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王女の復活

 勇者によるローレンさんとセルディア王女の衝撃宣告、まさかのショタコン。

 同一人物である可能性はあるが、ローレンさんの口調は明らかに王女王女してない。

 だからローレンさんはセルディア様とは違う人⋯って、そんな事を言っている場合じゃない!

 どっかで目という名のカメラを光らせている王女が、近くに潜んでいるかもしれない⋯!

 に、逃げなければ⋯逃げなければ⋯!


 「ほっ、」

 「はっ!?」

 「捕まえた♪」

 「⋯すぅ〜はぁ〜⋯⋯⋯ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」


 捕まえられてしまった⋯!か、監禁される⋯⋯!

 嫌だ!監禁されたくない!こんなところで道草食ってる場合じゃないのに!

 ショタコンは絶対にメンヘラかヤンデレだ⋯挑発的で捻くれたアディナとは正反対。

 そういう奴は好みのタイプを見つけたら、すぐに食らいつくように相手を捕らえ、監禁すると昔読んだ物語で教えてもらった⋯!

 しかも、監禁されたら何をされるかわからないし、いつ解放されるかもわからないんだそうだ⋯!

 そんなの嫌だ、僕はこの世界に来てから数時間しか経ってないんだぞ!!

 というか、なんで僕がショタ扱いなんだ⋯後ろにもっと可愛い少年が居るだろ!


 王女に逆らうなんて並の国民じゃ絶対しないと思うが、僕はそんな事はお構い無しに王女のきつく結ばれた腕から脱出しようと藻掻いた。

 だが⋯王女の腕は、ガッチガチの鉄の鎧や盾のように重く、磁石のようにしっかりくっついていて動かない。

 ダイヤモンドで作られた縄で、腹をぎゅっと縛られたような感覚だ⋯正直苦しい⋯⋯

 これが重き愛の束縛か⋯!これがヤンデレか⋯!!

 地獄より地獄している!!檻より檻している!!


 あぁもう自分でも何言ってるかわかんなくなってきた!!

 取り敢えず誰か、助けてくれぇ⋯!!


 「はぁ、もうしょうがないわね。⋯コホン。セルディア様、その方は貴女様の御行動、束縛によって苦しんでおります。無礼を承知で申し上げます⋯どうかその方を、解放して頂けませんでしょうか?」


 アディナ!!ありがとう⋯⋯!!

 あと、なんか礼儀正しくなった!

 挑発的で捻くれたアディナが、急に礼儀正しいお嬢様っぽくなった!

 これは一種の才能、「多重人格」というやつだな!!


 ダメだ、錯乱している。

 心の中の言葉一つ一つに、理性がない⋯

 とにかく苦しい⋯


 「束縛だなんて⋯人聞きが悪いわ。んじゃあ、貴女はこの子のなんなのかな?さっきまで地味にくっついていたからね。それが聞けないと、この子は解放してあげられないわね。」


 女性口調と男っぽい口調が混ざり合ってる⋯セルディア様も多重人格者か⋯⋯?


 「⋯⋯!?⋯⋯わ、私は⋯この人、の⋯⋯(無茶振りを吹っ掛けないでよクソ女っ⋯!)」

 「なに〜?言えないっていうの〜??」


 わぁ、うぜぇ⋯王女としての風格がまるでない。

 モブでよくいる、陰口言ってくるお嬢様みたいな感じだ⋯⋯

 アディナ〜、無理して良いこと言わなくていいぞ〜。


 「私は⋯この人の、この人の⋯⋯!!嫁ですっっ!!!!!!」

 「⋯⋯は?」

 「い、いつの間にアディナ⋯転移者に好意を⋯⋯!!」

 「ふぅ〜ん、なら仕方ありませんねぇ⋯」


 いや、仕方なくねぇよ!!

 僕と??アディナが??出会って数時間で??嫁ぇぇぇ!?

 無理があるっての!たしかに仲間だし、すこぉぉしだけ会話しては居たけど⋯

 それでも僕は、挑発的で棘がある女は嫌いなんだ!!

 だからアディナとなんか、アディナとなんか⋯!!アディナ、と⋯なんか⋯⋯!

