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星姫 〜天の星、地の人〜  作者: 猫様のしもべ
第1章 星と出逢いの、小さな始まり
4/16

第3話 姿を偽り、試される日 後編

〜前回のあらすじ〜

皇立マーラプア学園の入学試験が始まった。

前回は筆記試験で、難しいがなんとか解けた。

次は剣術試験だ。どんなことが起こるのか、皇子様とはなんかあるかな?

キーンコーンカーンコーン♪

試験官である、学園長が教室に来た。

途端にみんな気を張って、姿勢を正す。

学園長は言う。


「それでは、これから剣術試験の会場に移動します。試験番号順に、私の後ろについてきてください」

「はい」


みんな立ち上がり、試験番号順に並ぶ。

学校が貸す剣を持ち、教室を出た。

マナは誰にも見られていないうちに、そっとペンダントを外してポケットに入れた。


少し移動し、学校の訓練場に着く。

ここでは、普段生徒たちが剣術の訓練をするらしい。

他のクラスで筆記試験をしていた受験生も集まるため、とても大人数。

今年の受験生は、合計1000人だとか。


たくさんの受験生の前には、多くの騎士団員が。

今日、相手をしてくれる人たちだ。


「皆さん、こちらは今日、剣術試験の相手をしてくださるラニアケア皇立騎士団の皆様です。よろしくお願いします」

「「「よろしくお願いします!」」」


みんな一斉に挨拶する。

すると、1人の騎士団の人が前に出て、言う。


「ようよう、ひよっこども!俺はラニアケア皇立騎士団の団長イノア・アルジェント!よろしくな!」

「「「よろしくお願いします!」」」


みんな声を揃えて答えた。

少し心の中では笑っているかもしれない。

なぜなら、イノアは古語で「名前」だから。

騎士団長イノアが言う。


「ちょいと緊張しているみてえだな!俺の犬を紹介してやるよ!ほら!名前はイリオだ!うちの娘に、めっちゃ懐いててよ!」


騎士団長がケレポナに犬の写真を映す。

前列に並ぶマナには、それが見えた。

映っていたのは、騎士団長の見た目からは想像できないような、かっわいい犬。

もっふもっふの真っ白なポメラニアンだ。

けど、名前は相変わらず。イリオは古語で「犬」。


「じゃあ始めるぞ!自分の班は覚えてるな!?こいつらが班の札を掲げるから、そこに行け!」

「「「はい!」」」


騎士団長が言い、受験生が返す。

100人の騎士団が10人ずつ、相手をする。

マナは一班だ。

移動したら、座って待つ。名前を呼ばれたら、前に出て戦う。


「それでは、剣術試験を始めます。騎士団の方と対戦していただき、点数をつけます。『星の祝福』は使用禁止です。不正のないよう、教師が見守っておりますので、ご安心ください」

「「「はい!」」」


学園長の言葉に、生徒が返した。


(「星の祝福」・・・星が一部の人にのみ授ける、超能力。確かこの国の皇子様も持ってるんだったな)


