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真説ソオルアーマー戦記  作者: 鈴神楽
西部:逃走編
12/34

再来襲する青龍

戦力が激減したオーチャ中隊に青龍が迫る

 帝都ジョジョエーンの会議室。

「カルビ、一つ聞いていいかしら?」

 第一皇女、モモが意味ありげな口調で尋ねると第四皇子、カルビが笑顔で答える。

「何でしょうか、姉上」

 今にも凝固して床に落ちそうな空気の中、モモが言う。

「あの青龍だけど、どうみてもミココ=エジソンが設計したソオルアーマーに思えるのですけどね」

 あっさり頷くカルビ。

「そうですが何か?」

 第二皇子、タンが立ち上がる。

「やはり、ミココ=エジソンひいては、オーチャ中隊と繋がっていたのだな!」

 それに対してカルビが淡々と答える。

「あれは、ゲナウ、ソオルマイスターが製造した物です。計画自体は、私の愛機、麒麟と同時にあった物ですので、基礎設計は、かなり前に終っていたのですよ」

「その言葉を信じろと言うのか?」

 第一皇子、ロースの顔を正面から見てカルビが答える。

「計画は、正式な形で申請されていますから確認して下さい。まあ、正確には、優先順位がかなり低い状態にあったものをノーウが自分の才能不足を補うために勝手に開発を再開したのでしょうがね」

 緊張に包まれる会議室の中、第三皇子、ハラミだけがカルビの嘘を確信していた。

 彼の目には、青龍の動きが一度対戦したホワイトタイガーの技術を大いに流用されていることがはっきりと見えたからだ。

 しかし、ハラミは、あえてそれを指摘しなかったのは、青龍がオーチャ中隊をギリギリまで追い詰めた事実。

 ここで、下手な事を言えば、更に混乱が増すことが明確だったからだ。

 そして先にカルビが切り札を出してきた。

「それは、そうと一つ面白い情報があります。ミココ先生が大きな買い物をしたそうですよ」

 モモが睨みながら言う。

「何を買ったと言うのよ」

 カルビが答える。

「ノーウの失脚に伴い煩雑になった状況を利用して、その研究成果を無理やり買い取ったみたいです。それは……」

 その答えに場が騒然とするのであった。



 ティーの執務室に何時ものバットとミココ以外にハンマも呼ばれていた。

「それで、ソオルアーマーの状況は、どうでしょうか?」

 ティーの質問にハンマが頭をかきながら言う。

「ホワイトタイガーの故障は、なんとかなる。ブルーイーグルⅡは、冷気ダメージがキツイ。実戦に出すとしたら一度、ばらして検査した方がいいな。ブラックアックスについては、御臨終だ」

 それを聞いてティーが真剣な顔で尋ねる。

「冷気によるダメージは、それほど深刻なのですか?」

 ハンマが視線でミココを促す。

「直接的ダメージの問題よりも極度の温度差が問題なんです。北のノーブルス大陸の豪雪地に通常整備のソオルアーマーを持っていくと三日も持たずに故障を起こすのと一緒で、金属パーツの低温による縮小が機械トラブルの元になるんです」

「ブラックアックスの致命傷もそれだ。幾つかのパーツがソオルアーマーの起動で高温化している所を急激に冷し、パーツの不整合が発生させ、稼働機構に深刻なダメージを与えた。他にも温度差による金属破損なんていう現象も起こっていて手の施しようも無かった」

