第4話 光なき城、1人の親友
〜前回のあらすじ〜
皇立マーラプア学園の入学試験を終え、皇子といろいろあったものの、帰宅。今日は合否を見る。
皇子とも話す約束だが、マナはどうするかな?
さて、一夜が明け、今日は合格発表の日。
合否はネット上でも確認できるが、点数まで見れるのは学園の掲示板のみだ。
身支度を整え、髪飾りもつけて家を出る。
20分ほどして、マーラプアに到着。
「受かってるかな〜。緊張する」
「大丈夫よ。騎士団長に勝ったんだから」
「うん。けど・・・めっちゃ注目されてるね。仕方ないけど」
「そうねぇ。まぁ、堂々としていれば大丈夫よ。どうせなら今日から友達作りましょ」
「難しいよ〜」
マナが騎士団長に勝った話は、歩くスピーカーやら歩く拡声器やらと呼ばれる人から、多くの人に伝えられ、それがネットでも広まった。
そして、掲示板の前にきた。
ドキドキしながら掲示板を見る。
「20番・・・マナ・・・あった!」
「まぁ!合格よ、おめでとう!」
「よかったぁ・・・えーと、点数はっと」
点数公開!
国語85点、算数72点、社会70点、理科64点、古語80点、剣術150点。合計521点。
ーー明らかに異常なのは、誰の目で見てもわかった。
「あらぁ〜・・・」
「剣術、満点超えた・・・」
「まぁ、なんせよ受かってよかったわ」
「うん。帰ろう」
マナは笑顔で帰ろうとする。
すると、目の前に金髪の皇子様が。
笑顔で話しかける。だけど、少し拗ねてるような雰囲気だ。後ろの護衛さんも困っているみたい。
「セレスティアさん?約束忘れましたね?」
「!殿下・・・忘れました」
「正直でよろしい。とりあえず、おめでとうございます」
「殿下も、おめでとうございます」
「はい。そして初めまして、セレスティアさんのお母様」
サフィールは笑顔でお母さんに話しかける。
お母さんも笑顔で答えた。
「あら〜、殿下。初めまして、私はマナの母の、マヒナです〜。娘がお世話になっております〜」
「こちらこそ。少しだけ娘さんとお話しさせていただいてもよろしいですか?」
「あら、いいですよ〜」
「ありがとうございます。セレスティアさん、こちらへどうぞ。貴女、めっちゃ目立つので」
笑顔だけれど、お母さんも少し緊張しているようだ。
いつもより語尾が伸びていて、今日は気を張っているのが伝わってくる。
マナは作り笑顔のまま、皮肉も込めて、サフィールに返答する。
「はい。殿下がいるから、ということもありそうですけど」
「ふふ。そうですね」
サフィールはマナとあまり人のいないところへ行こうとする。
護衛さんもついて来ようとしたが、サフィールに止められた。
どうやら、2人きりで話したいらしい。
護衛さんは困りながら、人を寄せないようにする。
「殿下・・・護衛さん、困ってましたよ?」
「そうですね。何処の馬の骨とも知れない女の子と僕を2人きりにしまいと、してるんでしょう」
「いいんですか?」
「はい。ノエルなら、分かってくれます。あ、紹介がまだでしたね。彼は僕の専属護衛、ノエルです。幼馴染なんですよ」
「そうなんですね。それで、お話しとは?」
サフィールはどこかイタズラっぽい笑みを浮かべる。
そして、マナに言う。
「セレスティアさん、お名前でお呼びしても?」
「え、よ、よろしくないです。私そもそもそんな身分でもないですし」
「別にいいんですよ。僕からの提案ですし〜。ね、マナさん?」
「・・・わかりました」
「ありがとうございます。2人きりの時はこう呼ばせてください」
「あんまないと思いますけど」
「ふふ。結構あるかもですよ」
サフィールはにこにこ笑顔。機嫌が戻ったっぽい。
マナは少しほっとしながらも、困っている。
自分にこうも仲良くしようとしてくる理由もわからないし、もちろん嬉しいけど、どうしたらいいか迷っている。
