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出会いと霧戦

 魔法・魔力の生成は案外簡単だ。

 素材と計算の重ね合わせだけで作れてしまう。


 そして、この世界では何故か、空気などで魔法が出来てしまうことがわかったのだ。


 だがなんだろう、新しく作ってしまえばこの異世界を蘇らせる意味がなくなってしまう。

 そもそも、この世界やこの世界の人々をどうにかしないと、意味がない気がする。



 この世界に転移した時、僕は空気が少し特殊だと感じた。

 元の世界では感じなかった、窒素や酸素、二酸化炭素とは違う物質が含まれている。


 その違和感に気づいた後、僕は白骨化した人間と、古めかしい本、特殊なアクセサリーを見つけた。

 汚れた服の柄などを鑑みるに、この者は勇者だということがわかった。


 遺書を読んでみると、国に関する歴史や魔法の用途についてのことが細かく書き記されてあった。

 だが、その遺書には蘇生の方法については、何も書かれていない。

 まだ操られていない時に全てを書き留め、世界を復元する方法を調べようとした途端にアクセサリーを⋯

 そして、この人の荷物を見るに、剣を使う勇者だったみたいだ。

 レベルは⋯見れないみたいだけど、相当強い勇者だったんだろうな。


 一度、空気を集めて魔法と関連があるかどうか調べてみた。

 すると、青い魔法の塊みたいなものが出来た。

 ただその魔法の塊は、使い物にならない。

 砂に当てようとしても、そこに浮いているだけでびくともしない。

 なにかに使えるかもしれないから、遺書の言葉を借りて「疑似魔法」と名付けよう。

 というか、それが正式名称だろう。


 この世界に存在した魔法についても、自分なりに調べてみた。

 先程の疑似魔法に、「要素」をプラスして魔法を成り立たせる事が可能と遺書では書いてあった。

 そしてその魔法の強さは、全て平等⋯らしい。


 何度も出ているこの”平等”という言葉、これは何なんだ?

 謳い文句にしか思えないほど出てきている。

 嘘が混じっているというのか?

 追々調べるとしよう。


 ♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦


 ―一方、ヤンチャな人達は―


 「⋯いっててててっ、ここどこだよ⋯」

 「見渡す限り、砂漠っすね⋯」

 「あん!?んなわけねぇだろ!異世界に吸い込まれるようなワープホールが、あいつの下にあったんだから!!」

 「だと良いんすけど⋯」

 「っていうか、召喚されたわけじゃなかったんだね⋯元の場所には戻れなさそうだけど⋯」

 「んなことどうだっていい!あいつは何処だ?あいつも吸い込まれたんだろ?こっちに!」

 「わかりませんっす⋯そもそもここがどういう世界なのか、ここは異世界なのかすら、わからないんすから⋯」

 「チッ⋯元の場所に帰れねぇことに加えて、あいつも見失ったのかよ⋯くそっ、だらしねぇ!」

 「すいやせん⋯!」

 「(アニキ、なんであのガキをしつこく⋯)」

 「あ、そうだ⋯ここ、異世界なんだよね⋯?」

 「わかんねぇっつってんだろ!弱々しいくて馴れ馴れしい声で喋りかけんな!!」

 「ご、ごめん⋯なさい。」

 「んで?異世界がどうした?」

 「あ、いや⋯能力とか、使えるのかなって。魔法とか、武器とか、特殊能力とか⋯」

 「こんな何もねぇ世界でそんなもんあるわけねぇだろ!夢見てんのかお前!!」

 「そ、そんなつもりは⋯!」

 「やめてやってくだせぇよアニキ⋯こいつは俺達のダチっすけど、気が弱いのも確かなんすから⋯」

 「あぁもうわかったよ、やめりゃ良いんだろやめりゃ!!ったく、なんでこの世界に来て弱ぇ奴に気ぃ使わなきゃなんねぇんだよ⋯!」

 「⋯⋯」

 「(ここに来る前に言った”時間がない”っていうのも気になる⋯どういうことなんだろう?サツが近付いてきたのは事実だけど、何なんだ⋯?)」

 「ん?お前もなにか言いたいのか?」

 「い、いえ!なんでもないっす⋯!」

 「はぁ、そうか。取り敢えず、あいつを探しに歩くぞ」


 ♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦


 ―砂に覆われた国 勇者が骸骨化した場所―


 この世界には、昔見た異世界物語のような特殊な現象が見受けられるのだろうか?


