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星姫 〜天の星、地の人〜  作者: 猫様のしもべ
第1章 星と出逢いの、小さな始まり
6/16

第5話 制服屋はどっち・・・? 前編

〜前回のあらすじ〜

無事皇立マーラプア学園に合格したマナ。

今日は、サフィールにおすすめだと言われたお店に制服を作ってもらいに行く。

道中つつがなく進むといいが・・・。

月日は流れ、3月9日。

今日はサフィールが言っていた店に、制服を買いに行く。

お母さんは仕事のため、朝に出た。


昼前、マナは身なりを整え、髪飾りをつけた。

さらに自衛のため、剣を持つ。


マナは家を出て歩き始めた。

ラニアケアは日本と比べたら、さほど治安は良くない。

だがマナなら問題ない。剣さえあれば、強いから。

それにもし、皇子様が来るのなら言うまでもない。

マナは道を歩き、マップを見る。


「ん〜。こっちかな・・・」


マナはマップの通りに道を進んでいる・・・つもり。

だが、マナは無自覚にも、方向音痴だった。

なんせ、最近まであまり外に出ていなかったのだから。


あっちかこっちか分からず、勘で進んでいたら、周りの声が聞こえた。

どうやら誰かが噂話をしているらしい。


「あの子じゃない?ほら、剣術が強いっていう」

「あー、確かに?でもなんでここに?」

「マーラプアなら制服とか?」

「こっちの方にあったっけ?真逆にならエトランジェとか有名な店があった気がするけど」

「うーん・・・」


マナはその会話を聞いて、自分の噂だと分かるとともに、自分が真逆に進んでいると知った。

ケレポナのマップをもう一回よく見る。

複雑な皇都の地図と、方向、機械音痴が重なり、とてもたどり着けるとは思えない状態だった。


「えっと、うーん・・・」


悩んでいたら、話しかけられた。


「あ、お久しぶりです」


金髪碧眼、麗しき皇子様である。


「・・・お久しぶりです、殿下」

「はい。ちなみに、何しているんです?」

「・・・制服、買いたくて」

「ふふ。真逆ですね。さては方向音痴ですか?」

「そうですよ・・・」


マナは諦めて、正直に答える。

目の前のニコニコ顔皇子にちょっとムカつくが、表情には出さない。


皇子様ともあろうお方が、こうもふらふらと出歩いているというのに、あまり騒ぎにならないことに少し驚いた。

それにはきっと、サフィールの立場が関係しているのだろうと、マナは思う。


皇王に忌避され、皇妃の子かもはっきりしない。

けれど本人も周りも、否定しない。

マナでさえ聞いたことのある、そんな噂。

信じきれず、疑いきれない人々により、サフィールは微妙な立場に置かれているのだそう。


(ちょっと可哀想だけど、今は同情する気にはならないや)