 ハンマの細かい説明を受けてバットが言う。

「それで、具体的に、どれだけの時間があればブルーイーグルⅡを戦闘に戻せる」

 ハンマは、嫌そうな顔をしながら答える。

「目視では、発見できない金属内部の疲労による事故を覚悟すれば三日でなんとかする」

 それがハンマにとって仕方なくの意見だと言うのが解ったがバッドが言う。

「状況が状況だ、仕方あるまい」

 そんなバッドとハンマを見てミココが大きく溜息を吐いて言う。

「あっちと同じ手を使うしかないみたいですね」

 ティーが頷く。

「事故の危険を抱えたソオルアーマーを使うよりは、ましでしょう」

 バッドがそんな二人を見て嫌そうに言う。

「また、何かを隠していたな」

 ミココが遠い目をして言う。

「青龍が基礎テスト終ってるんですよ。それが何を意味すると思いますか」

 それを聞いてハンマが苦笑する。

「ホワイトタイガーと同じ状況と言う事か」

 肩をすくませてミココが言う。

「基礎テストが終っているだけましですけどね」



 重苦しい空気が漂うソオルアーマーデッキ。

 ブラックアックスを見上げるトッテ。

 解体されたブルーイーグルⅡを心配そうに見るレッス。

 そんな二人を尻目にホワイトタイガーに乗っていられるかと思ってしまう自分を責めるガッツ。

 メカニック達も声をかけられないでいた。

 そこにハンマが帰ってきた。

「ブルーイーグルⅡは、直ぐに組み直せ。次の補給地でまともな整備システムがある場所に搬送するぞ!」

 それを聞いて驚き、レッスが駆け寄る。

「それじゃあ、あたしの乗るソオルアーマーは、どうなるって言うんですか!」

 それに対してミココが頬をかきながら言う。

「暫くは、前線に出れるのは、無しって状態になるね」

「嘘……」

 崩れるレッス。

 ハンマは、トッテに近づき言う。

「すまないが、ホワイトタイガーには、お前さんが乗ることになったから調整を手伝ってくれ」

「そうなるな。解った」

 トッテが振り切るようにブラックアックスから視線を外しホワイトタイガーに近づいていく。

 そんなやりとりを見てガッツがミココに駆け寄る。

「どうして俺がホワイトタイガーを降ろされるんだよ!」

 ミココがはっきりと答える。

「トッテさんの方が上手く乗れるからに決まってるでしょうが」

「クソー!」

 怒りを床にぶつけるガッツ。

 そして、ハンマが怒鳴る。

「お前等、新型が三機搭載される。デッキを整理し、予備ベッドのメンテもしておけよ!」

 その言葉に誰もが驚くのであった。



 補給場所で、新しいソオルアーマーを受領するオーチャ中隊。

「取り敢えず、後の二体は、データが無いからこれ以上の作り込みは、ミココちゃんに任せるそうよ。必要なシステムや機材、データがあったら言ってね。それとこれは、今までのテストデータ。頑張って解析してね」

 山の様なテストデータのプリントを見てミココが言う。

「あちきには、整備の仕事もあるんだけど……」

 偶々傍を通ったハンマが言う。

「新型を使えるようにするのが先だろが、お前は、終るまでそっちを優先だ」

「……了解」

 複雑な顔をするミココ。

 そこにガッツとレッスが駆け寄ってくる。

「なあなあ、俺の新型は、どれなんだ?」

「もったいぶらないで教えてよ!」

 ミココが気楽な二人に溜息を吐きながら言う。

「食堂で説明するよ」



 食堂には、新しく来た三体のソオルアーマーについて知りたい人間でごったがえしていた。

 その中、ミココが会議室から持ってきたホワイトボードに簡単な世界地図を書きながら言う。

「元々は、青龍を含む四機のソオルアーマーは、カルビ殿下専用機、麒麟直下で各大陸を同時に威圧するプランの元に設計した、フラグソオルアーマーなんです。アイスブレスという特殊なソオル能力を使えるエレメント派をベースにした青龍」

 東のイースタン大陸にソオルアーマー、青龍のイメージが書かれる。

「近距離戦を得意としたアニマル派をベースとしたホワイトタイガーの正式版、白虎」

 西のウエスター大陸にソオルアーマー、白虎のイメージが書かれる。

「スカイブルーロッドに使われた通常兵器とソオル能力をあわせた武装を持つウェポン派をベースにした玄武」

 北のノーブルス大陸にソオルアーマー、玄武のイメージが書かれる。

「どんな環境でも運用可能なバードフィッシュ派をベースにした朱雀」

 南のサウーザ大陸にソオルアーマー、朱雀のイメージが書かれた。

「当然、その白虎には、俺が乗るんだよな?」

 ガッツの言葉にミココが頷く。

「トッテさんには、まだ確実性が高いホワイトタイガーに乗ってほしいからね。実際問題、どれもまだテスト段階で、ホワイトタイガーという近似値を持つ白虎以外は、とうてい実戦に出せる状態じゃない。今後は、テストと調整を繰り返して、実戦に投入する予定だよ」

