第10話 間抜けな盗賊団
〜前回のあらすじ〜
学校の授業で、星獣の森へ来たマナ達。
鹿に案内され、マナ1人で森の奥へ。
そこには、倒れた動物や可愛らしい星獣がいた。
母を助けて欲しい、という星獣の願いを聞き、マナは動物達と共に駆け出す。
少し森の中を走ると、前に開けた場所が見えた。
綺麗な湖と花畑。
そこに合わぬいかにも盗賊らしい5人の男達。
そして檻に閉じ込められた美しい生き物。
「あそこなのです。あの檻の中に閉じ込められているのがお母さんなのです」
「分かった。じゃあ、やろう」
マナは草むらから飛び出す。
そして剣を抜き、盗賊の前へ。
「な、なんだお前!?」
「・・・星獣を放して」
「なんだよガキじゃねぇか」
すると、太り気味の盗賊がお頭と思われる人に言う。
「おかしら、あの子めっちゃ可愛いっす。星獣と一緒に連れてってもいいか〜?」
「はぁ。お前の趣味は相変わらずだな。まぁいいだろう」
「あざっす」
派手な服装の盗賊が言う。
「ふっ。まぁ確かに可愛いが、俺には敵わないな。この洗練され尽くした肌と整いすぎた顔つき・・・今日もかっこよすぎて辛いぜ」
「男と女比べんなよ・・・。それに、俺の推し様に比べればお前ごとき下の下だぞ!」
「あんだと!?」
派手な盗賊と、歌い口調が印象的な盗賊が、言い争いを始めた。
すると最後の1人、杖を持った盗賊が言う。
「ふはは。今から貴様に罰を与えてやろう!この俺の偉大なる、魔族にも劣らぬ能力、ブラックサンダートルネードをな!」
「名前なっが!」
歌い口調の盗賊と派手な盗賊がツッコむ。
一癖ある者達が集まった、イロモノの盗賊団だ。
すると、お頭が剣を取る。
他の奴らも杖持ち盗賊以外は剣を出した。
「じゃあやろうか?お嬢さん」
「いいよ」
マナはこの、一癖ある者達がなぜ、魔獣を操れたのか気になった。
すると、派手な盗賊があっ!と言って、お頭に言う。
「お頭、この子アレですよ!騎士団長に勝ったって噂のバカ強い子!」
「お?ならやりがいがありそうだな」
「勝てるかな!?」
派手な盗賊がそう言った。
マナは剣を構え、言う。
「フィオーレ!」
「はいです!」
すると派手な盗賊の足元から蔓草がニョキニョキと生え、派手な盗賊のことを捕まえた。
「なっ!?いくら俺が美少年だからってこんな!」
「違うと思うぞ。そもそもお前43だろ。なにが少年だ」
お頭がそう言った。
少年というには厳しい年齢だな。
「みんな、お願い!」
すると動物達が飛び出し、盗賊に襲いかかる。
「ぎゃーー!!く、くくく、くまー!?」
太り気味の盗賊は熊の力強い腕に、押し倒された。
熊は牙を剥いて、威嚇する。
「押し倒されるなら、可愛い女の子がいい・・・」
歌い口調の盗賊は猪にどつかれ、ノックアウト。
服から大量のアイドルグッズが出てきた。
「くっ・・・ライブ会場並みの圧だぜ・・・」
そして2人とも蔦に縛られる。
お頭が言う。
「ちっ。後は俺だけか・・・」
「俺もいるぞ!」
杖持ち盗賊がそう叫んだ。お頭は聞いていない。
お頭がマナに斬りかかる。情け無用といった感じ。
「騎士団長に勝ったんだったな!?実力見せてみろ!」
マナは相手の攻撃を華麗にいなしつつ、チャンスを伺う。
その間、杖持ち盗賊はよっせほっせと木に登る。
あまり高くない木を選んで。
そしててっぺんになんとか着いたら、謎の言葉を唱える。
「我が名は漆黒の守護者。この世を支配せんと企む魔神を倒すべく、裁きの雷を・・・うんたらかんたら」
「なーに長ったらしい呪文唱えてんださっさとしろ!」
「は、はい!今から悪しき・・・くもなさそうだけど、とりあえず貴様に裁きを下す!わ、我が名において命ずる!ブラックシャンダートリュネード!」
「噛んでやがる・・・」
締まらない呪文だが、力はそこそこ。
突然空に暗雲が現れ、バチバチと音を立てる。
そしてカッと光り、白い雷がマナを目掛けて落ちる。
その瞬間、盗賊達は目を見張った。
マナのペンダントが光り輝き、マナを囲むバリアが現れた。
キンッという高い音が響き、雷が跳ね返る。
跳ね返された雷は杖持ち盗賊をかすった。
「ぎゃぁっ!!」
杖持ち盗賊は木から落下。
フィオーレの蔦が華麗にキャッチし、捕獲。
「なっ、なんだ!??我の・・・我のブラックサンダートルネードが、反射された・・・!!」
お頭もさすがの出来事に、一瞬フリーズ。
その隙にマナが剣を吹っ飛ばし、フィオーレが捕縛。
これにて一件落着。
◯
決着の少し前、サフィール達。
みんなざわざわとしていた。
なぜなら、突然雷雲が現れ雷が落ちたかと思ったら、雷が何かに跳ね返ったように下から上へ落ちた(?)から。
サフィールは何か嫌な予感が、胸でざわめく。
先ほどの魔獣と関係があるかもしれない。
(それより、マナさんに何かあったら・・・!)
