第8話 新しい友達 孤独な少女
〜前回のあらすじ〜
無事皇立マーラプア学園の入学式を終え、晴れて学生となったマナ。
「星姫」ではなく、みんなと同じように学生生活を送りたい。
そう願う中、ソフィが新しい友達を連れてくる。
4月8日。今日から授業が始まる。
マナ達は学校に来て、席に座った。
少しおしゃべりしながら待っていると、先生が来た。
そしてみんなに言う。
「皆さん、おはようございます」
「「「おはようございまーす」」」
「元気ですね。ではさっそく授業といきましょうか」
先生は軽く挨拶し、教室を出た。
5分経つと、足音が聞こえ、みんな急いで席に座る。
初授業は、なんと神学から始まる。
名の通り、神や女神、星姫について学ぶらしい。
「皆さん、初めまして。私は神学の授業をする、アリシア・プロメッサです。入学式で司会してましたね。じゃあさっそく授業しましょう。挨拶を」
「えーと、起立、礼、よろしくお願いします」
よくあるあの挨拶をやって、座る。
先生の話が始まる。
みんなは、あまり聞く気はなさげなようで、自習をしている子が多い。
「え〜、まず、かなーり昔、神と女神がこのサフィアスにやって来られました。当時の人間は、争い合い、奪い合う暮らしをしていたため、神と女神は憐れみ、人間を統治し、平和な星と成らせました。そして人間を守るため、龍を創造し、龍と人間は仲良く暮らしました」
まるでお伽話のような伝説。
先生は絵などを見せながら、解説する。
マナは代々伝え聞いているため、その内容を知っている。だが、少し疑問に思うところがあった。
(龍と人間・・・仲良くしてたっけ?)
だがまぁ、質問するわけにもいかないので、心に留めておく。
これには続きがあり、そこが1番重要。
「けれど2000年前、星の外から魔神がやってきます。彼らは暴虐を繰り返し、星の民を全滅させ、神と女神を連れ去ってしまいました。なぜ神と女神が敵わなかったのか、それは謎のままです」
そんな話をしていた。
神と女神や龍に関しては、大昔の国の文献として残っている。ほんの少しだが。
そんなこんなで神学は終わり。
次に歴史、数学、古語とやった。
「では、これにて古語の授業を終わります。昼休みの後は、皆さんは部活見学です。では挨拶を」
「起立、礼、ありがとうございました」
そうして今日の授業は終わり。
午後は部活の見学をする。そこで、どの部活に入りたいかを決める予定だ。
ソフィがマナのそばに来た。
「マナ、お昼ごはん一緒に食べよ!」
「いいよ。どこで食べる?」
「食堂!たぶん中庭は混むからね。それと、友達を紹介したいの!」
「うん。誰?」
「フィーユ、こっち来て〜!」
すると、女の子が来た。
茶色の綺麗な髪に、ペリドットのような黄緑の瞳。
可愛い女の子だ。
「初めまして、わたしはフィーユ・ラピュセル。よろしくね」
「初めまして、私はマナ・セレスティアです。よろしくお願いします」
「マナ、でいいかな?友達になりたいんだ」
「わかった。フィーユ。仲良くしようね」
「うん。よろしく」
ソフィが2人の間に入り、両方の肩に腕を乗せた。
「マナ、フィーユ、仲良くしようね!」
「うん」
「もちろん」
それから、3人で一緒に昼ごはんを食べることに。
食堂に来た。かなり混雑している。
マナはお弁当を持って来た。
