第9話 星獣の森にて、影を見る
〜前回のあらすじ〜
ついに始まった学園生活。今日はみんなが楽しみにしていた、星獣の森へ行く日だ。
期待に胸が膨らみ、わくわくする。
けれどその森には、招かれざる客もいるようだ・・・。
皇立マーラプア学園の入学式から、早くも1週間。
今日は、星獣の森へ行く日だ。
みんな学校に集まって、おしゃべりしている。
しばらくして、先生が来た。
「皆さん、おはようございます」
「「「おはようございます」」」
「はい。今日は星獣の森へ行きます。忘れ物はないですね?では、行きましょう」
「「「はい」」」
先生の後ろに並び、ついていく。
学校の裏側に、大きな森がある。
そこが星獣の森。
少し歩いて、森に到着した。
森の前で、みんなで少しお祈りする。
そして、中へ。
「わぁ・・・綺麗な森だね」
「そうだね。暖かくて明るい」
木々の間から差し込む陽の光が、暖かい。
4月半ば、春の陽気に包まれている。
たまに木を伝うリスが見えたり、蝶が飛んでいたり。
爽やかで、優しい雰囲気が広がっている。
自然と笑顔になって、みんな嬉しそうだ。
少し奥に進んだところで、先生が言う。
「では、これからはそれぞれ自由に動いて大丈夫です。何かあったらすぐ先生に言うこと。剣は護身用ですので、争わないように。気になる植物を見つけたらスケッチし、それについて観察してください。それではどうぞ、行ってらっしゃい」
みんな護身用に剣を持っている。
何があるか分からないからだ。
普通の剣だが、十分攻撃力がある。
みんなは、自由にバラけて歩き始めた。
マナはまず、ソフィ、フィーユと一緒に行くことにした。
少し歩くと、花畑を見つけた。
綺麗な花々が咲き誇り、陽の光に照らされている。
ソフィとフィーユが楽しそうに話す。
「ねぇ、あそこでスケッチしない?」
「いいよ!きっと綺麗な花があるよね!」
「虫いないといいな〜」
けれど、虫はいないように見える。
動物達も遠くから、まるで見守るように立っている。
ソフィが少し残念そうに言う。
「あれ?動物もいるのに、寄ってこないな・・・」
「あ・・・もしかして・・・」
「マナ?なんか気づいたの?」
「ちょっと待ってて」
マナが動物に近づいてみると、動物達は少し緊張したように見えた。
「もしかして、私がいるから来ないの?」
マナは動物に話しかけてみた。
動物の1匹が、軽く頷いた。
「言葉わかるんだ・・・私のことは気にしなくていいよ。一緒に遊ぼう。おすすめの花とかある?」
優しく話しかけたら、1匹の鹿が前に出る。
そして、花畑の中心へ。
そこに咲いていた花を、ちょんと鼻で示した。
どうやらそれがおすすめらしい。
ソフィが驚いたように言う。
「マナって動物に好かれるのかな?」
「あはは・・・とりあえず、観察してみよう?」
「そうだね。どれどれ・・・」
その花は、青い星形の花だ。
他にもピンクや紫はあるが、青はこの1本だけ。
3人は丁寧にスケッチする。
花の形、色、花びらの数、おしべやめしべの数。
特徴を書き、生息環境を書く。
鹿やリス、小鳥や蝶なども花畑で休憩し始めた。
「星姫」たるマナは、畏れ多い存在。
でも今は、マナがいるからこそ安心できる。
敵は来ないし、みんな穏やかになれる。
そうして幸せな時間を過ごしているうちに、スケッチは終わった。
ソフィが言う。
「マナ、そろそろいいかな?」
