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0133神の聖騎士もどき01(1629字)

(20)神の聖騎士もどき




 ときはさかのぼる。


 武闘家コロコは傀儡子(くぐつし)ニンテン一家とともに、旅立ちの準備をしていた。ラグネが西へ悪魔騎士4人を追っていってから、さほど時間は経っていない。


 ボンボの鞄に彼の遺骨を数個詰める。それを肩にかけると、もう涙を流すこともなくしゃっきりした。


 ターシャが心配そうにコロコを気遣う。


「大丈夫……」


「今は言わないでください」


 コロコは平手を突き出してさえぎった。


「今はただ、あの青い肌の4人が戻ってきたときのことを考えて、このケベロスの街を脱出しましょう。それだけを考えましょう」


 そうでなければまた泣いてしまう、とまでは口にしなかった。


 そこへニンテンが3頭の馬を連れてきた。


「現金な奴らだ、金を渡したらすぐに譲ってくれたわい。さあ、行こうか」


 ニンテンの孫であり、ターシャのひとり息子でもあるクナンが確認してくる。


「どこへ行くの? おうちはここでしょ?」


「新しいおうちだよ、クナンくん」


 コロコは微笑むと、馬にまたがった。ニンテンがクナンとともに乗馬し、ターシャも専用のそれに乗る。


「出発進行!」


 コロコたちは3頭の馬で街の南東へと走り出した。コルシーン国に避難するためだ。


 その道中、ニンテンはコロコに尋ねる。馬を並べて、大声で。


「なあ、コロコくん。わしにはさっぱり分からないことだらけだ。……あの青い肌をした男女は、結局最後まで名乗らずに、わしに4体目の『生きた人形』を作らせた。左胸にはめた赤い宝石『核』が脈動し始めて、あの人形は確かにうなり声を上げてきた。成功したのだ、命を吹き込むことに……」


 ニンテンは顔をしかめた。


「するとあの男女はわしらを縄で拘束して一室に閉じ込めた。そして人形を奪い、庭で何かし始めた。その後、コロコくんの悲しそうな叫び声が庭から響いてきて、家の隙間から赤い光が差し込んできた」


 コロコはボンボを思い出しそうになり、奥歯を噛み締める。ニンテンは続けた。


「その後、赤光(しゃっこう)はいったん止んだ。そしてしばらく経ってから、青い肌の男がやってきたとみるや、わしらの拘束を解いた。しかし、その後酷いことに、わしやターシャ、クナンを三叉の槍で庭に縫い付けたんだ」


 当時を思い出したように怖気(おぞけ)(ふる)う。


「青い肌のものは4人に増えていた。男女――女のほうは失神していたようだが――と、少女、そして大柄な男。わ、わしは思うのだが……」


 ごくりと唾を飲み下し、コロコに質問する。


「あの4人はわしが作った『生きた人形』たちではないのか? デモント、ケゲンシー、タリア、ホーカハル。特にタリアとホーカハルは、着ている衣服からしても、見た目の年齢や顔、体の造りからしても、確実にわしの作った人形だ」


 厳しい目をした。嘘は決して許さない、という決意の光が宿っている。


「コロコくん。もう偽りは述べないでくれ。きみたちは『生きた人形』の誕生を見にきたのではなく、それが人間化することを期待してきたのだな? あのような、黄金の翼を生やす特別な人間に変化することを……」


 コロコは少し逡巡(しゅんじゅん)した。ニンテン一家に話せば、もうニンテンは『生きた人形』を作れなくなる。心に不純物――人間化させるという企図(きと)――が混じれば、二度と人間化できなくなる、というのがケゲンシーの話だったからだ。


 だが彼らはもう十分すぎるほど苦しめられた。これ以上巻き込むべきではない。そう思い極めて、コロコはすべて打ち明けることにした。


「そういうことだったのか……」


 ニンテンもターシャも、短い簡略化された説明ながら、よく理解した。また、あのラグネも同じ『生きた人形』であったことには、何より驚いていた。


「ラグネくんだけ青い肌にならなかったのはなぜなんだ?」


「それは……」


 言いかけたときだった。コロコは地鳴りのような音を背後に聞いて、何かと肩越しに振り返る。そして愕然となった。


「な、何あれ!?」


 後にしてきたケベロスの街の方向から、謎の黒い海が現れていた。それは津波のように急速に近づいてくる。ニンテンが叫んだ。

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