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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
南部:要塞編
17/34

戦場を蠢くゾンビソオルアーマー

様々な思惑が蠢く中、禁断の兵器が戦場に投入される

「レッスの階級の件は、かたがついたよ」

 食堂であっさりとした口調でミココがいう。

「どんなあくどい手段を使ったんだ?」

 トッテの言葉にミココが心外そうな顔で言う。

「普通に前回の件の事で昇格、同時に特殊任務と言う事で、セカンドのダブルスタースペシャルにしただけだよ」

 ガッツが言う。

「なんか、スペシャルってかっこいいな」

 レッスが呆れた顔をして言う。

「馬鹿、スペシャルって言うのは、特別って事で、今回の特殊任務だけ一階級上の権限が追加されただけで、常時は、通常のダブルスターと同じ扱いになる筈よ」

 トッテが苦笑をする。

「それにしても、ソオルライダーの一年生がダブルスターに昇格なんて、かなり無理があったんじゃないか?」

 ミココは、たいしたこと無い様な顔で言う。

「別に、審査委員でクレームがあがったけど、スプライの昇格に関係する不正を突きつけて黙らせたよ」

「まあ、当然だな」

 納得するトッテ。

「ところで、包囲網の方は、どうなってるの?」

 ミココの質問にトッテが頷く。

「そっちは、ティー中隊長と言うか、バッド副隊長が獅子奮迅の働きで強固な物を構成しているから大丈夫だ。しかし、ここまでの包囲網の必要があったのか? 補給さえ途絶えさせれば問題ない気がするがな」

 ミココが苦笑する。

「色々あるんだよ」

 そこにホルモがやって来ていう。

「ミンテ、ソオルライダー。昇格の辞令が降りたのを確認しました。早速ですが、朱雀で、ハラミ殿下の代弁者となってください」

 レッスが敬礼をする。

「了解しました、センマイ、ソオルライダー」

 即座に行動を開始するレッスであった。



 ホワイトホエールの重要会議室。

「それでハラミ殿下の説得の効果は?」

 ティーの発言にミココが言う。

「そんなのある訳が無いでしょうが」

 ホルモがにらむ。

「臣下として正しい態度では、ありません。訂正して下さい」

 ミココが辛らつに答える。

「はっきりいっておくよ。あんな説得で降伏なんて絶対に無理。そんな事は、ハラミ殿下だって理屈じゃ解っている。正直、ハラミ殿下の感情を納得させる為だけにやっていることだよ」

 ホルモが立ち上がる。

「改めて訂正を求めます!」

 しかし、ティーもミココの意見に同意する。

「あまり意味が無いのは、確かです。しかし、まったく無意味って事でも無いでしょう」

 ミココが頷く。

「ハラミ殿下のあの説得が篭城戦の最後には、有効になるかもしれないけど、それでも、朱雀を占有する程の事とは、思えない」

 バッドが言う。

「確かにな。あんなお決まりの台詞は、現場の人間がやれば十分だ」

 旗色の悪さにホルモが悔しそうな顔をする中、ミココが言う。

「それでも、それをするハラミ殿下の人間性は、あちきは、キライじゃない。全てが理屈だけじゃないからね。そういう態度をとり続ける事で臣下に安心感を与える。だれも機械には、従いたくないからね」

 話を変えるようにティーが言う。

「包囲の方は、どうでしょうか?」

 バッドがいくつかの資料を展開しながら言う。

「入りより出の方に集中させている。間違っても、ソオルコアが流出する事が無い筈だ」

 それに対してミココが言う。

「それでも長期戦になれば、包囲網にも穴が見つけられる筈。出来れば短期戦にしたいですね」

 ティーが頷く。

「状況を考えれば多少の被害を考慮しても、要塞を陥落させるのが最善な手なのですが」

「ハラミ殿下は、出来るだけ被害の少ない方法を望まれています」

 ホルモの言葉にバッドが言う。

「望むだけなら簡単だ。だが、事がソオルコアの流出に繋がる一大事だ。正直、そんな綺麗事を言ってられない」

 ホルモも黙るしかない中、ミココが言う。

「その件だけど、王宮の方で動きがあったよ」

 驚くホルモ。

「どういうことですか?」

 ミココが頬をかきながら言う。

「カルビ殿下があちきの情報網からノーウの件を盗み出した。腕を上げたみたいね」

「そんな……」

 困惑するホルモ



 ジョジョエーンの王宮の大会議室。

「ミココ、ソオルマイスターの情報を総合すると、ノーウ、前タワーマスターがタン兄上の下、ケロベロス要塞でソオルコア製造を行っている可能性が高い事になります」

 カルビの報告に室内に驚きが起こる中、皇帝陛下、オージが言う。

「その情報の信用度は、どうなのだ?」

 それに対してカルビが答える。

「信用度は、けっして高くありません。しかし、ミココ、ソオルマイスターは、万が一にもソオルコア製造法が帝国外に流出する事を懸念し、ケロベロス要塞から出る者を確実に遮断するよう、指示を出しています」

