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王を問う  作者: 大石安藤
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4・龍気1

 龍気りゅうきには色と香りがある。龍気を感じる者は、常は王ひとりと時の香女ひとり。

「うちの龍はいい香りがする。どうやら代々、この国の龍は香りが良いらしい」

 父はそう言った。姫皇子を香女と称するのは国の龍の性質に寄っているのだ。



 香女が成人の儀を迎えた時、いままでの姫皇子と同じように、王直々に龍気についての説明をうけた。父から龍気の捉え方を授けられるのだ。そしていままでわからなかったのが嘘のように龍気を感じることができるようになる。

 香女は確かに花のような、大樹のような龍の香りがすぐさまわかるようになった。

「我がいなくなればコウにはわかる。龍の気配もたどれなくなるだろう。それは龍と我が共に逝ったということだ」

 香りに浮かれていたコウにとって、冷水をざっぱりと頭から浴びせるような言葉だった。

 コウはかなり驚いた顔をしていたらしい。父はすぐに上座を立って再びコウの傍までくると、龍気を教えた時のようにそっと手を握った。

「なにお前が嫁ぐまでは長生きするから大丈夫だ」

「……でも、私の他にもう姫皇子はおりませんが」

 コウが嫁いだ後に龍がいなくなったら、この国はどうなるのか。

「うんうん。次はそうだな、恐らく真織宮まおりのみやが龍気を捉えるだろう。宮にはもう姫皇子がふたりいる。大丈夫だ」

 つまり、父が生きている間に龍が代わることは無いだろうと言っているのだ。

 コウは言い切る父に安堵した。龍気は確かに神々しいほど香っている。すぐに慣れると言われたけれど、コウは目眩がする香りにとても慣れそうには思えない。なるほど、これほど強い龍気を持っているのなら、すぐにどうこうということは無いに違いない。

「龍気ってのは便利なんだよ」

 西の大臣に促されて上座に戻った父は、内緒話をするように笑った。

「他人の気配がすぐにわかるようになる。遠くからでもどうしているかと思えばすぐにその人の気配を感じることができる」

 だからいつでもコウが来るのがわかっただろう。

 言われて長い縁側の端で身を乗り出し、幼いコウへ腕を伸ばしていた父の姿が目の前に浮かび上がり、コウはほうっと息をついた。



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