「それで、お話しなんですけど。マナさん、点数すごいことになってましたね。剣術なんてオーバーしてましたし」
「いえ、殿下ほどではありません」
「謙遜する必要はないですよ」
「本当のことですし・・・」
サフィールは、筆記試験が全教科満点。
そして、剣術も90点だった。最高得点だ。
「では、単刀直入に聞きますが、なんでそんなに強いんでしょう?」
「・・・私にもわかりません。『星の祝福』なのかも知れませんし、そうじゃないのかも・・・」
「全くわからない、ということですね。まぁ僕にとってはどちらでもいいんですが、陛下は気にしてます」
「そうですよね・・・」
「利用されそうで、不安でしょう。ですが、安心してください」
「・・・?」
サフィールの言葉は、マナの気持ちを心から理解するかのように感じられた。
まるでその恐ろしさを、知っているかのように。
サフィールは手を差し出して、言う。
「なら、僕から提案です。たまに、僕と一緒に視察とか行きませんか?」
「え・・・なぜですか?」
「正直に言うと、貴女は皇宮にとって放っておけない存在なんです。だから監視下に置きたい、と思っています」
その言葉には、ふたつの意味が含まれていた。
そうでもしなければ、マナは友達など、作れるかさえわからない。
(また、友達がいない学校生活・・・?)
マナは思わず、服の裾を握りしめていた。
けれどマナにとっては、サフィールも危険。
なにもわからない状況。
最善の選択は、バレないように断ることだろう。
だが、マナの答えは違った。
「わかりました。殿下と、たまに視察に行きます」
「はい。ありがとうございます。悪いようにはしませんよ。こちらとしても、貴重な戦力を失いたくないので」
「ありがとうございます。では、そろそろ戻りたいと思います」
「はい。貴女とは、これからも仲良くしたいと思います。友達として、よろしくお願いしますね」
「はい。よろしくお願いします」
「ふふ。友達として・・・ですね」
「友達として」のその一言は、まるでサフィールが自分に言い聞かせているかのようだった。
確証はないが、マナはそう感じた。
サフィールは柔らかな笑みを浮かべる。
マナは少しかっこいいな、とも思った。
その笑顔は、一部の女子からは国宝級とまで言われ、崇められている。
マナだって恋はしてみたい。けれど、相手が相手なので、油断はできない。
「では、殿下。また今度」
「はい。あ、そういえば、制服を作るなら西区にある『エトランジェ』という名のお店がおすすめですよ。3月9日は割引しているみたいです」
「え、そうなんですか?ならそこに行こうかな・・・ありがとうございます」
「はい。では、またお会いしましょう。さようなら」
マナはぺこっと礼をして、お母さんのところへ。
お母さんは護衛のノエルとペラペラ話していた。
そしてマナが来たら、ノエルが退がる。
「お母さん、帰ろう?」
「そうね。行きましょう。さようなら〜」
「はい。さようなら」
ノエルも挨拶してくれた。
そして、お母さんと2人で家に帰る。
その途中、校門を出る前に振り返ったら、サフィールが護衛にお小言を言われながらも手を振っていた。
マナも振り返し、家に帰る。
◯
家に帰ったら、久しぶりにゆっくり遊べた。
たまに、サフィールのことを頭に思い浮かべながら。
夜になったら、夕飯を食べて、風呂に入る。
そして出たらお父さんに報告だ。
プルルルル〜。
「もしもし〜、マナ」
「お父さん、マーラプア受かったよ!」
「おおぉ!おめでとう、マナ!よく頑張ったな!」
「えへへ」
「騎士団長に勝った甲斐があったな。注目されてただろ?」
「うん。点数も、剣術は150点だったよ!」
「それはすごいな!ちなみに、殿下とはそれからなんかあったか?」
「えっとね・・・」
