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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
西部:逃走編
14/34

立ち塞がるゼウス

逃亡編の決着です

 帝都ジョジョエーンの王宮の謁見の間。

 第二皇子、タンが皇帝陛下、ジーオの前で頭を下げていた。

「今回の失態は、到底容認出来る物では、ないな」

 ジーオの言葉に慌てるタン。

「しかしながら、新型ソオルアーマーの性能があそこまで突出したものとは、到底想像も付かなかったのです」

 高笑いをあげる第一皇女、モモ。

「その冗談は、笑えるわ。ゲナウ、タワーマスター代行は、事前に忠告をしていたわ。それを聞き入れなかったのは、タン兄上では、無かったかしら」

 睨みつけるタン。

「資料は、私も目を通した。これほどの才能が地方に流出して居た事が残念で仕方ない。これ以上の損害を出す前に、今回の一件を無かった事にする方向でミココ=エジソンと取引をするのも良いかもしれないな」

 その一言に驚きが走る中、第四皇子、カルビが告げる。

「詰り、タイムリミットと言う事ですね」

 ジーオは、敢えてそれに答えないが、答えないことこそが正しい事を証明していた。

「私が、直接赴き、奴等を確保し、全ての謎を明らかにしてみせます」

 第一皇子、ロースの言葉に、ジーオが問う。

「解っていると思うが、これ以上の不要な損害は、認められぬぞ」

 ロースが頷き、謁見の間を出て行くのであった。



 サイレントエレファンのソオルアーマー整備室。

 ここでは、朱雀の最終調整が行われていた。

「本当に皆には、余計な苦労させてる気がする」

 ミココの言葉にハンマが答える。

「最新鋭のソオルアーマーを弄れるのは、若い奴等には、良い経験だった」

 ミココは、少し寂しそうな顔をして言う。

「このトラブルが解決したらあちきは、ソオルタワーに戻る事になる」

「間違いないな、これだけの実績を見せたら誰もお前を盗作技術者だとは、思わないだろう。帝都の連中もお前を放置する訳も無いからな」

 ハンマが淡々と答える中、ミココが言う。

「あちき、ここが好きだった。帝都には、ゲナウ兄さんやナノ姉さんが居たけど、気なんて全然抜けなかった。四六時中、気が張ってた気がする。でもここでは、素の自分で居ても平気だった。仕事は、大変だったけど楽しかった」

 寂しげに語るミココにハンマは、何時もの様に語る。

「何時でも戻って来いなんて無責任な事は、言えないが、疲れた時は、遊びに来い。ここの連中もお前の事を大切な仲間だって思っているんだからな」

 その一言でミココが笑顔になる。

「新型機の改修プランも終ったんだったら、こっちを手伝え。少なくとも今は、俺の下のペーペーなんだからな」

 ハンマの言葉にミココは、嬉しそうに工具を持つ。

「了解しました、チーフ」

 ミココが仕事をしていると、一人のメカニックがやって来ていう。

「前から疑問に思っていたんだけどよ、白虎や玄武、朱雀の間接部に変なギミックがあるが、あれは、何だ?」

 ミココは、手を大きく振って言う。

「気にしないで下さい。少なくとも一ヶ月やそこらで研究が終る機構じゃないですから。下手したら年単位が必要なんです」

「そんなもんをどうして組み込んであるんだ?」

 メカニックの当然の質問にミココが困った顔をして言う。

「組み込んであるのがおかしいんじゃなくて、その研究が終っていない内に製造されて実戦投入されているのがおかしいんです。当初の予定では、白虎達が戦場に出るのは、数年先の予定だったんですから」

