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0086新皇帝誕生01(1880字)

(11)新皇帝誕生




 さかのぼること20日前、ロプシア王国の帝城に、すべての選帝侯が集まった。




マルブン宮中伯ギシネ(48)


ザンゼイン大公ザーブラ(38)


マリキン国国王イヒコ(37)


ドレンブン辺境伯トータ(53)




 以上4名は前回と同じ。新たに加わったのは、




コルシーン国国王エイドポーン(25)


イザスケン方伯ザクカ(33)


ロプシア王国国王コッテン(45)




 以上3名。前回よりひとり増えた。




 みなそれぞれの側近と防衛武力を率いての到着であり、帝城周辺はものものしい。会議室に集まった選帝侯7人は、円卓に置かれた自席についた。そしてお互いの領土や健康、運勢について軽く雑談する。


 そうして会議は始まった。


 ヤッキュ皇帝の治世は10年は磐石(ばんじゃく)だろうと見られていたなかでの、彼の急逝(きゅうせい)。息子で王位を引き継いだエイドポーンは、開始早々挙手した。のっぽだが足は短い。餌をねだって背伸びした結果こうなったと見られても仕方ない容姿だった。


「僕が次期皇帝になり、敬愛する父の無念を晴らして帝国を安泰に導きたい。議論や投票をする必要はないだろう。素早く決めたい」


 いきなり話を終わらせようとするエイドポーンの熱弁に、ギシネとトータ以外の4人が不快感を顔ににじませる。『毒殺皇』と陰口を叩かれているヤッキュを尊敬しているという時点で、高が知れていた。


 ロプシア王国の国王コッテンは、ヤッキュに兄セイローを殺されているだけに、その息子エイドポーンに対して憎しみ並々ならぬものがある。彼は兄セイローとは似ても似つかない不細工で、ダサい服を好んで着ていた。挙手してマグマを吐き出す。


「祖父の元皇帝ホカリ、我が兄セイローの意志を継ぐべく、今回帝王の冠は誰にも譲るつもりはない。帝国内外の諸問題を合理的かつ大胆に処理できるのは、僕をおいてほかにないだろう。違いますか?」


 ギシネが手を挙げた。複数の団子を適当にくっつけたような顔だ。頬骨の大きさがいちじるしい。服に着られている印象である。


「わしは自らをもって『第二人者』を自負している。前回はドレンブン辺境伯トータ殿と一緒に、ヤッキュ侯に投票した……」


 一同がどきりとした。ザーブラは汚いものでも見るような目をし、イヒコは口笛を吹きかけてやめる。


 名前を挙げられたトータが胸を張った。老獪(ろうかい)な狐を思わせる相貌だ。


「俺はマルブン宮中伯ギシネ殿と意見を同じにするものだ。求めるのは親友と帝国の安泰なのでな。2年前も今回も、その目標は変わっておらぬ」


 どうやらエイドポーンの世襲に反対するつもりはなさそうだな。イザスケン方伯ザクカはそう見た。ザクカはずん胴体型でスタイルこそ悪いが、長剣を構えれば堅牢で攻略しがたい。典型的な武人で面白味のない人物といえた。


「意見は割れている。やはり帝国が抱えている複数の悪しき事態を討議し、それによって支持する相手を――次期皇帝にふさわしい人物を見極めたい。いかがか」


「賛成だ」


「賛成です」


 ここはひとまずまとまったので、マリキン国国王イヒコが最初の議題を提案した。後退した銀色の髪の毛を気にしつつ、童顔で引き締まった肉体は弾力に富みそうだ。


「まずはヤッキュ皇帝暗殺について。犯人はアーサーだった。ロプシア王国国王コッテン殿の兄セイローの息子だという。コッテン殿はこの『皇帝暗殺』の重大犯罪者と、事前に関わりあったか?」


 コッテンはゆっくり首を振る。落ち着いていた。


「あるわけがない。アーサーは前皇帝を殺害し、父セイローの仇を討ったつもりなのだろう。だがそのような野蛮な行為を僕が許すはずがない。知っていたら止めていた」


 イザスケン方伯ザクカが軽くつついた。


「事前に入れ知恵したということは……」


 コッテンはこれにはカチンときたらしい。荒々しく問いかけた。


「僕を侮辱するのか?」


 ザクカはすぐに頭を下げる。


「そんなつもりはなかった。気分を害したのなら謝罪する」


「受け入れよう」


 イヒコが軌道修正した。


「アーサーはあの場ですぐに処刑されるはずだった。何せロプシア帝国の神聖不可侵な皇帝陛下を暗殺したわけですからな。しかし、これを助けたものがいる。ラグネという少年だ」


 コルシーン国国王エイドポーンが怒りに全身を震わせる。


()しがたい犯罪者ですな。我が父を暗殺したアーサーを包囲から連れ去り、今頃は僧侶の力で彼を治癒しているであろう、僕らの仇敵だ」


 ドレンブン辺境伯トータが円卓の上で両手を組んだ。


「そういえば、3万人全員が目撃したという『黄金の翼』とは何だったのか? ラグネとやらは魔物なのかね?」


 マリキン国国王イヒコはここで重大な情報をもたらす。彼は得意げに披露した。

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