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0044『昇竜祭』武闘大会03(2246字)

「そして優勝者に贈呈されるのは、5000万カネーだ」


 これにはコロコ、ボンボ、ラグネの3人がハモった。


「5000万!?」


 とんでもない破格だ。冒険者として受ける依頼の報酬が、すずめの涙に思えてくる。


「1回戦の開催は今夜だ。真昼から予選会が行なわれる。あたしとゴルの腕前なら、予選突破は確実だろう……って、おい、どうした!?」


 コロコがヨコラの手を両手で握り締めている。その目はすでに5000万カネーを受け取る未来しか映っていない。


「出る! 私も『昇竜祭』に出場するよ!」


 ゴルが哄笑した。


「手ごわいライバルの出現だな!」




 コロコ、ゴル、ヨコラの3人は予選会場に向かった。街は出店と客引き、観光客でにぎわっている。これにはラグネも不安になった。予選に出るコロコはもちろん心配だが、それとともに、今夜の宿を確保できるかどうかという切実な問題があったからだ。


 そのことをチャムに尋ねると、彼女は震え上がりながら、ラグネ以上のたどたどしさで語った。


「予選会で出場者は16名に絞られるんです。その16名には、特別に宿舎の部屋が無料で提供されるそうで……。ゴルくんは前回の本選に出ていたから知ってるんです」


 なるほど。つまり3人のうち最低でもひとり本選に出られれば、今日の宿に困ることはないわけだ。


「私たちは本選の舞台になる闘技場に行きましょう。座席ひとり分につき1万カネーを取られるみたいですが、いい席は早いもの勝ちなので……」


 そりゃ大変だ! ラグネとボンボ、チャムは、闘技場へ急いだ。




 予選会に参加するには、10万カネーの大金を支払わなければならない。混雑を避けるため、予選に出場する選手たちは誰とも同伴できなかった。あらかじめ聞いておいてよかった、とコロコは胸を撫で下ろす。


「その篭手(こて)は武器なのかね? 防具なのかね? 後者ならば外してもらうが」


「武器です。私、武闘家なので」


「許可する。では10万カネーを」


 コロコは硬貨が詰まった袋を、机の上に置いた。その中身を受け付けの男が確認する。


「ちょうどだ。それではこの札を持って15番の闘場に並びなさい」


「ありがとうございます」


 選手だけだというのに、予選会館は人の群れで混雑していた。コロコが参加した15番の闘場では、特に自分より強そうだと感じさせる冒険者はいなかった。『夢幻流武術』の達人であるコロコは、自慢の拳打を武器に勝ち上がっていく。


 勝者も敗者も『昇竜祭』専属の僧侶・賢者たちによって回復魔法をかけられ、戦いは平等に行なわれた。


「勝者、コロコ!」


 予選決勝をさばく審判が、相手のまいったを確認する。ついにコロコは15番闘場の優勝者となった。嬉しくないはずもなく、コロコはひとり拳を固めてはしゃいだ。




「えっ、ふたりも勝ち残ったの!?」


 その後、ゴルとヨコラのふたりを見つけて話しかけると、彼らもまた予選を突破したらしい。ゴルは大剣を振り回す怪力で、ヨコラは細い長剣による華麗な剣術で、それぞれ本選への切符を手に入れたそうだ。


 驚くことはまだ続いた。コロコは本選出場を決めた2番闘場の選手が、あの仮面の傭兵戦士ハルドだと知ったのだ。


 あいさつにうかがうと、間違いなくルモアの街で見かけた彼だった。エヌジーの街で再会し、ともに牢屋破りをした仲でもある――あのときは仮面ではなくバケツ型兜を装着していたが。


「ハルドさん!」


 相手がこちらに気がついた。とたんに苦笑する。


「この仮面を覚えられたら覆面する意味がないな」


 ふたりはがっちり握手した。


「コロコくん、予選突破おめでとう。手紙で『今度は両者万全の状態で試合をしよう』と書いたけど、どうやらお互い勝ち続ければそれもかないそうだ。きみの健闘を願うよ」


「こちらこそ。私もハルドさんとの対決、楽しみにしてるね」


 そうして、夕方までには全16選手が揃った。


 戦いに賭け事は付き物だ。全員の名前が掲示板に張り出され、そこに予選会場で特別に観覧していた胴元が倍率を書き入れる。すると早速多くのギャンブラーが我先にと賭け始めた。




『毒サソリ』ポッキ――男、28歳、猛毒の剣――10倍


『喧嘩無敗』ゴック……男、29歳、長剣……24倍


『無想流の使い手』サンヨウ――男、34歳、長刀――8倍


『高等忍者』シゴン……男、年齢不詳、忍者刀……9倍


『技巧派剣士』シトカ――男、52歳、片手半剣――17倍


『怪物』カーシズ……男、年齢不詳、大斧……3倍


『戦闘民族の長』ホラフ――男、49歳、手っ甲――13倍


『最強のモンク』タント……男、32歳、素手……30倍


『疾風戦士』クローゴ――男、24歳、二刀流、前回優勝者――2倍


『鞭使い』グタン……男、42歳、鞭……15倍


『究極武闘家』ルルン――女、30歳、ヌンチャク――22倍


『八つ裂き魔』ジャン……男、40歳、短剣……18倍


『怪力戦士』ゴル――男、19歳、大剣――6倍


『魔法剣士』ヨコラ……女、18歳、細い長剣……14倍


『夢幻流武闘家』コロコ――女、17歳、篭手――7倍


『傭兵戦士』ハルド……男、年齢不詳、短槍……12倍




 夜のとばりが下りるころ、闘技場の客席は立錐(りっすい)の余地もなく超満員となっていた。ボンボとラグネはチャムを挟んで、最前列の席を確保している。先ほどたいまつへ順に火がつけられ、場内はいよいよ始まるのかとざわめいた。


 審判団が客席に囲まれた中央の広場に現れる。そして、人間にこれほどの大声が出せるのかと観客を喫驚(きっきょう)させた。


「厳正なるくじ引きの結果、1回戦第1試合は『戦闘民族の長』ホラフ/手っ甲 対 『夢幻流武闘家』コロコ/篭手!」

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