国蘇生
―砂に覆われた国 勇者が死んでいた地点―
アディナに会う前に聞こうとした、”平等”に関してのことと、勇者が僕達の言葉を理解できること。
その言葉を話せることについてのことを勇者に聞くと、
まず、”平等”のことについては、どうやらこの国の剣や魔法のことは疑似魔法のこと以外不鮮明であり、
仮の基準として”平等”という言葉が使われているらしい。
王が国民全員を奴隷にしたせいで、この世界における魔法の詳しき情報を知ることが出来なかったのだろう。
疑似魔法のことについても、王は知らなかったらしい。
知っておいたほうが得だったというのに⋯⋯王はとことん頭が悪い。
僕達の言葉を理解できる理由、その言葉を話せる理由については、使われる言葉が別世界の言葉と混ざっているからだそうだ。
普通は別世界のものが異世界に混ざるなんてことはないんだがな⋯過去にこの世界のこの国に飛ばされた転移者が居たんだろうか。
それについても聞くと、十数年前にそれらしき人が来て、様々な言葉を奴隷や勇者たちに教えていたそうだ。
王にそのことが伝わり、怪しい情報を流しているとしてすぐさま殺されたみたいだがな。
ほんと、王は自己中心的だな。
そんな性格だから、奴隷である国民にも妻にも裏切られるんだ。
操られてからは辺りを彷徨い、数週間もするとその魔力が切れ、我を取り戻したらしい。
そして、ここで野垂れ死に白骨化した。
他の勇者は数週間も生き残ることが出来ず、その亡骸が砂の中に埋まった状態に。
惨い、血すらもこの砂漠の下敷きになってしまったのか。
王の妻も国民も、国を変えようと革命の狼煙を上げた。
我慢の限界だったんだろう、当然の行動だ。
それを王は愚で固めた。常識的な衝動、行動を全て拒絶し、醜さで埋め尽くしたんだ。
勇者という、従者であってはならない命達で⋯
ますます許せなくなった。
自分の権力を使い、自分勝手に動き、犠牲を厭わず、情がない。
そんな王様を、暴虐非道な王様を、僕は。
僕は⋯
僕は⋯!
僕は、絶対に許さない⋯⋯!!
「ルク?な、なにを⋯?」
「⋯王を探しに行く。」
「何故だ?私の書いた遺書には、もう死んでいると⋯」
「骨諸共粉々にする。生きていようが死んでいようが関係ない。」
「そんな無謀なことをしても、死んだ者達の命は⋯還ってこないだろう!!」
「⋯」
「認めたくないけど、お父さんの言う通りよ。あんたは国をもう一度、蘇生したいんでしょ?もう死んだ悪人をずっと憎んだって、相手の思うツボなだけよ!勇者の命も国民の命も、蘇生したら戻るんだから、その無駄な感情全部捨てなさい!どうせ、あんたも無駄を嫌う人間なんでしょ?」
「⋯⋯」
「俺はお前がそんな簡単にへこたれるようなガキには、見えなかったがな。」
「アニキ、嘘はいけません嘘は⋯」
「うっせぇ!お前は黙ってろ!」
そうだ、王を恨んで骨を砕こうとしても誰も得をしないし、そんな行為こそ無駄だ。
蘇生魔法の方法については何も掴めていない⋯だが、その魔法が使えさえすれば、勇者も国民も息を吹きかける。
そもそも僕は、王のような人格の人間になりかけていたじゃないか。
これまた自分の理想を押し付けるような親によって。
そんな僕が、王を完全抹消なんてしたら、もしかしたら周囲に王と同じだと唆されてしまう。
そんなのは僕の美学に反する!
はぁ、ここで踏みとどまっておいて正解だった。
僕は我を取り戻し、アディナ達の顔を見た。
「ありがとう、皆のお陰で無駄なことをせずに済んだ。」
「どうってことねぇよ。」
「これぐらい朝飯前だ」
「やっぱりあんたは無駄嫌いなのね笑」
「見抜かれてたとは思ってたが、それを周りに言いふらすなよ⋯」
「⋯あら、随分口答えをするようになってきたじゃない?数十分前ぐらいに会ったばかりだけど。」
「軽く、になるといつもこうなるんだ。少しは慣れてもらおうか。」
「ぐぬぬっ、」
って、こんなしょうもない会話に花咲かせてる場合じゃない!
国の蘇生魔法をかけなければ⋯!でも、どうやってやるんだ?
さっきみたいに、疑似魔法に要素を足してってやれば良いのか?
