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星姫 〜天の星、地の人〜  作者: 猫様のしもべ
第1章 星と出逢いの、小さな始まり
7/16

第6話 制服屋はどっち・・・? 後編

〜前回のあらすじ〜

制服を買うために街へと繰り出したマナ。

けれど無自覚にも方向音痴なマナは道に迷う。そこでサフィールと会い、一緒に制服を作りに行った。

そして、待ち時間をサフィールと過ごすことになる。

マナはサフィールと共に、エピキュアを出た。

少し進むと、マナたちは前方で何やら騒ぎが起きていることに気づいた。

誰かの言い争う声が聞こえる。


「おやめください!」

「俺は公爵家の長男だぞ!言うことが聞けねぇか!」


おぼっちゃまが身分を傘にして女の子を連れ去ろうとしている。

この国では、身分の差がそのまま力になる。

公爵家の名は、時に剣より重い。

でも女の子の方は、護衛に守られている。


「私はクレシェンテ公爵家の長女ですよ!」

「知ったことか!」


身分の違いで連れ去ろうとするものの、身分は両方同じだったようだ。

それでも連れ去ろうとするなら、例え公爵家であっても裁かれることになる。


それでも、マナが見る限り、おぼっちゃまはやめる気配がない。

マナはその様子を見て、昔の記憶が蘇る。

自分が誘拐されそうになった時、助けてくれたのは知らないおじいさん。


そして目の前には、あの時の自分と同じ状況の子がいる。あの時のおじいさんは助ける義務などなかったはず。それなのに助けてくれたのだ。

そしてマナは「星姫」。人々を助ける義務がある。

そう、マナは思っている。


マナは飛び出した。

正直、サフィールがいるからなんとかなるだろうとも思ったが、おぼっちゃまの顔を見ていたら、なんとなく苛立ちを覚えたのだ。


「やめてください!」


マナは相手の前に出る。

けれど、マナは出たところでどうすればいいのか分からなかった。

すると、相手のおぼっちゃまがマナの顔を見て、驚いたように言う。


「お前・・・!」

「・・・?」


マナにはなぜ相手が驚いているのか分からない。


すると、周りの女の子達が、サフィールに気づく。

そして、わざと大声で言った。


「きゃ〜!サフィール殿下よ〜!」

「かっこいい〜!」


その声を聞いたおぼっちゃまは、諦めたように捨て台詞を残して、どこかへ去る。


「ちっ!なんでここにいるんだよ・・・」


サフィールはすぐにノエルに指示を出し、騎士団に彼を追わせた。

こんな風に、しばしば起きる様々な事件を、調べたり解決する、日本で言う警察の仕事は、ラニアケア皇立騎士団が行っている。


サフィールが、誘拐されかけた女の子に話しかける。


「大丈夫ですか?」

「ありがとうございます。殿下」


マナも心配し、顔を覗き込む。

相手の女の子は、クレシェンテ公爵家の長女、ソフィ・クレシェンテだ。

マーラプアの入学試験で1番だった子。

すると、ソフィがマナに気づく。


「・・・!か、かわいい!!」

「・・・え?」


ソフィはマナの手を取り、怒涛の勢いで言葉を連ねる。


「可愛い可愛い!貴女、めっちゃ可愛いわね!」

「え、え?あ、ありがとう・・・」

「って、貴女もしかして、マナ・セレスティアさん?」

「あ、はい」

「やっぱり!剣術試験で騎士団長に勝った子よね!あの時も可愛いなと思ったけど強さで忘れてた!」

「えっと、嬉しいよ・・・」

「ふふふ。可愛いな〜。ね、友達になりましょう!私のことはソフィって呼んで!ね、マナ!」

「え?わ、わかった。ソフィ」

「可愛い〜〜〜!!」


マナは困惑しながらも、勢いに押された。

マナはソフィの好みにドンピシャだったらしい。

サフィールも困り気味に言う。


「ソフィさん、セレスティアさんが困ってますよ」

「殿下、こんな可愛い子と何してるんですか!」

「はい?普通に歩いてただけですけど」

「マナ、なんかあったら私に言ってね!」

「え、うん・・・?」


サフィールは呆れて、ため息をつく。

マナはサフィールに聞いた。


「殿下とソフィは知り合いなんですか?」

「はい。ソフィさんのご両親は皇宮で働いていますので、たまに会うんですよね」

「へぇ。大変だね、ソフィ」

「可愛い〜!ありがと、マナ!本当に面倒なのよ!まぁルティアナ姫に会えるなら行くけど!」

「ルティアナ姫?」

「うん!姫様は本当に可愛いらしいの!」

「いいね。私も会ってみたい」

「マナならすぐ仲良くなれるよ!私も早く愛称呼びを許可して欲しいんだよねー」


いつの間にやら、周りにいたたくさんの人は、いなくなっている。

皇子と公爵令嬢の会話を盗み聞きはできない、とでも思ったのだろう。


すると、ノエルが戻って来た。

さっきのおぼっちゃまについて、報告する。


「殿下、報告です」

「はい。ソフィさんとセレスティアさんも聞いてみてください。今後要注意するように」

「はい。まぁ、誰かなんて知ってますけど」


ソフィがそう言った。

公爵家なだけあって、マナ以外は知っているようだ。


「はい。相手はシュトラール公爵家の長男、ムンド・シュトラールです。年齢は14歳のため、捕まえることはできません。補導だけはしました」

「ありがとう、ノエル。・・・マナさん、どうかしましたか?」


マナは顔が青ざめ、どう見ても怯えていた。

手の震えを無理矢理抑えるかのように、服の裾を掴んでいる。


(どうしてまた会っちゃうの・・・)


