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星姫 〜天の星、地の人〜  作者: 猫様のしもべ
第2章 学びと戦いの、学園生活
16/16

第15話 球技大会と願い

〜前回のあらすじ〜

皇立マーラプア学園にて、球技大会が始まった。

それぞれの得意とする競技を、楽しみながら行う。

家に帰れば、セフィリアが待っている。

お茶会を楽しみに、全力を尽くすーー。

バレーボール第一試合、特急クラスVS中級クラス。

審判の笛の音が鳴り響き、試合の開始が合図された。


ボールは最初、敵チームに渡る。

だがいくら天才の集うマーラプアとはいえ、みんなまだ13歳。

そんなにバレーの上手い人は、多くない。


ただ相手チームには、2人バレー部がいる。

その競技が1番得意なのは、やはりその部に入っている人だ。

下級は3人、中級は2人、上級は1人まで、部の人を入れていいという決まりがある。


(特級は部の人がいないから難しいな)


だがーー


さすがは「星姫」といったところか。

マナは力強いサーブを、華麗にレシーブで返して見せた。

マナ自身も、ここまでできるとは思っていなかった。


「マナすごい!!」

「あ、ありがとう・・・」


同じチームの人に褒められ、マナは少し照れる。

横に並んで応援しているクラスメイトも、グッドポーズをとっている。

ソフィが激写しまくり、周りが少し驚いている。


次はこちらの仲間がサーブ。

割と上手いサーブだが、返されてしまう。


「わっ!ごめん、力入れすぎた!」


仲間の子のレシーブにより、天井近くまでボールが飛んでいく。

マナはそれを完璧なレシーブで、相手チームに返す。


周りではまた、歓声が湧き起こる。

男子たちや、サフィールもこっそり見に来ていた。

サフィールはソフィに近づく。


「セレスティアさんの写真でも撮ってるんですか?」

「もちろんです!邪魔しないでくださいね」


サフィールはチラッと覗く。

すると、画面の切り替わりが速すぎて、ほぼ見えなくなっていた。


「・・・ソフィさん、カメラマンになれますね」

「うちじゃ無理ですね」


ソフィはそう言った。

格式高いクレシェンテ家では、確かにカメラマンになることなど認めないだろう。

そのうちに、試合は終了の笛が響いた。


「マナ、すごかったね!」

「運動神経最強じゃない!?」

「ありがとう」


マナは終わってから少しの間、人に囲まれた。

その後ソフィが後半の試合に出た。

ソフィはバレーも得意で、それなりに活躍した。


フィルミナは応援するマナを、激写していた。


「ソフィを撮ろうよ・・・」


そして試合は終了した。

圧倒的な点差をつけ、特級クラスが勝利した。

中級クラスのメンバーは、去り際に言っていた。


「特級に勝てるわけなじゃん・・・」

「だいたい、あの子、剣術化け物だし・・・」


マナには、その声が聞こえてしまった。

あの日も聞いた「化け物」という言葉。

それがマナの胸に、深く刺さったまま。


(やっぱり私は、普通じゃないのかな・・・)


あの日、友達だった子から浴びせられた冷たい視線。

それが、心の奥に蘇る。

そう少し俯いていると、ソフィが言う。


「マナ、気にしないでね。マナは私の大親友だから」

「・・・ありがとう」


ソフィのその一言だけで、マナは少し、心が軽くなるのを感じた。

重いモヤが晴れるような、そんな優しさだった。


マナたちは次の試合まで、フィーユの応援に来た。

フィーユは卓球の試合で、上級クラス相手に戦う。


「頑張れ!フィーユ!」


激写するソフィは、メモリが切れたため、新しいメモリに交換し、また激写。

フィーユは大健闘を繰り広げ、僅差で勝った。

だが相手は、フィーユを見下すように言う。


「特級なのに、たったこんだけの点差かよ。ほんと、クオーレ様とは比べ物にならないな」


フィーユは何も言い返さず、ただ黙っていた。

マナもソフィも、言い返してもフィーユが苦しむだけだと、わかっていた。

それでも、やっぱりもどかしさは、残っている。


「・・・フィーユ、別のとこ行こっか」

「うん。ドッジボールでも見に行こう」


ドッジボールは、校庭でやっている。

校舎内よりは、声が響かないだろう。

そう思った3人は、校庭に出た。


ちょうど今からサフィールの試合が始まる、とのことで、女子が群がっている。

一部、男子も混ざっている。


サフィールの相手は、中級クラス。


「試合開始!」


女子たちはサフィールの後ろに隠れている。

わざわざドッジボールに入ったのは、そのためだ。

まずはサフィールチームが投げる。


チームの力が強い子が、思い切り投げた。

そのボールは相手チームの隙間を縫い、外野へ。

外野が投げると、相手チームの男子に当たった。


ボールは、1人の男子の手に渡る。

彼の名前は、レイ・セメンテリオ。

「怪力」の力を持つ、双子の弟だ。


双子の兄である、ラルム・セメンテリオは、入学試験で「念力」を使って罰を受けた子。

マナは思う。


(怪力って、強そうだな・・・)


その瞬間ーー


彼の瞳から、強い怒りを感じた。

空気がピリッと張り付き、息が詰まる。

彼の手は、少し震えている。

まるで祈るかのように、ボールを両手で挟んだ。

サフィールも、それに気づいた。


「ーー才能は、星は、不公平だ・・・!」


彼はそう呟き、ボールを持つ腕を、振りかざした。


「え、あれヤバっ・・・」


バンッ!!


轟音を響かせ、ボールがサフィールへ向かう。

レイは「怪力」の力の全てを使い、硬いボールを、投げつけた。


「殿下っ!!」


ノエルが飛び出そうとしたが、間に合うわけもなく。

空気が引き寄せられ、風が巻き起こる。

全ての音が、ボールに吸収されたかのようだった。


ーードゴンッ!!