マナの悩みを他所に、剣術試験が始まった。

ここからは、マナたちの班だけ見よう。

一班担当の騎士さんが言う。


「初めまして、受験生の皆さん。僕は一班の相手を担当する、リヒト・シュペールです。よろしくお願いします」

「「「よろしくお願いします」」」

「はい。では、まず1番。ソフィ・クレシェンテ」

「はい」


ラベンダー色で、香りのする綺麗な髪。

そして、アメジストのような紫の瞳。

美人という言葉がしっくり来るような、容姿。

クレシェンテ公爵家の1人娘だ。


ソフィは少し変わり者だと言う噂も・・・。


「では、行きます!」

「はい!」


リヒトが言い、ソフィが答えた。

ソフィが斬りかかるのを、リヒトが防ぐ。

ソフィの剣には、冷たい空気が纏われていた。


小さな氷のような軌跡が残り、消えてゆく。

ソフィは間髪入れず、美しい剣筋で斬りかかる。


さすがは公爵家の娘。

長い髪を靡かせ、リヒトの攻撃を回避した。

けれどリヒトに受け流されてしまい、剣が弾かれた。

ソフィは落ち着いた声で言う。


「負けました」

「はい。ですが、とてもお上手でしたよ」

「ありがとうございます」


ソフィは完璧な礼をして、元の位置に戻る。


「では次、10番のラルム・セメンテリオ」

「はい」


その人が戦う。

力のこもった強い剣技で斬りかかっている。

だがやはり、リヒトの方が優勢なようだ。

少しして、会場がどよめく。


「うっ・・・いってぇ・・・」

「だ、大丈夫か!?」


マナたちの相手のリヒトが怪我をしてしまったらしい。すぐに騎士団長と学園長が駆けつけた。


「これ、手首は打撲してるな・・・。これやったの誰だ?」

「10番の受験生です」


リヒトがその人を示し、騎士団長がそちらを見る。そして、言う。


「なぜこうなった?」


騎士団長は軽く威圧しながら、問う。

けれど10番のラルムは、あまり焦っていない様子。


「わざとじゃありません。俺の『星の祝福』である念力は、自己防衛のために勝手に発動してしまうことがあります。そのせいで浮かせてしまい、落としてしまいました」

「悪気がなかろうと、お前が制御できていないせいだから、減点する。だが『星の祝福』の制御はとても難しいと聞く。そこは考慮してもらおう。お前も制御できるようになれ」

「はい。すみません」


騎士団長の言葉に、マナは少し思うところがあった。

怪我を負ったリヒトは、学園長と歩いて医務室へ行く。そして、騎士団長が言う。


「悪いが、ここからは俺が相手する。まぁ俺は強いが、運が悪かったとでも思っておいてくれ。ちゃんと採点はするからよ」

「「「はい!」」」


みんな元気に答えているが、一部の人(戦闘狂)を除いて、心の中では運悪いと思っているだろう。

そしてこの強い騎士団長に1番に挑むことになるのは、マナだ。


「あー、20番、マナ・セレスティア」

「はい」


マナに憐れみの視線を向ける生徒たち。

祈るかのように、手を組む生徒までいた。

マナは騎士団長の正面に、立つ。


「じゃあやるぞ!」

「はい」


マナは木剣を持ち、構える。

その瞬間、目にも止まらぬ速さで、間を詰めた。

マナにとっては、ただ斬りかかっただけの攻撃。

けれど、騎士団長にとってそれは、12歳とは信じ難いものだっただろう。


「速っ・・・!?」


騎士団長はほんの少し、後退した。

マナの剣が、まるで花びらのように交差する。

見守る生徒の1人が、つぶやいた。


「あの子、誰・・・?」


マナは剣の重さを感じさせない、俊敏な立ち回り。

冬の冷たい空気を斬り、騎士団長を追い詰める。


マナは正面から斬りかかる。

騎士団長は剣を横に持ち、防ごうとした。


だがその瞬間ーー

微かな星の光が、空を裂いた。

そして騎士団長の剣は、宙に舞い、地面に刺さる。


「ま、負けた・・・!」

「・・・!あ、ありがとうございました・・・」


マナは思わずそう言ったけど、内心とても驚いていた。だって、騎士団長が勝つと思っていたから。

マナ自身、なぜ自分の体がこんなに動くのか分からなかった。

ただ、直感で感じた。次に来る斬撃の軌道、回避のタイミング、立ち回り・・・。

まるで戦いに慣れているかのようだった。


1人の生徒が、つぶやいた。


「騎士団長が負けたのなんて、初めてだ・・・」


マナは思わず、剣を強く握った。


星姫は世界を救うため、魔神を倒す。

それには強くなければならない。

そのせいで、周りから畏怖されるとしても。


実はマナは剣を握ったのは、これが初めて。練習も特にせず、動画で学んでいただけだった。

しかも今日はとても寒い日。

マナは寒くて、体が鈍っていた。これでも。


マナは元いた位置に戻った。そして座って待つ。

たくさんの人がマナに注目している。マナは感情を表に出さないため、平然として見えるが、内心は大変なことになっていた。


(どうしよどうしよ。え、勝った?私が?騎士団長さんに?国で1番強いはずの???)


こんな感じでパニックになってしまう。

マナは必死に、策を練る。


(と、とりあえず・・・たってなぁ・・・)


どうしようもないことは、わかっていた。

すでに勝ってしまったのだし、たくさんの人が見ている。証拠隠滅など、しようもない。

だけど、マナが焦る理由はもう1つある。


「あー、えーっと、次、30番、サフィール・レヴァ・ラニアケア皇太子殿下」

「はい」


黄金のような金髪に、サファイアのような碧眼。

見た目通りの、正真正銘の皇子様。ラニアケア皇国が誇る「天の力」持ちの皇子様。

サフィールはちらっとマナの方を見た。

しかしマナと目が合うと、一瞬目を見開き、すぐ目を逸らした。マナも、すぐに下を向く。


(どうしよ、やっぱこっち見てる。避けようと思ってたのに・・・!)