サフィールはへらへら笑いながら言う。


「僕も行こうと思ってたんですよね〜。ちょっと人だかりができてるから来てみたら、まさかマナさんがいるなんて」

「殿下なら、他の人に任せるとか、車とかじゃダメなんですか?」

「僕がいると迷惑ですか〜?まぁ、確かにそれもできますが、あまり城の人は僕のためには動いてくれませんからね〜」

「へぇ・・・護衛も少なめですね」

「ノエル1人で十分です〜。セレスティアさんもいますし?」

「いざとなったら見捨てますよ」

「あはは」


マナはこの皇子になら割と冗談が通じそうだと思った。何言っても良さそうな気がする。

マナはまたマップを見て、逆方向に行こうとする。

サフィールはすぐにマナの肩に手を置き、言う。


「待ってください。貴女たぶん、1人じゃたどり着けないので、案内しますよ」

「え、大丈夫です。いつか着くと思います」

「皇都、どんだけ広いと思ってるんですか。じゃあ西区はどっちだと思います?」

「えっと・・・あっち?」


マナはまた別方向を指差す。


「ふふふ。向こうですよ」


サフィールはマナとは別の方を指さした。

マナは驚く。


「え、あ、そうなんですか・・・」

「ほら、無理でしょう。一緒に行きますよ」

「だ、だったらお母さんと・・・」

「お気になさらず。ほら」

「え〜・・・」


マナはサフィールと歩き始めた。

後ろにいる護衛のノエルに話しかける。


「えっと、お久しぶりです」

「え、あ、お久しぶりです。殿下がすみません」

「いえ、大丈夫です。護衛さん・・・も大変ですね」

「ノエルで大丈夫です。もう慣れました」

「ノエルさんですね」


すると、サフィールが少し不満気に言う。


「ノエル〜。僕とはあんま話してくれないのに」

「え、まぁ殿下ですし・・・」

「む〜。名前でも呼んでくれないしな〜」

「無茶言わんでください」

「ざんねーん」


マナはその様子を見て、少し意外だった。

サフィールが他人に皇子ではなく、子供っぽい顔を見せることはほとんどないから。


「ノエルさんと殿下は仲良しなんですね」

「まぁそうですね。僕とノエルは幼馴染ですから」

「へぇ。殿下は昔からこうなんですか?」

「こう・・・?」

「こうですね」


ノエルが答えた。マナとは分かり合っている。


「なんの話ですか〜。親切って意味ですかね」

「まぁ、そんな感じでなくもないです」

「結局なんなんですか」

「お気になさらず」


サフィールは少し不満気だ。


そして、制服屋に着いた。「エトランジェ」という看板が見える。

中は質素ながらも綺麗で、いかにも老舗(しにせ)という感じがある。他にも客がいるが、大体はマーラプア生か、ハーラウ生が多いようだ。


その店に入ると、店員がサフィールを見て、驚きながらすぐ店長を呼んだ。

そして、店長が出て来た。


「初めまして、殿下。制服屋エトランジェの店長です。いかがなさいましたか?」

「マーラプアの制服を作っていただきたいです。護衛のノエルと、この子の分も。お願いします」

「なんと、光栄でございます。謹んでお受けさせていただきます」


店長はホッとした顔で、奥へ行く。

サフィールが来たのを見て、何かやってしまったのかと不安になっていたのだろう。

すると、3人の店員が来た。


「この者達に採寸させます。どうか、奥へ」

「はい」


奥へ進み、個室で採寸を受ける。

もちろん、別々だよ。マナは女の人が採寸する。


「可愛い子ね。じゃあ採寸するから、言う通りにしてもらっていいかしら?」

「はい」


マナは言われた通りにし、採寸を終えた。


(ちょっと恥ずかしかった・・・)


