第3話カゲナ視点
◆カゲナ視点
──朝。
静かな光に包まれた中、ゆっくりと目を開く。
僕の中にいたノクが、静かに戻ってきたのを感じた。
「……ノク、お疲れ」
心の中でそう声をかけると、どこかくすぐったいような、安心した気配が返ってきた。
隣のリアも目を開けて微笑む。
──僕たちは、ちゃんと勝てたんだ。
でも、それだけじゃ足りない。
訓練場で、僕はもっと強くなりたくて、何度も空間を斬った。
ノクの力じゃなく、僕自身の力で。
リアの炎と何度もぶつかり合いながら、少しだけ、前に進めた気がした。
──
昼。
地下に降りて、あの扉の向こうで見たのは、帰ってきた姉の姿だった。
「……帰ってきたんだ」
思わずそう呟いた。
懐かしくて、でも信じられなくて。
嬉しくて、でもどうしていいかわからなかった。
「……泣かない。けど、嬉しい」
家族って、こんなにも温かいんだろうか。
僕は、あの瞬間、心が少しだけ溶けた気がした。
──
でも、食事中にノクが出てきたとき、やっぱり僕は焦ってしまう。
リアは呆れてるし、クレアナは警戒してるし、
ノクはいつも勝手に僕の身体を動かす。
「……あー……ちょっと……ヤバいかも」
止められないと、わかってた。
でも、ミレイナ姉さんは……ノクを普通に受け入れてくれた。
(……いいのかな……)
もしかしたら、こういうのも家族って言えるのかもしれない。
──
ダンジョン遊びでは、ノクと本気で連携した。
右はノク、左は僕。
交代のリズムは、まるで呼吸するように自然だった。
「ノク、動きすぎ」
「カゲナ、動き足りない!」
言い合いながらも、僕たちはちゃんと強くなってた。
もしかしたら……僕はノクと一緒にいることが、嫌じゃないのかもしれない。
──
夜、お風呂の中でも、ノクははしゃぎ続けた。
僕は目を閉じて、ひたすら耐えたけど……
(……ノク……ほんとに、騒がしい……)
でも、ノクが言ってた“同時に動く”未来――
僕も、少しだけ楽しみだ。
……きっと、そこにしかない戦い方がある。
(……まあ、こういうのも……悪くない……)
──
カゲナ視点:完