「確かにソオルコアの機密を考えれば、妥当な判断だ。それで、お前は、何が言いたいのだ?」

 オージの言葉にカルビが答える。

「いかに厳重な包囲でも、情報を完全に封鎖する事は、不可能。人間が携帯できるサイズの情報媒体とサンプルのソオルコアを持った人間を長期間見逃さないで居られるとは、思えません。ここは、多少の被害を考慮にいれましてもケロベロス要塞を陥落させるべきかと思われます」

 ハラミが反論する。

「その様な不確定情報で、多くの同胞の命を奪うと言うのか!」

 それを否定したのは、以外にもモモであった。

「ハラミ、あまり甘いことを言うのは、止めなさい。ソオルコアの製造法が流出する可能性が少しでもあるのだったら、ケロベロス要塞に篭城した裏切り者の命など気にしている余裕など無い筈よ」

「しかし、彼らは、同胞です! せめて、その情報が確実だと確認が取れないうちに、その様な非道な真似は、認められません!」

 必死に反論するハラミを見ながらオージがその場に同席していた、ゲナウに問う。

「現タワーマスターとして意見をせよ。ノーウがケロベロス要塞でソオルコアを製造する事は、可能か?」

 ゲナウは、覚悟していたが、それでも躊躇しながら答える。

「完全な物は不可能です。ですが、一世代前のソオルアーマーを動かせるレベルの紛い物でしたら可能かと思われます」

 重苦しい空気の中、オージが決断する。

「カルビよ、お前の意見も確かに正しい。しかし、同胞を無駄死にさせる可能性がある事は、容認出来ない。その上でお前に命ずる。ケロベロス要塞にノーウが入ったと言う確かな証拠を掴め。その確認がとれた時点で、今回の作戦を包囲戦から殲滅戦に切り替える。この決定には、誰の反論は、認めない」