 メカニック達も納得するのであった。



 ウエスター大陸に入ったロースは、現地の指揮官を集めて命令を下す。

「一流だけを集めろ。オーチャ中隊を相手に二流以下のソオルライダーは、不要」

 その言葉に頷く指揮官達。

「あの驚異的な戦闘力を持つ玄武に対する対策は?」

 指揮官の一人の言葉にロースが淡々と答える。

「タンの作戦は、基本的には、合っていた。しかし、雑魚では、奴等の包囲すら出来ないのだ。集めたソオルライダー達で確実に包囲を維持。勝負は、私が決める」

 そして見上げる先には、神々しい姿を見せるロースのソオルアーマー、ゼウスがあった。



 追撃のソオルアーマーを蹴散し玄武と白虎が戻ってくるのをサイレントエレファンのブリッジで待つティー。

「どうおもいますか?」

 隣に立っていたバッドが即答する。

「間違いなく、誘導です。本隊による包囲は、ほぼ終っていると思って良いと思われます」

 ティーも頷く。

「ミココさんの予測では、これが最後の大規模な襲撃。これを凌げば、もう帝国は、追撃を断念、こちらと交渉を行ってくるそうです」

「帝国のプライドがそれを許せますか?」

 バッドの問いにティーが苦笑する。

「それを引き出せるほど、ミココさんの才能が魅力的なんでしょうね」

 バッドが大きく溜息を吐いてから言う。

「それが納得できるほどの物を見せてもらいました。しかし、裏があるのですね?」

 ティーが小さく頷く。

「最後に第一皇子が動き、判断材料が揃い、後継者争いの第一ステージがこれで終ると言う事でしょうね」

 嫌そうな顔をするバッド。

「全部は、政治ですか。正直、気に入りません」

 ティーがバッドに一つのファイルを見せる。

「前に言っていましたがこの茶番の成果です」

 それを見てバッドが驚く。

「大隊内の監査の記録。大隊の予算の賄賂への転用、ソオルアーマーを壊れた事にして武器商人への転売、人員の水増し。追撃の為に普段は、動かない人員や物資が動く事でここまで判明したのですか」

 ティーが真剣な顔をして言う。

「帝国軍もかなり腐っていたって事です」

 バッドも呆れた顔をして言う。

「副産物としては、上々という所ですか?」

 ティーが言う。

「カルビ殿下にとっては、本命は、ライバルの蹴落としでしょうね」

 バッドが肩をすくめて言う。

「実際、誰が陛下の暗殺なんて計画していたのでしょうか?」

 ティーが苦笑する。

「ミココさんもカルビ殿下もとうの昔に解っていましたよ。只の証拠集めの時間だけが必要だっただけです」

 バッドが不満そうに言う。

「中隊長も気付いておられるのですか?」

 ティーが頷く。

「最初の内にミココさんから聞いてましたから」

 憮然とするバッドであった。



 そして運命の時が来た。

 サイレントエレファンのブリッジに緊張が張り巡らされていた。

「完全に包囲されています」

 バッドの報告にティーが指示を出す。

「玄武を出して下さい。白虎は、その護衛をお願いします。朱雀は、何時でも出せるように待機を」

 バッドが細かい命令に変えて通達する。

 そして、玄武と白虎が出撃した。



「俺にも出番下さいよ」

 白虎のコックピットでガッツが言うとトッテが返信して来る。

『そんな心配しなくても大丈夫だ。今回は、楽には、勝たせてもらえないぞ』

 そのまま玄武が、ソオル能力を付与したミサイル、ソオルコーティングミサイルを打ち出す。

 それは、包囲するソオルアーマーに向って飛んでいくが、殆どのミサイルが撃墜されてしまう。

「嘘だろ!」

 思わず叫ぶガッツだったが、トッテは、平然と言う。

『ダメージを食らうと解っていれば落とすのが普通だろう。その位、一流のソオルライダーだったら出来て当然なんだ。中途半端のソオルライダーを入れず一流だけを揃えてきやがったな』

 ガッツが舌打ちをして言う。

「俺が、包囲網に突入して、かく乱します!」

『馬鹿が、命令を守れ! お前は、俺のガードがメインだ』

 トッテの言葉にガッツは、不服そうに言う。

「しかし、ソオルコーティングミサイルが通じなかったら、どうしようも無いですよ!」

『通じないんじゃない。撃ち落されただけだ』

 トッテの余裕のある言葉に、ガッツが反論する。

「当らなければ一緒でしょうが!」

 それに対してトッテが行動で答えを示す。

 再び放たれたソオルコーティングミサイルは、同じ様に迎撃された。

 しかし、次の瞬間、数機のソオルアーマーに爆発が起こる。

『当らないなら当るように打てば良いんだ。お前は、俺に接近してくる奴を倒すのに集中していれば十分だ』

 自信たっぷりに答えるトッテにガッツが見えるはずも無いのに頷いていた。



「トッテ、ソオルライダーは、やはり並みの腕前では、無いです」

 ロースの要請に答え、今回の作戦に参加したスプラが青龍のコックピットで呟く。

『何が起こったんだ?』

 同僚からの問いかけにスプラが答える。

「ミサイルのタイミングをわざとずらし、一発目の迎撃で煙幕になった所に二発目のミサイルが来る様にしていたんです。そんな手に来られたら、全員が避けきれるとは、思えませんね」

