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星姫 〜天の星、地の人〜  作者: 猫様のしもべ
第1章 星と出逢いの、小さな始まり
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第1話 星姫と呼ばれし少女

これから前書きには、前回の軽いあらすじを、後書きにはちょっとした裏話を書きます。

広く展開される物語を、どうぞお楽しみください。

ーーただ友達が欲しかった。


そんな小さな願いさえ、淡く消えてゆく。

数多の願いが集う星、サフィアス。


青く輝く星の、中心にいるのはーー

星姫(ほしひめ)」と呼ばれる少女。

マナ・セレスティア。


銀河に淡く輝く、青みがかった白銀の髪。

そして星を宿した、青から白へ移ろう瞳。

その姿は、マナが「星姫」であることを静かに語っていた。


けれど、今のマナはただの12歳の女の子だ。

アニメやゲーム、漫画が好きで、ぬいぐるみを可愛がるどこにでもいるような子。


暮らしているのは、サフィアスにある国ラニアケア皇国の皇都アイカーネ。

マルヒア地区にある、一般的な家で暮らしている。


「お母さん、テレビ見ていいかな」


階段の上から降りてきたマナ。

銀髪紫眼の美人な母、マヒナが優しく答える。


「あら、お勉強はどのくらいしたの?」

「ちゃんとやったよ。歴史と数学をね。マーラプア学園の試験は、来月だから」

「えらいわね。じゃあ少しだけどうぞ」

「やった」


そう、いつもの笑顔を見せながら、マナが言う。

テレビでアニメをつけた。

自分と同じような境遇にある主人公に、マナは想いを重ねていた。


「そのアニメ好きね~」

「魔獣が可愛いから。今度誕生日来たら、この星狐のぬいぐるみ欲しいな」

「覚えておくわね。そろそろご飯を作りましょう」


お母さんがキッチンに立って、服の袖をめくる。

その腕に刻まれた痛々しい傷跡に、マナは一瞬視線を落とす。


あの日、自分の暴走で刻まれてしまった傷。

癒えることはなく、いつまでも傷跡が残っている。


(ごめんなさい、お母さん・・・)


マナはアニメの画面へ、視線を戻した。



やがて夕食が出来上がり、香ばしい餃子の匂いが、部屋に満ちる。


「いただきます」


2人で手を合わせて、ご飯を食べる。


この国に「いただきます」という挨拶はない。

星姫に祈りを捧げ、食べ始めるのが本来の作法。

けれど、マナは自分に祈りたくはなかった。

だから今でも、お父さんが教えてくれたこの言葉で、挨拶している。


お母さんがテレビをつけ、7時からのニュースを見る。

しかしアナウンサーの言葉は、いつも通りではなかった。


「7時になりました。まずは速報です。ラニアケア皇宮は、星の民を本格的に捜索することを決定したと、先ほど声明にて発表しました」

「えっ・・・?」

「マナ、音量上げて」


少し震える手で、リモコンを操作した。

アナウンサーは続ける。


「星の民は、古来サフィアスを統治していた神と女神の子孫であると考えられ、魔神に唯一対抗できるのは“星姫”様のみであるとーー」


(もう、やめてよ・・・)


大昔の文献に頼った根拠は、曖昧に見える。

それでも、その言葉のひとつひとつが、胸に刺さる。


「星姫様が見つかった場合、皇太子サフィール様との婚約も視野にーー」


マナは胸が痛むのを感じた。

星の宿る瞳は微かに揺れ、不安が入り混じる。


魔神の討伐ーーその言葉だけで、胸が苦しくなる。

ただ普通に生きていたい・・・それだけなのに。


そんな思いが胸に広がる。

だがそれよりも、もっと胸を締め付ける思いがある。


(私は、お母さんたちを巻き込んでいるーー)