咄嗟にサフィールは腕を前に出し、光の膜のような、「天の力」のバリアを展開した。


地面が軽く揺れ、バリアにヒビが入る。

サフィールはよろめいた。

ボールはバリアに跳ね返され、空を突っ切る。

どこか遠くまで、飛ばされていった。


レイは全力を使った反動から、床に手をついた。


「殿下、ご無事ですか!?」


先生たちや、ノエルが駆け寄る。

サフィールは息が荒れていた。

レイにも、先生が集まった。


「なぜこんなことを!」


もしボールが直撃すれば、大怪我は免れなかった。

相手がサフィールでなければ、後ろの女子にも被害が及んだだろうーー。


レイは叫んだ。


「わかってるよ!それでも、俺たちは守れなかった!カルナは、俺たちのせいでーー!」


レイは床を殴りつけた。

先生が取り押さえるが、暴れようともしなかった。

彼は、ただ叫んだ。


「才能のある奴はそれはそれで大変なんだろうけど、才能のない人間は、存在することさえ許されないんだ!」


その声はただ、体育館内に響いた。

誰も何も言えず、見つめていた。

特級クラスのほぼ全員が、その言葉に顔を曇らせた。


まるでその言葉はーー

「星姫」に、向けられているような気がした。

それはまるでトゲのように、胸に刺さった。

彼の心からの想いが、ぎゅっと固まっていた。


試合は中断され、決着はつかなかった。

誰1人として、それに文句は言わなかった。

サフィールはマナのそばに来た。


「殿下、どうして彼は、あんなことを・・・」


サフィールは少し息をついて、静かに語った。

まるで彼の痛みを、理解しているかのように。


「彼、レイ・セメンテリオは、有名な双子の弟です。双子の兄、ラルムと共に2人とも『星の祝福』を持っています」

「双子で、2人とも・・・」


「星の祝福」は、双子だからといって2人とも持つことは滅多にない。

だからこそ、双子のうちで格差が起きるのだがーー。


「彼らには、血の繋がらない、なんの力も持たない、妹がいます」

「そう、なんですね・・・」


マナはフィーユを思い浮かべた。

まるで彼女と同じように、思えたから。


「きっと彼らは妹の痛みを、自分で背負ってしまったのでしょう。そして、僕に向けた・・・」

「星も、彼らも・・・悪くないのに」


マナは空を見上げた。

まだ陽は高く昇ったまま。

生徒たちはまばらに散っていき、教室へと向かった。


マナとソフィ、フィーユも教室へと歩んだ。


「勝ったけど、あまり勝った気がしないね・・・」


普段ハイテンションなソフィも、珍しく声が沈んでいる。

周りのクラスメイトたちも、顔が暗い。


(星の涙は、影を与えるーー)


レイの事件は、皆の心に深い影を落として終わった。

その後、球技大会は幕を閉じた。


みんなと挨拶をして、家に帰る。

セフィリアのことを、ソフィに話すことはできなかった。



マナはぼんやりとした気持ちを感じながら、家に着いた。

扉を開けると、奥から足音が聞こえた。


「マナ、おかえり」


セフィリアが出迎えてくれた。

その姿を見るだけで、心が安らぐ。


「・・・ただいま、セフィリア」

「?なんか暗いね。嫌なことでもあったの?」

「ちょっとだけ、ね。大丈夫だよ」

「そっか。ボクお菓子選んだから、一緒に食べよ」

「ありがとう」


明るい笑顔を見せるセフィリア。

まだ来たばかりの家に1人だったのに、寂しさや、不安を感じさせない笑顔。


マナが帰るまで、お菓子を眺めて選んでいたのだと考えると、とても可愛く思えた。

マナは思わず、微笑む。


リビングに入ると、ソファの前のミニテーブルに、お菓子が並べられていた。

セフィリアは、ソファに座る。


「マナ、こっち来て」

「うん」


マナがセフィリアの隣に座ると、セフィリアはお菓子の袋を開けた。

そしてマナに、差し出す。

とてもーーとても嬉しそうな、笑顔で。


「お茶は淹れ方わからなかったから、ジュース持ってきた。ほら、どうぞ」

「ありがとう、セフィリア」


セフィリアにもらったジュースを飲むと、ほっと心が暖まった。

まるで明るさを分けてもらったかのよう。

胸の奥の冷たい痛みが、柔らかく溶けていく。


マナはセフィリアを見る。

セフィリアはここぞとばかりに、いくつかのお菓子を開け、食べている。


(この可愛さには敵わないな)


マナはそう思い、お菓子を手に取った。

1人じゃできない、秘密のお茶会。

小さな甘さと笑い声が、痛む胸をそっと、包み込んでくれた。

セフィリアと2人、お母さんが帰るまで続けた。

今回はマーラプア学園について、書きます。


皇立マーラプア学園の創立は、星暦1825年です。

約200年と、かなり歴史のある学園です。


東西南北の4つの校舎から形成され、広いのに迷わないような配置になっています。

校舎のどこも綺麗に掃除され、美しい景観が保たれています。


学園の中庭、その中央には大きなクリスタル。

学園全体にバリアを張る、大切な星道具です。


告白の定番といったら体育館裏ーー

と思いますが、マーラプアは違います。

このクリスタルの真ん前が、ベストスポット。

ただしどの校舎からも丸見えなので、恥ずかしい方はやめとくのを勧めましょう。


この学園は、マナたちの物語の重要な舞台。

どんな友達ができて、物語が紡がれてゆくのか。

それはぜひ、続きを読んで確かめてみてください。


星が人々を、繋げてくれますように。

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