『地方にもこんな凄腕が居るのだな』

 同僚の言葉にスプラが頷き言う。

「だからこそ、僕の出番です。バルゴ大隊ルースド中隊第一ソオルアーマー小隊、青龍、スプラ=ナダッセ、ソオルライダー、出撃します!」

 青龍は、ソオルシップより出撃するとそのまま、中央の玄武に向って直進する。

 そして、その前に立ち塞がるのは、白虎であった。

『ここは、通さないぞ!』

 通信機越しのガッツの言葉にスプラが答える。

「ロース、ジェネラルは、ミココさんの復職を約束してくださっている。ここを抜けさせる訳には、行かない。押し通る!」

 青龍でアイスブレスを放つスプラ。

 それに対して、両手をクロスさせ、腕からの突風、タイガーロードで受け流す白虎。

「ミココさんに掛かっては、アイスブレスも有効打にならないな。それでも腕の差は、塞がらない!」

 一気に詰め寄り、青龍にドラゴンスケルソードを振り下ろさせるスプラ。

 大きく飛びのく白虎。

『そんなの当るかよ!』

 ガッツの言葉にスプラが言う。

「当てる必要は、無い!」

 連続して放たれるドラゴンブレスが空中の白虎を弾き飛ばす。

 白虎には、大きなダメージが無いが、一瞬、玄武までの道が開いた。

 その一瞬を逃すスプラでは、無かった。

 一気に詰め寄るスプラ。

「これで終わりだ!」

 アイスブレスが放たれようとした時、タートルシェルの一枚が青龍のアイスブレス発射口に迫る。

 反射的にかわすが、射線がずれ、アイスブレスが発射出来ない。

『やらせるか!』

 その間に白虎が迫ってくる。

 舌打ちするスプラ。

「一筋縄では、いかないな」

 トッテの戦場での強さに苦戦するスプラであった。



『現在、玄武の攻撃による損耗率は、予測範囲内です。青龍は、予定通り、白虎を押させております』

 副官が戦場の様子をゼウスのコックピットのロースに伝えてきた。

「よし、いくぞ。帝国、私の力をみせてやろう」

 ゼウスを起動させ、その指を天に向ける。

「これが帝国に逆らう愚か者を裁く、神の怒りだ!」



 物凄い衝撃がサイレントエレファンを襲った。

「何が起こった!」

 ブリッジのバッドの言葉に、ミココが答える。

「ロース殿下のソオルアーマー、お祖父ちゃんの最高傑作、ゼウスのソオル能力、神の怒り。人工落雷による攻撃です」

 それを聞いてバッドが驚きを隠せない。

「まさか、いくらソオルアーマーが凄くても天候まで操れるわけが無い!」

 ミココが小さく溜息を吐いて言う。

「ソオルシップによる事前に雷雲を製造する準備が必要ですが、可能なんです。それにしても一段と命中率が高くなっていますね」

 再び落雷がサイレントエレファンを襲う。

 ティーが真剣な顔で言う。

「この時の為に朱雀を温存しておきました。レッス、ソオルライダーに伝達、目標は、ゼウスの落雷を起こさせる為の右腕のみ。それ以外は、無視して直進と」

「了解しました」

 そして、伝令は、ソオルアーマーデッキに伝えられる。



 朱雀のコックピットで命令を聞いたレッスは、緊張していた。

「今回の作戦は、あたしにかかっているんだ」

『レッス、朱雀の能力を信じて』

 ミココからの通信にレッスが頷く。

「解ってるわよ」

 大きく息を吸い込むとレッスが報告する。

「ソオルアーマー小隊、朱雀、レッス=ミンテ、出撃します!」

 高速発進して、一気に朱雀を上空まで飛ばす。

 その周囲には、雷雲が漂い、危険な状態だった。

 恐怖がレッスを襲う。

『レッス、今までのテストをやって来た自分を信じろ』

 トッテからの通信にレッスが頷く。

「解りました。行きます!」