ソフィとフィーユは学食を頼み、それぞれ席に座る。
「じゃあ、いただきます」
「あれれ?マナ、お祈りじゃないんだ?」
「あ、そうなの。翠風国の挨拶なんだ。お父さんが翠風国にいてね」
「そうなんだ!」
「ソフィもお父さんやお母さんとは、話すの?」
「うん!たまに一緒に話すよ」
ソフィは笑顔で、明るかった。
けれどフィーユは少し、俯いているのがわかった。
マナはフィーユに聞いてみる。
「フィーユは何食べてるの?」
「サンドイッチとフルーツだよ。少食なほうだからこのくらいがちょうどいいんだ」
「そうなんだ。美味しそうだね」
すると、ソフィがニヤリと笑い、言う。
「マナ、私はパンケーキなんだけど、一口いる?」
「え、じゃあもらおうかな」
「うん!はい、あーん」
「え?自分で食べるよ」
「いいからいいから、ほら!」
「そう?ありがとう・・・」
マナはソフィが差し出した一切れを食べた。
ソフィは満足気。
マナにしたらなんとも言えないが、まぁ美味しいので文句言わない。
フィーユはちょっと気になるみたい。
「ソフィったら、ここ食堂だよ?」
「そうだけど〜。やってみたかったから!」
「まぁいつも通りだけど」
ソフィはいつもこんな感じ。
フィーユに対しても、これをやったことがあるとか。
そうして時間が経ち、昼休みは終わり。
教室で待つと、先生が来た。
「では皆さん、これから部活見学をします。そしてどの部活に入りたいかをこの紙に書き、提出してください」
「「「はい」」」
「では、どうぞご自由に」
そうして、部活見学が始まった。
マナはソフィ、フィーユと共に部活見学することに。
「どこ行く?」
「私、アクセサリー創作部めっちゃ気になってる!」
「いいね。私はイラスト部かな」
マナの質問にソフィが答え、マナも気になる部を言う。すると、フィーユも。
「わたしもイラスト部行きたい。近いらしいし、まずはアクセサリー創作部行かない?」
「いいね。確か南校舎かな?」
「うん。部室は全部南校舎だよ」
「わかりやすくていいね〜」
「広すぎるのに複雑だと迷子になっちゃうもんね」
「うん」
そうしてアクセサリー創作部についた。
中に入ると、部長が来た。
「皆さんようこそアクセサリー創作部へ〜。私は部長のシェラ・リスティアです〜」
どこか嫌な感じを覚える話し方。
すると、フィーユの方を見る。
それに気づいたフィーユは、顔が強張った。
部長のシェラは言う。
「あら、そちらはラピュセル家の次女さんですね?お姉様と比べて才能もなく、いつも・・・ふふ。そうなるのも当たり前のことですけれど」
「・・・!」
シェラはフィーユをバカにしている。
誰が聞こうと、そう思うだろう。
だがシェラの言葉は、“当たり前”を口にしているだけにも、聞こえた。
それでも、フィーユは何も言い返さない。
マナはさすがに声を上げずにはいられなかった。
「撤回してください。根も葉もないことを・・・」
「あら、本当のことですわよ?才能がものを言う世界で、比べられるのは当たり絵ですわ。こんな妹を持って、可哀想なクオーレ様」
「何を・・・!」
マナの言葉に、食い気味に反応したシェラ。
その言葉は、フィーユをバカにするだけでなく、存在を否定する意味まで含まれている。
(どうして・・・何も、言えないの!?)
