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〈エピローグ〉    《禁じられた地》

 こんにちは!片生と申します!

今回は【禁足の旅路で嫁を愛でる】を読んでいただきたいです。

まだ若い作品ですが、今までで一番書けている自信があるので、投稿させてください。

何せ、四作品の屍を踏んできているので;;

カクヨムさんにも投稿させてもらっているので、是非そちらも~



──だからね、あそこには二度と行ってはいけないよ、わかったかい?


──分かったよ、父さん。ごめんなさい。


──ラントは偉いわね~ さすが!


──えへへ、母さんの子だからね。














──父さん、母さん、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。


──ラント!今、私が助けるから!


──ルネ…ごめん


──ラントーーーー!!!!













 この世界には七つの「禁足地」と呼ばれる場所が存在する。




 超常的なもの、宗教的なもの、歴史的なもの。理由は様々。




 何であれ、禁足地には、そこを禁足地たらしめるだけの事情がある。




 


 若き魂は好奇心旺盛だ。いくら年を食っても、それが変わらない者も居る。




 無論、禁じられた地とあらば、その者たちは自身の身を顧みない。




 そこから生きて帰ることができるのかは、別の話だが…














落ちた…のか、俺は。


体中が痛い…意識が今にも飛びそうだ。




これは…砂?洞窟っぽいけれど、妙に明るいな…




「そうだ、ルネ、ルネは…」




ねじ切れそうなほど痛む首を動かし、必死にあたりを見渡して、幼馴染の姿を探す。




「よかった、ルネは落ちてないみたいだ」




俺は今、禁足地に足を踏み入れて生きているんだ。




「こうしちゃいられない」




自分が死にそうな状態なのもわかるし、もうすぐ死ぬこともわかっている。


でも、そんなので怯えるような奴は、禁足地になんて興味を持たない。




俺は、蜥蜴のように匍匐で這いながら、洞窟の奥へ進もうとした。




「...っ!ルネ!」




少し進んで見えたのは、砂山から生える幼馴染の腕。その手首には、数年前に彼女にプレゼントした金色のブレスレットがはめられていた。




幼馴染を掘り起こすと、いつもと変わらないきれいな銀色の長髪が、洞窟の光を反射する。




「ルネ!ルネぇー!」


「んんっ…ラント…?」


「ルネ!よかった!」




ルネがなんで俺に着いてきたのかは聞かなかった。それを聞き出すのが怖かった。




「ラント…見て、空…」


「空?なんだ…あれ」




 ルネが指さした先には、洞窟の天井に大きな穴が開いていた。その穴の先には、地上が、さっきまで住んでいた村が、人が上空に見えた。まるで天地がひっくり返ったようなその光景は、今の俺たちの目には神秘的に映らなかった。




「ひとまず、ここから出ましょう。起きれる?」


「さすが、異能持ちは頑丈だね」


「”異能”じゃなくて”魔法”ね。ってそんなこと言ってる場合じゃないわよ。私がラントを担いでいくから」


「おねがーい」




彼女が俺を持ち上げる瞬間、ハグを不意打ちで仕掛けた。




「え、えっ!?ど、どうしたの?」


「ごめん、何でもない」


「もう...」




幼馴染を担ぎ、砂山を降りていくルネ。彼女はその”魔法”でなにかで感じ取ったのか、はたまたあてずっぽうか、迷いのない足取りで、洞窟を進もうとする。その瞬間だった。




「Grrrrrraaaaaa!!!」




大きな咆哮とともに姿を現した魔物の群れが、一瞬で俺たちをとり囲む。




「させない!」




完全に包囲されようとする直前で、ルネは攻撃を放ち、突破口を開く。


男の俺を抱えたまま、彼女は全力で走り出す。




しかし、目にも止まらぬ速さの巨大な棍棒が、彼女の目前に振りかざされる。




「けほっけほっ」




舞い上がった砂塵から、棍棒が続けて彼女の体を狙う。




「ルネ!」




彼女は避けられないと察したのか、俺を投げて、自分だけその攻撃を食らう。




「ぐはっ」




「ルネぇぇーーーー!!!」




壁に叩きつけられた幼馴染に、魔物たちが集りはじめる。




「やめろ!!!やめてくれ!!!」




彼女の声と攻撃の音が次第に消えていく。




「やめて...ください...ルネを...」












憎い




自分が憎い




無力なくせに、身の程をわきまえず、親の教えを無視して




大切な人をこんなことに巻き込んで




「俺は、俺はっ...」




(助けてほしいか?)




「お願いだ!誰でもいい!」




(くっひひ、よかろう。お前の望みを叶えてやる)




高々に笑ったその声は、どんどん増大し、魔物たちの耳を潰す。その瞬間、魔物たちの頭が激しく振動し始め、はじけ飛んだ。




「ルネ!」




倒れた魔物たちの隙間を何とか通って、傷だらけの幼馴染を抱きかかえる。




「私は...だい...じょうぶ...だから」


「ルネ...ごめん」


「へへ、ラントの...無茶は...今に始まった...ことじゃない...でしょう?」


「帰ろう。俺が責任もって、ルネを村に帰す」




この期に及んでも、そんな強がった言葉しか出なかった。




「ふっひひ!お前さんたち、ここから出たいのか」




さっきの声がより近くで聞こえてきた。声の主は小さなシャーマンだった。




「ああ!今すぐこの子を外の世界へ返したい!」


「だめ...ラントもいっしょ...」




ルネが潤んだ瞳をして、俺の袖を掴む。




「自分の身より、その娘の身を案じるか。くくっ、実におもしろい…が、より面白い結末を提案しよう!」




そのシャーマンは俺たちの返事も待たず、話始める。




「その娘の、お前との記憶を消す代わりに、ここから逃げおおせる力をお前に授けよう。ひひっ、どうする?」




シャーマンはニヒルに笑い、その背丈に見合わない大きな杖を取り出す。




「…そんな提案、もちろん却下だ」


「ラント...私はいいよ」


「ばか!記憶を消すなんて死ぬも同然なんだぞ?それに...それに、ルネはそれでいいのかよ...」


「記憶が消えるのは...少し寂しいけど、私なら、ラントとの思い出を、きっとまた思い出せる」


「ルネ...」


「私は...ラントに...生きてて...ほしい...」


「ルネ?」




「おおっと?その娘、もう限界みたいじゃぞ?どーするんじゃー」




シャーマンは退屈したのか、杖をぶん回して遊び始めた。




「やって!」




胸の中のルネは、最後の力を振り絞って叫んだ。




「娘の方がお前より度胸あるな、くひひっ!よかろう!万物の祖となる邪神よ、無力な者たちの願いを聞き入れよ───」




シャーマンが詠唱すると、杖に禍々しいエネルギーが集まり始める。




「ルネ...俺は君が──」


「それは...これからの私に...言ってあげて...きっと...すごい喜ぶから」




「───よ、ショント・モウディート!」



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