マナはサフィールと話したことを、またまた省略して伝えた。
「それはすごいな。殿下と視察か・・・」
「うん。バレないように気をつけるよ」
「騎士も多そうだしな。まぁ、たぶんそんなすぐにはバレないはずだ」
「そうだといいな。お父さんも頑張ってね〜」
「ああ。じゃあそろそろ寝よう。おやすみ、マナ、マヒナ」
「おやすみお父さん」
会話が終わったら、電話を切り、寝た。
マナたちの家はこんなに幸せ。
だが、皇宮は全く・・・。
◇
ラニアケア皇国皇太子、サフィール・レヴァ・ラニアケア。金髪碧眼の国宝皇子。
合否の確認を終え、サフィールは城に帰った。
そして、これから王に合格を報告する。
城の中心、王の間の扉の前に来た。
サフィールは深呼吸をする。
体が強張り、心臓の拍が速くなる。
すると、扉が開いた。ゴゴゴと音を立てながら。
レッドカーペットの上を前に進む。
そして王の御前で跪く。
黄金で作られ、真っ赤の最高級クッションの乗せられた王座に、尊大な態度で腰掛けている者。
彼こそ、ラニアケア皇国の皇王、ファネス・ラニアケアだ。
王が言う。その表情は、さぞ迷惑そうだ。
「何用だ?」
「報告です。皇立マーラプア学園の入学試験に合格しました」
「そうか。そんなこといちいち報告せんでいい。だいたい、受からないようなら斬り捨てていた」
「・・・はい」
「出ていけ。我は今日、ルティアナと食事を摂る」
「はい」
サフィールは歩いてそこを出る。
サフィールが出て、扉が閉まると、王は小さくつぶやいた。
「皇族の責務もこなせない・・・ならば子を守れなくて当然だ」
その王の顔は、悲しみのような、怒りのような複雑な表情をしていた。
王座の裏には、小さな箱が1つ、置かれていた。
サフィールは暗い胸の内を抱えながら、自分の部屋まで歩く。
「はぁ・・・」
重苦しいため息が出る。
自分はなぜこんなところにいるのか、と考えてしまう。
すると、前からノエルが来た。
「殿下、いかがでしたか?」
「ノエル・・・なんもなかったよ。いつも通り」
サフィールは幼馴染であるノエルに対しては、タメ口で話す。
彼らだって、普通の12歳の男の子なのだから。
「・・・そうですか。実は、俺からささやかながらプレゼントを用意しています。皇妃様、ルティアナ様と共に買いました」
「ほんと?なに?早く〜」
「はいはい。こちらをどうぞ」
ノエルが小さな箱を取り出し、サフィールに渡す。
サフィールはその箱を開けた。
中に入っていたのは、龍と星のチャーム。
剣につけるのにちょうどいい。
「わぁ。かっこいいね。ありがとう、ノエル」
「喜んでいただけたなら、嬉しいです」
「うん。じゃあ部屋に戻ろっか」
「はい」
ノエルと2人で部屋に。
皇王や皇妃、皇女であるルティアナと比べたら、小さくて簡素な部屋。
ベッドと机、椅子。たったそれだけの殺風景な部屋。
サフィールは椅子に座る。目の前には、たくさんの書類の束。
「じゃあやるか〜」
「はい。お茶を淹れてきますね」
「うん。ありがとう・・・」
鍛え上げられたノエルの背中を目で追う。
あの頃とは違う、大きな背中。
サフィールは悲しみを振り払うように首を振って、書類を手に取る。
サフィールの仕事は、様々な意見書を読み、それについていろんな決定をすること。
絶対王政の中で、様々な意見や不安の声、反対の声が書類として届く。それは大体サフィールが処理する。
(正直、面倒でやりたくない)
そんな仕事を延々と続けている。
王への反感は絶えることない。その割に王は何もしないため、サフィールや皇妃がこなしている。
すると、1つの書類が目についた。
「あ、これ・・・」
「どうしました?はい、お茶です」
ノエルがお茶を持ってきてくれた。
サフィールは礼を言い、完璧な所作で、そのお茶を一口すする。
そしてノエルに書類を見せた。
