていたみたいです」

 トッテが鋭い目で言う。

「詰り、帝国は、ゾンビソオルアーマーと変わらない事を大掛かりにやっていたと言うのか」

 ミココは、反論しない。

 重苦しい空気の中、ナノが補足する。

「使用する人間の大半が死亡もしくは、脳死状態の人間に限ります。無論、生前から遺体を献体として提供すると誓約した者だけです。例外としては、死刑囚が回されることもありました」

 そんな補足では、変わらない空気の中、ミココが言う。

「綺麗事は、止めましょう。数十年前まで帝国は、ソオルコアを作る為に植民地や敵国の人間を使っていました。この真実は、帝国最大の暗部です。今回の事で発覚しなかった事を喜ぶべきです」

 ハラミが頷く。

「帝国に属する者としては、それこそが重要なのだろう」

 そんな空気を壊すように内線電話が鳴る。

 ホルモが出て、声を荒げる。

「詳しい状況を!」

 視線が集まる中、ホルモが告げる。

「タン殿下が殺されました。犯人は、隔離していた筈のノーウです。本人もタン殿下殺害後、自決しました」

「タン兄上……」

 ハラミが悔しそうしていたが、全てを吹っ切る様に言う。

「今回の事は、これで完全に終った。ここでの事は、口外することを禁じる。良いな」

 全員が頷き解散となった。



 帝都ジョジョエーンに戻ったミココの所にカルビが現れた。

「今回の事は、ご苦労様でした。ミココ先生としては、かなりショックだったんでは?」

 ミココが沈黙しているので、カルビがつまらなそうな顔をして言う。

「ミココ先生が落ち込んでいると思ったんで、かつての生徒としては、励ましに来たのですが、お邪魔でしたか?」

 やはりミココは、答えない。

 大きなため息を吐いてカルビが言う。

「何をそんなに怒っているんですか?」

「タン殿下を殺す必要は、無かった」

 ミココの答えにカルビが淡々と言う。

「殺さない理由も無かったんですよ。正直、あの人は、中途半端な知恵で動くので目障りでした。今回の事だって帝国に深刻なダメージを与えかねないソオルコアに手を出した。暗部を知る者共々消え帝国としてメリットが大きい死でした。でもよく私の手の者だと解りましたね?」

 ミココが苦々しそうに言う。

「あちきがホワイトホエールの乗組員のチェックをしてないと思ったの? ノーウを逃がし、さもタン殿下を殺して自殺した様に見せかけられたのは、後から来た突入部隊の人間だけ。あそこの人間は、カルビ殿下の息が掛かっている」

 舌打ちするカルビ。

「ミココ先生の事だ、もう証拠まで掴んでるんでしょ?」

 ミココは、情報媒体を投げ渡して言う。

「ホワイトホエールの記録から発覚しそうな情報は、そこに移動して消しておいたよ。後は、綺麗に後始末して。言っておくけど、これは、カルビ殿下の為でなく、ハラミ殿下の為にやった事ですよ」

 カルビは、苦笑しながら言う。

「真面目なハラミ兄さんにこれ以上負担を掛けない為ですか。どっちにしろ感謝しています。ミココ先生が動いてくれたおかげで暗部が白日の下にさらされなかった。これからも帝国の為に頑張ってください」

 部屋を出て行こうとするカルビにミココが告げる。

「人の道を踏み外す事があるかもしれない。でも人の道があり、それを見えない人間が人の上に立つことは、出来ない」

「何故ならば、踏みつけた人の下に何があるかを知らないものは、踏みつけた人ごと奈落に落ちる。ミココ先生に何度と無く聞かされた言葉、胆に命じています」

 カルビが完全に部屋を出た後ミココが言う。

「解っているつもりが一番怖い。想像と実物が異なるって事に気づいていれば良いんだけど」

 自分の教え子の行く末を不安に思うミココであった。

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