「そうだね。まだ時間はあるし、もう少し散策してみよっか。どこ行こっかな・・・」
すると、わぁっという歓声が聞こえた。
右の方からだ。
「なんだろ?行ってみよっか」
フィーユがそう言うので、行ってみることに。
動物達に挨拶して、手を振り、行く。
少し進むと人溜まりが見えた。
中心にサフィールとノエル、そして・・・。
「ま、魔獣!?」
サフィールが魔獣を倒したようだった。
森で魔獣が現れて大騒ぎになっていたところに、サフィールが駆けつけ、ノエルと協力し、魔獣を倒したのだそう。
「あ、セレスティアさん。魔獣って案外弱いのもいるんですね〜」
「そうですね・・・。ノエルさん、大丈夫ですか?」
ノエルは疲れた様子。
そりゃそうだろう。守るべき皇子が意気揚々と魔獣に挑んでいくんだから。
「殿下・・・無謀すぎますって」
「別にいいじゃん、ノエル。倒せたし」
「・・・まぁ昔からか・・・」
ノエルとサフィールは少し懐かしそうに笑った。
サフィールは昔から無謀らしい。
マナは思わず微笑んだ。
「セレスティアさん達はスケッチ終わったんです?」
「はい。種類は分かりませんでしたが・・・」
「ちょっと見せてください」
「え、はい」
サフィールにマナがスケッチを見せる。
そこにある絵を見てサフィールが驚く。
「これ、星染花ですよ。青いのは見たことありませんが・・・。その星染花を学者に見せたら、きっと大喜びで調査するでしょうね」
「すごいですね。星染花・・・あまり聞きませんね」
「はい。星染花は夜以外、1日かけても、日を遮られることのない場所に生息します。星のような形は、星に染められたようだと言われていますね。普通は紫やピンク、黄色なんですが・・・まさか青があるなんて」
「博識ですね。ここが特殊だからなんでしょうか」
「たぶんそうですね。星獣もいますし、その恩恵なんでしょう」
「やったね、ソフィ。大発見だって」
マナはソフィに笑顔でそう言った。
するとソフィは思い切りマナに抱きつく。
「マナ可愛い〜。これもまた、マナが鹿さんと仲よくなったおかげだね」
「え、それどう言うことですか?」
「殿下、気になるんです?マナ話していい?」
「えっと・・・まぁいいかな」
ソフィが嬉しそうに話し、サフィールが興味津々で聞く。
その時、マナの服が何かに引っ張られた。
「ん?」
マナが後ろを見ると、鹿がいる。
慌てたように、マナの服を引っ張る。
ソフィ達は気づいていないようだ。
マナはみんなに言う。
「ソフィ、フィーユ。私ちょっと別の場所行くね」
「え、1人で?」
「うん。ここにいてね」
「分かった。でも無茶しないでね」
「ありがとう」
マナは鹿の誘導する方向に走って行く。
すると、一際大きく綺麗な樹がある。
その下に目を向けると、可愛らしい生き物が倒れていた。
その周りには、熊や猪、鹿なども。
「な、何これ・・・!」
マナはすぐにその子達の様子を見る。
かなり怪我が深いようだ。
息もしづらそうに見える。
マナは少し悩む。
けど、事は一刻を争う。
「バレないといいけど」
マナはその動物達に手をかざす。
マナの手から、星の光が粒となり、降り注いだ。
それが動物達に当たると、みるみる回復する。
無意識か、動物の表情も和らいだ。
久しぶりに力を使うからか、少し安定しない。
周りの傷つけられた木まで、回復している。
(よし、最後の子!)