サフィールは心配そうに言う。


「大丈夫ですか?」

「・・・あ、だ、大丈夫です。すみません」

「どうしました?」

「その・・・何でもないです」


サフィールが心配そうにする。ソフィも。

すると、ノエルが気がついたように言う。


「殿下、そういえば彼は9歳の時にも、誘拐未遂事件を起こしています。その時の被害者は・・・」

「・・・!もしかして、セレスティアさん、彼に誘拐されそうになったことがありますか?」

「・・・はい。あの時、いろいろあってお母さんが怪我してしまいました」


マナは俯き気味で話す。

思い出したくない、悲しい記憶。


『お母さん、かわいそう・・・』


あの一言が、今も胸に突き刺さっている。

ソフィは黙って、頷くだけで聞いてくれる。


「そう言えば、そんなこともありましたね。その前にも彼につけられたりしたと聞きました。すみません、気にかけられなくて。怖かったでしょう」

「いえ、大丈夫です。でも、さっき私に気づいたみたいだったので・・・また何かされないか不安ではあります。自意識過剰ならいいですが・・・」

「そんなこともなさそうですね・・・。まぁでも、前に話したように、セレスティアさんは皇宮の監視下ということになっていますので、そうそう手出しはできないはずです」

「はい。ありがとうございます」


すると、さっきまで無言だったソフィが、我慢の限界というように声を上げた。


「許せない!マナにこんな恐怖を植え付けるなんて!」

「え、そ、そんなに気にしないで」

「でも、マナは怖かったでしょ?」

「・・・うん」

「あーあ、あの時フィルに1発殴ってもらえばよかった!」


フィルとはソフィの専属護衛にして専属侍女の、フィルミナ・ランドールのことだ。

さっきもソフィのことを護衛していた。

剣も持っているが、そうすぐ抜剣(ぼっけん)することはできなかった。フィル自身の身分も高くないからだ。


「大丈夫だよ、ソフィ」

「安心して!私が殿下よりさらに近くで守ってあげるから!だって私たち、親友だもん!」

「え、あ、うん。ありがとう」


サフィールは笑いながら言う。


「ふふふ。さっき友達になったばかりじゃないですか。もう親友なんですね」

「いいんですよ。私たちの心は通じ合っていますから!」

「ふふふ。いいですね」

「殿下にはあげません!」

「あ、あげるって何を・・・」


ソフィはマナを抱きしめ、サフィールは笑いが止まらない様子だった。

マナは少し戸惑ったが、2人を見て少しホッとした。

するとソフィがマナに質問する。


「マナ、今何してたの?」

「あ、今からマーラプアの制服を受け取るの」

「マジで!?見せて見せて!いい!?ついて行きたい!」

「え、わ、わかった」

「いいですよね、殿下!」

「ソフィさんは言い出したら止まりませんからね」

「ありがとうございます!」


そしてソフィと一緒に歩き始めた。

ソフィはマナの手を握りながら一緒に歩く。

サフィールはそれを見て言う。


「ソフィさん・・・ずっとその調子だと、セレスティアさんが疲れちゃいますよ」

「あ、確かに。ごめん、マナ」

「いや、大丈夫だよ。でももう少し言葉数を減らして欲しいかな」

「うん、わかった。可愛い子見るとついつい興奮しちゃうんだよね。さ、早く行こう」


そしてみんなで歩き、エトランジェに到着。

着くと、店長が出て来た。


「殿下、制服は無事完成いたしました。お連れ様の分も出来ております。過去最高の仕上がりだと思いますよ」

「ありがとうございます」

「では、試着をお願いします」

「はい」


すると、ソフィがマナに言う。


「マナ、着替え終わったら言って!私写真撮る!」

「え、写真?それは・・・」

「大丈夫!前にルティアナ姫も撮らせていただいたから!安全とかの対策はばっちりだよ!」

「ルティアナ姫も・・・ならいいか。じゃあ着替え終わったら言うね」

「よっしゃ!」


マナは少し恥ずかしそうにしている。

そこもまた、ソフィが可愛いと言うポイント。


そしてソフィ以外、それぞれ試着室に入り、試しに着てみた。

夏服は、青と白が基調の、可愛いセーラー。

冬服は、紺がほとんどの、暖かいセーラー。

左胸には校章をつける。星のような校章。


着替えたら、ソフィを呼ぶ。

すぐにソフィが来た。


「か〜わ〜い〜い〜!」

「大袈裟だよ〜」

「写真撮る!私と一緒に映ろ!」

「うん」


ソフィと一緒に写真を撮った。

ソフィはただただ可愛いを連呼していた。


試着が終わったら、試着室を出る。

サフィールは先ほどのソフィの声が聞こえていたようで、少し笑っていた。

そして制服を梱包してもらい、受け渡し。