普段感情を表に出すことができないマナ。
怒りが込み上げるが、拳を握って、落ち着かせた。
冷静に見えるが、喉元まで声が出かかっていた。
けれど、今日フィーユと会ったばかりのマナは、反論できる言葉を持ち合わせていなかった。
するとフィーユがマナに言う。
その手は、服の裾を軽く握っていた。
「気にしないで、マナ。日常茶飯事だから。もう慣れたよ。怒ってくれてありがとう」
「でも・・・」
「いいの。さ、早く見ちゃおう」
「・・・うん」
3人で教室に入った。
相変わらず部長は、優越感に満ちた目で、フィーユを眺めていた。
中に入ってから、マナはそっとソフィに質問する。
「ねぇ、ソフィ。さっきの、どういうことなの?」
「うん・・・。実は、フィーユのお姉様、クオーレ様はとてもすごい方なんだ。3歳年上で今年度で卒業なの。学校でも1番と言える秀才で、とっても美人な上、『星の祝福』も持っている」
ソフィは俯き加減に、話し始めた。
フィーユは少し遠くにいるので聞こえていないはずだが、悲しげなのが見てわかる。
「そんなお姉様と比べられてフィーユは何度もバカにされてる。フィーユの親でさえ、差別化して扱っているの。私は優しくて可愛いフィーユが好きだけど、みんながみんな善人じゃないからね。可哀想だけど、助けられないんだ」
「そっか。『星の祝福』は別に、人を選んで与えられているわけじゃないのに・・・」
「え、どういうこと?」
「あ、いや。なんでもない。気にしないで」
「そう?でもまぁ、星が人を選んだりはしないよね」
「うん」
なんとも言えない感情が心に渦巻くが、あまり気にしていると、フィーユに気を遣わせてしまう。
なのでとりあえず笑顔を作り、部活を見ることに。
フィーユもなんとか笑顔を浮かべている。
「このネックレス可愛いね。マナ、つけてみたら?」
「いや、いいよ」
「そんなこと言わんで〜・・・あれ?」
ソフィがマナの首に手を回すと、手にシャラシャラした何かが当たるのがわかった。
フィーユも気になってそばに来た。
「マナ、ネックレスつけてるの?」
「あ、まぁね。ペンダントだけど」
「へぇ、見せて〜」
「いいよ」
マナはペンダントを引っ張り出した。
星型の宝石が蛍光灯を反射して煌めく。
「わぁ、可愛い!この真ん中のなんて宝石?」
「え、っと・・・フ、フローライト?」
「なんで疑問形?でも可愛いね。星だな〜」
とっさに思いついた宝石の名を挙げた。
でも嘘であるため、疑問形に。
フィーユもそれを見て、言う。
「わぁ、すごく綺麗な星・・・。もしかして星道具?」
「えっ、いや、違うよ。たまったま、こんなんなだけだから・・・」
「そうだね。普通持ってるわけないや」
フィーユは意外と鋭いみたいだ。
星道具は一般人には手の届かない、特別な代物。
マナはすぐにペンダントをしまった。
そして見終わったら、次はイラスト部に来た。
また部長さんがお出迎え。
みんな少し気を張り、緊張する。
でもそんな緊張を解きほぐすように、優しく柔らかい笑みで、部長さんが話しかける。
「初めまして。私はイラスト部部長のフィアナ・リリィです。よろしくお願いします」
「あ、よろしくお願いします」
「ふふ。緊張なさらないでください。イラスト部には優しい子ばかりですよ」
部長さんはフィーユの現状を知ってか、優しく接してくれている。
フィーユは少し緊張が解け、言う。
「あの、わたし絵を描くのが好きなんです。あまり上手くはないけど・・・」
「全然大丈夫です。この部活にいれば、どんどん上達できますよ。誰も何も言えないくらい」
「ほんとですか?」
「ええ。保証します。でもまずは、貴女の心内を表現できるようにならなければなりませんね」
「ありがとうございます」
「ええ。どうぞご自由にご見学ください」
中に入ると、様々な絵がある。
綺麗な絵、明るい絵、暗い絵、何を描きたいのかわからない絵など、本当に多種多様。
すると、その中にとても綺麗な絵を見つけた。
美しい、星空の絵。
青、紫、白、赤、使いづらそうな色もとても上手に使い分け、目を惹かれる絵だ。
その作者の名前はフィアナ・リリィ。
すると部長さんが来た。
フィーユに話しかける。
「その絵、いかがですか?私の最高傑作なんです。自慢にはなってしまいますが」
「とっても綺麗です。わたしもこんな絵を描きたいです」
「それはよかったです。これは、星姫様が誕生なされた時見えた、美しい星空を描いたものです。心にある家族、友達への愛情を込めました」