「必ずや、ノーウがケロベロス要塞に入った確証を掴んでみせます」

 カルビが頭をさげ、会議室を後にする。

 悔しそうな顔をするハラミにモモが言う。

「カルビが確証を掴む前にケロベロス要塞を落としなさい。それが一番の方法よ」

 そのまま、その場を後にするモモ、皇帝、他の重鎮が退室した後、ハラミが言う。

「どうしてだ。どうして、同胞の命を奪うことをしなければいけないのだ!」

 そこにゲナウが来て告げる。

「ソオルコアの秘密は、決して外部に漏らすわけには、行かない事なのです」

 ハラミがこぶしを強く握り締めて言う。

「私がどうにかしなければいけない!」

 それを見て、ゲナウが言う。

「その件ですが、ミココから提案があります」

 驚くハラミ。

「ミココ、ソオルマイスターは、カルビ側の人間だと思っていたが?」

 ゲナウが苦笑する。

「ミココもハラミ殿下と同じで余計な死を望みません」

 こうしてミココからの提案は、ハラミに告げられ、承認されるのであった。



「お待たせ!」

 ホワイトホエールのブリッジにナノがやって来た。

「どうして、ナノ姉さんが居るの?」

 ミココが眉をひそめるとナノが言う。

「当然、とことんはた迷惑なオヤジをぶん殴る為よ」

 ため息をつくミココ。

「ハラミ殿下には、潜入任務をこなせる兵士を頼んだだけなのにな」

 胸を張るナノ。

「ミココちゃんだってあたしの腕前は、知ってるでしょ?」

 苦笑しながらティーが言う。

「それでは、ハラミ殿下は、決断なされたのですね?」

 ナノが頷く。

「そう、少数精鋭の潜入部隊でケロベロス要塞に侵入し、ノーウを奪回、その研究施設を破壊する事になったわ」

「滅茶苦茶危険な任務だって自覚あります?」

 不満そうなミココの言葉にナノが頷く。

「実体験で知ってるわよ。それでも、あの懲りないオヤジだけは、今度こそあたしの手で殴り飛ばしてやるのよ」

 そんな会話をしている中、ブリッジに緊急事態を知らせる警報が鳴る。

「どうしました!」

 ティーの言葉に、バッドが怒鳴る。

「敵が、信じられないソオルアーマーを持ってきた!」

 それを聞いてミココもすばやく、近くの端末から戦場を確認して、怒鳴る。

「何処のボケだ、ゾンビソオルアーマーなんて物を作ったのは!」

 聞きなれない単語に戸惑うブリッジであった。



 補給路を確保しようとする敵のソオルアーマーの撃退に出ていた部隊からの救援信号に、急行したホルモが白虎のコックピットで見たのは、一方的な殺戮風景だった。

 数で勝る筈の包囲側のソオルアーマーが少数の筈の篭城側のソオルアーマーに駆逐されようとしていたのだ。

「まさか、これだけの数の差で」

 困惑するホルモの白虎に敵のソオルアーマーが迫る。

 その動きは、通常のソオルアーマーと一線を引くものであった。

「速い。でも、白虎程では、無い!」

 タイガーロードを纏った拳が敵ソオルアーマーを弾き飛ばす。

「これで、ソオルアーマーが無事でも、中のソオルライダーは、動けないでしょうね」

 そんなホルモの予測に反して、そのソオルアーマーは、白虎に攻撃を仕掛けて来た。

「どういうこと?」

 ホルモは、次々と襲ってくるソオルアーマーをタイガーロードで弾き飛ばしていく。

 しかし、いくら弾き飛ばされてもソオルアーマーが動く限り、攻撃を止めてこない。

「絶対におかしい。中のソオルライダーが保つわけ無い!」

 その時、ミココから通信が入る。

『最初からソオルライダーが乗ってないからだよ』

「そんな訳ありません。ソオルコアは、ソオルライダーが居なければ発動しない。これは、絶対ルールの筈です」

 ホルモの反論にミココが苦々しい声で答えた。

『一つだけ例外があるの。それが目の前にあるゾンビソオルアーマーだよ』

「ゾンビソオルアーマー?」

 初めて聞く単語に戸惑うホルモにミココが説明を開始する。

『ソオルアーマーには、人が乗っていないといけない。逆を言えばどんな状態でも人が乗ってれば動く。それに気づいた倫理観が無いソオルマイスターがとった手段は、生きた人間を生存する最低限部分を残し機械化し、ソオルアーマーのパーツにする事。そうする事でソオルライダーが乗っていては、出来ない機動を可能にし、ソオルアーマーが稼動可能な限り動き続ける、まるでゾンビの様なソオルアーマーを生み出したの』

 あまりにもの外道な行為に吐き気を覚えるホルモ。

「それじゃあ、この目の前に居るソオルアーマーに乗っているのは?」

 辛そうに声でミココが答える。

『ソオルアーマーを動かすパーツとされた人間の成れの果てだよ』

「許せない!」

 ホルモが白虎の拳でソオルアーマーを貫き、爆発させた。

 目の前に蠢くゾンビソオルアーマーの中に突進するホルモ。

「一体残らず、壊す!」

 次から次にやってくるゾンビソオルアーマーを次々と爆発させていく白虎。

 しかし、そんな中、数対のゾンビソオルアーマーが防御を無視して白虎にしがみつく。

「何のつもり?」

 次の瞬間、ゾンビソオルアーマーが同時に自爆するのであった。



『ホルモは、大丈夫なのか?』

 LWRIシステムを使ってのハラミの言葉に、ミココが辛そうに答える。

「咄嗟にタイガーロードを発動させたおかげで、命に別状は、ありませんが、絶対安静です」

 ティーが頭を下げる。

「お預かりしていたセンマイ、ソオルライダーにこんな目に会わせてしまい。申し訳ありません」

 ハラミは、怒りを堪える様にして言う。

『これも戦場での事。そちらの非は、無い。それよりも、問題は、そのゾンビソオルアーマーだが、対策は、あるのか?』

 それに対して、ミココが答える。

「残ったSOEをフル稼働させる事で、どうにか包囲を維持しています」

 続けるようにバッドが答える。

「しかしながら、それも限界があります。SOEが少しでも抜けると同時に包囲網が薄くなります」

 戦場を知るハラミが深刻な顔で言う。

『このままでは、包囲網が破られて、万が一の可能性が生まれると言う事か……』

 その意味のあまりにもの大きさにハラミが確認をとる。

『潜入作戦を決行する余裕も無くなったと言う事だな』

 ティーが頷く。

「はい。こうなった以上は、こちらもケロベロス要塞を陥落させるつもりで攻め込まなければならないでしょう」

 それを聞いてハラミが重い沈黙の後、告げる。

『二十四時間、それだけ待って打開策が出なかった場合、ケロベロス要塞を一斉攻撃する。準備を開始してくれ』

 身を切り裂くような決断にティーは、頷くしか無かった。

「了解致しました」

 こうして、ケロベロス要塞での包囲戦は、大きな山場を迎えることになったのであった。

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