最後の1匹は、不思議な見た目の子。
回復が遅い。何か力を持っている証だ。
遅いと言っても10秒もかければ回復するが。
「んん・・・?」
その子が起き上がる。
マナは回復をやめ、星の光は宙へと舞い上がった。
小さな瞳が、マナの方を見る。
「わわわ!に、人間です!?」
とても驚いたようで、後退りした。
マナは優しく話しかける。
「落ち着いて。私は何もしないよ」
「あ、そ、そうです・・・?ってええ!?星姫様です!?」
「そ、そうだけど。どうした?」
途端にその子は、顔をパッと伏せて謝った。
「ごめんなさいです!びびっちゃったです!」
「え?いや、いいよ・・・。それより君は誰?」
その子は顔を上げる。
その子は、とても可愛い姿をしていた。
狐に翼が生えたような見た目。毛は真っ白で、目は金色。星のような頭飾りをつけている。
けれどどこかあどけなくて、とても可愛い。
「ぼくはフィオーレです。星獣フィオレンサの子供なのです。人の言葉を話せるのも、星獣だからなのです」
「星獣なのね。まぁ見た目からしてそうだろうとは思ったけど・・・。フィオーレはどんな力を持ってるの?」
「ぼくは蔦や蔓草を生やせるです」
「すごいね」
「星の祝福」は人だけに付与されるものではない。
動物にも平等に付与される。
(そしてその動物を、敬意を込めて星獣と呼ぶーー)
小鳥や虫は体が小さく、祝福の力を受け入れられないため、星獣にはならない。
とはいえ「星の祝福」は遺伝しない。
なので親子そろって持っていることはとても珍しい。
「ちなみに、どうしてこんなことに?」
マナの質問に、フィオーレは悲しそうな顔で答える。
「悪い人間が来たのです。お母さんを連れて行ってしまったのです。お母さんはぼくを守るために怪我をしちゃったのです。動物達も、ぼくらを守るために戦ってくれたです」
「そうなの・・・。でもそうすぐ負けちゃうの?」
「あいつらは、魔獣を操っていたのです。魔獣と星獣は相性が悪い・・・。相手の魔獣も倒れたですけど、お母さんもやられちゃったです」
「魔獣!?だから普段いないはずのこの森に現れたのか」
「星の祝福」を得た星獣とちがい、魔獣は魔族の力を得た動物。
星獣の力とは反発する、強い力を操る。
だからこそ星獣と魔獣は相性が悪い。
フィオーレは悲しそうにいう。
「お母さん、本当ならあんな奴らにやられないです。魔獣さえ、いなければです・・・」
「でも魔獣を操れるなんて聞いたことない・・・」
「お願いです、星姫様!お母さんを助けて欲しいです!」
「・・・うん。分かった」
すると周りの動物達も立ち上がり、まるでマナにお願いするかのように、頭を下げた。
星獣はこの森の主。動物達にとっては、星獣がいなければならないのだ。
「大丈夫だよ。みんな、私に手を貸してくれるかな?できれば斬りつけたくないから」
「大丈夫なのです!動物達も一緒にやるです!」
動物達は頷いた。中には力強い熊や猪もいる。
マナは少しだけ、剣を握ることを迷った。
それでも、母を助けたい想いを、見捨てられない。
「じゃあ案内をお願い」
「はいです!」
星獣同士なら、互いの居場所がわかる。
それも、親子ならさらに正確にわかる。
マナとフィオーレ、そして動物達は、駆け出した。
今回は星獣とその子供について書きます。
星獣フィオレンサ、星獣フィオーレ。
フィオレンサは昔、マーラプアの後ろにある森ではなく、普通の森で暮らしていました。
ある時、その能力を狙われ、人に追われてしまいます。
そんな時、かっこいい男の子(狐)が助けてくれました。
それからフィオレンサとその男の子の間に子供が産まれます。その子もなんと「星の祝福」を得ました。
そんな仲良し一家は、幸せに過ごしていました。
けれどある日、どこからか、フィオレンサとフィオーレが親子に渡って星獣であることが広まりました。
そのせいでフィオレンサ達は人間に狙われます。
毎日のように人間に追われ、蔦をあちこちに生やして周りを囲ったり、フィオレンサの能力である結界で防いだりしましたが、剣を持つ人間には蔦はあまり効果もなく、追われ続けました。
そんな日々が続いた時、フィオーレのお父さんが人間に倒されてしまいました。
フィオレンサは悲しむ暇もなく、翼と蔦を使ってなんとか逃げました。
そしてマーラプア学園に着きます。
当時の校長は、フィオレンサ達を憐れみ、助けてくれました。
裏の森に住まわせてくれ、食べ物もくれました。
初めのうち、フィオレンサとフィオーレは校長を信用しきれませんでしたが、過ごしているうちに、信じることができるようになりました。
そして校長はフィオーレのお父さんのことも埋葬してくれました。
それからは親子仲良く過ごしています。
星獣親子はいつも、祈っています。
「星々が見守っていてくださいますように」