「ほら、これ本当はラピュセル伯爵家がやるやつだよ」
「本当だ。また押し付けて来たんですね」
「うん。まったく、何様のつもりなんだか」
「伯爵様のつもりなんでしょう」
「その通りだね」
ラピュセル伯爵家は、2人の娘を持つ家。
上の娘が「星の祝福」を持っているのをいいことに、様々な方面で自慢している。
そして傲慢にも、サフィールに仕事を押し付ける。
皇族がこうもナメられている理由は、王が9割占めているだろう。
あとは、サフィールが子供だから。
そういうものは、送り返すのみ。
「そういえば、あの子はどうでしたか?」
「セレスティアさんね。いい子だったよ。正直で。僕の作ったイメージを本当だと信じてるみたい」
「そうなんですね。かなりお気に入りのようで」
「まぁね」
サフィールの「女の子が苦手」は、ただの作り話。
確かに昔からモテてはいたが、そんなストーカーされたり、困るほど告白されたりはしてない。
なんせ皇子だ。ストーカーなんて許されないし、告白しても意味などない。みんな、理解している。
ただ、マナに対しては、別の感情がある。
(なんだか、目が向いちゃうんだよね、あの子)
そこからしばらく仕事をした。
ひと段落したら、風呂に(シャワーだけだが)入り、出たら夕飯を部屋で食べ、寝る。
寝る前、ノエルが言う。
「それでは、おやすみなさい、殿下」
「うん。ありがとう、おやすみ、ノエル」
ノエルは軽く頭を下げて、部屋を出た。
サフィールはベッドに潜り込む。
いつもならため息をついてしまうところだが、今日は違った。
ノエルからもらったチャームを握りしめる。
(ありがとう、ノエル)
サフィールは、ノエルに心から感謝している。
彼がいなければ、ここまで頑張れなかったはず。
幼馴染として親しく話せなくなっても、ささやかな気遣いで、優しさを感じられる。
サフィールは、眠りについた。
今回はマーラプアの校長と、騎士団長の関係を書きます。
校長、カノア・サージェス。
騎士団長、イノア・アルジェント。
カノアとイノアが初めて会った時、まだイノアは普通の騎士でした。
カノア32歳。イノア26歳。
初めて会ったのは、ある年の入学試験。この時の剣術試験の相手として、イノアは学校に来ました。
カノアは、相手となる騎士達に挨拶をしていました。
イノアとカノアはお互いの名前を聞き、言いました。
「名前、似てんな〜」
1文字違いの2人は、名前が似ていることを理由に、会話し始めました。
騎士と先生は本来あまり関わることはありません。
なので、この2人も入学試験以来、あまり会っていませんでした。
ある日、皇都アイカーネに魔獣が現れました。
しかもそれは、イノアの家の近く。イノアの弟、最も小さな子が、たまたま魔獣を引き寄せる薬を割ってしまったのです。
お父さんとお母さんは、それぞれ両腕に子供を抱え、長女も弟を1人抱っこして逃げました。
けれど、薬の1番そばにいた弟は、危険で近寄れませんでした。
それでも、カノアは先生であり、子供を守る義務があると、駆け出しました。
弟が魔獣に怯え、泣きだします。すると、魔獣はその弟に気づいてしまいました。
カノアは弟に覆い被さり、守ろうと必死になります。
そんな時、騎士団が着きました。
その中には、イノアも。
場所がカノアの家のそばだと知り、すぐに駆け出して来たのだそうです。
そして、イノアはカノアを守りながら戦い、なんとか倒しました。
それからイノアの一家はカノアに謝礼をたくさん贈り、お金持ちであったため、様々なものをくれました。
カノアは躊躇しましたが、半分押し付けられる形でもらいました。
そして、それからはカノアとイノアは仲良しに。
今となっては、親友と言えます。
年差は多少あれど、1番分かり合える友達です。
星への願いが、叶いますように。