 それを聞いてメカニック班がどよめく。

 ミココは、申し訳無さそうに言う。

「そういうことで、迷惑かける事になります」

 手を合わせて頭を下げるミココ。

「解ったら、さっさと持ち場に戻れ。やる事は、山ほどあるんだ!」

 ハンマの一声でその場は、解散になるのであった。



 バルゴ大隊のウエスター大陸基地のソオルアーマー整備所では、メカニック達が最新鋭のソオルアーマー、青龍の凄さに驚いていた。

「凄いソオルアーマーですね。アイスブレスによる影響もパーツの取替えで問題ないようにされています」

 メカニックの言葉にスプラが答える。

「感謝する。これで今度こそ、あの部隊を捕まえられる」

「頑張ってください」

 メカニックの言葉に頷くスプラであった。



 数日後の食堂の一角では、大量のデータと格闘するミココが居た。

「そこだ!」

 ミココの手刀がプリントの一部を抜き取る。

「正解。えーと、それで、こっち!」

 プリントの束を蹴ると測ったようにミココの手元に必要なデータが崩れてくる。

「何を愉快な事をしてるんだ」

 ガッツが突っ込むとミココが疲れた顔をして言う。

「これだけの資料の中で本当に必要なものなんて本当に一部なんだよ。それを勘で引っ張り出しているだけ」

 レッスがデータタワーを見上げながら言う。

「一部って他のデータは、無意味って事?」

 ミココは、首を横に振る。

「必要なデータを裏付けるための資料とそのデータを捕捉する資料諸々で、何で必要になるか解らないんだよ」

「大変ね」

 顔を引き攣らせるレッスにミココが問いかけ返す。

「それで、白虎のテストの方は、進んでる? それやっておかないといざって時に困るんだけど」

「それだったら三交代制でやってるよ。それで今は、整備中だ」

 ガッツの答えに大きな溜息を吐くミココ。

「メカニックの皆もハードワークさせているんだよね」

 手元の改修プランのリストがそれを更に過酷にする事実にミココの気苦労も耐えない状態であった。

 そんな中、警報が鳴り響く。

『再びスピードチーターを確認、各員、至急戦闘準備に移ってください』



 即座に動き出すガッツ達だったが、問題が発覚した。

「白虎が動かせないってどういうことだよ!」

 文句を言うガッツにハンマが諭す。

「整備中だったんだ、今、急いで出撃準備をしているから少し待て」

「整備中でも構わないから出させろ!」

 強引なガッツにトッテの拳骨が落ちる。

「整備の事は、整備班の指示に従え。それが出来ないんだったらソオルライダーは、諦めろ」

 悔しそうにしながらも頷くガッツを尻目にトッテが言う。

「折角直してもらったホワイトタイガーだが、あまり良い結果が出せそうも無いぞ」

「お前が無事に帰ってくれば何度でも直してやるから安心しろ」

 ハンマの答えにトッテが礼を言ってホワイトタイガーのコックピットに向う。



 サイレントエレファンに向う青龍のコックピットでスプラが呟く。

「今度こそ、必ず倒す!」

 その時、視界にホワイトタイガーが入ってくる。

「今までのようには、行かないぞ!」

 通常のドラゴンブレスで牽制を行い、一気にドラゴンスケルソードを振り下ろす青龍。

 しかし、ホワイトタイガーは、紙一重でそれを避けるとその腕を掴み、投げ技を放ってくる。

 空中で青龍を緊急上昇させて、追撃を避けるスプラ。

「この技の切れ、ガッツじゃないな!」

『ばれたか、前回の戦いで俺のソオルアーマーも壊されたんでな、ホワイトタイガーは、俺が使うことになった』

 舌打ちするスプラ。

「トッテ小隊長にホワイトタイガーを乗られたら苦戦は、間逃れない。しかし、負けない」

 こうして両者の攻防が始まる。



「凄い、あれって本当にソオルアーマー戦なの?」

 ソオルアーマーデッキでソオルアーマー同士とは、思えない格闘戦を繰り広げる青龍とホワイトタイガーにレッスが驚く。

「蹴りを普通に出せる格闘戦をソオルアーマー同士で行うなんて普通は、ありえないな」

 ハンマが感心した様子で言う。

 そうしている間に青龍が距離をとり、必殺のアイスブレスを放つ。

 避けきれず、ホワイトタイガーがダメージを食らうが、喰らいつき、ホワイトタイガークローを決める。