 こうして、ゼウスに向って朱雀を直進させるレッスであった。



 ゼウスのコックピットのロースにも朱雀接近の情報が入ってくる。

「このゼウスの前で飛行型のソオルアーマーを当ててくるとは、スピードには、かなりの自信があるのだろうが、甘いな」

 次の瞬間、朱雀の前方にランダムに雷が降る。

「これならば、避けきれまい」

 ロースの予想通り、雷の一発が、朱雀に命中し、背中に付いて羽根を思わせるパーツから激しくパーツが飛び散る。

「他の三機と違い、移動能力のみに特化した朱雀では、これが限界だな」

 しかし、その予想は、外れた。

 朱雀の直進は、止まらない。

「馬鹿な……」

 驚くロースだが、事前の資料を頭の中で巡らせて叫ぶ。

「そうか、突発的衝突に対して柔軟性が高く、強度を弱くすることで、故意に破損、開放して本体のダメージを減らす、フェザーガーターか! 確か、アレには、限界があった筈! 近づく前に落とす!」

 雷の雨を降らすロースであった。

 朱雀は、限界までスピードを上げ、何度かフェザーガーターを開放させるが、ゼウスへの接近を成功させる。

『ロース殿下、失礼します!』

 次の瞬間、ゼウスの雷を操る右腕が、朱雀の翼によって切り落とされた。

「まだだ、勝負は、まだ決まったわけじゃない!」

 しかし、その次の瞬間、予想外の展開が起こる。

『ここまでですよ、ロース兄上』

 上空にカルビの顔が映るのであった。

「立体映像? どうしてこんな所にそんな装置が?」

 困惑するロースであった。



 帝都ジョジョエーンの王宮の広場にカルビのソオルアーマー、麒麟があった。

 そしてそこから天にオーチャ中隊とロース率いる大軍の戦闘風景が映し出されていた。

「これは、何なの?」

 モモの言葉にカルビが答える。

「ロング(長距離)ワイド(広域)リアル(高品質)インフォメーション(通信)、通称、LWRI。ミココ先生が、直接戦場に出ることなく、戦場を鼓舞する為に開発し、新型機に搭載したシステムですよ。システムで繋がったソオルアーマーを通じて、空中投影し、音声をさも映像から流れたように加工しているだけ。はっきり言ってしまえば、単なる通信を派手にしただけの物です」

 第三皇子、ハラミが呆れた顔をする。

「そんな物に意味があるのか?」

 高笑いをあげたのは、ジーオであった。

「ミココ=エジソン、一介のソオルマイスターの枠を飛び出している。常に戦場でその存在を誇示できる。これこそ、広大な帝国を支配する皇帝に必要な装備だ」

 カルビが頷く。

「ミココ先生には、無理を言って麒麟に装備してもらいました」

 その言葉が明らかな皇帝の地位を狙う言葉だった。

 ジーオが満足そうに頷く。

「この装備は、正式に採用しよう。今回のオーチャ中隊を使った、新兵器の実戦テストと軍内部の監査は、成功だった」

 その場に居た誰もが驚いた。

『陛下! それは、どの様な意味なのですか!』

 映像越しに今まで見たこともないような取り乱し方をするロースにカルビが答える。

「オーチャ中隊が皇帝暗殺未遂で逃亡していると言う誤報があったので、それを利用して、ミココ先生が開発した新型機の実戦テストと軍内部の監査を皇帝陛下に提案したところ、快く了承していただいた。それだけの事ですよ」

 タンが睨みつける。

「馬鹿な、オーチャ中隊が陛下の暗殺の第一容疑者だという事実は、間違いなかろう!」

 それに対して、ミココが通信に割り込んでくる。

『タン殿下、事件発生時のホワイトタイガーの居場所ですが、新開発していた、ソオルコアレーダーでカルビ殿下の立会いの元で確認済みです。記録は、ソオルタワー及び王宮のメインコンピューターに記録されています』