 その物語では、陽が黒く霞んで、周りの獣人や魔物が強力化し、暴走するという現象が起きた。

 そのような現象は、別の世界でも存在しているのだとしたら。

 当然、この異世界でも似たような現象が起きるはずだが⋯


 遺書を読んで調べてみたら、自分用に書かれていたのか、現象の名前だけが、特殊な文字に書き換えられていた。

 全体を通して読むと、書かれている文字は基本ギリシャ文字に似たものだった。

 沿っているのか、それとも元々なのか、それについてはあまり良く書かれていない。

 他の世界のことなんて、現地民だからあまり知ることが出来なかったんだろう。


 ギリシャの文字が読めたのは、昔から他の言語を勉強していたからだ。

 別に外国に行きたいわけでも、親が行かせたかったわけでもなかったが⋯

 どうせならと勉強した甲斐があった。


 そして、遺書に書かれてある特殊文字に関しては、中国の文字を意識した文字になっていた。

 何故、他の国の文字が⋯?

 この人は、現地民なのでは⋯?

 余計にわからなくなってきた。


 この人自身に聞くって選択肢もあるか⋯

 でも、蘇生魔法は聞いたことあるけど、白骨化した人間を元に戻すなんて魔法は、聞いたことがない。

 

 魔法を現実に干渉させるためには、疑似魔法に「要素」を足す必要があると先程わかった。

 白骨人間を元に戻す魔法も、なにか「要素」を足せば良いはずなのだが⋯

 どうすれば良い⋯?


 「やっと見つけたぜ⋯!お前⋯!!」


 後ろから聞いたことのある声がした。

 挑発的で、気色の悪い声が⋯


 「何のようですか。」


 僕は彼を跳ね除けるように冷たい返事を返した。


 「おいおい、俺らがここに居る理由、聞かねぇのか?」


 聞かない、僕から見たら敵だから。

 敵の言うことなんて、聞きたくもない。

 正義を騙りたいわけではないが、悪も悪で嫌いだからだ。


 「聞きたくありませんよ、跳ね飛ばし蹴り飛ばしたのは貴方なんですから。」


 僕はまた冷たく返した。

 彼の表情は、思ったより悔しそうだった。

 少ししつこいのも、そういうことなのだろうか?


 「酷い口を聞くなぁ、俺とお前はどうせ年下だろうが!なんでお前なんかに変な態度取られなきゃなんねぇんだよ!!」


 意味不明なことを言うヤンチャな人だな、ここまで意味不明だと、かえって笑えてくる。

 それに、年下だと決まったわけじゃないのに勝手に決めつける。

 これは⋯滑稽だ。


 「僕は今、高校二年生。もうすぐ三年です。貴方は?」


 「⋯は?年、上⋯?」


 酷く動揺している。

 やはりか、やはり年下だったか。

 僕はにやりと嗤った。


 「な〜んてな!」


 「「え?」」


 「⋯は?」


 まさか、今のは嘘⋯?

 いや、態々この場で嘘をつく意味がない。

 意味がわからない⋯こいつは何がしたい⋯?

 何を考えてるかわからないやつは嫌いだ。

 僕はけたたましく嗤う彼に、再度怯えた。


 「(そうそう、その顔⋯その顔が見たかったんだよ!!あの時は絶望したような、怒りを顕にしたような、顔は見せなかった。だからここでそんな顔が見られて、俺は最高だ!私欲を満たしたようだ!!)」


 「嘘だよ。アニキはただ単にあんたのその表情を見たかっただけ。たまにこういう強欲で強情なところがあるから、俺らも手に負えねぇんだ。」


 「(多分、そういうことなんだろうな)」


 あ、そういうことか。

 俺はこいつより勝ってるぞ〜ってとこを見せたかったのか。

 なるほど、理解した。

 

 「ありがとうございます。なんか、参考になりました。」


 「え、あぁ⋯うん。」


 相手が気まずそうに言葉を返す。

 って、こんなことに油売ってる場合じゃないんだった!

 俺は3人を押し退けて前に出た。


 「ど、どうした?そんな急いで」

 「この白骨化した人間を復活させ、諸々話を聞くんです。その魔法を作るには、空気を集めて作った疑似魔法と、この中に関する「要素」を探して組み合わせなければならないんですが⋯」


 こんな人達に要素が分かるはずがないが、何もわからなくてはこの後の道が滞ってしまう。

 あまり気が進まないが、仕方がない。

 もしかしたら、何かを見つける人がいるかもしれないからな。


 「⋯白骨化した人間を使うなら、その一部の骨を取って組み合わせればいいんじゃないっすか?」

 「確かに!お前天才だな!」

 「アニキ、あんたが気づかなかっただけっすよ。」

 「そ、そうか⋯?」


 なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだ⋯!