 僕は顔の赤色が限界を突破し、アディナと同じタイミングで意識を失った。

 

 ―セルディア城 玉座の間―


 目が覚めると、僕は玉座の間と思われる場所に、ぐてーっと横たわっていた。

 周りを見ると、勇者と他の勇者三人組が、異世界でよく見た姿勢をしていた。

 「跪く」ってやつらしい。

 どうやらヤンチャ三人組とアディナは、別室に居るようだ。


 「ほら、君もこのようにしなさい。」

 「は、はい。」


 過去二回ほど、この姿勢を鏡の前で真似していた。

 その二回とも我乍ら、綺麗な姿勢だった。

 だから今回も綺麗に出来るはず⋯!


 「ありゃま、」

 「なに、してるんだ⋯?」

 「転んだんでしょう⋯言い方は悪いのですが、滑稽の極みですね。」

 「初対面なのに、愛着が湧くね。」

 「ローレン、普通はこの時に愛着など湧かんぞ。」


 失敗した⋯変にバランス崩して倒れてしまった。

 転んだわけではない、倒れたのだ。

 言い方の悪い勇者が居たもんだ。


 でも、玉座には誰も居ない。

 (もぬけ)の殻⋯といったところか。

 セルディア様は一体何処に⋯?

 も、もしかして背後に潜んでたりとかしないよな⋯?


 と思ったら、瞬間移動の如く急に目の前に現れた。

 やっぱり僕は、セルディア様苦手なんだな。

 変なことに気づいてしまった。


 「⋯コホン。四人の勇者、そして転移者。よく生きて帰ってこられましたね。勇者は私の夫に操られ、転移者の話によると操る魔法が解けた時に、白骨化したようですが⋯そこに転移者が「疑似魔法」を使って蘇生したと。素晴らしい。転移者には本当に感謝しかありません。そして勇者には、私が夫に代わり謝罪をさせて頂きます。本当に、申し訳御座いませんでした。今後はこのようなことがないように留意致します。」


 なんか、色々変わったな⋯⋯

 最初出会った時は、王女らしからぬ態度と口調、装いだったのに対し、

 玉座の間で現れた途端、人が変わったように話し始めた。

 服もボロボロのだったのが、気品のある美しいのに変わってるし。

 切り替えが早いのか多重人格なのか⋯全くわからん。


 「貴女様が悪いんじゃありません。王女様の助けになれず、情けない姿を見せてしまって、王にその心を付け狙われるほどの詰めの甘さを晒してしまった、私達勇者の責任で御座います。」

 「王女様は優しいから、いつも自分の本音が曝け出せなくて、苦しかったんだよね⋯。傍にいる事が使命みたいなものの僕達がそういう時に居なくて、支えることが出来なかったことも、王が醜い策略を仕掛けたことも、悔しいし許せない。」

 「早く僕達が王の計略に気付けていれば、操られる前に国民や王女を救うことができたのだと思うと、悔しさで胸が痛みます。」

 「あまり自分を責めないで、貴女様は私達の誇りです。国民の為に動いて救って下さったのですから。これからのことは、私達で考えてゆきましょう。貴女様だけが抱えることはないのですよ。」


 良い言葉だ、これが勇者の風格か。

 なんだか憧れるなぁ⋯不意に頬に涙が伝った。


 「⋯⋯泣いておられるのですか?転移者さん。」

 「⋯はい、少し⋯っ、」

 「私が抱きしめて差し上げましょう。」

 「そ、そんなこと⋯しなくても⋯⋯」


 僕は春光のような、優しく暖かい抱擁を受けた。

 はぁ、暖かい⋯幼い頃に母に抱きしめられて以来、こんな感覚は感じていなかった。

 懐かしい感覚だ⋯⋯落ち着く間もなく、僕はまた涙を流した。


 「きっと元の世界で、嫌なことがあったのでしょう?心の臓を貫かれるような苦しみ、長きに渡る誰にも言えなかった悩み、孤独に苛まれた感覚、様々あったのでしょう?なら、私がその全てを受け止めます。貴方は私達の命の恩人なんですから。」