 ジーオが頷く。

「カルビからこの提案があった時に確認済みだ」

 モモが悔しそうに言う。

「詰り、全部、茶番劇だったわけね」

 カルビがあっさり頷く。

「成果は、十分にありましたよ」

 ティーがバッドに見せたのより詳細かつ最新のデータを公開するカルビ。

「ここまで……」

 青褪めるタン。

「厳罰を与え、粛清を行うべきだ」

 怒りを篭めて言うハラミ。

 それらを見ながらカルビが苦笑しながら言う。

「それについては、また後日、会議を行いましょう。本題は、皇帝陛下の暗殺の黒幕です」

『それが解ったとでも言うのか?』

 ロースの言葉に、肩をすくめるカルビ。

「まさか、黒幕なんて、直ぐに判明しましたよ。ミココ先生なんて悩みもしていませんでしたよ」



 ミココがナノと二人でカルビの私邸に襲撃をかけた日、細かい打ち合わせをしている最中、カルビが言う。

「さて、今回の黒幕は、誰だと思いますか?」

 ミココが眉を顰める。

「本気で言ってるの?」

 カルビが頬を掻きながら言う。

「まさか、物凄く単純なんですか?」

 ミココが笑顔で言う。

「さて、どうして単純になったのでしょうか?」

 カルビが必死に頭をひねり言う。

「あくまで偶然だったから?」

 ミココが頷く。

「そういうこと、今回の計画は、後々の事を考えて複雑に入り組んだ計画で無く、モモ殿下のあちきを利用した現行体制の切り崩し作戦の阻止失敗から逆転の一手。本人は、好手だと思っているかもしれないけど、目的が隠し切れない浅い悪手だったよ」

 カルビが呟く。

「数年がかりで人を陥れるのがデフォルトのミココ先生と比べればたいていの手が浅いんでしょうね」

 ミココが苦笑する。

「どんなにガードしても馬鹿の一手に覆される事もあるよ。今回みたいにね」

 そしてカルビが言う。

「ミココ先生は、犯人の悪手の原因は、何だと思いますか?」

 ミココが溜息混じりに言う。

「器じゃなかったって事。多分、普通の王国の王様だったら十分だったかもしれないけど、帝国の皇帝には、分相応だったって事。皇帝には、最初に決めた道をまっすぐ突き進む意思が必要。どんなに素晴らしい宝があっても、それをとる為に道を踏み外す人間には、皇帝の道は、進めない」



