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第7話ミレイナの裏の心


弟の寝顔を見つめながら、私は腕を組んでいた。

冷静に見えるように――それは半分以上、自分に言い聞かせるため。


(……静かすぎる)


ノクの気配がない。

あの悪魔が、ただ隠れているのか、それとも――本当に“消えてしまった”のか。

どちらであっても、良い未来を想像できなかった。


(もしノクシアが原初に呑まれていたら……)

思考の奥で、最悪の仮説が浮かぶ。

私はかつて、悪魔を失った。

その記憶が、嫌でも蘇る。

弟に同じ苦しみを味あわせるわけにはいかない。


けれど――。

弟はもう「ただの弟」ではなくなりつつある。

“魔王の子”であり、“心牙を生んだ者”であり、“原初の扉に触れる存在”でもある。

そう思えば思うほど、胸が重くなる。


「……再会は、喜びだけで済まないわよ」

食卓でそう告げたのは、私の本音だ。

両親が帰ってくる――それは喜びであり、同時に試練でもある。

彼らが弟に何を課すのか、私は知っている。

むしろ、それを止める権利は私にはない。


けれど、守りたい。

カゲナを、リアを。

……そして、かつて失った“自分の悪魔”の代わりに、ノクシアのことも。


夜の冷気に晒されながら、私は弟の背中に声を投げかけた。

「……まだ消えていない」

あれは影に対しての言葉であり、同時に自分への戒めでもあった。

希望を手放すな、と。

たとえ原初が近づいていようとも、諦めるな、と。


弟の瞳が曇りきる前に――私が立ち続けなくてはならない。

そうでなければ、今度こそ本当に“影”に呑まれてしまう。


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