そして個室を出る。

サフィール達もいる。

店長が来て、おずおずと言う。


「最速で仕上げますが、2時間ほどかかります。お待ちいただいてもよろしいですか?」

「はい。よろしくお願いします」

「はい。ありがとうございます」


そして、サフィールと店を出た。

マナは言う。


「じゃあ、私は家に帰って待ちます」

「どうせなら、一緒にどっか行きません?」

「え、いや、大丈夫です。ノエルさんもさすがにと言いたげな顔ですよ」


ノエルはまさにそんな顔をしている。

サフィールは後ろを振り返る。ノエルは首を振り、止めろと訴える。

だが、そんなこと気にしない皇子だ。


「ま、いいでしょう。政務くらい、なんとかなりますから。ね、ノエル。お願いだよ〜」

「殿下、ですが今日は政務が多くありますよ。帰ってからでは間に合うか・・・」

「そこは僕が本気でやる。お願い、ノエル。僕の気持ち、分かるでしょ?」

「・・・わかりました。なら、できるだけ急いで帰りますよ」

「はーい。ありがと、ノエル」


マナは黙って聞いていたが、さすがに抗議する。


「殿下、私の考えはどこに?」

「セレスティアさん、僕は皇子だから、今まであまり友達と外で歩き回ったことがないんですよ。ね?今日だけですから!」

「ど、どうせ視察行くでしょう。ていうか、普段からノエルさんがいますよね?」

「ノエルは幼馴染です〜。友達が欲しいです。視察はほら、仕事ですし。お願いします」


サフィールはマナの手を握って、言った。

マナは「友達が欲しい」というその一言に、少し共感した。


「・・・わかりました。制服ができるまでです」

「ありがとうございます。じゃあ行きましょう」


マナとサフィール、そしてノエルは歩き始めた。

マナは道沿いの店を、眺めながら歩いた。

様々な店があり、マナはそこそこ楽しんでいる。


普段外に出ないからか、皇子が一緒にいるからか、どこか景色が新鮮に見えた。

皇都アイカーネは、ラニアケア有数の観光地。

といえるだけあって、とても綺麗だ。

他人からの視線さえなければ、マナはもっとはしゃいでいたかもしれない。


すると、マナがある店を見て、目を輝かせた。

「エピキュア」と書かれた看板。カフェだ。

サフィールはその様子を見て、言う。


「セレスティアさん、あのお店入りましょう?」

「え、なんでですか?」

「気になったんで。主に貴女の反応が」

「・・・私、あんまりお金持って来てません」

「大丈夫です。僕が払いますから」

「え、さすがに殿下に奢らせるのは・・・」

「僕は気にしません。実は皇妃様から多めにもらったんですよね。きっと、友達のいない僕を憐れんでくれたのでしょう」

「そんなぼっちみたいな・・・。殿下は誰かとご飯を食べたことないんです?」

「ないわけではないですが・・・少なくとも、最近はないですね」


サフィールは、少し遠くを見た。

空なのか、もしくは・・・。

後ろにいるノエルも、少し悲しげな顔だった。


「・・・わかりました。えっと、一緒に行っていただけますか?」

「!はい。ありがとうございます」


サフィールは率直に嬉しそう。

マナは、こうやって素直な顔でいれば、もっといいのにと心の底で思った。


店に入り、サフィールが挨拶をする。


「3人席を個室でお願いします」

「!は、はい!ただ今ご用意いたします!」


用意された個室に行き、席に座る。

そしてメニューを開いた。


「セレスティアさん、何食べますか?」

「えっと、うーん・・・」

「遠慮しなくていいですよ。僕が誘ったんですし」

「じゃあ、この「星のパンケーキ」をお願いします」

「いいですね。じゃあ僕もそれで。ノエルは?」

「じゃあ、俺はチョコケーキで」

「あはは。昔からチョコケーキ好きだもんね」

「余計なお世話です・・・」

「ふふ。じゃ、頼もう」


そして店員に注文した。

少し待っていたら料理が運ばれて来た。


「いただきます」


マナが手を合わせてそう言うと、2人は不思議そう。

サフィールが言う。


「マナさん、お祈りしないんですね」

「あ、えっと・・・まぁ」

「それって翠風国の挨拶ですね。誰かが翠風国にいらっしゃるんですか?」

「お父さんがいます。だからいいかなって」

「へぇ・・・じゃあ僕も。いただきます」

「・・・いただきます」


ノエルも合わせて挨拶した。

マナは丁寧にパンケーキを切り、食べる。

食感がふわふわでとても美味しい。

サフィールは皇子さながらの作法で、綺麗に食べている。ノエルも結構作法ができるらしい。


「美味しいですね。セレスティアさん、パンケーキが好きなんですか?」

「そうですね。昔からです」