「星姫」という存在だけに、振り回される星の民。

お母さんも、おばあちゃんも、神の子孫「星の民」。


こんな姿と力を持って生まれてしまったがために、お母さんたちを巻き込んでしまう。

いっそのこと、離れた方がいいのではーー。

そう、思うこともある。


それでも、お母さんたちは、マナを見捨てない。


「マナ、これからはもう少し、気を付けて過ごしましょうね。そして対策をもっと徹底しましょう」

「・・・うん。仕方ないね」


お母さんはマナに笑いかけ、優しく言う。


「大丈夫よ、私たちが護るから」

「・・・ありがとう」


不安と罪悪感が、和らいでいく。

お母さんの言葉は、マナの支えになっている。


「ごちそうさま」


夕食を終え、マナは風呂に入る。

湯船に沈めた胸元に、淡い光を反射するものがある。

マナはそれをそっと手のひらの上に乗せた。


それはとっても綺麗なペンダント。

鍵の形で、頂点に星型の宝石が嵌められていて、その両脇に翼の飾りがある。

宝石はマナの瞳と同じ色。


「サフィアス」と名のついたそのペンダントは、星の民が代々受け継ぐ家宝。

それは存在を認めるものであり、逃げ道を塞ぐ鎖でもあった。


マナは小さく、ため息を落とした。


(どうして、私なの・・・?)


水面が軽く揺れ、そこに映る星の瞳が歪む。

暖かな湯に包まれながらも、心は冷えたまま。

そんな小さな痛みを感じながら、マナは風呂を出た。


風呂から上がったら、星柄のパジャマに着替え、髪を乾かしてリビングへ戻った。


「お母さん、出たよ~」

「ええ、じゃあ入るわね」


お母さんが風呂に入り、マナはゲーム機を起動する。


マナが今1番ハマっているゲーム。

タイトルは「星の祈り」。かなり高性能な、オープンワールドRPGゲーム。

美麗なムービーと、神がかった物語とBGM。イベントややり込み要素も多種多様。


それもそのはず、これは5年の歳月をかけて作られた大作なのだ。

マナにとっては、一生物。


(お父さんが作ったんだから・・・)