でも、それをするにしても規模がデカい気がする。
国1個分だぞ⋯?それを単純な計算の魔法で蘇生するなんて、本当に出来るのか⋯⋯?
周りをグルグル周り、少し眩んだ状態で組み合わせる物についてを考えていた。
すると、ある一つの答えに辿り着いた。
「そうだ!」
僕は勇者の荷物があった場所に、飛びつくように向かっていった。
周りは酷く引いている様子。でもそんなことを気にしちゃいけない!
蘇生魔法で組み合わせる物がわかったのだ。
しかも、自分一人で!
これは完全なる進歩だ、試さないわけにはいかない!
「これを、こうして⋯そしてぇ〜組み合わせる!!」
「そ、それは⋯!私の書いた遺書!」
「お父さん、もう遺書遺書言うのやめたら⋯?縁起が悪いわよ⋯⋯?」
「そ、そうなのか⋯?」
「なんというか⋯⋯」
「不謹慎だな」
その瞬間、地面が光り始めた。
やっぱり蘇生魔法は、疑似魔法と遺書で作れる!
国の情報以外何にも役に立たないと思っていたが、最後の役目はちゃんと神に用意されていたみたいだ。
―ロベリア洞窟―
そして、ごつごつとした石の床が見え、砂漠だった景色が宝石で彩られた洞窟と思われる場所の景色に変わった。
きっと白骨化していた勇者も国民も、蘇っただろう。
「国に関する建造物は見当たらないぞ?」
「洞窟っすから、当然っすよ⋯」
「綺麗ね〜この宝石!」
「宝石じゃなく、ただ光ってるだけの石だ。」
「そうなの〜?なんだ、つまんないの。」
バカが天然ボケしてたり、アディナが幼児退行したりしてることは置いといて。
一つ気になったのは、変わる前の景色は澄んだ青空と、その下に果てなく続く砂漠だったのに、何故か空も見えない石しか見えない洞窟に場所が変わったことだ。
変わる前にあった広大な砂のせいなんだろうか。
洞窟を見渡すと、微かに砂が残っている。
この砂自体が魔法みたいなものなのか⋯今後調べる必要がありそうだ。
「先へ進もう。国は多分、この洞窟を抜けた後にあるはずだ。」
「なんかあいつ、急に馴れ馴れしくなったな。」
「異世界のことは留玖さんの方が詳しいんすよ。一応アニキは留玖さんの年下っすし⋯我慢が一番大事っす!」
「お前もお前で態度が変わったように見えるが?」
「いつも通りっすよ⋯」
「帰ってきたら、どんな変化があるか⋯好奇心と恐怖心で頭がいっぱいになりそうだ。」
「カッコつけちゃって、どうせ王の妻を上から宥めて恍惚に浸りたいだけなんでしょ?」
「なっ⋯人聞きの悪いことを〜!」
「私にも甘いのが、何よりの証明よ!」
「そ、それは仕方のないことだろうが〜!」
やっぱり勇者、そういう性格の奴だったか。
もしかしてとは思っていたが、まさかそこまでとは⋯⋯
―バルレア草原―
洞窟を抜けると、だだっ広い草原が見えた。
ここも砂にまみれていたのか⋯可哀想に。
そして勇者は、こんなところまで歩いていたのか⋯疲弊している中でよくもまぁ動けたな。
それでも数週間かかるのは流石に遅すぎる気はするが。
「ここまで来てまた町に着かないの〜!?もう私、疲れたのだけど〜!」
「子供のように喚くな、後もうちょっとで着くはずだ。そこまで我慢しろ。」
「もう!カタイわよルク〜!!」
よ〜く目を凝らしてみると、街っぽい建物らしきシルエットが薄っすらと見えている。
本当にもうすぐで着く。
だがアディナは相当疲れたのか、ず〜っと「まだか〜まだか〜」と嘆いていた。
戦闘であんだけ動けたっていうのに、なんで体力が消耗するスピードが異常に早いんだろうか。
もしや、僕にたっぷり甘えて欲しいんだろうか。
父と似て非常にきm⋯ゴホン!変わった人だ。
―元奴隷の国セルディア 国の門前―
そして暫くすると、国の門が見えてきた。
監視と思われる二人の人は白骨化の状態だったのか、周りを見て混乱している様子。
だが、僕達が目線に入ると、監視らしい表情と雰囲気に変わった。
「何の目的で入るつもりだ?」
「用件を言ってもらおうか。」
「わた⋯」
「僕達はこの勇者さんの連れで⋯モンスター討伐に帰ってきたところなんです。」
「と、言っているが、勇者。本当か?」
「あ⋯あぁ、そうだ。」
「ならば、入って良し。」
あれ、チョロいな。
「私が言おうとしたことを君が言うでない⋯!勇者である意味がなくなるではないか!」
「まぁまぁ。僕こういうの、やってみたかったんですから〜!」
「変わった趣味ね。」
「ムカッ⋯」
僕が読んだ物語でも国の門を監視する人は居た。
だから、一度堂々と国に来た理由を説明してみたかった。
僕ならもっとカッコよく説明できるって。
でも、これをして何ら得も意味もなかった。
もうやらないようにしよ⋯勇者も怒ってるし。
―セルディア―
「ここが、国民全員が奴隷の国⋯」
この国、監視が居るだけで、目立った建物は国の城しかない。
制作費を城に注ぎ込んだみたいだ。
哀れな王め、実に愚かな金の使い方をするもんだな笑
「他の勇者はいるのかしら⋯?」
「どうだろうか⋯蘇生できたは良いものの、何処に居るかなどとうに忘れたからな。」
「爺ね。」
「あぁ〜辛辣ぅ〜!!」
急にドM化したこいつ!