「へぇ。実は、僕の妹・・・ルティアナもパンケーキが好きなんですよ。たまに食べてますね」

「ルティアナ姫・・・皇子がこれならきっと可愛いんだろうな・・・」


マナは無意識にそう言った。

サフィールはそれを聞いて笑う。


「これって・・・!ノエル聞いた〜?」

「・・・はい。笑うところではないと思いますけど」

「あはは。面白いね、セレスティアさん。これなんて呼ばれたの、6歳の時のノエル以来ですよ」

「え、あ、間違えました。すみません」


マナは慌てて、謝る。

サフィールは笑顔のまま、言う。


「別に気にしてません。確かにルティアナは可愛いですよ。陛下が世界一だと褒め称えていますし」

「そうなんですね。いつか会ってみたいです」

「きっと会えますよ。セレスティアさんなら、たぶんルティアナとも仲良くなれます」

「楽しみです」

「はい。・・・ノエルともまた、バカにしあえたらいいんですがね・・・」


ノエルは無言で食べていた。

けど、少し寂しそうなのはわかった。


そうして話しているうちに食べ終わった。

個室を出て、カウンターに行く。


「合計7560モアになります」


マナが財布を出そうとすると、サフィールが言う。


「僕が払いますね。そう言う約束なんで」

「本当に、いいんですか?」

「・・・せっかく、友達になれたんですから」


サフィールは笑って、店員にお金を渡す。

店員は少し悩んだものの、そのお金を受け取った。


「まいどありがとうございました」

「ごちそうさまでした」


マナは迷ったが、友達になれた、ということが嬉しかったので、サフィールに任せることにした。

3人は共に店を出る。


そしてまた歩き始めた。

街道に沿って、歩く。

マナは楽しそうに周りを見ている。

誰かとゆっくり外を見て回るのは久しぶりだ。

今回は高級カフェ「エピキュア」について書きます。

店長、グラン・スピラーレ。


「エピキュア」の意味は、ある国の言葉で「美味しい」という意味を持ちます。


エピキュアは創業開始時、あまり人気はありませんでした。

なにせ、店長のグランやシェフ達の腕はよいものの、グラン達の作る料理が、絶望的にセンスがなかったからです。


可愛くないし、かっこよくもない。よくわからない見た目で、人気が出ませんでした。

おかげで、店の収益は伸び悩み、破産寸前でした。


そんなある時、店に1人の客が来ました。

黒目黒髪で、翠風国人かと思いましたが、とても美人でした。その人は、名をマヒナと名乗りました。

彼女は食べ物を注文し、食べました。

そして、言いました。


「あら、とっても美味しいわ。腕がいいのね」


彼女は当時、まだ18歳でした。

けれどその言葉に、店長であるグランは喜びました。

すると、マヒナがアドバイスしました。


「ねぇ、星をテーマに料理を作ってみて欲しいの」


グランは驚きます。星、という選択肢はなかなか出て来ませんでした。当時は星姫の予言もまだなく、星自体あまり焦点を当てられなかったからです。

グランはなぜ星なのか問いました。


「この美味しいけど、青くて他と合わないソースも、星がテーマなら合うと思うわ。それに、どうやら角ばったものを作るのが得意みたいだから、きっと綺麗な星が作れると思うの」


グランはなるほど、と納得しました。

確かにグランの料理は、謎にギザギザしていて、青やら紫やら、毒を連想しそうな色ばかり。

でもこれが星だったなら。もしこれが宇宙だったなら。

きっと、いいものが作れる。


そう考えたグランは、さっそく行動に移しました。

得意なギザギザは星にし、青や紫は宇宙にする。

本当なら難しい八角の星だって作れます。


そうして完成したのは、星のパフェ。

青の層が1番下、紫が真ん中、上に白のクリーム。

そしてクリームの上に、星型のクッキーや、グミなどを乗せ、フルーツ、そしてソースをかけたら完成。


「可愛いわ!これなら人気になるわね」


マヒナが誉めました。グランは喜んで、これを看板メニューに。


それからというもの、星のパンケーキ、星のチョコケーキと、いろいろ作りました。

そしたらもう大繁盛。毎日行列ができるほど、人気なお店に。雇われに来る人も増え、ついには皇族でさえ来るようになったのです。


グランは、それ以来マヒナに密かな恋心を寄せていました。

たまに来るマヒナの笑顔を見ていたら、幸せな気持ちになったからです。


けど、しばらくしてマヒナが婚約者であるレオン、という男の人と共に店に来ることに。

その時のグランの、悲しいような嬉しいような、複雑な心情は、誰にも知り得ません・・・。


星への願いが、叶いますように。

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