サフィールは駆け出した。
直後、少しだけ振り返り、みんなに言う。
「僕ちょっと行ってきます!」
「殿下!?」
ノエルがすぐに追いかけた。
みんなは少し悩み、先生に報告することに。
◯
さて、マナは盗賊を捕獲し終えた。
「ちっ!なんなんだよお前・・・。変な『星の祝福』でも持ってやがんのか?」
「持ってないよ。大人しくしてて」
すると、サフィールが到着した。
ノエルもすぐ後に来た。
「マナさん!」
「え、あ、殿下」
「大丈夫ですか!?何があったんです?」
サフィールはマナを心配する。
そしてすぐ盗賊に気づいた。
「彼らは盗賊ですか・・・?」
「はい。星獣を捕らえていたようです。早く出してあげないと・・・」
「なるほど。でも無謀すぎますよ。1人で盗賊5人に挑むなんて。いくら強くても危ないです」
「大丈夫ですよ。動物達も協力してくれましたから」
「動物・・・?」
サフィールは後ろで丁寧に整列する動物に気づく。
「動物達はセレスティアさんに従っているんですか?ソフィさんから聞いたことも・・・」
「あ、いえ、その・・・」
マナが答えに迷っていると、フィオーレが飛び出す。
サフィールの視界を遮るように、手を広げた。
「ぼくがやったです!ぼくは星獣フィオーレです!お母さんのためにお願いしたです!」
「わっ。な、なるほど。星獣様ならあり得ますね」
「星ひ・・・えっと、早くお母さんを出してあげて欲しいです!」
「そうでしたね」
サフィールはお頭のポケットから鍵を取った。
どこか無駄に装飾品のつけられた鍵だ。
するとお頭がサフィールに言う。
「なぁあんちゃん」
「え、はい?」
「あんためっちゃいい見た目してんな」
「え、え?」
サフィールは少し驚き、後退り。
ノエルも思わず前に出る。
すると、派手な盗賊が言う。
「お頭はいろいろな意味で、激ヤバなんだよ。気をつけろよ、美少年。まぁ俺のが上だけど」
「えぇ!?」
サフィールはささっと離れる。
お頭は余計なことを・・・と悔やんでる。
サフィールはマナに鍵を渡した。
「えっと、どうぞ、セレスティアさん。星獣様を解放して差し上げてください」
「あ、はい」
マナは星獣の檻を開ける。
中から星獣が出てきた。
傷はもう治っているようだ。
「私を助けてくださり、ありがとうございます」
丁寧に感謝する星獣。
大きな狐に翼が生えたような見た目。
頭や羽、手足に飾りが付いている。
盗賊はこれごと売るつもりだったようだ。
「どういたしまして」
「私は星獣フィオレンサです。息子と動物達も一緒に助けてくださったこと、言葉に尽くせません」
「気にしなくて大丈夫だよ」
すると、フィオーレがフィオレンサに飛びついた。
「お母さん!無事でよかったのです!」
「フィオーレ、ありがとう。よく頑張ったわね」
「お母さんのためならなんでもできるです!」
「ふふ、優しい子ね」
フィオレンサが、優しくフィオーレを抱きしめた。
暖かく、穏やかな光景。
けれどサフィールとノエルは、どこか寂しそうに見えた。
その時、クラスのみんなと先生が到着した。
バラバラに探索していた生徒を集めるのに時間がかかったようだ。
「殿下、セレスティアさん!大丈夫ですか!?」
「はい。先生」
「よかった・・・って星獣様!?」
みんな驚く。
するとソフィがマナに抱きついた。
「マナ!無茶しないでって言ったのに!」
「ごめん、ソフィ。でも全然無事だよ」
「よかった〜。もう二度とやらないでね。次やったら私、マナのそばを離れないから!」
「わかったわかった」
すると、フィオレンサが言う。
「恩人様。どうかこれをお受け取りください」
フィオレンサがくれたのは、水色の星染花。
星でたった1つの花らしい。
「わぁ、可愛い。ありがとう」