 ”ありがとう”、そんな簡単に言える感謝の五文字も発せないまま、僕は王女に身を委ねた。

 勇者三人が僕を見ているというのに、高校生らしからぬ情けない声で、息が苦しくなる程泣きじゃくった。


 「寝たみたいね、ぐっすりと。」

 「よく泣いていたな。余程の事があったんだろう⋯現実世界で⋯⋯抱きしめられるのは非常に羨ましいのだがごフォッ!!」

 「しゃしゃり出てこないでくれないかなロウスさん!!」

 「王女様〜!お気になさらず〜!!」

 「こいつはただ変態なだけ。」

 「そ、そうなのね⋯」

 

 暫くして落ち着くと、無意識のままに僕は眠ってしまっていた。

 王女の膝の上で、膝枕として寝かせられていたみたいだ。

 決して変態とは思われたくないが、すごく暖かくて、暴れながら泣く赤子でもすぐ落ち着きそうな心地だった。


 いや、やっぱ変態だ。

 勇者にもそういう目で見られたに違いない、そっちの方が恥ずかしくて嫌だ。


 「目が覚めたみたいねっ。ちょっとは落ち着いたかしら?」

 「お陰様で⋯⋯先程は、無礼をしてしまって、申し訳ありませんでした!」

 「良いのよ。私は君の苦しみを知ったから。まぁ、全て知ったわけではないけどね⋯」

 「それだけで十分です!本当に、有難う御座います!」

 「礼も大丈夫だって笑 まぁ、気持ちは嬉しいけど!」

 「というか、此処は何処でしょうか⋯?」

 「私の部屋よ。」

 「⋯へ?」

 「気に入ってくれると嬉しいわ!」

 「あ⋯⋯ぁ、え?」


 僕は王女様の部屋に居た。

 王女様に連れて行かれたみたいだ。

 うん、なんで?


 「どうしたの?さっきから動揺しちゃって。気楽でいいのよ気楽で!」

 「い、いや⋯どうして王女様の部屋に⋯⋯?部屋は非常にモダンな感じで、おしゃれで、気に入りましたけど⋯⋯」

 「どうしてって、そりゃあ可愛いからよっ!あと部屋のこと褒めてくれてありがとっ!」

 「そ、そうですか⋯」


 出た!根性論に近しいデタラメな論、「可愛い論」!

 僕はそれが意味不明っていうか、理解不能なものなんだよ!!

 なんかなんとなくだけど、扉の方から闇のオーラみたいなの感じるし⋯!

 正直怖いよ!この状況、この雰囲気が!!

 ドMの言うことだろうけど、悪い意味でゾクゾクしちゃうよ!!

 胸が痛いよ!苦しめられてはいないけど、精神的な面で胸が痛いよ!!


 「国民の方は安心して、君達が来る前に全員目を覚まさせたから。」

 「よ、良かった⋯⋯」


 聞く前に気になること答えてくれたよ!

 僕の思考が読めるのかこの王女、とんでもない人だな⋯⋯


 「そうだ!君に頼みたいことがあったんだわ!」

 「⋯頼みたいこと?」


 国に関することか?

 いや、にしては急過ぎる気がするな。


 「今この国って、建物とかそういうのがなくって、食料もない状態で、お金も殆どない状況でしょ?」

 「はい。」


 やっぱり国に関することだ⋯すごく急だな。


 「国民もみんな落ち込んでたり、パニックになってたり、驚いてたりしてて、国の護衛の人も気を落としてるみたいなの。他の国との貿易関係も全て空になっちゃったし、そこから立て直すには、少しでも頭の良い人が居なくちゃいけない。私一人でどうにか出来ることじゃないし、勇者の皆さんに任せるのも気が進まないのよ。だから、この国に暫く留まって、もう一度蘇らせて欲しいの!」


 すごい無茶振りを強いられているが、不服とは思ってないし、それが無駄とも思っていない。

 逆にそれがしたかったんだ。

 誰かのためになるような、そういう仕事がしたかったんだ。

 僕にとってはそれが丁度良い、都合がいい。

 約半年もすれば、僕にとっては初めてで、国民や王女にとっては数年ぶりの霧戦が始まる。

 そこに備えるためには国の敷居を高めなければならない。


 やろう、この国のために。

 動こう、僕の夢を叶えるために!


 「わかりました、やります。僕――やりますよ!!」


 つづく

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