1話クレアナ視点
【クレアナ視点:観察者であり守護者として】(長文版)
――私は、ただのメイド。
そう名乗ることに、もう迷いはありません。
かつての記憶も、名も、すべて過去に置いてきた。
私はただ、与えられた役目をこなすだけの存在――だったはずなのです。
けれど、この家で過ごす“日常”は、不思議でした。
ありふれた時間のひとつひとつが、私の内側に、
かつて失ったはずの感情を、静かに――けれど確かに、積もらせていく。
あの少年は、悪魔をその身に宿しながらも、
誰よりも強く、誰よりも真剣に、自分の力と向き合おうとしている。
あの少女は、天使と共に、静かに成長し、
優しさの中にある強さを、ゆっくりと見つけていく。
私は、見届ける者。
私は、傍観者。
私は、もう“戦う者”ではない。
……そう思っていたのに。
気が付けば、私は――
“守りたい”と願ってしまう。
彼らが、彼らのままでいられるように。
不器用な家族が、ひとつの居場所で笑い合えるように。
この心が、どうか彼らの足を引っ張りませんように。
この手が、どうか彼らの未来を壊しませんように。
私はメイドとして、剣を構える。
彼らが歩む道を、見届けるために。
……そして、願うのです。
この戦いが、いつか彼らにとって――
心から誇れる日となるように。
私は、そう信じています。