 僕は、魔法に組み合わせる「要素」に、人の骨をあることを考えていなかったんだ。

 いや、そもそも考えつかないし、考えついたとしてもやろうとしないだろう⋯

 あぁ、悔しい⋯だが、わかったからにはそうしよう。


 「ありがとうございます、教えてくれて」

 「どうってことないっすよ」


 まずは、疑似魔法を作り、そこに一部の骨を取って組み合わせる。


 ⋯出来た。

 青の魔法の塊が、カラフルに色が変わる人の魂みたいな感じになった。

 

 あとは、これを骨の近くに⋯


 吸い込まれた。

 そして、全身が瞬く間に光り、気づけばそこには、人間が居た。

 その人間は「何が起きたんだ」とばかりに驚いていた。


 「君達は、誰だ?」

 「僕達は⋯地球という世界から来た、転移者です。僕の名前は桐高留玖(きりたかるく)です。」

 「おい留玖、お前の名前は初めて聞いた気がするんだがなぁ?」


 ほっとけ。


 「俺の名は鶴山竜樹(つるやまりゅうき)だ。よろしくな!」


 いかにもな名前だな。


 「俺の名前は、龍川実(たつかわみのる)っす。よろしくっす。」


 たつ⋯って、これも龍か⋯⋯

 いや、こいつは至ってまともな人間の一人だ。

 これ以上言及してはいけない。


 「お、俺は⋯藤山照(ふじやまてる)です。よろしくお願いします⋯!」


 やけにこっちをチラチラ見ている。

 勇者に名前を覚えてもらっているっていうのに、それじゃあ意味がないだろう⋯

 名前は二人よりかはマシだが。


 「何の目的で、私を復活させた。どうせ疑似魔法を使ったんだろう。私の一部の骨もないしな。」

 「⋯」


 それはそうか。

 いや、それにしては冷静すぎないか?

 一部の骨がなくなってるんだぞ?

 それに僕達は見知らぬ服着た転移者なんだから、怪しさプンプンだろうに。

 ⋯こういうことには、慣れているんだろうか。


 「僕は、この廃れた異世界を元に戻すため、そして、傍においてあった遺書の謎を解くため、貴方を復活させました。」

 「フッ、疑似魔法やら復活魔法やら⋯やけに物事の意味がわかる子供だ。まぁいい。君は私の恩人だ。遺書に書いた⋯謎⋯あぁ、ダメだ。あれから何年も経った、記憶が朧げだ。」

 「⋯ここのページです。」

 「遠慮というものを知らないのか。まぁいい。このページに書かれている文字は、中国文字と呼ばれる文字だ。」


 ⋯やはり。


 「だがこれは、君達の思っているような意味の言葉じゃないと思われる。」

 「え?どういうことですか⋯?」

 「この文字は、この国の中心に位置する場所で作られた文字だから、中国文字なのだ。」


 国が一つしかないのに、作ったのが中心というだけで中国文字と名付けて⋯

 しかも、書かれているのはそれっぽい文字だ。

 ここにもし中国のお偉いさんが現れでもしたら⋯

 考えたくもないな。


 「それで、内容は⋯?なんて書いてあるのですか?」


 中国語は習った覚えがないのでわからない。

 そもそも、何の目的で外国語を覚えたのかがわからない。

 自分でもわからない。

 詰みか。


 「内容は、上にある陽が黒く霞んだ時、化物は凶暴化する。といったものだ。」


 あれ?昔読んだ異世界物語と、起こることが一緒だ。

 話の流れは遺書とまったく関わりはないのだが、どうして同じなんだろうか⋯


 「⋯⋯」

 「どうした?」

 「あぁ、なんでもないです。少し考え事を⋯」

 「そうか。そして、この現象は一年に一度起こるもので、名称としては霧戦。モンスターは五十体程度、死者は過去に一千人以上。モンスター単体が強力で中々刃が立たない。こんな感じだ。」


 ほう、霧戦という名称やモンスターの出現数は変わらない。

 だがそれ以外は違っている。


 物語によると、死者は勇者によって数人程度に抑えられていて、モンスター単体の強さも勇者が強すぎるのか深く語られていない。

 遺書とは少し違う⋯妙だ。


 「補足として、この世界の武器は「剣」、「弓」、「杖」、「槍」、「盾」の5つだ。勇者として名声を勝ち取りたいというのなら、覚えておくと良い。」


 それは一緒だ。

 だが、僕は名声が欲しいわけじゃない。

 誰かの為になる力が欲しいのだ。


 「有難う御座います。参考になりました!」

 「いえいえ、君は命の恩人だからな。このくらいどうってことないさ。」

 「ちぇ、良いなお前だけ。」

 「アニキは何もやってないでしょ?」

 「うるせっ!」

 「⋯!!(留玖、やっぱりかっこいい、、、。)」


 後ろは相変わらずの反応だ。

 照もやっぱり、こちらに視線を送っている⋯

 まぁ、詳しいことは聞かないでおこう。


 「あと、遺書に書いてあったことで二つ。魔法にも剣にも”平等”という単語が使われています。それは何故でしょう?貴方がこちらの言葉をわかっているのも、気になります。」

 「⋯わかった。教えよう。だが、その前にこっちからも一つ、頼みたいことがあるのだが⋯いいか?」

 「大丈夫です。何でしょうか?」

 「実は⋯」


 ごくり⋯



 つづく

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