誇らしい反面、少し羨ましくもある。

好きなことを、好きなだけ極められるーー。

マナにとってそれは、憧れにも近いことだった。


隣国、翠風国(すいふうこく)に単身赴任しているお父さん。

このゲームをしていると、お父さんが近くにいる気がして、思わず笑みが溢れる。



しばらくして、風呂から上がったお母さんが、タオルで髪を拭きながら言った。


「そろそろお父さんに電話しましょう」

「うん」


マナは「ケレポナ」を取り出した。

日本でいうスマホと、完全に同じ。


マナはケレポナで、お父さんに電話かける。

ビデオ通話にすると、朗らかな笑顔が映る。


「もしもし、マナ、聞こえるか?」

「聞こえてるよ、お父さん」


茶髪碧眼の優しい父、レオン。

離れて暮らしていても、こうして声を聞けるから、あまり寂しくはない。


「お父さんにさ、相談というか困ってるんだけど」

「なんだ?なんでも言っていいぞ!」

「今日やっていたニュースで困ってるの」

「ニュースか、ラニアケアの?」

「うん。あのね、ラニアケアの皇宮が星の民を全国的に捜索することに決めたって」

「・・・それは、本当か?」


お父さんの表情が、少し強張った。


「うん。もし星姫が見つかったらこの国の皇太子と婚約させるとかなんとか・・・」

「そっか。迷惑この上ないな」

「ほんとだよ。しかも皇子様って、聡明って噂だよね。近くにいたらすぐバレそう・・・」

「でもイケメンだぞ?」

「じゃあ皇太子辞めてアイドルやればいいじゃん」

「役者もいいかもな?」

「じゃあ俳優か!」

「ははは!」


いつものくだらないやり取りに、2人は笑う。

重苦しい空気が、ふいに軽くなった。

お父さんはいつも、こうしてマナを笑わせてくれる。


お父さんは優しい声で、柔らかく言う。


「マナ、星姫への期待は・・・マナだけが背負うものじゃない。俺たちも一緒に背負うから、独りで抱え込むなよ」

「・・・うん」


お父さんの言葉は力強く、マナは胸に募る不安が和らぐのを感じた。

お母さんは横で、優しく微笑む。


「当たり前よ。私が世界一愛しているもの。お父さんよりもね」

「なっ!く、仕方ないか」

「ふふ」


お母さんとお父さんは笑う。

でもマナは密かに、感じ取っていた。

「星姫」の両親ーーその肩書きに乗せられた、重さは想像もつかないもの。

それでも、笑わなければ、護れない。


「ありがとう。私も大好きだよ。一番が2人いる!」

「はっはっは、二股か。すごいな」

「私は星姫なんで」

「そうだな」


そんな軽口に、3人の笑い声は重なる。

離れていても、家族の暖かさはちゃんと届く。


だが、通話の最後にはどうしても、微かな沈黙が漂ってしまう。

互いに、言葉にできない不安を抱えたままーー。


「じゃあゆっくり休めよ。おやすみ、マナ、マヒナ」

「おやすみ、お父さん」


通話が切れ、リビングにまた静かさが広がる。

そっとケレポナを充電器に戻し、立ち上がった。


「おやすみ、お母さん」

「おやすみ、マナ」


マナは自分の部屋の扉を、そっと閉める。


部屋は薄い水色で統一されていて、ぬいぐるみや小物が並ぶ、可愛らしい部屋。


マナはベッドに腰掛け、理科の資料集を開く。

寝る前の記憶は定着しやすいーーそう教わったから。


資料集を閉じるころには、眠気がゆっくりきた。


マナは布団に潜り込んだ。

暖房の暖かさに包まれながら、そっと目を瞑る。


(星姫でなんか、ありたくない・・・)


「星姫」のイメージとは違う、繊細な想い。

胸の奥にある、小さな願い。


それでも、家族がいるだけでこんなにも幸せ。


けれどーー

幸せでない人は、きっとどこの星にもいる。

だからこそ、星姫は祈られる。


静かな夜、涙を流し、星姫に救いを求める人・・・。

今回はここに、マナのお母さんとお父さんの出会いを書きます。


お母さんとお父さんが出会ったのは、とある学校。14歳の時でした。


お父さんはラニアケアに留学してきた留学生。

お父さんはなんと、名門家の出で、幼いころから己を第一に、と厳しく育てられました。

しかしそれはお父さんの性格に合わず、お父さんは悩んでいました。


お母さんは昔から美人で、多くの男子に人気でした。

しかし隠し事のあるお母さんにとって、人気なのは厄介なことでした。

けれどそう言おうものなら、傲慢だと言われやっかみを受けます。


そんな時、2人は出会いました。成績表とともに。

名門のお父さんは、試験の点数が低いとお仕置きを受けます。

人気のお母さんは、試験の点数が低いと失望されます。

だからこそ2人は点数を競い合いました。


勝ったり負けたり、次第にその日々を楽しく思い始めました。


そして互いにわからないところを教えあったり、悩みを話し始めました。


その後、とうとう卒業式前日、お母さんは星の民についてお父さんに打ち明けました。

お父さんは、その時のお母さんの表情を見て、ハートを撃ち抜かれたそうです。


お父さんはその場で、手に持っていたドーナツを差し出し、告白吹っ飛ばしてプロポーズ!

お母さんは笑いながら「それ?」と呟き、ドーナツを受け取りました。


こうして2人は結婚。

けれどお父さんは家で決められた許嫁を無視して結婚したため、勘当されました。


その後、許嫁とひと悶着あったものの、お父さんは会社を設立。お母さんは看護師に。


そして1年後、愛らしい娘が産まれました。


星への願いが、叶いますように。

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