 こっちも必殺の一撃だが、ダメージを食らった部分が自壊し、ダメージの広がりを留める。

 歓声があがる。

 ハンマが舌打ちする。

「やっぱりあのアイスブレスは、厄介だな。直接ダメージだけでなく、冷気による間接ダメージが確実にソオルアーマーの動きを悪くする」

 その言葉通り、少しずつだがホワイトタイガーが押され始めるのであった。

 そして二発目のアイスブレスがホワイトタイガーの片腕を凍りつかせる。

 それをみてハンマが白虎の整備を行っているメカニックに言う。

「改修箇所は、穴埋めだけにしておけ、出すぞ!」

 答えて、メカニックが動くのであった。



 二発目のアイスブレスで格段に動きが悪くなったホワイトタイガーのコックピットでトッテが言う。

「ミココ、天才過ぎる。あんな防御システムまで構築してるなんて反則としか言えないぞ」

『見事な腕前です。しかし、僕も負けるわけには、いかないのです』

 スプラがそう言って、近づき組み合ってくる。

 咄嗟の突風のソオル能力を起動させ、体当たりをかますトッテ。それで多少は、後退する青龍から出力を限界まで振り絞って飛びのくホワイトタイガー。

 一瞬前までホワイトタイガーの居た所に青龍のドラゴンスケルソードが振り下ろされていた。

 しかし、そこがホワイトタイガーの限界だった。

「突風を使った影響か、ろくに動かない」

 舌打ちするトッテ。

 そんなホワイトタイガーにとどめのアイスブレスが向ってくる。

「終わりか」

 その時、ホワイトタイガーに横からの振動が襲う。

『何とか間にあった!』

 トッテがモニターで確認するとそこには、白虎が居た。

「ギリギリだが、良いだろう。アイスブレスを三発使わせてある。後は、一発が限界の筈だ。行って来い!」

『了解!』

 ガッツは、そう返事をして白虎を青龍に向わせるのであった。



「あれは、まさか、新型。でもどこから?」

 青龍のコックピットで困惑するスプラ。

「もしかして、ゲナウさん達は、ミココさんとまだ繋がっているのか?」

 そこに白虎が突っ込んでくる。

『ぼーとしていると、死ぬぞ!』

「考えるのは、後だ! 行くぞ!」

 スプラは、頭を切り替え、白虎と組み合うが押され始める。

「同じ新型では、接近戦は、不利なのか?」

 一度、距離をとるスプラが通常のドラゴンブレスを放つが、白虎は、信じられない機動性で全てを避けてしまう。

 再び間合いが詰められる。

『これが新必殺技だ! タイガーロードパンチ!』

 突き出される白虎の拳をスプラは、青龍をギリギリの所で避けさせた。

 だが、次の瞬間、青龍が吹き飛ぶ。

 喰らった瞬間、攻撃の正体に気付くスプラ。

「突風のソオル能力を腕に纏わり付かせて放ったのか。これでは、避けるのも容易じゃない」

 最後の賭けの為、ギリギリまで白虎を待つスプラ。

 回避不能の所まできた所で最後のアイスブレスを放つ。

 それは、距離からしてとうてい完全に避けられる間合いでは、無かった。

 しかし、白虎は、完璧に避けた。

 冷気が作る白い煙がその正体をスプラに教える。

「突風を機動に使用するシステムまで組み込まれているのか」

 警告のランプが鳴り響くコックピット。

「このまま、引けるか!」

 そこにスピードチーターから連絡が入る。

『スプラ、ソオルライダーひけ。帝都から緊急連絡が入った。ミココ=エジソンが最新鋭のソオルアーマー三機を裏技使って手に入れたのが判明し、大掛かりの作戦が動くことに決まった。それと同時に我々の攻撃中止命令も来ている』

 ルードス中隊長の言葉にスプラが反論する。

「もう少しだけやらせてください!」

『駄目だ、それは、貴重なソオルアーマーなのだ。無事持ち帰るんだ』

 スプラは、その言葉に従うしか無かった。



「なんとか、青龍の襲撃は、しのぎきりました」

 サイレントエレファンのブリッジでバッドが言うとティーが真剣な顔で言う。

「次は、大規模な戦闘になります。それまでにどれだけ戦力を整えられるかが、勝負の分かれ目になるでしょう」

 バッドも頷くのであった。

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