ここはさすがにそれぞれでお金を払った。


そして店を出る。

マナは言う。


「私はそろそろ帰りますね」

「はい。家までの道は分かりますか?」

「分かります〜。たぶん・・・」

「ふふ。どうせなら送りましょう。制服も割と重いですし」

「さすがに大丈夫です。そこまで迷惑をかけるわけにはいかないので」


マナは遠慮するが、サフィールは気にしない。


「気にしないでください。ソフィさんはどうします?」

「マナは私が送りたいです〜。殿下は城、遠いんですしすぐ帰るといいですよ」

「ソフィさんの家も似たような遠さでしょう。今日は僕、時間ありますし」

「皇子に時間なんてないでしょ〜。どうせ、今日も政務をほっぽり出して来たんでしょうし」

「む〜。確かに政務は溜まってますね・・・。わかりました。今日は譲ります」

「ふふん、私の勝ち!よし、帰ろ!マナ」


ソフィはとても嬉しそう。

サフィールはちょっと不満気。


「えっと、ありがとう」

「うん!」

「では、さようなら。殿下」

「さようなら!」


サフィールも手を振って挨拶する。


「さようなら、セレスティアさん、ソフィさん」

「はい。ノエルさんもさようなら」

「さようなら」


サフィールとノエルは迎えに来た車に乗って、帰った。

そして、そのすぐ後に、ソフィの家の車も迎えに来たので、マナとソフィはそれに乗る。


「マナ、家まで送るから道案内よろしく!運転は大丈夫だから!」

「ありがと、ソフィ」


マナは道案内をし、送ってもらった。

そして、家に到着。

お母さんはまだ帰っていない。


「じゃあね、ソフィ」

「うん。あ、マナ、ケレポナ持ってる?」

「うん持ってる」

「じゃあさ『LANI』交換しよ!」

「いいよ」


「LANI」とは、サフィアスで人気の通信アプリ。

メッセージや写真を送ったり、電話したりできる。

マナ達はケレポナを取り出し「LANI」を開く。

そして、それぞれの連絡先を交換した。

マナのアイコンは星空。ソフィのアイコンは、ソフィが大切にしている飼い犬の写真だ。


「犬可愛いね」

「でしょ!名前はラナだよ!」

「いいね。じゃあ、また今度会おうね」

「うん。バイバイ、マナ!」

「バイバイ、ソフィ。また学校で」


マナは家に入った。

ソフィは車に乗り、家に帰った。

今回はソフィの護衛兼、専属侍女のフィルについて書きます。

ソフィの護衛兼、専属侍女、フィルミナ・ランドール。


フィルは元々貧しい家の生まれでした。

日々の食糧にさえ困るような家なのに、子供の分まで育てられるわけもありませんでした。

けれど、親は心からフィルのことを想っていました。


ある日、借金取りに追われ、フィルの両親は決意します。

自分たちはもうどうなってもいい。せめて、フィルだけは生きて、幸せになって欲しい。

そう思った両親は、フィルをクレシェンテ公爵家の、門の前に置いて、去りました。


当時からクレシェンテ家は評判がよく、優しいと噂でした。

だから2人は、この家からきっとフィルを引き取ってくれると信じて、置き去りにしました。


まだ幼かったフィルは、なぜ置き去りにされたのか理解できず、泣きました。

しばらくして泣きつかれ、眠ってしまいました。


すると雨が降り、フィルの体を冷やしてしまいます。

寒くて、何も考えられず、ただ泣くこともできず震えていると、中から人が出て来ました。

自分と同じくらいの年の女の子。

その子はフィルに語りかけました。


「大丈夫?寒い?一緒に行こう」


その子は侍女に言い、フィルを家に入れました。

そして体を洗わせ、ご飯を食べさせました。

初めての、暖かい食事。

フィルは泣き出しました。

その子は、優しく問いかけます。


「泣かないで。貴女の名前は?どうしてあんなところにいたの?」


フィルは、泣きながら名乗りました。

そして、自分の知る限りの事の経緯を話しました。

その子は、優しく宥め、ソフィと名乗りました。

ソフィはその子を優しく抱きしめ、一緒に住もうと提案してくれました。


それから、フィルはソフィの侍女から、様々なことを学びました。

その上、ソフィの護衛からも、剣術を学びました。

フィルは元々才能があったようで、すぐに上達し、公爵からも認められ、晴れてソフィの専属に。


ちなみに、後にフィルの両親の遺体が見つかり、お母さんのリボンだけがフィルに届きました。

それ以来フィルはそのリボンを身につけ、ソフィに仕えています。

絶対に、両親が護ってくれたこの命を、無駄にしないために。


星への願いが、叶いますように。

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