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王を問う  作者: 大石安藤
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7・真織宮

 真織宮まおりのみや壬京じんきょうの東端に作られた王城と違い、ほぼ中央にある剛健な宮である。壬京を初めて訪れると王城と勘違いする者も少なくないが、それもそのはずで、2代前までは王城として使われいたのだ。その時の王が急峻な山と川に挟まれた今の場所に王城を移したのは、龍の影響とも言われているが定かではない。そもそも龍は王城の場所を気にはしない。

伽木きゃき、なぜここに」

「兄上こそ」

 コウは真織宮の内裏に近い門から勝手しったる抜け道を使って近くの蔵へと縁の下を歩いているところだ。つまり王太子ではないにしても、正妃を母にした第3皇子の玉緒宮たまおのみやがいるところではない。



 庵から真織宮まで2日かかった。コウひとりなら半日かからないが、山之師は龍気を纏えないので普通に歩いてくるしかなかったからだ。

 ちなみに山之師は宮に近い宿坊で「年よりに無理させるな」と休んでいる。

 コウは龍気を感じることができるようになってから、疲れをほとんど感じなくなり、動きが著しく速くなった。龍の目で気配を探るように、龍気を纏うと動きを速めることもできるし、なにより病に罹りにくくなる。

「暫くは変わらないかなぁ」

 山之師は残滓が強く残っているんだろうと言っていた。

 どちらにしても山之師は真織宮には入れない。王家ではない者はその宮の主の許可が無ければ入れない結界が張ってあるからだ。もっともその結界も龍気の残滓が無くなれば意味も無くなる。

 山之師がここまでコウと一緒に来たのは、次の龍を見つけるには王太子から始めるのが手っ取り早いだろうと考えたからだ。

「早ければ早いほどお互い楽になるから」

 そして。

「王が亡くなられた後の様子も知りたいからな」

 コウは王太子である真織宮に会うためにここまで来たが、どうも宮の様子がおかしい。王が崩御したというのに普通に過ぎる。出入りの牛車の様子にも変わった様子が無い。胸騒ぎがしたコウは正面から訪問するよりもと、内裏の兄の妃に会おうとして縁側を来たわけである。



「そうか、伽木は父上が亡くなられたことを知っているんだな。そりゃそうか、香女だもんな」

「はい。ということは、兄上は知らなかったのですか」

「私はさっき聞いたばかりだ。ってもたまたま近くに来たから寄ったら、兄上に嫌な顔をされたもんでな」

 この兄は母親の正妃に似て気性が強くて行動力に長けている。そして口がたつ。大人しい長兄はいつでもタジタジにさせられるのだ。不審な様子に詰め寄られたのだろう。ただでさえ、王が亡くなって狼狽えているであろう時である。さもありなんと、コウは溜息を吐いた。

「で、伽木はなぜここを歩いている」

「兄上こそ」

 今度はふたり揃って溜息を吐いた。

 




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