マナは心の中で焦る。マナが焦る理由の二つ目は、この皇子様だ。星姫を捜している第一人者。

聡明な皇子様なら、すぐ見抜かれるかもしれない。もしそうなれば、お母さんやお父さんと引き離されるかも知れない。それは断固として、お断りだ。

マナはすぐに対応策を考える。


「では、行きます。殿下」

「はい」


サフィールと騎士団長が構える。

さっきから騎士団長さん、落ち込み気味な声。

無理もないだろう。

何せ12歳の、それも女の子に、自分が最も得意とする剣術で負けたのだから。

もはや自尊心ボロボロだけど、闘争心はメラメラ。


さぁ、戦闘が始まった。

まず、サフィールは下から斬り込む。

鍛えられたであろう腕で、力強い斬撃を繰り出す。

何度も斬りつけるけど、騎士団長さんはほぼ動かずに受け止めている。直立不動とはいかないが。


(さすが皇子様、剣は得意みたい)


サフィールは一瞬悩み、攻撃を放つ。

だがフェイクだったようだ。

カウンターに引っかからない攻撃を振るう。

けれど回避され、剣を弾き飛ばされてしまった。


「俺の勝ちですね」

「はい。さすが、騎士団長です」

「光栄です」


騎士団長を呼び捨てにし、騎士団長に敬語を使われるのは、皇子だからこそ。

周りの人は、皇子ですら勝てないのにと思っているのか、マナに視線を向けた。

マナは平静を保つ。


その後、一班の人はみんな戦ったが、全員負けた。これで終わり。

騎士団長が、褒め言葉を綴る。


「これにて終わりだな。さすが、星姫様の生まれた代のやつらなだけあって、普段より強かったぜ。特に俺に勝ったやつ。俺もまだまだだと思い知らされた。とりあえず今日はお疲れ様。皆の努力が実り、合格できることを星に祈る」

「「「ありがとうございました!」」」


騎士団長は手を振った。その目は闘争心に満ち溢れている。

他の班だった人たちは、騎士団長に勝った!?と驚いている。

マナは内心、滝汗状態。


「それでは教室に戻って配布物を配ります」


学園長がそう言い、みんなで教室に戻る。

冬の日が落ちるのは早く、もう夕暮れ時だ。


「では、答えと解答を配ります」


先ほど解いた問題の解答用紙と、答えが配られた。

みんなすぐにでも答え合わせをしたいだろうが、己を律する。


「それでは、これにて皇立マーラプア学園入学試験を終了といたします。皆さん、お疲れ様でした。皆さんが合格できることを星に祈ります」

「「「ありがとうございました!」」」


そして学園長が教室を出ると、みんな帰り支度を始める。みんなもうヘトヘトだ。

剣術試験で一班だった人たちは、マナのことが気になっているが、話しかける気力ももう起きない。

だが、そんな気力が起きてしまう人が。

麗しき皇子様が、マナに話しかける。


「セレスティアさん、お疲れ様でした」

「!殿下、こちらこそお疲れ様でした」

「はい。セレスティアさん、少しだけ時間もらえますか?ちょっと話したいことがありまして」

「えっと・・・す、少しなら。人のいない場所で・・・」

「はい、じゃあこちらへどうぞ」

「はい」


マナはサフィールの言う通り、人の来ない教室に来た。サフィールは言う。


「なぜ、人のいないところを?」


マナはさっき考えた対策を振り返る。


(まず、1番有効な手段は、殿下に好意があるように見せること。殿下は女の子が苦手だとどっかで聞いた。言い寄られるとさらに困るんだとか・・・。なら今、1番の答えは・・・!)


マナは“いつもの笑顔”で、サフィールに答える。


「他の人には会話を聴かれたくなくて・・・殿下と2人きりになりたかったんです」

「・・・そうですか?」


マナは声の調子を変えて、言う。


「今日、初めて見た時からかっこいいな〜と思ってまして。勝手してすみません」

「嬉しいです。貴女とは仲良くなれそうですね」


マナの、どうだ!という心中を打ち破るように、サフィールからそんな回答が返ってきた。

マナは驚く。顔には出していないつもりだが、目が見開いている。

なにせ、その言葉に偽りはないように聞こえたから。


「こ、光栄です。ですが、なぜ・・・?」

「別に、誰に対してもこう返しますよ」


サフィールはにこっと笑顔で、そう返した。

けれど、マナには後ろに立っている護衛が、怪訝そうな顔をしているのが見えた。


(嘘なのかな・・・?)


