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EP 4

森の賢者ルナと植物ネットワーク

 バンッ!!

 私はシェアハウス404号室のドアを勢いよく開け放ち、リビングへと雪崩れ込んだ。

「ルナさん! 緊急事態ですわ! 起きてまして!?」

 リビングでは、ルナさんが優雅にソファに座り、月光を浴びながら謎の発光するハーブティーを飲んでいるところだった。

 私の剣幕に、彼女はきょとんと目を丸くする。

「あら、おかえりなさいリーザさん。ずいぶん慌てて……またカツ丼の夢でも見ましたの?」

「カツ丼はもう(胃袋に)確保しました! 今度はもっと大きな獲物ですわ!」

 私は懐からクシャクシャになった指名手配書を取り出し、テーブルの上に叩きつけた。

「ご覧になって! この悪人面!」

「まあ、お髭が伸び放題ですわね。不潔ですわ」

「そこじゃありません! ここ! 懸賞金『金貨10枚』!」

 私は数字を指でトントンと叩いた。

 ルナさんは優雅に首を傾げる。

「金貨10枚……。お安い金額ですわね。私の杖の宝石一つ分くらいかしら?」

「ぐっ……(金銭感覚の違いにダメージを受ける音)! 私にとっては一財産なんですの! これがあれば、向こう三ヶ月はパンの耳を卒業できますのよ!」

 私はルナさんの手を取り、必死に訴えた。

「ルナさん、お願いがありますの。貴女の『エルフの力』で、この男を探し出せませんこと?」

「人探し、ですか?」

「ええ! 世界樹の巫女姫である貴女なら、何かこう……スピリチュアルな力でピピッと!」

 私の無茶振りに、ルナさんはふふっと微笑み、カップを置いた。

「容易いことですわ。……この星に根を張る草木は、全て私の友達(下僕)ですもの」

 ルナさんは立ち上がり、ベランダの方へと歩み寄った。

 そこには、彼女が趣味で育てている小さなサボテンの鉢植えが置いてある。

 ルナさんはそのサボテンを優しく指で撫でた。

「こんばんは、サボテンさん。……ねえ、ちょっと教えてくださる? この街に、火薬の臭いがする薄汚いネズミはいなくて?」

 ――ザワッ……。

 その瞬間、私は信じられない光景を目にした。

 サボテンが、プルプルと震え出したのだ。

 それだけではない。ベランダの外、街路樹や公園の植え込み、遠くの森から、風に乗って「ざわめき」が聞こえてくる。

『……いるよー』

『第4区だよー』

『臭いよー』

『火薬持ってるよー』

「ヒッ!?」

 私の頭の中に、直接声が響いてくる!?

 これが、エルフの『植物ネットワーク』!?

 ルナさんは楽しそうにサボテンと会話を続けている。

「あら、そうなの? 路地裏で立ち小便を? まあ、肥料にするには汚すぎますわね。……え? 今は第4区の廃ビル『旧タロウ製鉄所』跡地に隠れて、コンビニ弁当を食べている?」

 情報が早い! そして細かい!

 街中のあらゆる植物が、彼女の目となり耳となっているのだ。監視カメラなんて目じゃない。最強のセキュリティシステムだ。

「ありがとう、サボテンさん」

 ルナさんはサボテンにキスをして、私の方を振り返った。

「わかりましたわ、リーザさん。犯人は第4区の廃ビル、3階の北側の部屋にいます」

「す、すごいですわ……! ピンポイント特定!」

「ついでに、今から私がここから『世界樹の根』を伸ばして、その廃ビルごと彼を締め上げて差し上げましょうか? 5秒でミンチにできますけれど」

 ルナさんが物騒なことを言いながら、床から極太の木の根(のような触手)を召喚しようとする。

 私は慌てて彼女に飛びついた。

「ストップ! ストップですわルナさん!!」

「あら? 捕まえるのでしょう?」

「ミンチにしたら懸賞金が貰えませんの! 『生け捕り』が条件なんです!」

 それに、そんな怪獣大戦争みたいな捕まえ方をしたら、街が壊滅して修理費を請求されてしまいますわ!

 私は冷や汗を拭いながら、ルナさんをなだめた。

「じ、情報は十分ですわ。ありがとうございます。……ここから先は、私の『ビジネス』です」

 私はニヤリと笑った。

 犯人の居場所はわかった。

 でも、私一人であの爆弾魔を捕まえるのは、正直怖いし危険だ。

 ならばどうするか?

 専門家プロを使えばいい。

 それも、ついさっきカツ丼を奢ってくれた、あの怖い顔の隊長さんを。

「……ふふふ。待ってなさい鮫島隊長。この『極上ネタ』、高く売りつけてやりますわ!」

 私はトレンチコート(古着屋で500円)を羽織り、夜の街へと駆け出した。

 今夜の私はアイドルではない。

 敏腕情報屋『インフォーマント・リーザ』だ!

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