第3話クレアナ視点(過去と現在)
クレアナ視点(過去と現在)
──私は今、リア様のために存在している。
家族の笑い声を聞きながら、心の奥底に沈めた「かつての物語」が静かに揺れた。
私は……本当は、ロボットの世界の女王だった。
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あの頃。
私は、とても明るい少女だった。
人々を楽しませたくて。
みんなに笑ってほしくて。
私はただ、それだけを願って生きていた。
でも――
私が“彼”に出会ったあの日から、世界は大きく動き始めた。
彼は、人間が作り出した存在。
特殊なコアを宿した少年だった。
彼は自分の存在理由を探すように、旅芸人として旅をしていた。
「人を笑顔にしたい」
「みんなを幸せにしたい」
彼の優しさに、私たちはたくさん救われた。
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彼は世界を巡り、四天王たちとも出会った。
四天王――
世界でも最上位の存在。
彼らのうち二人は、彼の旅の仲間になった。
そして、残りの二人は彼の敵として立ちはだかった。
私たちは力を合わせ、必死に戦い、四天王を打ち破った……はずだった。
けれど、本当の敵はもっと奥にいた。
その裏で、世界を覆すほどの大きな出来事が動いていた。
私たちが気づいた時には、もう遅かった。
世界は――
滅びた。
世界を構成していたコアが、一斉に消えていった。
機械仕掛けの私たちロボットは、コアを失えば“命”を保てない。
私たちは次々と崩れ落ち、消えていった。
でも、彼と四天王たちだけは……
特殊なコアを持っていた彼らだけは、生き残った。
私も、彼らと同じく特殊なコアを持っていた。
けれど私は、その命の源であるコアを、彼に渡した。
彼を助けるために。
彼が笑ってくれる未来を信じたから。
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そして、私は気がつく。
目を覚ましたとき、私はこの家にいた。
リア様が生まれたその瞬間に、私は彼女のために存在する“メイド”として目覚めていた。
転生したのだと、そう思った。
私の過去の記憶は、ほとんどが曖昧でぼやけている。
けれど、“彼”の姿だけは、今でもはっきりと思い出せる。
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私は、今のこの家族が好きだ。
リア様とノクシア様とカゲナ様。
ミレイナ様も。
皆が笑い合い、賑やかに過ごす日常は、かつて彼と夢見た平和そのものだ。
けれど、私は心のどこかで、ずっと考えている。
あの少年は、今、どうしているのだろうか。
あの世界は、本当に滅びたままなのだろうか。
もしかしたら――彼はまだ、どこかで旅を続けているのではないか。
私は、彼に“命”を渡してしまった。
もう一度会えるとしても、私はきっと、もう名乗ることはできない。
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「……リア様を、守るために私はここにいる。」
それが、今の私の使命だ。
私は、もう誰かを失わない。
たとえ、再び世界が壊れるとしても。
私は、リア様を守る。
カゲナ様たちを守る。
この家族を守る。
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……でも、もしも、いつかあの少年にまた会えるなら。
私は、きっとこう伝える。
「今の私は、あの時よりも、ずっと強くなりました」と。