マナは少しそう思ったが、嬉しいと言ったのが嘘なのか、別にと言ったのが嘘なのか分からなかった。


「えっと、あ、明日にしてもいいですか・・・?その、少し疲れてしまって・・・」

「ふふ。いいですよ。騎士団長に勝ったんですから、疲れて当然ですね。また明日」

「!あ、ありがとうございます。また明日、お会いしましょう」

「はい」


マナはそそっと教室を出た。

騎士団長に勝った、というその言葉だけで、何かを見破られたような気がした。

そして、鞄などを持ち、すぐ家に帰った。


「た、ただいま・・・」

「あら、おかえりマナ。何かあったの?」

「いろいろあった・・・」


マナはリビングに来て、ソファに座る。

お母さんも横にいる。

マナは髪飾りを外す。すると、髪は銀河のような色に、目は星を宿した煌めく瞳に戻った。


マナは試験であったこと、その後サフィールと話したことを、曖昧に話した。

特に「嬉しいです」などと言われたことは、隠して話した。なんだか気恥ずかしかったから。


「あらら〜。まさか騎士団長に勝っちゃうなんて。さすが私の娘ね!」

「もー。困ったよ〜」

「たぶん殿下も、マナの戦力が欲しいのでしょうね。ふふ。どうせならそのまま玉の輿に乗ったら?お金には困らないわよ」

「お金に困らなくても自由に困るよ」

「なら、対応策を考えましょ」

「そうだね。頑張るぞ。おー」

「おー」


適当にガッツポーズしたら、夕飯を食べる。

もし受からなかったら、明後日、ハーラウ学園を受験する予定なので、勉強しておく。


とりあえずご飯を食べ、風呂を出た。そして、お父さんに電話をかける。

プルルルル〜♪


「お、マナ。どうかしたか?受験はうまく行きそうか?」

「うまくいかなかったらびっくりだよ」

「お、自信満々だな。簡単だったのか?」

「いや、筆記試験はめちゃむずかった。それよりね、私剣術試験で、騎士団長さんと戦ったの」

「騎士団長と!?なんで!?」

「なんか前の人が、担当の騎士さんを怪我させちゃったから」

「ほぇー。それで?」

「そしたらね、勝っちゃったの!」

「マジで!?マナ強いなっ!」

「でしょー」


マナは勝ち誇った顔をしてみせる。


「しかし、そこには殿下もいたんだろ?平気だったのか?」

「平気じゃなーい。あの後話しかけられて、ちょっと話したの」

「マジか。そりゃ危ないな。なんでも聡明らしいしな」

「うん。どしよっかな〜」

「まぁ、なんかあったら俺に相談しろな!」

「うん。とりあえず合格してますよーに」

「ああ。星に祈ろう。じゃあ、そろそろ寝るか。おやすみ、マナ、マヒナ」

「おやすみ、お父さん」

「おやすみ、レオン」


そうして電話を切った。

その後、部屋に戻り少し勉強して、寝る。

明日は合格発表だ。

マナは対応策を考えつつ、合格を祈って、寝た。

今回は騎士団長イノアについて書きます。


イノアはごく普通の村で生まれた少年でした。

けれど昔から活発で、強いものにはなんとしても勝ちたくなる子でした。


たまに村に現れる狼に挑んでみたり、それがダメならお父さんと格闘したり。

楽しい日々を過ごしていました。


けれど、そんな日々も長くは続きません。

ある日、村になんと、魔族が現れました。

魔族は村の人々を次々に襲っていきます。


イノアのお母さんは、イノアを家の高いところに隠し、囮になるために出ていきました。

お父さんは、魔族と勇敢に戦いましたが、敗北してしまいました。


イノアはしばらく隠れていましたが、とうとう魔族に見つかりました。お母さんが必死に盾になろうとしますが、魔族はそれを楽しんでいるように、イノアに攻撃しようとしました。


すると、突然後ろから、魔族を切り裂いた者が。

当時の騎士団長です。

当時の騎士団長が連れてきた騎士団が、魔族と総出で戦い、なんとか勝ちました。


イノアはなんとか保護され、助かりました。

けれど、お母さんは傷が深すぎて、助かりませんでした。

イノアはお母さんを助けられなかったことを悔やみ、当時の騎士団長に、頼み込みました。


「弟子にしてください!!」


当時の騎士団長は困惑しましたが、イノアの強い瞳に押され、弟子にすることに。


それからイノアは才能を開花させ、国で最強の騎士に成り上がりました。


ある日初めて、イノアは1人で魔族を倒して見せました。

その功績を讃えられ、公爵家の爵位を得ました。

正直要らないなと思いましたが、自分も、あの2人のような立派な親になりたいと思い、受けました。


そして、祝祭パーティが終わった後、イノアは1人、お父さんとお母さんのお墓にいました。

そして、誓いました。


「絶対に、幸せな家族を作ってみせる。そしていつか、魔族に怯えなくて済む世界にするから。例えそれが俺じゃなかろうと。見ていてくれ」


星への願いが、叶いますように。

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