「本当に美しいです。絵からも優しい方なんだろうなと伝わって来ます」
「ふふ。ならこれをどうぞ」
部長フィアナの手には、その絵を縮小したような、綺麗な絵。
大小2種類描いたらしい。
フィーユはそれを受け取って、言う。
「ありがとうございます。少し心が暖まりました。きっと部長さんも、いろんな経験をなされたのだろうなと思いました」
「ええ。何も、他人が比べられるものはありません。貴女ならきっと最高の絵を描ける。いつでも待っています。入部しなくても、個人的に話しかけてくだされば、いつでも教えますよ」
「ありがとうございます」
そうしてイラスト部の見学は終わった。
フィーユは、本当に顔が少し明るくなっていた。
マナはフィーユのことをあまり知らないが、それでもこうして、優しい人に出逢えればいいと心の底から思った。
さて、そこからは目についた部室に入って行った。
剣術研究部に入ると、マナが問い詰められた。
「頼む!剣技のコツを教えてくれぇ!!」
星姫信仰部なんてのもあり、変な儀式をしていた。
たぶんペンダントを見たら、奪いに来るだろう。
生きているなら遊ぼうぜ同好会、なんていうわけわからない部も存在した。
とにかくボードゲームをしており、たまーにテレビゲーム機も持ち込んでいるらしい・・・。
結構楽しくて、面白かった。
そうして部活見学は終了した。
ソフィはアクセサリー創作部に入り、フィーユの良さを熱弁してやると意気込んでいた。
フィーユはイラスト部でたくさん絵を学ぶそう。
マナは元から入らないことに決めている。
教室に戻り、提出した。先生が言う。
「皆さん、いかがでしたか?好きな部活で、学園生活を謳歌してくださいね」
「「「はい」」」
「では、そろそろ終わりましょう。日直さん、よろしくお願いします」
「お祈りを始めます」
お祈りし、挨拶。
みんな入る部が決まって満足そうだ。
すると、先生がいう。
「あ、いい忘れてました。来週は星獣の森に挨拶へ行きます。そこで植物の観察をしますので、スケッチブックとノートを忘れないように。水筒も必須です。詳細はプリントを見てください。では、さようなら」
「「「さようなら」」」
マナたちは互いに挨拶し、家路を歩む。
来週の授業が、楽しみに思えた。
友達との関係も、さらに深められたらと思う。
今回はイラスト部部長について書きます。
イラスト部部長、フィアナ・リリィ。
フィアナは画家の一家に生まれました。
そしてフィアナには兄がいました。
彼は幼い頃からとんでもない絵の才能を発揮して、家族からも、国からも期待されていました。
フィアナはそんな兄を尊敬していましたが、家族は違いました。家族はフィアナに絵の才能があまりないことを知り、兄の反対も無視し、フィアナを路地に置き去りにしました。
フィアナに渡されたのは、ほんの少しの路銀と、兄からのプレゼントである、スケッチブックとペンだけです。
フィアナは幼いながら、自分が捨てられた理由を悟りました。そして悲しいけれど、涙も出ませんでした。
それでも生きるため、絵を描いて売り始めました。
あまり儲かりはしませんでしたが、それでも日々のため頑張りました。
それでも、スケッチブックが尽きかけます。
そんな時フィアナに手を差し伸べたのは、1つ年上の女の子。彼女は名を、クオーレと名乗りました。
金色の混ざった茶髪に、鮮やかな緑の瞳。とっても美しい美少女でした。
クオーレはフィアナを施設に入れ、一部の養育費を出してくれました。
しばらくしてフィアナが見事マーラプア学園に合格。
喜んでクオーレに会いに行きました。
クオーレはおめでとうと褒めてくれました。
すると、クオーレは言いました。
「もし、私の妹フィーユがこの学園に入ったら、優しくしてあげて欲しい。あの子がどれだけ辛い思いをしているか、1番そばにいるからわかる。フィーユに関する悪い噂は全部デマよ。お願い。あの子も絵が好きなの」
フィアナは言われなくとも、と答えました。
クオーレは笑って言いました。
「何も、他人が比べることはできない。貴女ならきっといい絵が描けるから。自信を持ってね」
フィアナはそれをずっと胸にしまい、イラスト部で過ごしました。
フィーユがクオーレにどんな想いを抱いているか、それはフィアナもよく分かっています。
でもだからこそ、フィーユに、その言葉を伝えたかったのです。
それからフィアナはクオーレファンクラブにも、密かに加入しています。
星への願いは、届くのだろうかーー。