「ほんの少しの恩返しです。この花は長時間咲き続けるようにしてあります。飾ったりするととても可愛いと思いますよ」
「それはいいね。大事にするよ」
盗賊はノエルが呼んだ騎士団に捕えられた。
お頭は派手な盗賊と言い争っている。
「あんたより俺の方がぜんぜんマシだわ!」
「愛があれば年齢は関係ねーんだよ」
「だったら俺だって俺に愛があるんだから年齢なんか関係ねー!」
「しっかし、あの宗教団体が寄越した魔獣、全く役に立たなかったな」
「いや、役に立ってたぞ・・・」
そんなことを言い争いながら、連れて行かれた。
お頭は連れてかれるまでサフィールを見ていた。
サフィールはノエルに言う。
「なんか、なんもしてないのに疲れた」
「でしょうね。まぁ多様性の時代ですし」
「僕ってそんなに見た目いいかな・・・」
「さぁ?」
「さぁって」
サフィールとノエルは、少し笑い合った。
そして、状況の1つもわからない先生が言う。
「えーと、みなさん、スケッチは終わりましたか?」
「「「はい」」」
「では、星獣様にご挨拶をして、教室に帰りましょう。ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
「こちらこそ、ありがとうございました。またいつでも来てくださいね。結界はすぐに修復します」
フィオレンサがそう言った。
普段この森は、フィオレンサの力で結界が張られている。今回はマーラプア生が来るために、少し弱めていたらそこを魔獣に破壊され、侵入されてしまったのだそう。
その後、先生と一緒に教室へ戻った。
そして昼ごはんを食べたら、午後自分のスケッチした植物について発表し、今日は終わり。
◯
マナは家に帰った後、フィオレンサにもらった水色の星染花を、花瓶に飾り、部屋に置いた。
星姫としての役割を嫌うマナだが、誰かを救えたことに、少し安堵感を感じた。
フィオレンサとフィオーレの、暖かい光景を忘れないようにしたいと、そう思った。
今回はあの、間抜けな盗賊団について書きます。
名前つけていないんで、本編の呼び方のままで。
お頭は昔、弟がいました。
小さくて可愛い、甘えん坊な弟でした。
そんな弟に、お頭はガチ恋してしまいます。
ですが、危機感を感じた親により、家から追い出されました。
それ以来、盗賊として可愛い男の子を探しています。
太り気味の盗賊は、昔年下の女の子に告白し、振られました。
そこで諦めるかと思いきや、なぜかヒートアップ。
女の子は騎士団に通報し、彼は補導されました。
その後、女の子は引っ越してしまったため、盗賊になり、お頭と協力しています。
派手な盗賊は、実は1番まともだったりします。
昔彼は、父親に憧れていました。
父のようになりたくて、必死に自分磨きしました。
その結果、多くの女の子にモテました。
ところが両親が事故に遭います。
その後は両親の代わりに、自分に溺れるようになり、盗賊に入って悪さもするようになったのです。
歌い口調の盗賊は、3歳の時から、様々なアイドルを推していました。
ところがある時デビューした、今では大人気のアイドルグループのセンターに、心を奪われます。
その後は周りからなんと言われようと、推し活を続け、金を使い果たしたため、成り下がって盗賊になりました。
杖持ち男は、生まれつき「雷の力」を持っていました。
それはその当時、ものすごく珍しく、さらには強いものでした。
ところが、親のいない彼は、よくない人に狙われるようになります。
恐怖に怯えて助けを・・・と思ったら、杖持ち男はその状況を楽しみ始めました。
どうやら、狙われる=特別と思っているよう。
それ以来、彼はわざと盗賊になり、政府に追われることを楽しんでいます。
彼らにだって、願いはありますね。
盗賊になる人も、それなりの理由があるのでしょう。
星への願いが、叶いますように。