気持ち悪っ!!
辺りを歩いていると、三人もの勇者と思われる人が見えた。
他の勇者と話をしている様子だ。
状況を把握しておきたいんだろう。
「あ、メリオ・ロウスさんだ!やっほ~!」
「生きておられたんですね⋯!僕、感激ここに極まれリですっ!!」
「⋯おかえり。」
「ロウス?あ、勇者のことか。」
「そういえば、名を名乗るのを忘れていた。すまん!」
「お父さんはほんと、バカね。」
どうやらこの三人は、勇者もとい、ロウスの古き良き友人で同じ勇者らしい。
国の門辺りで倒れて、蘇生魔法で目が覚め情報交換⋯といった流れみたいだ。
名前はそれぞれ、「アミロ・レースン」、「クロウ・ランディゴ」、「カリス・ローレン」。
ローレンさん以外はすごく独特な名前をしている。
アミロさんなんてほぼア○ロとレーズンだし、クロウさんはランディアとかランディとかじゃなくランディ”ゴ”だし⋯
まぁ、それはそれで面白いんだがな。
「そこにいる四人は誰?」
「この子達は、私の仲間だ。」
「へぇ〜いつの間に仲間が出来たんだ!すご〜い!!」
「それにしては、服が別世界のものっぽいけど。ロウス、嘘はダメよ。」
「⋯バレたか〜」
そりゃまぁ、勘の良い人ならすぐわかるでしょうねぇ。
僕もその一人だし。
「実は、この四人は別世界の転移者で、この国を疑似魔法で復活させたんだよ。」
「転移者、やっぱり。でも、疑似魔法だけでこの国を復活させるって無理じゃない?一体どうやったの?」
「私の書いたこの世界に関する書物を組み合わせて、復活させたんだ。」
「なるほど、疑似魔法と要素の組み合わせね。それだけで出来るなんて、便利。でも、それはこの四人の中の一人がやったんでしょ?」
「そうだ」
「恐らくは、そこの君。君が復活させたんだよね?」
「は、はい。」
ヒェ〜!大当たり⋯!!
こっわ。
「多分後で、王の妻であるセルディア様に呼ばれるだろうから、一旦私達と一緒に来て。」
え〜急だなぁ⋯
緊張しちゃうし、王の妻から何言われるかわからないし⋯
いや、僕の情報が外に知れ渡っているはずがないのに、なんで呼ばれることを知ってるんだ?
もしや、未来予知か⋯!?
異世界にも、予知能力者が居るっていうのか!?
「冗談を言うのはやめたらどうだローレン。冷静な口ぶりでジョークなんて言われたら、相手も本気になるだろう?」
「ごめん。でも、半分ホント。どちらにしても君はセルディア様に呼ばれる。だって、幼くて可愛いもん。」
「⋯へ?」
「セルディア様は実はそういう性格なのだ⋯子供が居るところにはいつも目を張っている。因みに、ローレンもだ。」
「い、言わないでよ⋯!」
この世界の人間は今のところ、そういう人しか居ないんだと心から深く知った。
もういっそのこと逃げようかな、現実世界に。
あ、でも絶対出口塞がれてる⋯完全に逃げ場をなくした。
詰みだ。
つづく