 カルビからミココとの会話を聞いてジーオが頷く。

「至言だな。お前達も肝に銘じておくことだ」

「言われるまでもない事ですわ」

 モモが自信たっぷり答え、ハラミは、無言で答えず、タンは、動揺する中、カルビが天に映るロースに告げる。

「詰り、そういうことです。ロース兄上、貴方は、皇帝の器では、無かった。皇帝陛下を殺害することで、その地位を奪える貴方が暗殺の黒幕だ!」

 動揺が広がる中、ロースが反論する。

『証拠は、何処にあるのだ。お前にそれが示せるのか!』

 カルビが頷く。

「オーチャ中隊の追撃に集中するあまり、証拠隠蔽が不十分でしたね」

 カルビが指を鳴らすと、ホワイトタイガーに似たソオルアーマーが出てくる。

「廃棄直前に回収しました、実際に犯行に使われたソオルアーマーです。金で動くノーウの配下を使って偽造した製造依頼書に、実行犯も居ますよ」

 悔しそうにロースが言う。

『私は、皇帝になる為に生まれ、育ってきたのだ! 誰にも奪わせる物か!』

 カルビが視線を送るとジーオが宣言する。

「皇帝の地位は、奪い取るものだ。私がそうだった様にな。皇帝の名の下に、その反逆者を捕らえよ!」



 ゼウスのコックピットで必死の形相でロースが言う。

「まだだ、まだ終りじゃない!」

『陛下の命令です、抵抗なされないで下さい』

 周囲のソオルアーマーがゼウスを捕縛しようと接近するが、ゼウスは、その雷撃を直接撒き散らし、爆発させる。

「ここは、撤退する。だが、覚えておくことだ! 私こそ皇帝に相応しい人間だと!」

 逃走しようとするゼウスの前に青龍が舞い降りる。

『そこまでです、ロース殿下!』

 青龍、ミココが作ったソオルアーマーを見てロースが言う。

「全ては、お前が悪いのだ! ミココ=エジソン、お前が全てを狂わせたのだ!」

 雷撃を集中させるゼウス。

 青龍は、アイスブレスで生み出した氷でその電流を逸らす。

『こっちにも居るぜ!』

 白虎が容赦ないタイガーロードパンチを放ち、ゼウスにダメージを与える。

「そっちもか!」

 今度は、雷撃を白虎に向けるロース。

 しかし、その雷撃は、玄武のタートルシェルが防ぐ。

『お終いです』

 トッテがそういった時、ミココによって作られた四体のソオルアーマーがゼウスを囲っていた。

 そんなゼウスを見て天上に映るジーオが告げる。

『皮肉な話だ。皇帝の意思の代弁なる為に作られたその四機のソオルアーマーがお前の皇帝への道に立ち塞がるのだからな』

「私は、絶対に諦めないぞ!」

 ロースの絶叫は、虚しく響き渡るのであった。



 数ヵ月後の貿易都市ナニーワ近くのオーチャ中隊の駐屯基地。

「今でも思うが、俺達全員が騙されていたが、全部お咎めなしでよかった」

 しみじみ頷くトッテに不満そうな顔をするガッツ。

「俺は、白虎を奪われた挙句、タンクパイロットに降格しましたけどね」

 レッスが呆れた顔をして言う。

「当たり前の事を言わないの! 事件の発端忘れたの? ガッツが勝手にホワイトタイガーを使わなかったらあそこまで大事にならなかったのよ! ソオルアーマーを勝手に使って降格で済んだのは、中隊長の温情なんだからね」

 頷くトッテ。

「そうだぞ、普通なら軍法会議を受けた後、禁固刑もありえたんだからな。だいたい、白虎を含むミココが作った新型ソオルアーマーは、皇帝陛下から、皇帝の代弁者、スポークスマンオブエンペラー、SOEの称号を与えられたんだ、地方の一中隊に配置されたままなわけ無いだろうが。修理が終ったホワイトタイガーが残ったんだって、ソオルアーマーの補充なんて見込めない実情を知るミココが裏で手を回してくれたお陰だぞ」

 レッスが少し寂しそうに言う。

「ミココは、ソオルタワーに行っちゃたね」

 苦笑するトッテ。

「仕方ないだろう、あれだけの才能だ、こんな所で一メカニックなんてやらせてもらえないだろう」

 そこにバッドがティーとやって来ていう。

「ホワイトタイガーの調子は、どうだ。大隊長からは、代わりのソオルアーマーを手配しても良いと言っているぞ」

 トッテが肩をすくめる。

「あのクラスに慣れると、流石に普通のソオルアーマーに乗るのは、抵抗がありましてね」

 ティーが苦笑しながら言う。

「そうですか、ゼウスの攻撃で元々中古でしたサイレントエレファンが亡くなり、その代わりの手配が遅れているのが、ホワイトタイガーに対するやっかみなんですけど、どうしても駄目ですか?」

 トッテが困った顔をする。

「そこ等辺は、ミココのコネを使ってなんとかなりませんかね?」

 バッドが呆れた顔をする。

「ミココは、SOEを共同研究したとして新しいタワーマスターに選ばれたゲナウ殿の直属としてファーストのトリプルスターに成ったんだぞ、あまり迷惑をかけるな」

「まあ、ミココさんには、頼んであります」

 ティーがあっさり言ってバッドに睨まれるがそれを無視して続ける。

「しかし、帝都は、第一皇子、ロース殿下がノーブルス大陸の僻地に幽閉された事による騒動がまだ大きいですから、暫くは、無理でしょうね」

 そんな時、ガッツの視線に奇妙な白い物体が目に入る。

「あれなんだ?」

 ガッツが指差す先を一同が見る。

「山じゃないよね?」

 トッテが冷や汗を垂らしながら言う。

「……動いてるぞ」

 バッドが驚いた顔をして言う。

「あれは、中隊全体の移送を想定した大型ソオルシップ、それも新型だ。それが何故」

 ティーが頬を掻く。

「なんとなく嫌な予感がしますね」

 近くまで来たそのソオルシップの中からミココが手を振る。

『ティーさん、約束してたソオルシップですよ!』

 遠い目をしてティーが呟く。

「何故か、また大騒動に巻き込まれる気がしてきました」

 その予想は、的中する事になるのであった。

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